ゆきれぽ

2025年6月25日

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『おでかけアンソロジー おさんぽ 私だけの道、見つけた。』

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最近いろいろなところを散歩しました。
東京の下町に鎌倉に奈良、それからフィレンツェや海の中も散歩しました。
まあ、すべて本の世界なので空想散歩ですが。(笑)

今日はお散歩について書かれたアンソロジーをご紹介します。

『おでかけアンソロジー おさんぽ 私だけの道、見つけた。』
だいわ文庫

先月ご紹介した『おでかけアンソロジー ひとり旅 』の「おさんぽ」バージョンです。

◎『おでかけアンソロジー ひとり旅 いつもの私を、少し離れて 』の私のブログは コチラ

『ひとり旅』がとても面白かったので、『おさんぽ』も読んでみることにしました。
今回は41人の作家さんによるお散歩エッセイが収録されています。

私、この本を読んで気付いたことがあります。
お散歩エッセイを書くことは、実は難しいことだと。
だって、ただぶらぶら歩くだけなのに、
読む人を飽きさせない文章を書かなければいけないのですよ!

もちろん、このアンソロジーは面白かったのですが、
だからこそプロの作家さんたちの凄さにあらためて気付かされました。
書き方次第では退屈になってしまいそうなのに、
豊かな感性と独特な視点、そして素晴らしい表現力によって、
うきうきの時間にしてしまうのですから。

41人の作家さんの中には、阿川佐和子さん、池波正太郎さん、蛭子能収さん、小川洋子さん、
谷川俊太郎さん、谷口ジローさん、村上春樹さん、燃え殻さんなどがいます。

人によって散歩をする場所も時間も時代も違いますし、
散歩中にすることや感じることも異なります。
また歩き方も、てくてくぶらぶらのそのそ歩く人もいれば、
当てずっぽうに歩く人や、とぼとぼ歩く人、ふらふらした散歩をする人など様々です。

『魔女の宅急便』でおなじみの角野栄子さんのエッセイは、
文章のリズムから足取りが軽いことが伝わってきますし、
向田邦子さんの下町散歩は、食べ物のいい匂いが漂ってきます。
また、中原中也さんのほろ酔い散歩も良かったです。
気持ちよく酔っているからこその正直な気持ちが漏れているのが。

こうやって自分自身が散歩している様を書く人もいれば、散歩についての考察を述べるもいます。
劇作家、演出家の宮沢章夫さんは、散歩はなにも考えずに歩くのがいいと言います。
でも、なにも考えないなんて難しそうですが、
散歩中、ある言葉がふと口から出た時は、なにも考えていないということなんですって。
その言葉とはいったい何だと思いますか?
気になる方は、ぜひこの本を読んでみてください。
きっと誰もが一度は口にしたことがあると思います。

いやあ、どのエッセイもとても面白かったです。

本を読み終えた時、スマホの歩数計は全く変わっていませんでしたが、
気分的には実際に散歩をしたあとのような爽快感がありました。

散歩をしたくても今の季節は、雨だったり暑かったりして、
いまひとつ気分がのらないという方もいるかもしれませんが、
そんな方は、本の世界をお散歩してみてはいかがでしょう。
場所も時代もこえて色々なところを散歩できますよ。

その一方で、この文庫を持って実際に散歩に出るのもいいかもしれません。
散歩途中にどこかで本を開いて、エッセイを一つ二つ読んでみるのもいい時間かも。

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