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『レーエンデ国物語』1〜3

2023年11月29日

この一週間、私は毎晩ある本を読み続けていました。
お酒好きの私が飲みのお誘いも断わり(笑)、
まっすぐ家に帰って読んでいたのは、こちら。

『レーエンデ国物語』
多崎礼(たさき・れい)
講談社

今年の6月に発売された話題のファンタジーです。
本屋さんに行く度、ずっと気になっていました。

だって、おなじみの明文堂書店 富山新庄経堂店には、
ヨリミチトソラのコーナーと同じ並びに
レーエンデ国物語のコーナーがあるんすもの。(笑)

さらに、8月にシリーズ第2巻の『レーエンデ国物語 月と太陽』が、
10月には第3巻『レーエンデ国物語 喝采か沈黙か』が発売され、
なんだか置いていかれている気分になり(笑)、ついに読むことにしました。

ちなみに3冊合わせて約1500ページあります。

と聞くと、うっ、それは読めそうにない。
と思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。

すらすらすいすい読めますので!

頭の中に物語の世界が鮮やかに広がり、
私は本を開くたびに、まるで物語の世界の扉を開いている気分でした。

最初の物語は、貴族の娘・ユリアが誕生したところから始まります。
成長したユリアは英雄の父と共に、
呪われた土地と言われる「レーエンデ」へと旅に出ます。

しかし、ずっと家に縛られてきたユリアにとって、
レーエンデは怖い場所ではなく、憧れの土地なのでした。

そのレーエンデでユリアは初めての経験をたくさんします。
友達ができたり、仕事をしたり、恋をしたり。
色々ありながらも満たされた日々を送るユリアでしたが、
彼女はレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていくことになります。

まさに王道ファンタジーの魅力が詰まった一冊でした。
不思議な森の美しさや妖しさ、そしてユリアの恋など、純度高めの物語でした。



第2巻の『レーエンデ国物語 月と太陽』は、
ユリアの物語から100年以上後のお話です。

少年ルチアーノが、レーエンデの村に住む怪力の少女テッサと出会い仲良くなります。
しかし、テッサは村の危機を救うため、戦場に出ることを決めます。

こちらは、自分たちの世界を守るべく戦う者たちの
様々な「強さ」を感じた物語でした。

第3巻の『レーエンデ国物語 喝采か沈黙か』は、
さらに約100年後、今回は双子の男子のお話です。

双子の兄は、レーエンデの天才劇作家です。
一方の弟は、俳優をしています。

ある日、兄のもとに人気演出家から戯曲の執筆依頼が届きます。
兄が題材に選んだのは「隠されたレーエンデの英雄の物語」です。
その英雄の真実を知るため双子の二人は旅に出るというお話です。

3冊それぞれに面白かったのですが、
私はこの双子の物語が一番好きでした。

物語の中に、生の舞台が挟み込まれることで緊迫感が増し、
ドキドキしながらもページをめくる手が止まりませんでした。

また、人間の弱さを描いているところにも惹かれました。
自信が無かったり、嫉妬してしまったり、そんな自分を嫌だと思ったり、
人間味あふれるところがいいなあと。

3冊ともレーエンデの物語なのですが、その内容は大きく異なります。
もちろん軸の部分では繋がってはいるのですが、
時代も登場人物たちも異なりますので、もはや別の物語としても読めるほどです。
そして、それこそがこの物語の魅力だなあと思いましたし、
次はどんなお話だろうと次回作が待ち遠しくなりました。

実はレーエンデ国物語は、まだ終わっていません。
来年には、第四巻、第五巻も発売予定だそうです。
今から楽しみー。

あなたもこの冬、レーエンデ国に入国してみませんか。

そうそう!
読んでみたい方は、まずは公式サイトをチェックしてみるのもいいかも。
作品の世界観を様々な角度から味わえますよ。

◎レーエンデ国物語の公式サイトは コチラ

yukikotajima 12:53 pm

『クマにあったらどうするか』

2023年11月22日

この秋は、富山をはじめ全国的にクマの出没が急増しています。
それも最近は市街地でもクマが出没していますので、より注意が必要です。

また、今年はクマのニュースに合わせて、
クマ対策が報じられることも多いように感じます。
クマよけの鈴を買ったり、外を歩く際にはラジオを流したりしている方もいるのでは。

できればクマに遭遇しないのが一番だと思うのですが、
もしクマにあってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。

そもそもあなたは「クマ」についてどれくらい知っていますか。

相手のことを知らないと怖さも増すものです。
あなたも一度、クマについて学んでみませんか。
今日ご紹介する本は、クマについて書かれた本です。

『クマにあったらどうするか
─アイヌ民族最後の狩人 姉崎等』

語り手:姉崎等(あねざき・ひとし)
聞き書き:片山龍峯 (かたやま・たつみね)
ちくま文庫

この本は、2002年に刊行され、2014年に文庫化されたのですが、
クマの出没が相次いでいる今年、再び売れているのだとか。

本の装丁を見ると、柔らかなタッチのクマの親子のイラストが描かれているので、
クマが主人公の絵本かしら?と思ってしまいそうになりますが、そうではありません。

本の帯には、アイヌ最強のクマ撃ちが残した最高のクマの教科書とあります。
(ちなみに、クマはヒグマのことです)

そのクマ撃ちというのが本のタイトルにもなっている
アイヌ民族最後のクマ撃ち猟師の姉崎等さんです。
姉崎さんは、「クマの心がわからなければクマは獲れない」と言い、
クマを師匠と呼び、実際にクマを追って山の歩き方やクマの行動を学んだそうです。

そして、人間としての視点ではなく、
クマならきっとこう考えるはずだとクマの視点になって考えます。
つまり、クマになりきっているのです。

クマの視点になると、クマが人間をよく観察していて、知恵があることがわかります。

例えば、クマは人間をよく観察していて、
自分たちの姿を見せないようにしていたり、
雪山で滑り台を作って遊んだりすることもあるそうです。

他にもクマが好きなものや、逆に嫌いなものなど、
この本を通して、クマの本当の姿を知ることができます。

ちなみに、クマが嫌いなものの一つは、「ペットボトルの音」だそうです。
空のペットボトルを押して出る音をクマは嫌うそうですよ。

また、一番知りたい、クマにあったときの対処法も載っています。それもたくさん。
詳しくは本を読んでお確かめ頂きたいのですが、
一番やってはいけないことだけ紹介しておきましょう。

それは「背中を見せて走って逃げること」だそうです。

クマは至近距離で人と出くわすと、
クマのほうが逆に襲われたと思って襲ってくるのだとか。

そもそも人間に姿を見せないようにしているはずのクマが
なぜ姿を見せるようになってしまったのでしょうか。

クマの気持ちになっている姉崎さんの話を聞いていると、
自分自身もクマ目線になってくるもので、
クマとして人間を見てみると、
人間は本当に勝手で、そして怖い存在に思えてきます。

とは言え、人としてクマを見ると、やはり怖いし、遭遇したくはありません。
でも、この本を読んだ後は、クマの印象が変わりました。

相手を知らないと、それだけで怖さや不安が増してしまうものです。
本の帯に「知ったかぶりが1番怖い」とあるのですが、
本当にその通りだなと思いました。

あなたもクマを知り尽くした姉崎さんの話に耳を傾けてみませんか。

ちなみに、この本は姉崎さんの語りがメインですが、
聞き手である映像作家の片山さんのおかげで、大変読みやすくなっています。
まるで良質なドキュメンタリーを見ているかのような一冊でもありました。

なお、この本はクマを知るにはいいと思いますが、
クマ対策に関しては、この本だけでなく、
必ず最新の情報も確認するようにしてください。

yukikotajima 11:27 am

『時々、死んだふり』

2023年11月15日

若い時は、年上の方たちの年齢を意識することはあまり無かったのですが、
自分が年を重ねていくにつれ、
人生の先輩方の年齢や生き方が気になるようになってきました。

特に人生100年時代と言われる今は、
人生の後半をどう生きていくか、気になっている方も多いのでは。

今日ご紹介するのは、87歳の今も現役でご活躍の美術家、
横尾忠則(よこお・ただのり)さんのエッセイです。

『時々、死んだふり』
ポプラ新書

横尾さんは、国際的に高い評価を得ている美術家で、
先日、今年度の文化功労者に選ばれました。おめでとうございます!

この本には、横尾さんの人生や創作についての思いが綴られています。

タイトルの『時々、死んだふり』からも横尾さんらしさが感じられますが、
なんと去年の夏、本当に死にそうだったそうです。ふり、ではなく。

急性心筋梗塞になり、2週間、絵筆を持てない日々が続いたのだとか。
でも、病気をきっかけに、横尾さんと絵の関係が少し変わって、
ご自身が望んでいた絵が描けそうだと思うようになったそうです。

それがどんな絵なのかは、ぜひ本を読んで頂きたいのですが、
病気や老いによって、これまでできていたことができなくなると、
自分はもうだめだと落ち込んでしまいそうじゃないですか。
でも、横尾さんは、それも「新たな画風」とポジティブに考えます。

実際、ハンディキャップによって新たな作品が生まれた画家たちもいて、
例えば、睡蓮の絵で有名なクロード・モネは、
白内障による視力のハンディキャップが無ければ、
革新的な作品は生まれなかったかもしれないと、横尾さんは言います。

そして、横尾さん自身も「新たな画風」を手に入れたことを
大いに喜ぶべきことと捉えています。

横尾さんは、人生も絵も軽やかで、単純でなければならないと言います。
また、社会の流行や好みと言った「外部」を意識してしまうと
本当に創造性のある作品は作れないとも。
横尾さんは、無心で遊ぶ子どものように、無心で絵を描きたいと思っているそうです。

そして、そのようにして生まれた横尾さんの新作を見ることができます。

現在、東京国立博物館では、
「横尾忠則 寒山百得(かんざんひゃくとく)展」を開催中です。

実は私も先日、東京に行っていたので見たかったのですが、
ちょうどその日は定休日でした。残念!
(でも、近くの上野の森美術館で開催中の『モネ 連作の情景』は見てきましたが)

もし12月3日までの間に東京に行くことがあれば、皆さんもぜひ行ってみてください。
ただし月曜は定休日ですので、ご注意を。

この個展では、寒山拾得(かんざんじっとく)の絵が102点展示されています。
これは、中国の唐の時代にいた寒山と拾得という風変わりな二人の僧のことで、
何ものにも縛られない、これ以上の自由はないという方たちだったそうですよ。

ちなみに、そんな寒山拾得の作品を100点以上描いたことから
個展のタイトルを寒山百得にしたのだとか。

つまり、もともと自由な二人の僧を、横尾さんが自由に描いたわけですよ。
自由×自由です。ああ、やはり見たかったなー。

さて、今日は横尾忠則さんの『時々、死んだふり』というエッセイをご紹介しましたが、
早くも新たなエッセイ『死後を生きる生き方』(集英社)を出されています。
こちらは私は未読ですが、気になる方はぜひ2冊あわせてお読みになってみては。
横尾さんによると、この2作品は「2部作という感じかな」なんだとか。

横尾さんのエッセイというと、
アートに詳しくないし、読んでもわからないかも、
と思う方もいるかもしれませんが、
全くそんなことはありません。
それこそ軽やかでわかりやすい内容ですし、
私は読んだ後にポジティブな気持ちになれました。

私も年を重ねることで生じる自分の変化を楽しんでいきたいし、
そのために、まずは今を一生懸命生きていこうと。

yukikotajima 12:00 pm

『熟睡者』

2023年11月8日

今日はクイズから始めます。

集中力、記憶力、アイデア力が大幅にアップし、
脳がスッキリし、ストレスにも強くなり、
体重も減って、がん、糖尿病予防にもなるものといったら何でしょう?

そんなのあるわけない!と思いますよね。
あるいは、あったとしても、実践するのが難しかったり、
お金がかかったりしそうだなと思った方もいるかもしれません。

でも、お金も手間もかかりません。
誰でも毎日できること、というか、すでにしていることです。
しかも無料です。

正解は…

「睡眠」です。

寝るのは誰もが毎日していることだと思いますが、
大事なのは、睡眠の「質」だそうです。

あなたは、毎晩ぐっすり眠れているでしょうか。

中には、なかなか寝付けなかったり、
たくさん寝ているのにスッキリしなかったり、
夜中に何度も目が覚めてしまったりして、
ぐっすりできていない方もいるのでは。

そんな方は、ぜひこの本を読んでみてください。

『熟睡者(じゅくすいしゃ)』
クリスティアン・ベネディクト、ミンナ・トゥーンベリエル
鈴木ファストアーベント理恵(訳)
サンマーク出版

睡眠研究者による最新の睡眠に関するスウェーデンの本で、
今、世界的に話題になっているそうです。

先日、フルマラソンを終えた身としては、
一刻も早く体の疲労を回復させたいと思っていたところに
目に飛び込んできたのが、この本でした。

富山マラソンと言えば、今年も応援していただきありがとうございました。
暑くて暑くて最後はバテバテでしたが、
皆さんの声援のおかげで最後まで走り切ることができました。
目標の5時間切りはできませんでしたが、5h時間12分で完走できました。
本当にありがとうございました。

さて、この本の帯を見ると「脳から足先まで完全爽快!」とありまして、
まさに足先まで爽快気分を味わいたい!と思い、読んでみました。

いやあ、大変勉強になりました。

睡眠は、肉体の疲労が回復するだけではなかったのですね。
質のいい睡眠にはたくさんのメリットがありました。

ちなみに、この本は、2020年に刊行された
『Sleep,Sleep,Sleep』を加筆・再編集したものだそうで、
今回、新たに著者のクリスティアン・ベネディクトさんの
日本の皆さんへのメッセージも追加されています。

日本人は労働時間が長く、睡眠時間が短いのが特徴なんだとか。
休息を大事にするフィンランドと比べると1時間も短いそうです。

慢性的な睡眠不足がもたらす影響は、
仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、
様々な病気のリスクを大きくし、
経済全体にも悪影響を与えてしまうそうです。

それくらい、睡眠は大事なんですって。

この本には、睡眠に関する最新情報のほか、
睡眠不足が私たちの体にどんな影響を与えるのかや、
ぐっすり熟睡するための実用的なヒントやテクニックなどが、
分かりやすく紹介されています。

何より具体例が満載なので、イメージしやすいのです。

歯を磨いて、ベッドにもぐりこんでから、うとうとし始め、そして夢を見て、
という流れが、とてもリアルに描かれているので、
まるで自分自身の出来事として読めます。

また、睡眠というと、「睡眠時間」ばかりが注目されがちですが、
人によって異なるそうです。

自分にとって必要な睡眠時間は簡単にチェックすることができます。
それは、目覚ましをセットせずに何日か心ゆくまで眠ってみることだそうです。
そうすることで、身体が必要とする睡眠時間がわかるそうですよ。

自分の睡眠時間がわかった後は、睡眠の質をあげていくことが大事になりますが、
この本にはその具体的なアドバイスがたくさん載っています。

例えば、これはよく聞くのでは。

「太陽の光を浴びる」できれば朝に。

太陽の光が体を目覚めさせるそうです。
でも、そんな時間はとれないという方は、窓際に座るのがいいのだとか。

つまり、睡眠は夜だけではなく
「日中をどう過ごすか」ということも大事なんですって。

他に私が印象に残ったのは「睡眠の凄い効果」です。

受験生の皆さんの中には、遅くまで勉強していて
睡眠不足という方もいるかもしれませんが、
効率的かつ迅速に学びたいなら、眠った方がいいそうですよ。

あとは、睡眠によって肉体の疲労が回復するだけでなく、メンタルも整うのだとか。

これは、私も実感しています。
以前は夜寝る前によく考え事をしていたのですが、
ここ最近は、嫌なことがあった時こそ、
運動して体を程よく疲れさせてから、ぐっすり寝るようにしています。
そうすると、朝起きた時、「まあ、いっか」という気持ちになっているのです。

実際、寝ている間にストレスが処理されることで、朝には心が安定しているのだとか。

睡眠すごい!

でも、どんなに寝たくても「眠れない」という方もいると思います。
そんな方へのアドバイスも載っています。

例えば、ホテルなどで寝つきが悪くなる場合は、
お気に入りの枕カバーを持っていくだけでも効果があるそうですよ。

こんな感じで、どれも簡単にできるものばかりです。
今日ご紹介したのは、ほんの一例ですので、
もっと詳しく知りたいという方は、ぜひ本を手に取ってみてくださいね。

そして、睡眠の質を上げて、心身共に健康に生活していきましょう!

とりあえず私は、次の休みの日に目覚ましをかけずに寝て、
自分の睡眠時間をチェックしてみようと思います。
あと、15時以降のコーヒーはやめます。
ヨリミチトソラの時間は、ノンカフェインの飲み物に変えることにします。

yukikotajima 11:36 am

『続 窓ぎわのトットちゃん』

2023年11月1日

あなたが子どもの頃に読んだ本で印象に残っているのは、どの本でしょうか。

私は何冊かありますが、そのうちの一冊は『窓ぎわのトットちゃん』です。

女優の黒柳徹子さんがご自身の小学生時代を描いた自伝的物語です。
いわさきちひろさんによる女の子の絵の表紙でおなじみですね。
国内では800万部、全世界では2500万部を超える大ベストセラーとなっています。
そんな世界中で愛されている作品の続編が先日、発売されました。

『続 窓ぎわのトットちゃん』
黒柳徹子
講談社

なんと42年ぶりの続編です。

そして、今日は11月の第1水曜日ですので、こちらは、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。

先にこの本を読んだ野口さんから「面白かったの一言につきる」と言われ、
私も早く続編を読みたい!と思いながらも、
まずは久しぶりに『窓ぎわのトットちゃん』から読んでみました。

再読は、まるで子どもの頃のアルバムをめくっている感覚でした。
私はトットちゃんとは全然違う子どもだったのに、
この作品が過去の思い出の一つになっていました。
きっと私と同じように感じる方も多いかもしれません。

子どもの頃は、トットちゃんのマイペースっぷりに
「ここまで自分の気持ちに正直になっていいのか」と思ったものでしたが、
再読して感じたのは、トットちゃんが心のままにいられたのは、
トモエ学園の小林宗作(そうさく)校長先生のおかげだったのねということです。
久しぶりに読んだら、小林先生の素晴らしさに心を打たれました。

小学1年生で小学校を退学となったトットちゃんでしたが、
転校したトモエ学園では、のびのびとした日々を送ります。
『窓ぎわのトットちゃん』には、そんなトモエ学園での日々が描かれています。

なお、12月8日には、アニメーションとして初めて映画化されるようですよ。
映画も楽しみ!

◎映画の公式サイトは コチラ

さて、『窓ぎわのトットちゃん』は、
東京大空襲の数日後に青森に疎開するところで終わっていますが、
続編は、そこから物語が始まります。
つまり戦争の話が中心になっています。

続編を書くきっかけの一つが、
黒柳さんが体験した戦争のことを書き残しておきたいと考えたからだそうです。

実際、続編には戦時中の過酷な日々が描かれています。
でも、トットちゃん節はそのままですので、どこかユーモラスでもあります。
また、ただ嘆くだけでないたくましさも感じ、
私もこんな風に生きていきたいと思いました。

大人になってからの日々は、思わず声を出して笑ってしまうほどの面白さです。
例えば、NHK専属のテレビ女優第1号となったトットちゃんは、
ラジオドラマで、その他大勢の声をすることになるのですが、
どうしてもトットちゃんだけ目立ってしまうのです。

決してふざけているのではなく、
真面目に考えた結果、そうなってしまっただけでなのですが、
いかにもトットちゃんらしいエピソードだなと思いました。

ちなみに、これは、以前NHKで放送されていたドラマ
「トットてれび」にもあったシーンだったので、
当時、トットちゃんを演じていた満島ひかりさんの顔が浮かんでしまいました。

大人になっても、また、どんなときでも「トットちゃん」らしさは変わらず、
そんなトットちゃんに、笑いながらも愛おしくて泣けてきて、
続編も最後のページまで楽しませていただきました。
寅さんこと、渥美清さんんとのエピソードも良かったです。

決して難しい言葉は使わず、
まるでトットちゃんが喋っているかのような易しい文章ですので、
大人の皆さんだけでなく、お子さんたちもぜひ読んでみてください。

最後に、明文堂書店 富山新庄経堂店 野口さんのコメントをご紹介します。

「子供のころ、従姉妹と二人で『窓ぎわのトットちゃん』を買ってもらいました。
『きみは、本当は、いい子なんだよ』という校長先生の言葉が、
大人になった今でも、私を支えてくれています。
続編が出版されると知って、感激しました!
続編は、どのエピソードも鮮明、かつ生き生きと描かれていて、胸にジーンときます。
永遠不滅のトットちゃん、是非お読みください!」


今日ご紹介した『続 窓ぎわのトットちゃん』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひ大ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』とあわせて読んでみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 10:53 am

『化け者手本』

2023年10月25日

今日ご紹介する本は喋る本です。
文字を目で追えば、声が聞こえてくるのです。
それも江戸時代の江戸の言葉で。

でも、オーディオブックではありません。
普通の紙の本です。

『化け者手本(ばけものてほん)』
蝉谷めぐ実(せみたに・めぐみ)
株式会社KADOKAWA

蝉谷さんと言いますと、以前ラジオで『おんなの女房』をご紹介しました。

◎私の紹介は コチラ

こちらは、江戸時代の恋物語で、主人公は歌舞伎役者の女房です。
吉川英治文学新人賞受賞など2つの文学賞を受賞した話題作です。
私も好きな作品で、去年、読んで良かった本の一冊に選んでいます。

◎詳しくは コチラ

さて、今日ご紹介する『化け者手本』は、
デビュー作『化け者心中』に続く「化け者」シリーズです。
なお、デビュー作は、文学賞三冠を達成した超話題作で、この夏文庫化されました。

そういえば私、デビュー作を読んでいないではないかと思い、
今回新刊と合わせて読んでみました。

化け者シリーズは、江戸時代の歌舞伎が舞台です。

まず『化け者心中』は、役者たちが芝居の前読みに集まった時に、
彼らの輪の真ん中に生首が転がり落ちます。
しかし、役者の数は変わらず、
鬼が誰かを喰い殺して成り代わっていることがわかります。
そこで、とある二人が鬼探しに乗り出すというお話です。

その二人というのが、心優しい鳥商いの藤九郎(ふじくろう)と、
女形として活躍していた元役者の魚之助(ととのすけ)です。

新作の『化け者手本』は、二人のもとに
ある事件の話が持ち込まれるところから始まります。
芝居が終わった後、客席に両耳から棒が突き出た死体が転がっていたそうなのです。
二人は、前回同様バディを組んで真相解明に乗り出します。

とある縁から二人は一緒に過ごすことが増えるのですが、
歌舞伎の世界など知らない藤九郎と、元女形の魚之助は、たびたび衝突します。
まあ実際は、わがままな元女形の魚之助に、藤九郎が振り回されている感じなのですが。
藤九郎はいい奴なんです。
でも、良かれと思ってやったことが裏目に出るなんてことはしょっちゅうで、
本を読みながら何度「藤九郎ドンマイ!」と声をかけたことか。(笑)

そんな二人が、今回も「ばけもの」暴きに挑んでいきます。
果たして、ばけものとは?

ちなみに、タイトルの「化け者」は「化け物」ではありません。
動物の「物」ではなく、人気者などの「者」です。
例えば、一心に何かしらに打ち込む人間が、度を越えると化け者になるそうですよ。

タイトルの『化け者手本』とはどいうことなのか。
ぜひ最後まで語りに耳を傾けてみてください。

そう、蝉谷さんの作品は読むというより、聞く感じなのですよ。
それもまるで落語を聞いているかのよう、と思ったら、
実際、蝉谷さんは江戸落語を聞いて、その節回しを学ばれたのだとか。
なるほど!道理で息継ぎまで心地いいはずだと納得。
またオノマトペも多用しているので、よりリズミカルな文章で、
思わず声を出して真似をしたくなります。
例えば、ずずずうと手元の蕎麦をすする、など。

今回も最後の一行まで大変気持ちのいい語りでございました。

ですから、この作品は、落語がお好きな方も楽しめるかと。
他にも歌舞伎、忠臣蔵、時代小説、ミステリ好きの方、
それから恋をしている方や推し活中の方もぜひ。

推し活と言えば、江戸時代もすごかったようですよ。
贔屓の役者の帯の結い方を真似したり、役者絵を集めたり。
令和の今と変わりません。

今の時代の感覚のまま江戸の世界に入り込めます。
あなたも江戸の歌舞伎の世界をちょいとのぞいてみませんか。

yukikotajima 12:20 pm

『リラの花咲くけものみち』

2023年10月18日

私、しばらく北海道におりました。
大自然の中では、季節の植物がより印象に残りました。

と言いたくなるほど、作品の世界に入り込んだ小説を今日はご紹介します。

『リラの花咲くけものみち』
藤岡陽⼦(ふじおか・ようこ)
光文社

主人公は、北海道の大学で獣医師を目指す聡⾥(さとり)です。

幼い頃に⺟を亡くした彼女は、
⽗の再婚相手とうまくいかず不登校になってしまいます。
その間、愛⽝だけが⼼の⽀えとなっていました。

その後、祖⺟に引き取られ、
様々なペットと暮らす中で獣医師を⽬指すようになります。

そして、無事、北海道の大学に進学し、寮での暮らしが始まるのですが、
長い間引きこもっていた聡⾥は、人とうまくコミュニケーションが取れず、
寮のルームメイトからも嫌われてしまいます。

こんな感じで読み始めてしばらくは不幸な話が続きますが、
皆さん、読むのをやめないでください。
だって、この先がいいんです!

私は、読みながら何度泣いたことか。
泣きすぎて読み終わった時にはティッシュの山ができていたほどです。

聡⾥は大学生活を通して、様々なものと向き合っていきます。
友人、家族、動物、そして自分自身とも。

そして、北海道の自然や生き物、周りの人たちから
たくさんのことを教わりながら成長していきます。
彼女がどのように成長していくのかは、
本のページをめくりながら、ご自身でお確かめください。

それから、この本は、様々な学びのある一冊でもありました。

まず、聡⾥が獣医師を目指しているということで
獣医師の仕事が多岐にわたることや、
大学でどんなことを学ぶのか知ることができました。
また、動物に関しての様々な問題も。

私は動物を飼っていないので、ペット事情は詳しくは無いのですが、
もし今後自分がペットを飼うことになったら、
その時には、この本を改めて読もうと思いました。

また、動物だけでなく、植物についても学べました。
実は、この本には季節の植物がたくさん出てきます。
本のタイトルに「リラ」が入っていますが、
第1章から第8章までのタイトルにも
「ナナカマド」「クリスマスローズ」「シラカバ」などの花の名前がついています。
ちなみに、リラはライラックのことです。

北海道で暮らすようになった聡⾥は、
動物だけでなく植物にも興味を持つようになり、
美しい風景の写真を撮っては、離れて暮らす祖母に送っています。

本を読みながら、私が北海道の大自然の中にいる気分になったのも、
これでおわかりいただけましたか。

この本は、秋の夜長に読むのもいいけれど、
晴れた日の昼間に、公園のベンチや自然を感じるカフェ、家の庭で読むのもいいかも。

最後に印象に残ったセリフをご紹介します。
還暦を迎えたある獣医師の女性が、聡⾥に言ったものです。

時間をかけて力を尽くして築いたものだけが、最後に残る。
仕事もそうだけど、人との関係にしても同じことが言える。
だからいろんなことを面倒がらずに、きちんと頑張っておきなさい。

この言葉を目にしたとき、ドキリとして思わず私も「はい」と返事をしてしまいました。

あなたはどうですか。面倒なことから逃げていませんか。
読んだ後はきっと、ご自身の問題と向き合おうという気持ちになれると思いますよ。

とてもいい本でした。

yukikotajima 11:29 am

『リカバリー・カバヒコ』

2023年10月11日

神社やお寺に行くと、自分の治したいところをなでると良くなると言われる
「なで地蔵」などの「なで〇〇」を時々見かけますが、
あなたはいつもどこをなでますか。

私はたいてい、肩、目、頭ですかね。
肩コリ、眼精疲労をどうにかしてほしいのと、もっと頭が良くなりたいので、
欲張ってあっちもこっちもと触っています。

さて、今日ご紹介する小説は、お地蔵様ではなく
公園の古びたカバの遊具をなでる人々のお話です。

『リカバリー・カバヒコ』
青山美智子
光文社

青山さんと言いますと、作品が3年連続で本屋大賞にノミネートされるなど、
本を愛する書店員の皆さんにもファンが多い作家さんです。

私もファンの一人で、ノミネート作の
『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』『月の立つ林で』
は、いずれもラジオでご紹介しています。

(↑本のタイトルをクリックすると、私の本紹介が読めます)

新作の『リカバリー・カバヒコ』も大変良かったので、
この作品も来年の本屋大賞にノミネートされる予感がします。

今作は、とあるマンションの住人たちによる連作短編集です。

まずは、中学時代は成績が良かったのに
高校に入ってから授業にすらついていけなくなった男子高校生の物語から始まり、
その後、ママ友グループの誘いを断りたいのにできないママや、
ストレスで体調を崩して仕事を休んでいる女性、
駅伝に出たくなくて足をねんざしたと嘘をついた小学生などの物語が続いていきます。

それぞれに悩みを抱えた彼らは、マンション近くの公園に行き、
そこで古びたカバの遊具を見つけます。
そして、そのカバを触りながら悩みを打ち明けます。

実はこのカバの遊具には、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復する
という都市伝説があるのです。

そのため「リカバリー・カバヒコ」という名前がついています。

なんて紹介すると、カバがピカーッと光って、
悪いところを治してくれて、めでたしめでたし!
というようなお話を想像される方もいるかもしれませんが、
そういったファンタジーではありません。

だって、このカバヒコは何も変わらないからです。
誰の前でも塗装が剥げたままの古びたアニマルライドのままです。

でも、カバヒコに出会った人たちには、その後、変化が生じます。
どう変わっていくのかは、ぜひ本を読んでお確かめください。

今回もいい物語でした。
読み終えた後、本の表紙に描かれたカバヒコを私も思わずなでてしまいました。

私は青山さんの作品を読む度に、心が晴れ晴れとします。
なんかモヤモヤしているのだけど、
うまく自分の気持ちを表せないことってありませんか?
そんな時に青山さんの作品を読むと、モヤモヤが取り除かれて、
「私はこう思っていたのか」と自分の気持ちに気付けるのです。

とは言え、あくまでも物語ですから、私のことが書かれているわけではありません。
でも、登場人物たちの悩みは、誰もが感じていることなのです。
だから、よりダイレクトに心に響いて、
自分の物語のように感じてしまうのかもしれません。

今回も勝手ながら私自身の物語として読ませていただきました。
特に、ストレスで仕事を休んでいる女性の話は、読みながら涙があふれてきました。

ウェディングプランナーの彼女は、仕事が好きで一生懸命仕事をしているものの、
担当した新郎が結婚式当日、ずっとむすっとしていて、
その理由がわからず、ずっと不安を感じています。
私も彼女の心の中が痛いほどわかって、他人事とは思えませんでした。
でも、彼女もカバヒコに出会ってから、ある大事なことに気付きます。

あまりにも良かったので、後日あらためてそのお話を読んだら、
同じところでまた泣けました。しかも一回目と同じ熱量で。

最近、なんかうまくいかないなあという方、
ぜひ『リカバリー・カバヒコ』を読んでみてください。

読んだ後は、きっとあなた自身もリカバリーされているはず。

yukikotajima 11:11 am

『未知生さん』

2023年10月4日

突然ですが、私・田島悠紀子って、どんな印象でしょう?

・しっかりしている
・おっちょこちょい
・落ち着いている
・落ち着きがない
・こわい
・優しい

これらは今までに私が人から言われた言葉です。
人によって私の印象はまるで異なります。

きっと「私が会った人の数だけいろんな田島が存在する」のだと思います。
これは、今日紹介する本の登場人物の言葉です。
今日の本はこちら。

『未知生(みちお)さん』
片島麦子(かたしま・むぎこ)
双葉社


今日は10月の第1水曜日ですので、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。

先日、野口さんから「いい本があるのよ!」と熱くこの本を勧められました。

タイトルの『未知生(みちお)さん』は、人の名前です。
彼は、息子が事故に遭いそうなのをかばって、
41歳という若さで突然この世を去ってしまいます。

『未知生さん』は、彼の葬儀に参列した
高校時代の同級生や元カノ、会社員時代の同期、上司、そして家族など
生前、彼に関わりのあった人たちの語りで構成された連作短編集です。

それぞれが未知生にどんな印象を抱いていたのか、
どんなことが想い出に残っているのか、振り返りながら、
同時に自分自身についても見つめ直していきます。

例えば、高校時代の同級生は、
お葬式で喪主である奥さんが繰り返し「彼はいい人だった」と言っていたことや、
息子をかばって亡くなったことに対して、
なんか未知生っぽくないんだよなあと思います。

会社員時代の同期は、未知生のことが苦手というか嫌いでした。
というのも、マイペースな彼に調子を狂わされてばかりだったからです。
例えば、猫を飼っているから泊りがけの出張はできないという未知生に対し、
それはおかしいだろうと思っています。

一方、上司の女性は、未知生に対して別の印象を抱きます。
彼女の目を通すと、未知生はちょっと素敵な男性に見えます。

でも、元カノの目を通すとヒドイ男に変わります。
だって、彼女に対して「化粧をしているほうがかわいいね」と言っちゃうのですよ。

こんな感じで、未知生に生前関わりのあった人たちが、
それぞれに未知生との思い出を振り返っていきます。
そして、彼らの話から未知生という人間が浮かび上がってきます。

ちなみに、みんなが共通して抱いていた未知生の印象は、
協調性がなくてマイペースだけど、裏表も悪気もない、人畜無害な、いい人です。

このつかみどころが無いところを嫌だなと感じる人もいれば、
それが彼の良さなのかもしれないと思う人もいます。

いずれにしても彼らは、未知生との思い出を振り返ることで
自分自身と向き合っていくことにもなります。

『未知夫さん』は、フィクションだけど、リアルな感触のあるお話でした。

さて、あなた自身はこの本を読むことで、
未知生にどんな印象を抱き、何を感じるでしょうか。
ぜひ本のページをめくって確かめてみてください。

最後に、明文堂書店 富山新庄経堂店 野口さんのコメントをご紹介します。

「とにかく未知生さん、とてもいいんです!
いつもぼ〜っとしているようで、放つ言葉が、何気に真実を突いていたり、
さらに衝撃の展開もあり、読み終えるころには
未知生さん、サイコーの一言でした」

そうそう、衝撃の展開には私もびっくりしました。
そこも含めて、とても良いお話でした。

今日ご紹介した『未知生さん』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてください。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 12:09 pm

『正直観光案内』

2023年9月27日

もうすぐ10月です。
ようやく過ごしやすくなりましたので、
そろそろ秋のお出かけ計画を立てようかなと
思っている方もいらっしゃるでしょうか。

国内を旅するなら、どこに行ってみたいですか。
また、旅をする際、あなたは何を参考にしますか。

旅のガイドブックや旅情報が載ったサイト、口コミ、友人知人の話のほか、
最近はSNSで旅の情報をチェックする方も多いかもしれませんね。

そして、なるべく人気のスポットや、口コミ評価の高い場所に行きたい、
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
そうではなく、独自の視点で旅を楽しむ人のスタイルを参考にするのも面白いのでは。

今日ご紹介する本はこちら。

『ニッポン47都道府県 正直観光案内』
宮田珠己(みやた・たまき)
幻冬舎文庫

この本に載っている著者プロフィールによると、
宮田さんは、旅と石ころと変な生き物を愛し、
いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追求している作家兼エッセイストです。

これまで旅やレジャーに関するエッセイを中心に、
ユルくて、ちょっと変わった本を色々と書いていらっしゃいます。

『ニッポン47都道府県 正直観光案内』は、
全国各地を旅してきた宮田さんによる観光案内です。
タイトルの通り、宮田さんが正直にいいと思ったところが紹介されています。

宮田さんによると、観光とは、すごいもの、奇妙なものを見ることだと言います。

実際、宮田さんは、日本各地の奇妙なものをよく見つけています。
ですから、この本はよくある観光ガイドとはまるで異なります。
誰もがその県に行ったらまずはそこに行くよね!
という有名観光スポットも外されています。

例えば、おとなり石川県と言ったら「忍者寺」だそうです。
兼六園でも金沢城でも二十一世紀美術館でもなく。
忍者寺さえ見れば、あとは各々行きたいところに行けばいいそうです。(笑)

また、都道府県をひとことで言い表しているのですが、
奈良は「カサカサしている」
高知は「知らんぜよ」
和歌山にいたっては「遠い」です。

和歌山が「遠い」というのはわかる!
私も日本国内は色々なところに出かけましたが、
和歌山には行ったことがありません。
まさに感覚として「遠い」のです。

そして、富山はと言うと、「スペクタクル」です。
宮田さんは、富山は観光についていえば、
日本屈指の実力を誇るとべた褒めです。(笑)

そんな宮田さんの富山でのオススメスポットは…
これはぜひ本を読んでお確かめください。

ちなみに、私は県内の観光スポットには、だいぶ行っていますが、
ここには行っていませんでした。
行こうと思ったことはあるのですが、タイミングが合わなくて。
でも、いつか行ってみたい。

この本を読んでいると、宮田さんの好みや人柄も見えてきます。
宮田さんは、興味のあることにはとことん熱いのですが、
そうじゃない場合は、どんなに有名な場所であろうが興味を抱きません。
この本は、そんな正直すぎる宮田さんによる観光案内です。

宮田さんの目を通して見る日本は、
変なものだらけの、だいぶ楽しいところに見えました。
行ってみたいところに付箋を貼っていったら付箋だらけになってしまい、
いったい全て回ろうと思ったら何年かかるんだ、
という状態になりました。(笑)

でも、この本を読んだだけでも世界が広がったように思います。

ちなみに、クセ強めの宮田さんセレクトの旅案内はかなりマニアックなのでは?
と思う方もいるかもれませんが、この本のスタンスは、
「マニアでなくても、専門知識がなくても楽しめる観光スポットのなかから、
正直にいいと思う場所だけを厳選し、都道府県別に紹介する」ことです。

ですから気軽な気持ちで読んでみてくださいね!

この本を読んだ後に旅計画を立てたら、
きっといつもとは違った旅のプランが出来上がるはず。

ちなみに、宮田さんは他にもたくさんのユル〜いエッセイを出しています。
また、小説も大変面白かったです。

小説『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』は、
亡き父が書いたデタラメ旅行記に出てくる王国を探すよう、
王様に命じられた男性の物語です。
そもそもデタラメな内容なのに、どうやってその王国を探すのよ?
と思いながら、主人公の男性は旅に出るのですが、
東洋奇譚をもとに描かれたこの旅物語は、
他では決して味わえないかなり楽しい旅でした。

さて、そんな宮田さんの講演会が、
今週末の土曜日、9月30日14時から富山市立図書館で行われます。

宮田珠己さん講演会「本の迷路をずんずん歩く」です。

当日は、宮田さんおすすめの本をテーマ別にご紹介いただきます。
そして、お話の聞き手を私、田島がつとめます。

宮田さんと一緒に、本の迷路をずんずん歩いていきます。(笑)

宮田さんが選ぶ本は、きっとあなたの世界を広げてくれるはずです。
私もとても楽しみです!

この講演会は、無料で高校生以上の方ならどなたでもご参加いただけますが、
先着順ですのでお早めに富山市立図書館本館2階ロビーにお越しください。
開場は13時30分です。

◎詳しくは コチラ

なお、明文堂書店 富山新庄経堂店では、
ゆきれぽコーナーの横に、宮田さんの本がずらっと並んでいますので、
ぜひ気になった本を読んでみてください。

それでは、土曜日、富山市立図書館でお待ちしています!

yukikotajima 11:29 am

『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』

2023年9月20日

今日は、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でおなじみの
ブレイディみかこさんの小説をご紹介します。

『ぼくイエ』は、イギリスに住むブレイディさんの
当時中学生の息子さんについて書かれた本で、
いじめ、喧嘩、差別のある中学に入学した息子さんが、
それぞれの問題について真剣に向き合い
お母さんと一緒に何が正しいのか悩み、考えていくというノンフィクションです。

私ももちろん読んでいます。
そして、この本をきっかけにブレイディさんのファンになり、
これまでも様々な本を読みました。

ブレイディさんの本は、ただ受け身で文字を追っていくだけではなく、
自分の頭で考えながら読んでいくスタイルなので、毎回たくさんの刺激を受けます。
ひとことで言うなら、読んだ人ををアップデートさせてくれる感じです。
今回の本も読んだらきっとアップデートできるはず!

『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』
ブレイディみかこ
筑摩書房

今回は、ノンフィクションではなく、
2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件がモデルの小説です。

この事件は、ロンドン・オリンピックの2年後、
町の再開発のためにホームレス・シェルターを追い出されたシングルマザーたちが、
空き家のまま放置されていた公営住宅を占拠して、
自分たちでシェルターを作って生活を始めたというものです。

再開発でお洒落で小ぎれいな町に生まれ変わるのはいいことのように思いますが、
住宅の価格や家賃が高騰することで、もともと住んでいた人たちが
住めなくなってしまうという問題も起きてしまいます。

この「都市の高級化」を「ジェントリフィケーション」と言うのですが、
シングルマザーたちは、この問題に向き合っていくことになります。

主人公は、10代で子どもを産んでホームレスになり、
シェルターに住むようになった二十歳の母親ジェイドです。
理不尽な理由で住宅の退去を迫られた彼女は、
このままでは住む場所が無くなってしまう!と
仲間のシングルマザーたちと一緒に立ち上がります。

「あたしたちが求めているのは少しばかりのリスペクトなのです」と。

理不尽なことに対して、あきらめたり人のせいにしたりするのは簡単です。
でも、それでは状況は変わりません。
ジェイドたちシングルマザーは、誰も頼れないのなら、
自分たち自身でやってやる!と行動をおこします。

もちろん、応援してくれる人ばかりではないし、酷い仕打ちにあうことだってあります。

それでも分かってくれる人もいるのです。
例えば、ゴシック・パンク風の初老の女性は、見た目は怖いけど、
彼女たちをがっちり支える、頼れる存在ですし。

また、公営住宅を占拠したなんていうと過激なイメージがありますが、
彼女たちの運動は人々の心を動かし、
占拠地では様々な助け合いがうまれるほどに平和的だったのです。

彼女たちがどのように運動をおこし、人々の心をどうつかんでいったのかは、
ぜひこの本を読んでお確かめください。

ところで、真面目過ぎる私は、ジェイドたちの運動はすごいと思うのだけど、
実際は不法占拠なわけで、大丈夫なのかな…と思いながら読んでいたのですが、
この物語には、同じように感じている日本人女性も出てきます。
シナコというロンドン在住の新聞記者です。

このシナコの視点が入ることで、どこか遠い場所の話ではないと気付かされ、
物語の世界がぐっと近づきます。

そして、このシナコもジェイドたちと関わりを持つことで、
自分自身の考えが変わっていきます。
この変化はまさに私自身の変化のようでもありました。

あなたはこの本を読むことで、どんなことを感じるでしょうか。
ぜひジェイドたちシングルマザーたちの言葉に耳を傾けてみてください。

今回も読んで良かったです。
やはりブレイディさんの本は好きだわ!

そうそう、音楽好きなブレイディさんの作品には様々な音楽が出てくるのですが、
今回もたくさんの曲が出てきまして、せっかくなら聞きながら読みたいなあと思ったら、
なんとSpotifyに小説に登場する曲のプレイリストがありました。
ぜひ本を読みながら音楽も聞いてみてくださいね♪
より作品世界に没入できますよー。

yukikotajima 11:21 am

『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』

2023年9月13日

今週末は3連休ですね。
連休最終日18日の月曜は、国民の祝日の「敬老の日」です。

いまだに敬老の日と聞くと、9月15日を思い出す方もいるかもしれませんが、
9月の第3月曜日になったのは2003年からですから
変わってから、もう20年も経っています。

2003年の平均寿命は、男性が78.36年、女性が85.33年でした。
最新の2022年は、男性が 81.05年、女性は87.09年と、
20年前に比べると平均寿命は延びています。

人生100年時代とも言われていますが、
あなたは、どんなおじいちゃん、おばあちゃんになりたいですか?

できれば何歳になっても元気に暮らしたいものですが、
そのために、どんなことをしたらいいのでしょうか。

例えば、実際に100歳を超えても元気な方の生き方から学んでみるのはいかが?

今日ご紹介する本は、今年ずっと話題になっている一冊です。

『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』
石井哲代(いしい・てつよ) 中国新聞社
文藝春秋


「哲代おばあちゃん」というのは、
広島県尾道市の山あいの町で畑仕事をしながら一人暮らしをしている
石井哲代(いしい・てつよ) さんのことで、
広島で大人気のおばあちゃんなんですって。

哲代おばあちゃんは、もともとは小学校の先生で、
子どもはおらず、20年前にご主人が亡くなってからは一人暮らしをしているそうです。

本のタイトルには「102歳」とありますが、現在は103歳です。
アニメ映画にもなった漫画『この世界の片隅に』の「すず」さんより
5歳年上なんですって!

この本は、「中国新聞」の連載記事をまとめたもので、
哲代おばあちゃんの日記を中心に、
「健康で長生きするための八つの習慣」や「長生きレシピ」などが載っています。

話し言葉そのままの文章ですので、
本を読むというより、まるでお喋りを聞いているかのようです。
文章からチャーミングな人柄や優しい笑顔が見えてきて、
読んだ後は、私も頑張るか!と元気になれます。

そもそも哲代おばあちゃんが、とても元気なのです。
哲代おばあちゃんは、若い頃からずっと
「さびない鍬(くわ)でありたい」思ってきたそうです。
体も頭も気持ちも、使い続けていればさびないと言います。

一方、できないことは人に助けてもらったり、
自分のテンポを大事にしたりして、無理をしないようしているそうです。

哲代おばあちゃんは一人で暮らしていますが、ひとりぼっちではありません。
親戚や近所の方など、周りの方たちから愛されています。

例えば、近所の子どもたちが学校に行くのを
哲代おばあちゃんは、毎朝、家の外で見送っていたそうなのですが、
ある日、寝坊してしまったのだとか。
すると、子どもたちが心配して玄関のチャイムを鳴らしてきたのですって。
そして、おばあちゃんの姿を確認して、ほっとして学校に行ったそうで、
哲代おばあちゃんは「どっちが見守りしていたのかわからない」
と日記に書いているのですが、心温まるいいエピソードだなと思いました。

哲代おばあちゃんの日記には、
その時に感じた素直な気持ちが感じたままの言葉で綴られています。
特に嬉しいことがあった日は、
読んでいる私まで思わず笑ってしまうほどにハイテンションです。
ちなみに、哲代おばあちゃんは、喜びの表現はあえて大きくしているそうですよ。

気付けば、すっかり私も哲代おばあちゃんのファンの一人になっていました。
ほんと、読んで元気になりました!

哲代おばあちゃん、ありがとうございました。
これからもずっとお元気でいてくださいね。
私もこの先、体も頭も気持ちも錆びないように、ちゃんと使い続けていこうと思います。

敬老の日を前に、あなたもぜひ哲代おばあちゃんの声に耳を傾けてみては。

yukikotajima 11:59 am

湊かなえさん

2023年8月30日

ヨリミチトソラで毎週水曜18時32分ごろからお送りしている、
このブログとの連動コーナー「ゆきれぽ」では、
本やアートの話題をお届けしていますが、
今日8月30日と来週9月6日は、人気作家の湊かなえさんにご出演頂きます。

湊さんは、先週の土曜日に明文堂書店 富山新庄経堂店でサイン会を行いました。

このサイン会は、湊さんの代表作である『告白』の文庫300万部突破を記念して
全国の書店を対象に行われた飾り付けコンクールで
最優秀賞に選ばれた書店で行われているもので、
なんと、「ゆきれぽ」で大変お世話になっている
明文堂書店 富山新庄経堂店が、中部ブロックの最優秀賞に選ばれたのです。
おめでとうございます〜!

※コンクールの詳細は、双葉社のサイトをご覧ください。

◎双葉社のサイトは コチラ

◎明文堂書店のサイトは コチラ

こちらが最優秀賞に選ばれた飾りつけです。

書店員の野口さんのが存在感を放っています。
飾りつけは、9月中旬まで見ることができるそうですよ。

今日のゆきれぽでは、この飾りつけコンクールや先日のサイン会について、
来週は、休筆期間中にしていたことや執筆中の新作についてお話頂いています。

ちなみに、湊さんは2020年から去年までFM大阪でラジオをされていたそうです。
さらに、そのラジオ番組が一冊の本になりました。

『湊かなえの「ことば結び」(角川春樹事務所)』

来週のラジオでは、この本についてもお話頂いています。
私も読んでみたのですが、ラジオがベースだけあって
ラジオを聴いている感覚で楽しく読めました。

番組では、ラジオを通して短編小説を作ろう!ということで、
リスナーの皆さんから短編小説を送っていただいていたんですって。

エッセイには小説家を目指す人へのアドバイスも書かれているのですが、
小説がどのように書かれているのかがわかるだけでなく
私自身、アナウンサーとしての学びもたくさんありました。

また、湊さんがお住まいの淡路島の話題も多いので、行ってみたくなりました。
いつか「うにく」を食べたい〜。
(「うにく」について詳しくは来週のラジオを聞いてください)

湊さんファンはもちろん、ラジオや小説がお好きな方にもおすすめの一冊です。
ぜひ湊さんのお喋りを聞く感覚でお読みください。

それから今執筆中の新作も楽しみ〜!

でも、新作の発売はもう少し先になりそうですので、
それまでの間は過去の作品をお読みになってみては?

私もこれまで湊さんの本は何冊も読み、ラジオでもご紹介してきました。
このブログの右横の「検索」「湊かなえ」と検索すると、
過去の私の紹介記事を読めますので、本選びの参考にしてください。

私は今回、湊さんにインタビューするにあたって
『告白』を久しぶりに読んでみたのですが、
あらためてパワーのある作品だなあと実感しましたし、新たな気付きもありました。
前は、「中学生」「大人」それぞれの立場を想像しながら読みましたが、
今回は、全員が同じ「人間」として頭に入ってきました。
私が年を重ねたってことかな。再読もいいものですね。

ぜひ今日と来週のラジオ聞いてくださいね。
18時32頃〜ヨリミチトソラ内ゆきれぽのコーナーですよ〜。

◎ヨリミチトソラのサイトは コチラ

yukikotajima 11:06 am

大竹伸朗展

2023年8月23日

今日の「ゆきれぽ」は、アートの話題。
現在、富山県美術館で開催中の話題の企画展「大竹伸朗展」をご紹介します。

大竹伸朗(おおたけ・しんろう)さんは、
愛媛の宇和島を拠点に制作をおこなう美術界のカリスマです。

宇和島と言えば、今、富山県美術館が
「宇和島駅」になっているのを見たことがある方もいるのでは。

大竹さんと言うと、分厚いスクラップブックや

スナックの看板をモチーフにした代表作《ニューシャネル》
からうまれた大竹文字などが有名です。

今回、展覧会を見て、勝手ながら「ヨリミチトソラ」と重ねてしまいました。

大竹さんは作品を作るにあたって、
最短距離はつまらない。まわり道がいい。
偶然がいい。人が考えることには限界があるから。
とおっしゃっているのです。

まさに「ヨリミチ」じゃないですか?

何より「偶然」を大切にし、計算通りにやっても面白いものはできないと言います。
そんな大竹さんが生み出す作品からは、強烈な個性が感じられました。

今回の企画展は、およそ500点の作品が
7つのテーマに基づいて構成されているのですが、
いつもの美術館とはだいぶ異なる雰囲気で、
自分がどこにいるのかわからなくなるほどでした。

大竹さんの作品は色々ありますが、
中でも厚紙や木などの様々な素材をペタペタと貼っていくスタイルは、
大竹さんを代表する制作方法です。

この貼り重ねられた様は、生で見ると、
素材の質感や層の厚みがよくわかって面白かったですし、
見ているうちに自分もやってみたくなるもので、
家に帰ったら真似してみようかなと思っていたところ、
3階のアトリエ・ラボでできました!

こちらでは、大竹さんと同じ表現手法で作品を作ることができる
ワークショップを開催しています。

白い紙に会期が終わった美術館の企画展のチラシなどを
好きなように切って貼っていくのですが、
何も考えずに思いつくまま貼ることの、なんと自由で楽しいことか。
ストレス発散にもなりました。

ちなみに、私の作品は会場に残してきましたので、良かったら見つけてみてください。

さて、会場には他にも様々な作品が展示されていまして、
例えば、世界的な芸術祭であるドイツのドクメンタに出展された
大型インスタレーション《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》や

遠隔操作による無人バンド《ダブ平&ニューシャネル》といった代表作もあります。

27日(日)には、大竹さんによる《ダブ平&ニューシャネル》の
デモンストレーション(演奏)が行われるそうです。
詳しくは、富山県美術館のサイトでご確認ください。


ところで、今回、美術館に二日連続で行きました。
と言うのも、初日は夕方に行ったため、
朝しか見られない特別な光景を見られなかったのです。

こちらはガラス面を用いた新作です。

ガラスに貼られた作品が床にうつって幻想的でした。
この光景は朝10時くらいまで見られるそうですよ。

二日目は99分にもわたる大竹さんのドキュメンタリーも見ました。
大竹さんが作品をどのように生み出していくかや、
どんな思いで作品を作っているのかがわかり、とても面白かったです。

例えば、大竹さんにとって厚紙(ダンボール)は、
破くことで素材が限りなくとれる面白い素材なんですって。

ダンボールと言えば、昔から富山県美術館にある
大竹さんがダンボールで作った「男」という作品も展示されています。


最後に、「大竹伸朗展」の私のオススメの鑑賞方法をご紹介します。

朝9時30分に来て、まずはガラスの作品を鑑賞。
その後、99分のドキュメンタリーを見て予習。

ランチをはさんでから、ゆっくり作品鑑賞。
あわせて常設展もぜひ。常設の方にも大竹さんの作品があります。

鑑賞後は3階のアトリエ・ラボのワークショップで作品作りをして、最後はショップへ。
なんと富山県美術館限定Tシャツもあります!

ということで、一日コースで楽しんで頂くのがベストかと。

ぜひ次の休日にでも大竹ワールドに浸ってみては。

「大竹伸朗展」は、富山県美術館で9月18日(月・祝)までの開催です。

◎富山県美術館のサイトは コチラ

yukikotajima 11:28 am

『キャラ絵で学ぶ! 日本の世界遺産図鑑』

2023年8月16日

今日は、大人だけでなく、
夏休み中の小中学生や受験生にもおすすめの本をご紹介します。

『キャラ絵で学ぶ! 日本の世界遺産図鑑』
伊藤賀一・監修
いとうみつる・絵
小松事務所・文
すばる舎

シリーズ13万部を誇る人気の「キャラ絵で学ぶ!図鑑シリーズ」の新刊で、
今回は、日本にある世界遺産について学べます。

キャラ絵を描いたのは、小学生に大人気のイラストレーター、いとうみつる先生です。
そして、「日本一生徒数の多い社会科講師」として有名な
伊藤賀一(がいち)先生が本を監修しています。

図鑑ですから情報満載なのはもちろん、
フルカラーで、漢字にルビがふってあるのもポイントです。
私には、読み方がわかるだけで難しさが半減するように感じられました。

ページをめくると、まず世界遺産の「基礎知識」からはじまります。

そもそも「世界遺産」とは何かわかりますか?
ひとことで言うと、「人類共通の宝物」だそうです。
監修をされた伊藤先生は、「世界が認めた、とびきりステキな場所」と表現しています。

世界遺産は、「文化遺産」「自然遺産」
そして、文化遺産と自然遺産の両方の価値がある「複合遺産」の3つに分類され、
現在、世界に1157ヵ所、日本には25ヵ所あります。
ほかにも「無形文化遺産」や「世界農業遺産」などもあります。
こんな感じで基礎知識を頭に入れたあとは、
日本の世界遺産について地域ごとに学んでいきます。

例えば、富山の世界遺産である「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は、
第4章の「中部地方世界遺産」で紹介されています。

ところで、五箇山の「箇」には、どういう意味があるかご存じですか。
正解は「谷」です。
詳しくは本を読んで頂きたいのですが、富山の皆さんは知っていたかな?

さて、それぞれの世界遺産の紹介ページでは、
概要や世界遺産になった理由のほか、
必見ポイントや人気のお土産なども紹介されていますので、
実際に現地に行きたくなります。

中でも私が一番興味深く読んだのは、「世界遺産になった理由」です。

例えば、屋久島(やくしま)が自然遺産に登録されたのは、
豊かな自然があるから、と思われそうですが、
正しくは、日本列島の植物が垂直に分布しているからなんですって。
海岸線から山頂に向かって、多種多様な植物が自生している屋久島は、
「日本の縮図」とも言われているそうですよ。

では、富士山が自然遺産ではなく文化遺産になった理由はわかりますか。
当初は自然遺産を目指していたそうですが、2つの理由から断念したそうです。
1つは、当時、登山道に多くのゴミが散乱していたからです。
では、なぜ文化遺産にはなれたのか。
それは、「世界の芸術家に愛された」ことも理由の一つとなっているようです。
詳しくは本を読んでお確かめください。

どの世界遺産も、わかりやすい言葉と絵で解説されているため頭に残りやすく、
本の途中にある「日本の世界遺産クイズ」にも、ちゃんと正解できました。
全問正解できたときの喜びたるや。
私、天才かも♪と勘違いしそうになりました。(笑)

学生さんたちは参考書感覚で、
大人の皆さんは学び直しや旅の計画のために読んでも楽しいかも。

小説はちょっと苦手だけど、
何か本を読んでみたいという方にもおすすめです。

yukikotajima 11:36 am

いわさきちひろピエゾグラフ展

2023年8月10日

最近何かとあわただしく、心にも余裕がなくなりかけていたのですが、
昨日、ある場所に行ったら、心の乱れも整って、優しく穏やかな気持ちになれました。

私が癒されたのは、淡くやわらかな色合いの子どもの絵で知られる
画家のいわさきちひろさんの絵です。

ちひろの絵は、きっとどこかで目にしているのでは?

私は、黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』の印象が強いです。
また、母がちひろの絵が好きだったので、
子どもの頃から絵本でちひろの絵を見ていました。

今、上市町の西田美術館では、
上市町新町制70周年、西田美術館開館30年を記念した
「いわさきちひろピエゾグラフ展 ちひろの描いた世界と日本のおはなし」
がおこなわれています。

ピエゾグラフとは、精巧な印刷技術によって、
原画に近い状態でデータ化して印刷したもので、
ちひろの繊細な水彩画を原画と見分けがつかないほどに再現しています。

なぜピエゾグラフにしたのかというと、
当時の紙質が悪く劣化を避けられないことから、
最新の印刷技術によって、ちひろの水彩画を復元したのだとか。

正直、間近で見ても復元だなんてわかりません。どう見ても本物の風合いでした。

今回は、ちひろが絵を描いた様々なおはなしの絵本、
例えば、『つるのおんがえし』『おやゆび姫』『にんぎょひめ』の他、
宮沢賢治の文に絵をつけた『花の童話集』や、
ちひろが文も書いた作品など、50点が展示されています。

また、会場には絵本もありますので、椅子に座ってじっくり読むことができますし、
会期中、毎週土日の14時〜は絵本読み聞かせイベントが行われているそうです。
(ただし、お休みの日もありますので、詳しくはホームページでご確認ください)

私も実際ベンチに座って絵本を読んでみましたが、
その時間だけでもだいぶ心な和みました。

今回、西田美術館 の熊本明子さんに解説をしていただいたのですが、
「ちひろの絵を見てほっとするのは、
絵本を読んでいた当時のことを思い出させてくれるからではないか」
とおっしゃっていたのが印象に残りました。

その一方で、この企画展では、
ちひろがどのようにして絵本画家になっていったのか
を紹介しているのもポイントです。

例えば、力強さを感じる30歳の頃の自画像のスケッチは、
小さい時から画家を目指していたものの、戦争によってその夢が閉ざされ、
戦後にもう一度、画家としてやっていきたいと決意した時に描かれたそうなのですが、
力強いタッチで、他の水彩画とはだいぶ印象が異なりました。

ちひろについては、映像でも知ることができます。
会場の2階では、ちひろ美術館 館長の黒柳徹子さんが
ちひろの知られざる一面を語る映像が上映されていますので、ぜひご覧ください。

また、その2階に向かう途中の階段の踊り場の壁には
「ちひろ美術館」の動画が流れていまいして、そこで写真が撮れます。

今回、「いわさきちひろピエゾグラフ展」を見て、
ちひろの絵に癒されたのはもちろん、絵の美しさやうまさにも気付かされました。
例えば、海を描いた絵などは、一見簡単に描いているように見えて
とても繊細に描き分けているのがわかり、
子どもたちの絵もいいけれど、風景もいいなあと思いました。

ぜひみなさんもじっくり鑑賞してみてください。

「いわさきちひろピエゾグラフ展 ちひろの描いた世界と日本のおはなし」は、
上市町の西田美術館で9月3日(日)までの開催です。

会場では、絵本やポストカードのほか、
ご要望の多かった来年のカレンダーも
特別に今週末あたりから先行販売されるそうですよ。

また、8月26日(土)には、ちひろ美術館 学芸員の松方路子さんによる
ギャラリートークもあります。

詳しくは、西田美術館のホームページでご確認ください。

◎西田美術館のサイトは コチラ

yukikotajima 12:03 pm

『この夏の星を見る』

2023年8月9日

あなたは夜空を見上げてますか。

この本を読んだあとは、きっと夜空を見上げたくなると思います。
それも望遠鏡で。

『この夏の星を見る』
辻村深月
株式会社KADOKAWA

いやあ、いい本でした!
大人はもちろん、夏休み中の中高生たちにも読んで頂きたい。
それこそ、ゆきれぽの夏の課題図書にしたいくらいです。(笑)

『この夏の星を見る』は、コロナ禍の中高生のお話です。

コロナ禍では、誰もがこれまでとは異なる生活を送ることになりました。
中高生たちも部活や大会が無くなるなど、たくさんの我慢を強いられましたよね。

この物語には、茨城、渋谷、長崎の五島列島の中高生たちが登場し、
それぞれのコロナ禍が描かれます。

例えば、五島列島の高校3年生の円華(まどか)は旅館の娘なのですが、
旅館に県外からの旅行者が泊っていることが原因で、
親友から距離を置かれてしまいます。

一方、渋谷の中学1年生の真宙(まひろ)は、
ある理由から学校に行きたくないと思っており、
コロナが長引くことを願っています。

それぞれに事情を抱えた彼らでしたが、
天体観測を通して全国の中高生たちとつながっていくことになります。

といってもコロナ禍ですし、そもそも中高生ですから、
簡単に全国を行き来することはできません。

彼らはオンラインを通じてつながります。

そして、同じ日にそれぞれの場所で望遠鏡で星を見ることを計画します。
それも自分たちで作った望遠鏡で。

***

『この夏の星を見る』を読んで、
「青春って、すごく密なので」の言葉を思い出しました。
2022年に夏の甲子園で優勝した仙台育英高校の須江航監督の言葉です。

コロナ禍では誰もが日常を奪われたわけですが、
大人と中高生では時間の感覚が違うことを
この本を読んで気付いたというか、実感しました。

読んでいるうちに自分も中高生の一人の気分になってきて、実感したのです。
10代の一年の短さに。

「コロナ禍だから、しばらく待ってから」なんて、
本当に待っていたら学生生活が終わってしまいます。

この物語の生徒たちは、それぞれ色々抱えつつも、
やりたいことを見つけた後の行動はとてもはやいのです。
その瞬発力やスピード感に私は青春を感じました。
大人たちだけだったら、やっと今ごろ
「コロナも落ち着いてきたから、そろそろ始めましょうか」
なんて言ってそうだもんなあ。(笑)

でもね、この本に出てくる大人たちは違います。
子どもたちの限られた時間の大切さをちゃんとわかっています。
そんな大人たちの言葉がいいんです。
彼らの言葉に涙している私は、まるで生徒の一人のようでした。

本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』を読んだ時にも思ったのですが、
著者の辻村さんって、人物、特に少年少女たちを丁寧に描いているというか、
ひとりひとりを本当によく見ているんですよね。

だから、『この夏の星を見る』を読んで登場人物たちの気持ちに触れることで、
「誰も私のことをわかってくれないと思っていたけど、わかってくれる人がいた」
と思う人もいるんじゃないかな。

私は、この本のおかげで、コロナ禍で感じた、
モヤモヤしつつもそのまま放置してしまった自分の気持ちと向き合えたように思います。
本当にいい物語でした。

それから!

3月に発売された辻村さん初のガイドブック
『Another side of 辻村深月』には、
『この夏の星を見る』のスピンオフ書下ろし短編「薄明の流れ星」
も収録されていますので、あわせて読んでみてください。

流れ星と言えば、今度の日曜日、13日はペルセウス座流星群の極大日です。
今年は月が無いため、流れ星が良く見えるそうですよ。
せっかくですので、小説とセットで楽しんでみては。
できれば13日までに『この夏の星を見る』とスピンオフをお読みください。
より星空観察を楽しめると思います。

ということで、さっそく読み始めましょう!(笑)

yukikotajima 11:42 am

『八月の銀の雪』

2023年8月2日

毎日毎日本当に暑いですね。
色々な暑さ対策がありますが、
雪の降る冬を思い出してみるのはいかがでしょう。

今日ご紹介する本は、タイトルを見ただけで暑さが和らぎそうですよー。

『八月の銀の雪』
伊与原新(いよはら・しん)
新潮文庫

今日は8月の第1水曜日ですので、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。

第164回 直木賞候補となったほか、
2021年に本屋大賞にノミネートされた話題作ですので、
すでにお読みの方もいるのでは。

まずは、野口さんのコメントです。

科学の不思議や、真実が、主人公たちの人生に寄り添い、
そっと背中を押してくれる物語です。
小説と科学が融合するんだ〜と、ひたすら感動しました。

私は、本のタイトルを見た時、暑い夏に銀色の雪が降る
ファンタジーなのかなあと思ったのですが、
読んでみたら全然違いました。

野口さんがおっしゃっている通り、
地球や自然、動物などの科学にまつわる物語でした。

でも科学と言っても決して難しいお話ではありませんので、
安心してお読みください。

ちなみに「銀の雪」は実際に地球のある場所で降っているそうですよ!

『八月の銀の雪』は、5つのお話からなる短編集です。
どのお話の主人公も人生がうまくいっていません。
ですが、新たな人との出会いをきっかけに、
くすぶっていた日々に変化が生じます。

私が一番印象に残ったのは、
2歳の娘を育てるシングルマザーの物語「海へ還る日」です。

シングルマザーの「わたし」は、
満員電車の中で、ぐずる娘を抱っこしながら、
まわりの乗客たちに「すみません」と謝り続けています。
そして、もう限界…と思ったとき、ある年上女性が席を譲ってくれます。
その女性は、ぐずる娘にクジラのシールを渡して、
博物館で開催中の「海の哺乳類展」に行くことを提案します。

「わたし」は、街なかで出会う人は、
自分も含め全員がつまらなそうに見え、
娘の人生もきっと幸せにはなれないと思っていましたが、
博物館でクジラやイルカの展示を見たり話を聞いたりする中で、
少しずつ世界の見え方が変わっていきます。

ほかにも、就職活動がうまくいかない学生や、夢破れた男性など、
どのお話の主人公も満たされない思いを抱えているのですが、
それぞれ、ある人との出会いによって、心に変化が生じます。

と同時に読者である私の心も軽くなって、
よし私も頑張るか、と前向きな気持ちになれます。

自分のことを知らない他人のほうが、
正直な気持ちを吐き出せることって、ありませんか。
また、全然関係ないと思っていたことから、
影響を受けることもありますよね。

それこそ、この本を読むことで、
きっと何かしらの影響をあなたも受けるのではないかしら。それもいい影響を。
この夏じっくり読んでみてください。

今年6月に文庫化されて、お求めやすくなっていますよ〜。

今日ご紹介した『八月の銀の雪』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてください。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 1:30 pm

生誕150年記念・川合玉堂展

2023年7月26日

この夏は、日本の原風景を見に行ってみませんか。

豊かな自然の前に立つだけで、きっと心が穏やかになっていくはずです。
朝の澄んだ空気に、昼のやわらかな日の光、細い月がほんのり見える日没後。
それに、真夏に見る雪や紅白の梅もいいものですよ。

ん?雪に梅って、田島はいったいどこに行ったの?かって思いますよね。(笑)

私が出かけたのは、富山県水墨美術館です。

現在、こちらでは生誕150年記念・川合玉堂展を開催中です。

川合玉堂(かわい・ぎょくどう)は近代日本画壇の巨匠で、今年生誕150年です。
玉堂は、日本の原風景と言えるような風景画の名作を数多く残しています。
だから、作品を見ているだけで自然の中にいるような、
また、どこか懐かしい気持ちになるのです。

玉堂は愛知で生まれ、少年期を岐阜で過ごした後は、
京都、東京で円山四条派や狩野派などの技法を習得します。
その後は、それらを融合し、自らの画風を生み出していきます。

今回の企画展では、20代前半から晩年に至るまで時代順に作品が並んでいますので、
作品がどのように変わっていったのかがよくわかります。

例えば、岐阜で育った玉堂は、鵜飼の絵を何度も描いたそうなのですが、
この企画展でも4点の鵜飼の絵が展示されており、作風の違いを見ることができます。

また、会場には、スケッチも展示されています。
富山でのスケッチや、10代の頃のスケッチもあるですが、
若いころからまるで本物のような質感で、
玉堂がいかによく観察しているのかがわかります。

実際、よく写生もしていたそうで、朝、散歩に出かけては写生をしていたのだとか。
朝の景色を描いた『朝もや』という作品は、朝のひんやりとした澄んだ空気を感じます。

また、玉堂の作品には、人間や動物が小さく描かれているのもポイントです。
人がそこにいることで、生活感が出てきますし、
玉堂が人や動物に対して、いかに優しいまなざしをもっていたかが伝わってきて、
作品を見ている私の心までも穏やかになっていきます。
中でも玉堂の描いた馬の表情がいいんです、優しくて。ずっと見ていられます。

ところで、会場には玉堂を撮影した写真も展示されているのですが、
どの写真も背筋がぴーんと伸びているのが印象に残りました。
そして、玉堂の作品から感じられるスマートさは、
この姿勢の良さとも関係しているのかもしれないな、とふと思いました。
(あくまでも私の印象ですが)

今回の企画展では、前後期合わせて46点の作品が展示され、
後期は13点も入れ替わるそうです。
パンフレットに使われている「紅白梅」は、前期のみの展示ですので、お見逃しなく。

公式図録には、ひ孫さんによる「玉堂こぼれ話」も載っていますので、
ぜひ作品解説と合わせて読んでみてください。

また、今回私は学芸員の丸山さんによる「ギャラリートーク」に参加したのですが、
丸山さんのおかげで玉堂の人となりもわかり、楽しく鑑賞することができました。

ギャラリートークは、8月5日(土)19日(土)にもありますので、
ぜひ参加してみてください♪

◎生誕150年記念・川合玉堂展の詳細は コチラ

そして、作品を見た後は、のんびり庭園を散策してみては。
7月14日から、特別な時にしか見られなかった
茶室に付随するお庭を見ることができるようになったそうですよ。

◎詳しくは コチラ

yukikotajima 11:07 am

『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』

2023年7月19日

人に会ったとき、まずは着ているものを見て、
その人のことを色々想像すること、ありませんか。

例えば、いつもはパンツスタイルなのに今日はワンピースだ。
このあと何かあるのかな?とか、
いつもはパリッとしているのに今日はシャツがしわくちゃだ。
どうしたんだろう?とかね。

また、初対面の方の場合は、
服装からその人の好みや性格を推測することもありますよね。

きっと誰もが人の服装から何かしらの情報を得ていると思うのですが、
今日ご紹介する本の主人公は、服を見ただけで体の状態がわかります。
例えば、服のシワを見ただけでDVにあっていることを見抜いてしまうのです。

『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』
川瀬七緒
講談社文庫

著者の川瀬さんは、子供服のデザイナーとして働きながら小説を書きはじめ、
2011年に『よろずのことに気をつけよ』で
第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビューされました。

『ヴィンテージガール』はファッションにまつわるミステリーで、
2021年に単行本として発売され、今年の5月に文庫が出ました。

主人公は、東京の高円寺で小さな仕立て屋を営む
桐ヶ谷京介(きりがや・きょうすけ)です。

彼はファッションブローカーとして、
仕事が無くなった職人に再び光を当てる仕事をしていまして、
例えば、ミラノにあるハイブランドの職人が
京介が紹介した巣鴨に住むおじいちゃんだったりします。

京介は、美術解剖学と服飾の深い知識によって、
人を見ると筋肉や骨が透けて見えるそうで、
服を見ればその人の受けた暴力や病気まで推測できます。

また、涙もろく感情移入しやすい性格ゆえ、人を放っておけず、
商店街で見かけた見知らぬ女性に突然、
「あなたの歩く姿から暴力が透けて見えました。警察に行くべきです」
と話しかけ、不審人物だと思われてしまうこともあります。

確かにこの状況は怖いわね。え?何?って思いますよね。

感情移入しやすい京介は、ある日たまたまテレビの公開捜査番組で目にした、
奇妙な柄のワンピースのことが頭から離れなくなります。

それは、10年前に起きた少女殺害事件で少女が着ていたものでした。
犯人も少女の身元も未だわからないままだと知った京介は、
ワンピースを調べれば少女の身元が分かるのではないかと、
ファッションに関する様々な職人たちに協力していただきながら
ワンピースについて調べていきます。

そして、知り得た情報を警察に提供し、
なんなら実際のワンピースを見せてほしいとお願いするのですが、
警察はなかなか相手にしてくれません。

でもまあ、そうなりますよね。

どうしたら警察は動いてくれるのか。
そもそもワンピースから、いったいどんなことがわかるのか。

続きは本を読んでお確かめください。

***

美術解剖学や服飾の知識から事件を追っていく様は、
これまでにない視点で面白かったです。

私に服飾の知識が無いので全く想像もつかず、
こんなところにもヒントがあったの?と
職人さんたちの発言にびっくりしっぱなしでした。

京介ももちろんすごいのだけど、
これまでの経験と知識のある職人さんたちの、なんとかっこいいことか。
ご高齢でもバリバリの現役なのも素敵です。
と同時に、この方たちがいなくなったら、
この業界はこの先どうなってしまうんだろう、とも思いましたが。

ミステリーとしての面白さもありながら、色々と考えさせられた一冊でもありました。
ほんと色々と。(ネタバレになるので、詳しくは書けないのですが)

読み終えてから、この作品、シリーズ化すればいいのに!
と思ったら、すでにシリーズ化されていました。

去年、『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』が発売されていました。
こちらは、6つのお話が収録された短編集のようですよ。
ぜひ『ヴィンテージガール』とあわせてお読みになってみては。

仕立屋探偵シリーズ、いつかテレビドラマ化されないかなあ。
この物語は本として読んでももちろん面白いのだけれど、
服飾がテーマなので、色や形を実際に見てみたい、とも思うのです。

ドラマ業界の皆さん、いかが?
今までにない新しい視点のミステリーですよー。
(この声、現場の誰かに届け〜!)

yukikotajima 11:11 am

『世界でいちばん透きとおった物語』

2023年7月12日

本を読む時、あなたは紙の本で読みますか。
それとも電子書籍でしょうか。

私はほぼ紙です。電子書籍も時々読みますが、好きなのは紙の本です。

紙の質感を味わいながら文字を追っていきたい派です。
また、本の装丁を見るのも好きで、ジャケ買いをすることもあります。
さらに、カバーを外して本そのものの表紙を見るのも好きです。
表紙のデザインや質感を楽しむのはもちろん、
カバーの裏側に掌編があったり、
表紙そのものが本の内容に関連したものだったりすることもあるので、
つい外したくなるのです。
どうせなら隅々まで楽しみたいですからね。
そんな紙の本ならではのこだわりに、私もこれまで何度も出合ってきました。

ですから、「紙の本でしか実現できない」というこの本の仕掛けにも
きっと気付けるはず!と思って挑んだのですが…
気付けませんでしたーーー。
その本とはこちら。

『世界でいちばん透きとおった物語』
杉井光(すぎい・ひかる)
新潮文庫(文庫書下ろしです!)

「ネタバレ厳禁!」「電子書籍化は不可能」と話題のミステリ—小説です。
5月に発売されたのですが、すでに累計発行部数は18万部なんだとか。すごい!

ちなみに、私が先ほど挙げた紙の本の魅力は、
今作のネタバレにはなっていませんので、ご安心ください。

この本をひとことで表すなら、
タイトル通り「世界でいちばん透きとおった物語」です。

読んだ方は「そうそう」と納得していただけると思いますが、
読んでいない方からすれば、「は?」という感じですよね。すみません。
このままだと、どんな本か全くわからいので、軽くあらすじをご紹介しますね。

主人公は、大御所ミステリ作家の宮内(みやうち)を父にもつ「僕」です。
とは言え、「僕」は不倫の末に産まれた子ゆえ、これまで宮内に会ったことはなく、
ある日、宮内が亡くなったことをネットニュースで知っても、
とくになんの感情も湧きませんでした。

ところが、宮内の訃報から1ヶ月後、「僕」は亡き父と関わることになってしまいます。
宮内の息子(つまり僕の兄)からいきなり連絡がきて、こう聞かれます。

「宮内が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を
死ぬ間際に書いていたらしいのだけど、何か知らないか」と。

どうやら作品の原稿がどこにもないようなのです。

そもそも父親に会ったことすらない僕には、心当たりなど全く無かったのですが、
ある理由から僕は父親の遺稿を探すことにします。

いったい小説はどこにあるのか。そして、それはどんな小説なのか。

読者である私も、「僕」と一緒に遺稿を探している気分でページをめくっていきました。
個性あふれる登場人物たちが次々に登場するのも楽しく、
「ネタバレ厳禁!って大げさじゃない?」と思い始めた頃、
え?まさか。。。と、あることに気付かされ、ああ、これは言えないわと納得。

ってことで、もうこれ以上は何も言えません。(笑)

皆さんも新たな読書の世界を楽しんでみてください。
ちなみに文庫ですので、お求めやすいですよー。

私はこの本を読んであらためて、紙の本最高!と思いました。
だって・・・、って、ああもう何も言えないんだったわね。
今日の本紹介は以上で〜す。(笑)

yukikotajima 11:26 am

『コメンテーター』

2023年7月5日

私は子どもの頃から本が好きでしたが、
大人になってさらに読書熱が高まったのは、
奥田英朗さんの伊良部(いらぶ)シリーズに出合ったことがきっかけでした。

精神科医の伊良部一郎が登場する累計290万部を誇る大ヒットシリーズで、
映画化もされた『イン・ザ・プール』に、
直木賞を受賞した『空中ブランコ』
そして、『町長選挙』の3冊が出ています。

すでに完結したものと思っていたら、
今年の5月に17年ぶりに伊良部シリーズの最新刊が発売されました。わーい!

タイトルは、『コメンテーター』(文藝春秋)です。

今日は7月の第一水曜日ですので、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本でもあります。

まずは、野口さんのコメントをご紹介しますね。

伊良部先生 おかえりなさーい!と叫んだ国民は、
おそらく私だけではないと思います。
ね!田島さん!

17年という歳月を経ても、相変わらずの面白さでした〜。
どこからか、伊良部先生の「ぐふふ」という笑い声が聞こえてきそうで、
声を上げて笑ってしまう、数少ない小説です。
悩んでいる時間があったら、これ!読んでみてください!

それでは、田島さん、お願いします!
「伊良部 フッカーツ!!」(実況風に)

野口さん、熱いコメントありがとうございます。
確かに最新刊も涙が出るほど笑いました。
ですからカフェや電車などで読む際は注意が必要です。(笑)

さて、伊良部先生をご存じない方もいると思いますのでご紹介しますと、
伊良部先生は、ある総合病院の神経科の精神科医です。
かなり癖強めな中年の医師で、ワガママでとにかくやりたい放題のため、
周りからはまるで5歳児のようだと言われています。

その伊良部のもとをなぜか患者さんが訪れます。
そして、当然のように伊良部に不信感を抱きます。
でも、気付いた時には信じているのです。
というのも、色々好き勝手言っているように見えて、
「たしかにそうかも」と思わせるところがあるのですよ、伊良部先生には。

私は奥田さんの作品が好きで、ほぼ全て読んでいるのですが、
何が好きかというと、人物の描き方が公平なところです。誰も特別扱いをしません。
伊良部シリーズの伊良部自身にもそういうところがあります。
誰に対しても同じように接しています。まあ、癖は強めですが。(笑)

最新刊もこれまでと同じように、
患者さんごとにお話が変わっていく連作短編集となっています。
それぞれの物語の主人公は患者さんです。

表題作の「コメンテーター」は、
コロナ禍にテレビのワイドショーのコメンテーターとして
伊良部が出演することになる、というお話です。
予想通り好き勝手コメントしていきます。(笑)

他には、オンライン授業ばかり受けていたことで、
人とうまくコミュニケーションが取れなくなった大学生のお話など、
最新刊は、まさに今の時代を描いています。

この何年か、人知れず悩みを抱えていたり、心の不調を感じたりした方もいるのでは。
モヤモヤしたり、窮屈だなと思ったり。
あらゆる方面に気をつかって、疲れがたまっている方もいるかもしれません。

でも、伊良部はそんなの関係なく、やりたい放題です。そのなんと痛快なことか!
笑いながら本のページをめくっているだけで、私自身の心も軽くなっていくようでした。
しかもちょっと泣いたし。

最近なんか色々モヤモヤするという方は、
ぜひ伊良部先生に会いに行ってみてください。
きっと元気になれますよ〜!

『コメンテーター』は、これまでのシリーズを読んでいなくても楽しめます。
でも、読んだ後はきっと他の作品も読みたくなると思いますが。

私は、あらためて過去の作品を読み返したのですが、
やはり私は伊良部シリーズが好きだと実感しました。ほんと面白かった!
あと、過去の作品に出てきた人が今回再び出てきたのも嬉しかったな。

今日ご紹介した奥田英朗さんの『コメンテーター』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてください。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 12:11 pm

イオンシネマとなみ

2023年6月29日

今日も暑い一日となっていますが、映画館は夏でも涼しく快適ですよね。

映画館と言えば、明後日の7月1日(土)にイオンモールとなみ1階に、
砺波市初のシネマコンプレックス「イオンシネマとなみ」がオープンします。

「イオンシネマとなみ」は、コンパクト型シネマコンプレックスです。
しかし、コンパクトとは言え施設のクオリティーは高く、
チケットレス入場ができたり、飲食売店にはセルフオーダーシステムを導入するなど、
スムーズな入場やオーダーが可能です。

私も実際にオーダーしてみましたが、とても簡単でした。
ちなみに、この柚子ジンジャーソーダは、
最後まで味が薄まることなく美味しく飲めました。

もちろん映画鑑賞中も快適にお過ごしいただけますよー。
全スクリーンに3タイプの座席があります。

まず、両肘のある上質生地の「通常席」

電動リクライニング付きの「ハイグレードシート」

各スクリーンの一番前の席は、寝そべりながら鑑賞できる「コンフォートシート」です。

なんと、コンフォートシートは鑑賞料金のみで利用できます。
ハイグレードシートは鑑賞料金+500円ですが、ワンドリンク付きです。

この映画館の一番のポイントは、国内で初めて全スクリーンに
立体音響技術「ドルビーアトモス」を採用していることです。
まるで作品の中に入り込んだかのような没入感を味わえるということで、
世界中で人気の音響技術です。

素晴らしいのは音だけではありません。
県内で初めて全スクリーンにレーザープロジェクターを導入していることで、
よりリアルで鮮明な映像を楽しむことができます。

今回、早速イオンシネマとなみで映画を見てまいりました。
明日6月30日(金)に公開となる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』です。

ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグがタッグを組み、
ハリソン・フォードが主演をつとめる超人気シリーズです。

私は今回気合いを入れて、過去の作品をすべて予習してから新作を鑑賞しました。

だからこそ、ジョン・ウィリアムズのおなじみのテーマ曲
「レイダース・マーチ」が聞こえてきた瞬間は密かに大興奮でした。

『インディ・ジョーンズ』と言ったら毎回様々な危険に見舞われますが、
今回もかなり激しく、ハラハラドキドキしっぱなしでした。
ある秘宝を巡って、インディがあらゆる場所で逃げたり追いかけたりするのですが、
音の広がりがすごいので、たしかに没入感がありました。
音の響きがそのまま体に感じられるほどで、私もインディと冒険している気分でした。

ぜひあなたも「イオンシネマとなみ」でこの没入感を味わってみてください。

オープン後は『インディ・ジョーンズ』以外にも様々な作品が上映されるようですよ。
その中の一つ『リトル・マーメイド』は、
より水の中にいるような気分が味わえそうだわ。

私もまた「イオンシネマとなみ」に映画を見にというか、体感しに行こうと思います!

◎『イオンシネマとなみ』のサイトは コチラ

yukikotajima 11:44 am

『空想の海』

2023年6月28日

私のラジオを聞いてくださっている方にお会いすると、ほぼ本の話題になります。

私の本紹介を楽しみにされている方や
本選びの参考にされている方もいれば(ありがとうございます!)、
「実は本は苦手で…ユッキーは本のどんなところが好きなの?」
と聞かれることもあります。

本と言っても色々ありますが、私はやはり「物語」が好きです。
知識を得るための読書ももちろんいいけれど、
まだ見たことの無い世界や、様々な人の思い、美しい表現に出合える物語は、
読んでいてワクワクします。
特に人の心の中を堂々とのぞけるのが好きです。
色々な人の本音に触れられるのがいいなあと。

また、本を開ければ、すぐにでもどこか別の世界に行ける手軽さも魅力です。
私にとって本の表紙は、作品の世界へ繋がる扉のようなものです。

今日ご紹介する本には、扉がいくつもあり、行き先も様々でした。

『空想の海』
著者/深緑野分(ふかみどり・のわき)
株式会社KADOKAWA

『空想の海』は、今年、作家生活10周年を迎えた深緑さんが
これまでに発表してきた短編を中心に、
書下ろしや未発表作品が加えられた作品集で、
全部で11の物語が収録されています。

深緑さん、10周年おめでとうございます〜!

もうね、本の表紙から素敵なんです。
表紙は、人気イラストレーター・絵本作家の庄野ナホコ(しょうの なおこ)さん
繊細でどこか静けさを感じさせる美しいイラストです。
青い海に浮かぶ小舟に乗った一匹のクマが、何冊もの本を海に沈めています。

いったい何をしているのかしら、と思って本のページをめくってみれば、
まさに「海」というタイトルのお話が始まります。

海の描写から始まるのですが、
それは私たちがよく知る海とは異なり、
さざなみひとつ立たない静かな海なのでした。
そして、そこにいるのは「私」だけ。
誰の気配もありません。

深緑さんがすごいのは、一瞬で作品の世界に連れて行ってくれるところです。
読み始めてすぐ、私は静かな海にいました。

他には、ある家に住む4人の子どもの物語もあります。
4人全員が見た目も言葉も異なるため、
誰も口をきかず、それぞれが好きなように過ごしています。
でも、ある日ある事件が起き、彼らの関係に変化が生じます。

このお話は、もし私がこのうちの1人だったらどうするかしら、
と登場人物の一人の気分でした。

こんな感じで11のお話が収録されているのですが、ジャンルも様々です。
SFやミステリのほか、2021年に本屋大賞にノミネートされた
『この本を盗む者は』のスピンオフもあります。

『この本を盗む者は』も以前ラジオでご紹介しましたが、
少女たちが本の世界を冒険するファンタジーで、本への愛にあふれていて、
私も最初から最後まで夢中で読んだお気に入りの一冊です。

◎『この本を盗む者は』の田島の紹介は コチラ

『空想の海』に収録されたスピンオフが短編とは言え、
まるで単行本並みの熱量で、再度『この本を盗む者は』を読みたくなりました。
それこそ、本が苦手…という方にこそこのスピンオフを読んで頂きたいわ。
なぜなら、主人公の女性が本の魅力を余すところなく語っているからです。
私も共感しまくりでした。

ちなみに、『この本を盗む者は』は今月、文庫化されたそうですので、
まだお読みで無い方は、これを機に『空想の海』と合わせて読んでみては。

さらに、コミックにもなっているようですよ!
コミックも読んでみたいわ。

11の物語に出合える『空想の海』は、一気に読むのももちろんいいけれど、
1話ずつじっくり読んで、その都度、空想を膨らませていくのも楽しいかも。

あなたも空想の海を漂いながら、様々な世界への扉を開けてみませんか。

yukikotajima 1:43 pm

『子どもに教えてあげられる 散歩の草花図鑑』

2023年6月21日

現在放送中のNHKの朝ドラは、
植物学者・牧野富太郎の人生をモデルとした『らんまん』です。
主演は、神木隆之介さんです。
私も毎朝チェックしています。

彼をモデルにした作品では、朝井まかてさんの小説『ボタニカ』もあります。
こちらは以前ラジオでもご紹介しました。

◎私の紹介は コチラ

この小説もとても面白いので、
朝ドラファンの方はぜひ小説も読んでみてください。

この朝ドラの影響もあり、植物に興味を持つようになった方が増えているようで、
明文堂書店でも植物関連の本がよく売れているのだとか。

私自身も歩いたり走ったりするときに、
今まで以上に植物を意識するようになりました。
でも全然詳しくないため、植物の名前がわかればもっと楽しめるのに!
と思っていたときに、この本に出合いました。

『子どもに教えてあげられる 散歩の草花図鑑』(文庫)
岩槻秀明
大和書房

2017年に出ている本なのですが、ずっと売れ続けているそうですよ。

著者の岩槻さんは、様々な植物の中でも「雑草」がお好きなんですって。
「人知れず咲き、地味に頑張っている野の花たちに強く惹かれる」のだとか。
岩槻さんによると、この本は、そんな野の花の
「素顔」を中心に取り上げた植物図鑑とのことです。

図鑑と言っても文庫のポケットサイズですので、
お散歩に持っていっても邪魔になりませんし、
草花の写真もオールカラーで載っているため、
お散歩中、道端で見つけたお花と照らし合わせることもできます。
また、春夏秋冬に分かれて紹介されていますので、
植物を探しやすいのもポイントです。

私は、図鑑をぺらぺらめくっては、
「これ、見たことある!へえ、こんな名前なのか」
という感想を繰り返していました。(笑)

色々興味深く読みましたが、
特に植物の名前の由来にまつわるエピソードが印象に残りました。

例えば、四葉のクローバーでおなじみの「シロツメクサ」のツメは、
「詰める」という漢字が当てられています。
これは、江戸時代にガラスの器がオランダから送られた際、
緩衝材として詰められていたことに由来しているのですって。
だから日本名は「白詰草」です。

ちなみに、植物名を学術的名称として使う場合は、カタカナで書くそうです。
これは、動物も同じです。
アナウンサーにとっては一目で読み方がわかるのは助かります。(笑)
ですが、漢字で書かれた日本名は、どんな植物か想像ができるため、
漢字もセットで書かれているのが一番わかりやすいかもしれませんね。

さて、他に印象に残った名前をいくつかピックアップします。

・「キュウリグサ(胡瓜草)」は、葉を軽くもむと胡瓜のような匂いがする。
・「ヘクソカズラ(屁糞蔓)」は、花は可愛いものの、悪臭ゆえにこの名前に。
・「ワルナスビ(悪茄子)」は、食べられず、刺だらけで痛い。

かなりインパクトのある名前ですよね。

そのほか、それぞれの植物をどう見たらいいのかも載っています。
例えば、ちょうど見頃を迎えている「タチアオイ」は、
梅雨時期を代表するお花ですが、梅雨入りの頃に咲きはじめて、
てっぺんまで咲き進むと梅雨が明けると言われているそうですよ。

こんな感じで、植物にまつわる様々な知識を得ることができる一冊です。
タイトルに「子どもに教えてあげられる」とあるとおり、
お子さんとお散歩しながら、親子で学んでいくのもいいかも。
ちょっと気が早いかもしれませんが、夏休みの自由研究にもいいのでは。

親子で一冊いかがでしょう。

yukikotajima 12:06 pm

『まずはこれ食べて』

2023年6月14日

私は料理が得意ではないにもかかわらず、食べ物が出てくる小説が好きです。
そして、私にも作れそうなものは、本を読んだ後に作っています。

今日ご紹介する本も、読んだ直後に目玉焼きを作ってご飯にのせて醤油をたらし、
サラダのドレッシングも本のレシピ通りに作って食べました。
いずれもとても簡単に作れましたし、もちろん美味しかったです。

今日の本はこちら。

『まずはこれ食べて』
原田ひ香
双葉文庫

そもそも、この本は読む前からお腹が空きました。
だって、表紙が半熟の目玉焼きがご飯にのったイラストで、
その横に「まずはこれ食べて」と手書きで書かれているんですもの。
本を目にした瞬間、「うん、食べる」と本に向かって返事をしたくなりました。(笑)

原田ひ香さんは、ドラマ化もされた『三千円の使いかた』でおなじみの作家さんです。
私も原田さんの作品は好きでよく読んでいます。
食にまつわる本ですと、『口福のレシピ』がお気に入りです。

◎『口福のレシピ』の紹介は コチラ

『まずはこれ食べて』も食にまつわる本で、
2019年に発売され、今年4月に文庫化されました。

舞台はとあるベンチャー企業です。
社員は皆忙しく働き、生活も不規則になっています。
そのため、食事はおろそかになり、社内も散らかったままです。
何より会社の空気が殺伐としていて、決していい環境とは言えません。

そこで、社長は家政婦を雇い、掃除と食事を作ってもらうことにします。

やってきたのは「みのり」という50代の女性です。
愛想は良くないものの、仕事は完璧で、
彼女の作るご飯はどれも美味しく、食べると心がほっとするのでした。

物語は連作短編集になっていまして、
章ごとに様々な社員が登場し、彼らが抱えているものが明らかになっていきます。

皆、みのりから「まずはこれ食べて」と言われ、
みのりの作った料理を食べながら、自分の本当の気持ちに気付きます。

その、心がほどける感じがいいんですよ。
読んでいる私の心までがじんわりとしました。

人ってなかなか自分の気持ちに正直になれなかったりしますからね。
誰かのせいにしたり、本音から逃げてしまったりして。

誰だって完璧じゃないし、嫌なところもあるものですが、
登場人物たちのダメな部分もとてもリアルなんです。
だから身近に感じられましたし、彼らの心が軽くなるのがより心にしみました。

物語はこんな感じで、社員たちを順番に救って終わるのかなと思いきや、
後半、お〜っと、そうきたか!とびっくりする展開が待っていました。
詳しくは、本を読んでお確かめ頂きたいのですが、
えーっと、途中で作者が変わりましたか?というくらいの変化でした。

そんな驚きも味わいつつ、本のページをめくってみてください。
まあ、いずれにしても、お腹が空く小説であることに変わりはありません。

疲れていたり、イライラしたりしているときって、
自分の扱いもぞんざいになってしまいがちじゃないですか?
食事もテキトーになって、肌も荒れて、さらに不快感が増して・・・
なんてことは私も時々あります。
でも、疲れているときこそ、ちゃんと心と体が喜ぶものを食べようと、
この本を読んで思いました。

最近、仕事でストレスを抱えているという方は、まずはこれ読んで

yukikotajima 12:07 pm

『やさしい猫』

2023年6月7日

最近、「入管難民法の改正案」に関するニュースをよく見聞きしませんか。
ここのところ、連日のように報じられていますが、
ついに、きょうの参議院本会議で、法務大臣に対する問責決議案が否決され、
与党は、あさっての本会議で可決、成立させる方針です。

入管難民法改正案は、強制退去を命じられても
送還を拒む外国人の退去を進め、入管施設への長期収容を解消するのが狙いです。

問題が解決されるならいいのでは、と思いそうですが、
この改正案に反対する人たちもいます。
送還ではなく、保護をしてほしいと。

この入管法について、あなたはどれくらいご存じでしょうか。
正直なところ詳しいことはよくわからない、という方もいるのでは。

恥ずかしながら、私もそんな一人でした。
でも、この本を読んだあとは入管関連のニュースが
決して他人事とは思えなくなりました。

『やさしい猫』
中島京子
中央公論新社

2010年に『小さいおうち』で直木賞を受賞された中島京子さんの話題作です。
2021年に発売され、吉川英治文学賞をはじめ様々な賞を受賞しました。
ドラマ化も決まり、6月下旬からNHKで放送が始まります。主演は優香さんです。

そして、この『やさしい猫』は、本を愛する
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。

まずは、野口さんの推薦コメントをご紹介します。

日本の入管制度や、人権について、とても考えさせられるお話でした。
日常では、聞き慣れない言葉が並び、現実に起きている事を知るきっかけになりました。
現実問題に目を向けながら、家族愛に溢れた力作です。
大人も子供も読んでほしい!!

実際、お子さんでも読みやすいと思います。
というのも、この物語は女子高校生が「きみ」に伝えるために書いたものだからです。
「きみ」が誰なのかは本を読んで確かめていただくとして、
女子高校生のカジュアルな手紙のような文章ですので、
「入管」を扱った小説ですが決して難しくはありません。

簡単にどんなお話なのかご紹介しましょう。

物語の語り手である女子高校生のマヤは、
シングルマザーで保育士のミユキ(ドラマでは優香さんが演じます)と二人暮らしです。
ミユキはある場所でスリランカ人のクマさんと出会い、二人は惹かれあいます。
娘のマヤもクマさんのことが大好きです。

そして色々ありながらも二人は結婚し、
これから家族3人での幸せな日々が始まろうとしていたときに、
クマさんは入管施設に収容され、母国への強制送還を命じられてしまうのです。
しかも、2人は偽装結婚ではないかと疑われてしまいます。
なんとかしてクマさんを救いたいミユキは、
夫の在留特別許可を得るために国を相手に裁判を起こす、という物語です。

この本を読んで私は恥ずかしくなりました。
入管の事を全然知らなかったなと。

外国人というだけで、理不尽な思いをしている人が大勢いるのです。

例えば、アメリカで生まれた子どもはみんなアメリカ人になれるのに、
日本では両親のどちらかが日本国籍じゃないと、日本人にはなれません。
そのため、日本で生まれて日本語しか喋れないのに
生まれたときから非正規滞在になってしまう子どももいるわけです。
そして、ある日、親の母国に行かざるを得なくなってしまう、なんてこともあります。

この物語では、そういった入管に関する様々なことを
語り手のマヤを通して、私たち読者も一緒に学んでいくことになります。

私は、気付いた時にはマヤたち家族を応援する友人の気分でした。

多くの方に読んでいただきたい一冊です!
そして、今月下旬からスタートするドラマもあわせてご覧になってみてください。
私は必ずや見ようと思います。
ちなみに、私は配役を知ったうえでこの物語を読んだので、
すでに一度ドラマを見ている気分です。(笑)

今日ご紹介した中島京子さんの『やさしい猫』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 2:08 pm

『あわのまにまに』

2023年5月31日

本を読み終えた時、ああ面白かった!
とパタンと本を閉じて終わるタイプの本もあれば、
再度読み直したくなる本もあります。

今日ご紹介する本は後者です。
読み終えた瞬間、すぐさま読み直してしまいました。
すると、まったく同じ文章なのに印象はまるで異なり、
2回目はもはや別の物語を読んでいるかのようでした。

1回目は、これってどいうことなんだろう?この人は誰?
とドキドキしながら読み進めていきましたが、
2回目は、何気ないシーンやさりげない会話が浮かび上がって見えてきました。

今日ご紹介する本はこちら。

『あわのまにまに』
吉川トリコ
株式会社KADOKAWA

「第36回山本周五郎賞」にノミネートされたほか、
発売前から重版が決定するなど、今話題の一冊です。

『あわのまにまに』は、ある家族の50年が描かれた6章からなる連作短編集です。
それも、2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼっていきます。

6章すべてのお話に出てくるのが「いのり」という名の女性です。

まずは、ちょっと先の未来、2029年から。
いのりの9歳の娘の目線で始まります。
彼女はこれまで大人たちが話しているのをこっそり聞いて集めた情報から、
「うちの家族はふつうとはちがう」と思っています。

その後は、いのりに関わりのある人たちが語り手となり、
家族たちの秘密も明らかになっていきます。
ちなみに、いのり自身の視点の物語はありません。

物語は10年刻みで、その間の物語は描かれていないため、
読者は想像しながら読むことになります。
そして、その想像も楽しいものでした。

時代ごとに、流行りや価値観、喋り方も異なり、
章が変わると、がらりと時代の空気感が変わるのも印象的でした。

例えば、1979年は、女性は24、25歳までに結婚して退職するのが当たり前でしたが、
今では年齢問わず女性も自分の好きな仕事をするようになっていますよね。
また、恋愛や結婚に関しての価値観も大きく変化しています。

物語は1979年で終わるのですが、
私は、読み終えた瞬間、読み返したくなりました。
それも1979年から2029年に向かって。
2回目はもはや別の物語を読んでいるかのようでした。

ある女性が物語の中でこんなことを言っています。
「外面なんていくらでも取り繕っておけばいい。
どうせほんとうのことなんか、他人にはわかりはしない」と。

たしかに私も最初は外面しか見ていませんでした。

第1章で、いのりの娘は「うちの家族はふつうとはちがう」と気付くのですが、
そもそも「ふつうの家族」って何なのでしょうね。
というか「家族」って何なのでしょうね。

ぜひあなたも本のページをめくりながら、考えてみてください。

yukikotajima 12:35 pm

「花のお江戸ライフ—浮世絵にみる江戸っ子スタイル」

2023年5月24日

ちょうど今の時期は、旅行をするのにいい季節ですよね。
ガイドブックを手に旅の計画を立て、
旅先では、その土地の名物を食べたり、お土産を買ったり、景色を楽しんだり。
想像しただけでもワクワクしてきますが、
そんな旅の楽しみ方を、江戸時代の人たちも同じようにしていたようですよ。

現在、富山県水墨美術館では、
企画展「花のお江戸ライフ—浮世絵にみる江戸っ子スタイル」を開催中です。

浮世絵を通して、当時の江戸っ子たちが
何に夢中になっていたかを紹介する展覧会なのですが、
まるで私自身が江戸時代にタイムスリップしたかのような気分で楽しめました。
それこそ気分は江戸っ子でした(笑)

展示室はもちろん静かだし無臭なのだけど、
展示作品を見ていると、人の話し声や動物の鳴き声が聞こえてきたり、
美味しそうな料理の匂いがしてきたりしました。

***

「浮世絵」と言うと江戸時代を代表する芸術ですが、
当時は広く庶民に支持されたメディアだったそうです。

例えば、歌川広重の「東海道五拾三次」は、
今の観光ガイドブックや観光情報を紹介するサイトのようなものだったのですって。
江戸っ子たちは、広重の浮世絵を見ながら
「私も旅に行きた〜い!」と思っていたのですね。

そもそも浮世絵は、17世紀後半に始まり、
最初は美人画、役者絵が主なテーマとして描かれ、
18世紀後半に喜多川歌麿や東洲斎写楽らが登場し、黄金期を迎え、
19世紀に入ってから庶民の娯楽の対象が広がったことで、
様々な浮世絵が描かれるようになったそうです。

この展覧会では、そんな当時の江戸っ子たちが夢中になったものを
浮世絵を通して知ることができます。

ちなみに、江戸っ子たちが当時はまったのは、
旅行、メイク、ペット、グルメ、ガーデニングなどです。
今の私たちとまるで同じです。
会場では、これらを描いた浮世絵がテーマごとに展示されています。

絵師もすごい顔ぶれでして、葛飾北斎、歌川広重などの作品が約150点も並んでいます。

様々な作品の中で私が印象に残ったのは、
着飾った姿ではなく、家にいる時の素の女性の姿です。

歯磨きや、足の指の爪を切っているところ、
毛抜きで眉を整えている姿などが描かれていまして、
これはまるで家での私じゃないか!と思わず心の中で突っ込んでしまいました。
よそゆきではなく、普段の様子を切り取っているのがいいのです。

他には、銭湯で喧嘩をしている女性たちや、
居眠りをしている男性の顔に落書きをしている女性、
噂好きの女性が誰かの話に聞き入っている様子なども躍動感があって楽しかったです。

また、動物が描かれた作品もたくさん展示されていました。
当時、人気のペットは、犬と猫と金魚だったそうですよ。

中でも金魚の入った金魚玉(ガラス製の容器)を持つ女性の絵を
浮世絵師はよく描いていたそうです。
実際、絵の中の金魚を見つめる女性たちは嬉しそうな表情をしていまして、
これは描きたくなるのもわかるわと納得。

私、作品に描かれた人の表情を見るのが好きなんですよねえ。
特に複数の人が描かれた作品は、
面白い表情をしている人や、ふざけている人もいて、とても楽しいのです。

ぜひ皆さんも作品をじっくりご覧になってみてくださいね。

なお、会場では、浮世絵の他にも、
肉筆画や、当時の食べ物を再現した食品サンプル、
また、15年前に富山市の民家で発見された版木も特別に展示されていますので、
浮世絵とあわせてお楽しみください。

「花のお江戸ライフ—浮世絵にみる江戸っ子スタイル」は、
富山県水墨美術館で6月25日(日)までの開催です。

あなたも江戸っ子気分で江戸にタイムスリップしてみては。

◎富山県水墨美術館のサイトは コチラ

今回は図録もゲットし、家でも楽しんでいます。

yukikotajima 11:30 am

『今夜星がみたくなる 夜空の手帳』

2023年5月17日

ヨリミチトソラを担当するようになってから、
放送後にFMとやまの駐車場で夜空を見上げるのが習慣になりました。
その日の月の形や目立つ星を見つけては、ひそかに写真を撮っています。

でも、残念ことに星の名前がわからないのです。
星の名前や星座がわかったら、もっと夜空を楽しめるのに!
と思っていたところ、こんな本を見つけました。

『今夜星がみたくなる 夜空の手帳』
渡部潤一 監修
東京書籍

そう、手帳です。
大きさはスマホサイズで、ビニールカバーがついていますので、
バッグの中に入れて持ち歩くことができます。

パラパラッとめくってみると美しい夜空の写真があらわれ、
見ているだけでも癒されます。どの写真も幻想的で本当に綺麗です。

もちろん、星にまつわるお話もたっぷり載っていますので、読み物としても楽しめます。
星の種類や星が光っている理由などの「夜空の基本」から、
「たこやき」という小惑星があるよ、といった変わり種まで、なんとその数、193個!

本の構成もわかりやすく、季節ごとに夜空の特徴が紹介されています。

ちょうど今の時期は冬や夏と比べると明るい星が少ないようですが、
北斗七星がある「おおぐま座」や
ポラリス(北極星)がある「こぐま座」などが楽しめるようですよ。

また、6月〜8月は星空が綺麗に見えるそうで、
「天の川」がよく見え、明るくわかりやすい並びの星座が多いのだとか。

と言っても、星座でわかるのはオリオン座だけ、という方もいると思います。
恥ずかしながら私もそんな一人です。。。

でも、これがあるとばっちり夜空を楽しめます!
それは、天体観測用のアプリです。
この『夜空の手帳』にもオススメのアプリが3つ紹介されていまして、
さっそく私もそのうちの1つをスマホに入れてみたのですが、これがとっても楽しい♪

アプリを入れたスマホを夜空にかざすと、
今目の前に見える星や星座が何かひとめでわかるので、
夜空が一気に身近なものになり、ずっと眺めていたくなります。

私はすっかりはまってしまい、夜、光る星を見つけてはスマホを夜空にかざし、
それがどんな星なのか確認するようになっています。

オススメのアプリについて詳しくは、『夜空の手帳』を手に入れてお確かめください。

この本を監修された天文学者の渡部さんは、
夜空を見て心癒されることをことを「星空浴」と表現しています。
詳しくは、本を読んでいただきいのですが、
星空浴には癒し意外にも様々なメリットがあるようですよ。

何かと疲れが出てくる5月です。
あなたも「星空浴」をして、リラックス&リフレッシュしてみませんか。

そうそう!
この本にはそれぞれの星座に関連したギリシャ神話も紹介されているのですが、
私は数年前、気まぐれな朗読会で星座と神話の物語を朗読したため、
その時のことが懐かしく思い出されました。

ちなみに、私は、愛と美の女神アフロディーテとして朗読しました(笑)。

◎詳しくは コチラ

あらためて見ると、なかなかにインパクトがありますな。

yukikotajima 11:11 am