ゆきれぽ

2026年3月11日

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『暁星』

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約一ヶ月後の4月9日(木)には、今年の本屋大賞が発表されます。

◎本屋大賞の公式サイトは コチラ

ノミネート作品はすでに発表されていますので、候補作を全て読んで自分で大賞を予想するのも楽しいと思います。

ちなみに、「ゆきれぽ」ではノミネートされた10作品のうち、6作品をこれまでご紹介しています。(*本のタイトルをクリックすると、私の本紹介ブログが読めます)

『ありか』瀬尾まいこ/水鈴社
『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ/日経BP 日本経済新聞出版
『エピクロスの処方箋』夏川草介/水鈴社
『熟柿』佐藤正午/KADOKAWA
『探偵小石は恋しない』森バジル/小学館
『PRIZE―プライズ―』村山由佳/文藝春秋

今週と来週の「ゆきれぽ」は、まだラジオで紹介していない候補作の中から2冊をピックアップしてご紹介します。

今週ご紹介するのは、こちら。

『暁星』
湊かなえ
双葉社

『暁星』は、湊さん自身、「29作目にして一番好きだと断言できる作品です」とおっしゃるほどの力作で、去年11月27日に発売されました。

タイトルの『暁星』は「あけぼし」と読みます。明けの明星、金星のことですね。

『暁星』は、ふたつの物語で構成されています。

まずは、大物政治家の清水を殺し逮捕された男、永瀬の手記からはじまります。永瀬は逮捕後、週刊誌に手記を発表します。その手記には事件の動機や彼の生い立ちが綴られます。また、手記に加えて、オンラインニュースの記事やSNS上の反応なども書かれているため、まるでスマホで読んでいるような感覚になりました。

永瀬の手記で事件について知った後は、事件の現場に居合わせた作家の小説がはじまります。その作家は永瀬の事件を小説、つまりフィクションとして描いていきます。

同じ事件を扱っているとは言え、一方は犯人が書いたノンフィクションの手記、もう一方は事件を現場で目撃した作家が書いたフィクションの小説ですから、全く同じというわけではありません。そもそも物語の設定が手記とは異なっていますし。でも後半の小説もこれはこれで面白く、夢中で最後まで読み進めました。

そしてラストが最高の閉じ方でした。短くシンプルな文章なのですが、それだけで十分伝わりました。

その後、前半の手記をもう一度読んでみたのですが、一回目とはもはや別物のように感じられました。書かれている文章は変わらなくても、見える景色が違いました。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、本の魅力がぎゅっと詰まった一冊でした。そして、あらためて私は「本」が好きだと思いましたし、これは全国の書店員さんたちが推すわけだと納得もしました。

ちなみに、私は先入観を持って欲しく無いと思い、この物語の重要なテーマについてあえて触れませんでした。それを言うことで、実際に起きた事件が想起され、その事件の実話なのかと勘違いする人もいるかもしれないと思ったためです。でもこの作品はあくまでも小説です。つまりフィクションです。それを踏まえた上でお読みください。できればあまり情報を入れずに読むのがいいと思います。私も言いたいことをたくさん我慢して、少なめの情報にとどめました。

それにしても本屋大賞の候補作を読めば読むほど、大賞の予想が難しくなっていく…。来週もまだ紹介していない候補作の中から一冊ピックアップしてご紹介します。お楽しみに!

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