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『結婚とわたし』

2024年3月27日

「料理は女が作るもの」
なんて言おうもんなら、
今の時代、間違いなく炎上します。

今や、家事も子育ても女性だけがやればいい、
という時代ではなくなりました。

とは言え。
私の周りの既婚者を見てみると、
まだまだ妻のほうが家事や子育てをしていることが多く、
妻の側も「仕方ない」とあきらめていたりしています。
(もちろん夫婦共にしているご家庭もあると思いますが!)

それ、おかしくない?(怒)
と言っても未婚の私の言葉には説得力がなく、
やり切れない気持ちでいっぱいになるのですが、
既婚者の言葉なら響くのでは?ということで、
今日は、妻の本音が詰まっている、
というか、吐き出された一冊をご紹介します。

『結婚とわたし』
山内マリコ
ちくま文庫

2017年に発売された単行本
『皿洗いするの、どっち? 目指せ、家庭内男女平等!』
(マガジンハウス)の文庫版です。

単行本は、雑誌「an・an」で連載されたエッセイを書籍化したものですが、
文庫版は、まったく別の本として楽しんでもらえるようにと、
連載時の日記形式に戻し、さらに後日談も加筆した〈完全版〉です。

私は発売当時、単行本も読んでいますが、
あらためて、完全版である『結婚とわたし』も読んでみました。

◎2017年の単行本の感想は コチラ

エッセイなので、普段の山内さんの言葉が
そのまま文字起こしされている感じです。

富山出身の山内さんは、以前FMとやまでも喋っていましたので、
声をご存じの方もいらっしゃると思いますが、
私には、山内さんのあの声のままで再生され続けました。

このエッセイには、同棲生活を経て結婚した山内さんが、
夫との生活の中で、家庭内男女平等をめざし奮闘する様が綴られています。

妻側の不満がたっぷり詰まっていますので、
既婚の女性は、「そうそう!」ときっと頷きっぱなしになることでしょう。
ですが、私は男性にこそ読んで頂きたいと思いました。

夫への不満をわざわざ読みたくないよ!と思うかもしれないけれど、
妻の本音を知ることは、無駄では無いと思います。
それに夫の言い分も書かれていますので、
決して一方的な内容ではありません。

それにケンカしつつも仲はいいですし。
山内夫妻のやり取りから気付かされることは、
きっとたくさんあると思います。

何よりエッセイとして面白いのです。
夫のことをあれこれ言っているわりに
山内さん自身の失敗談も多く、
「山内さん、何やってんのよー!(笑)」
と何度突っ込んだことか。

ただ夫の文句を言って、ああスッキリ!では無く、
山内さんが求めているのは、あくまでも「家庭内男女平等」です。
果たしてその目的は果たされるのか。
詳しくは本を読んでお確かめください。
ちなみに、〈完全版〉は、現在の山内さんの言葉(ツッコミ)
が加筆されているのもポイントです。

ここで、著者の山内マリコさんから
リスナーの皆さんへのメッセージをご紹介します。

***

FMとやまをお聞きのみなさん、こんにちは!山内マリコです。
オッケイトークが終了して早3年。
リスナーさんたちに忘れられるんじゃないか、ちょっと心配してます(笑)。

2月に発売された『結婚とわたし』は、
ちょうどオッケイトークがはじまった年に結婚した、
夫との生活を綴った日記エッセイです。
主に家事分担をめぐって繰り広げたケンカを書いています。

先日対談した富山出身の大先輩、上野千鶴子さんも、
「よくこんな赤裸々に書いたわね〜」とおっしゃってました。

ちなみに、富山もたくさん出てきます!

まだ北陸新幹線が開業していなかった頃の
越後湯沢での乗り換えの忙しなさ、
富山へ行く日にインフルエンザでダウンして、
イベントが延期になったこと……

結婚に興味のない人でも、笑って読んでもらえるエッセイになっていると思います。
ぜひぜひ本屋さんで手にとってみてください!

***

山内さん、メッセージをありがとうございました。

ちなみに、毎年富山マラソンに出ている私に
「マラソンなんて絶対にムリ〜!」
と言っていた山内さんでしたが、
なんと先日マラソン大会に参加し、
10キロを完走したそうです。

すごーい!ナイスラン♪

人間、変わろうと思えば、変われるんですね!
ということを、今回私は山内夫妻から教わりました。

yukikotajima 11:00 am

『存在のすべてを』

2024年3月20日

先々週は、今年の本屋大賞にノミネートされている
津村記久子さんの『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
をご紹介しましたが、今日の本もノミネート作です。

◎『水車小屋のネネ』の紹介は コチラ

『水車小屋のネネ』を読んだとき、
今年の大賞はこれでいいじゃないか!と思ったのですが、
その気持ちが揺らいでいます。

だって、この本もとても良かったのですもの。

『存在のすべてを』
塩田武士
朝日新聞出版

塩田さんと言うと、映画化もされた
『罪の声』、『騙し絵の牙』などでおなじみの人気作家です。
ラジオでもこれまで様々な作品を紹介してきました。

塩田さんの文章は、呼吸が合っているのか、気持ち良く読めます。
話がかみ合う人と会話をしているような心地良さがあるのです。
また、映像が見えます。
それも景色だけでなく、人の表情の変化や心の動きまでしっかりと。

今作もノンストップでページをめくり続けました。

物語は、30年前の「二児同時誘拐事件」から始まります。
同じ日に二人に男の子がそれぞれ別の場所で誘拐されます。
一人はすぐに発見されるものの、もう一人は見つかりませんでした。
ところが、3年後、その子どもが帰ってきます。
警察は、これで犯人を捕まえられると思ったものの、
男の子は、空白の3年について、一切喋ろうとはしませんでした。
結局犯人はつかまらないまま、事件は時効を迎えます。

事件から30年後、週刊誌に、
ある人気写実画家の男性が誘拐事件の被害者だったという記事が載ります。

それを見た、事件当時警察担当だった新聞記者の男性は、
あらためて事件を追うことにします。

物語は、その新聞記者をメインに、
誘拐された男の子に関わる人たちの視点も混ざりながら、
真実へと近づいていきます。

誘拐された男の子は、空白の3年間、
いったいどこで誰とどのように過ごしていたのか。
そしてなぜ3年後に突然帰ってきたのか。

この続きは、ぜひ実際に作品を読んでお確かめください。

***

事件を追う警察、新聞記者、
誘拐された男の子、そしてその家族、
さらに彼らに関わる人たち、
それぞれに葛藤があり、
私だったらどうするかしら、
と考えながら読み進めていきました。

ですが、終盤はそんな様々な葛藤に冷静に向き合えなくなり、
ほぼ泣きながら読んでいました。

読み終えた後は、物語では描かれていない
登場人物たちの過去や未来を想像しながら
しばらく余韻に浸りました。

そんな余韻も含め、いい読書となりました。

誘拐事件と聞くと、嫌な気持ちになりそうですが、
この物語は、大切な人を思う気持ちにあふれた愛の物語です。
それも温かな。
ああ、ダメだ。こうやって思い出しただけでまた泣けてくる。(涙)

短絡的な思考になりがちな今の時代にこそ、読んで頂きたい一冊です。

最後にもうひとつ。
誘拐された男の子は、今や人気写実画家として活躍しているのですが、
この物語では、まるで写真のような「写実画」
についても深く掘り下げられていまして、
いつか写実画の美術館であるホキ美術館に行ってみたくなりました。

そういえば、私が好む小説には、何かしらアートが絡むものが多いなあ。
先週もアート旅がテーマだったし。
その前も画家が出てきたし。

ただ、アートと言っても、アプローチは異なっていて、
それぞれに面白さがあるので、ぜひどの作品も読んでみてください。

yukikotajima 12:26 pm

『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』

2024年3月13日

いよいよ今度の土曜日、3月16日に北陸新幹線が
福井県の敦賀まで延伸されます。

近いうちに新幹線に乗って福井をはじめ、関西方面に行きたい、
と考えている方もいるかもしれません。

春ですし、旅に行きたくなりますよね!
あなたはどんな旅をしたいですか。

私は、旅先ではその土地の美味しいものやお酒を味わうのはもちろん、
アートを見るのが好きなので、美術館にも行きたいです。

今日ご紹介する本は、アート旅をしている気分になれる一冊です。

『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』
一色さゆり
文春文庫

一色さんは、2015年に第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、
翌年に受賞作『神の値段』でデビューされました。

東京藝術大学を卒業後、ギャラリー・美術館勤務を経て、作家になったそうで、
これまで数々のアート小説をお書きになっています。

今回の作品も、まさにアート小説です。

本の帯には「あなただけのアートの旅にご案内します」とあり、
その一行を目にしただけで、ワクワクしました。

主人公は、仕事を失ったばかりの女性の優彩(ゆあ)です。
ある日、彼女のもとに見知らぬ旅行会社から
「アート旅」のモニター参加の招待状が届きます。
だまされているのかもしれないと思いながらも
待ち合わせ場所の空港に行ってみれば、
ツアーガイドの桐子が待っていて、無事、旅が始まります。

二人が向かったのは、瀬戸内海の直島です。

空港を出て、リムジンバスに乗って、窓の外の景色を見ているうちに、
私は本を読んでいることを忘れて、
二人と一緒に旅をしている気分になっていました。
直島、とてもいいところでした。(笑)
まあ、実際のところ訪れたことは無いんですけどね。

また、直島以外のアート旅も良かったです。

物語は、4つのお話が収録された連作短編集で、
桐子が勤める旅行会社のアート旅に参加した4組の旅行客たちが登場します。

旅行客たちは、それぞれに悩み抱えています。
結婚する相手を間違えたかな…とか、
何をやってもうまくいかないなあとか。

でも、彼らはアート旅を通して、気持ちに変化が生じます。
それもいい変化が。

旅の楽しみ方について、ガイドの桐子がこんなことを言っています。

想像もしなかった興味深いことに出会える。
そういうユリイカな瞬間を味わっていただきたい。

ちなみに、「ユリイカ」とは、
ギリシャ語で「わかった」と言う意味の、
ひらめいた瞬間を指す言葉だそうです。

桐子のアート旅に参加した旅行客たちも、
その「ユリイカ」な瞬間に出会います。

旅は旅でも、今回は「アート旅」です。

私もアート好きなので、
旅行客たちが、様々なアートをきっかけに
「わかった!そういうことか!」と、
大切なことに気付くのが嬉しく、私も幸せな気持ちになりました。

私にとって、お気に入りの一冊になりました。
いつか、この本を手に同じルートでアート旅をしてみたいな。
文庫なので旅のお供にもぴったりです。

なお、アート旅に興味はあるものの
アートはそんなに詳しくないという方でもご安心ください。

実際この本に出てくる旅行客たちも初心者ですし、
桐子さんという頼れるガイドさんもいますので、安心して楽しめます。

ぜひあなたもアート旅をしている気分で、この本を読んでみてください。

本を読んだ後は、いい旅から帰ってきたあとのような
満たされた気持ちになっていると思いますよ。

この本、シリーズ化してくれいないかなあ。
桐子のアート旅にもっと参加したい!

yukikotajima 12:09 pm

『水車小屋のネネ』

2024年3月6日

先週よりちょっと優しい田島です。(笑)
なぜって、いろいろな人の優しさに触れたからです。
と言っても、本の世界でですが。

今日ご紹介する本は、こちら。

『水車小屋のネネ』
津村記久子
毎日新聞出版

毎月第一週は、明文堂書店とのコラボ回!
高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本の紹介です。

この本は、第59回谷崎潤一郎賞を受賞したほか、
4月10日に発表される本屋大賞にノミネートされています。

ノミネート作を全部読んだわけではないけれど、
私の中では本屋大賞決定です。(笑)
だって、本当に良かったのですもの!

500ページ近くもある長編で、
大きな事件が起こるわけでも
驚くべき事実が明らかになるわけでもないのに、
全く飽きることはなく、
それどころか残りのページが少なくなった時には、
もっとこの世界にいたいと思ってしまった程です。

『水車小屋のネネ』は、二人の姉妹を中心に、
姉妹が出会った人々の40年が描かれた長編小説です。

物語は、1981年から2021年まで10年刻みで進んでいきます。

第一話の1981年では、姉の理佐は18歳、妹の律は8歳です。
姉妹は、身勝手な親から離れて二人で生きることに決め、
姉はおそば屋さんの仕事を見つけます。
それも「鳥の世話じゃっかん」とある求人を。

そのおそば屋さんは、山間の町で夫婦が営んでいるのですが、
そば粉は水車小屋の石臼で挽いています。
そして、その小屋には、そば作りに欠かせない鳥が住んでいます。

まさしくの本のタイトルの水車小屋のネネです。

ネネは、ヨウムという鳥です。
オウムではありません。
ヨウムは、人間の三歳児くらいの知能があり、
とてもかしこく、ものまねが得意で、おしゃべりをします。

私は富山市ファミリーパークで見たことがあります。
灰色で尾の部分が赤い鳥、あなたも見たことはありませんか?

実はこのヨウムのネネが「しゃべり」で、そばづくりを手伝っていたのでした。

そして、求人の条件が、おそば屋さんの仕事のほかに、
ネネの世話もしてほしいというものでした。

ネネは、おしゃべりも歌も大好きで、
ラジオから好きな曲がかかると一緒に歌うような陽気な鳥で、
姉妹ともすぐに仲良くなります。

高校を卒業したての18歳の姉と8歳の妹の二人暮らしですから
町の人たちはもちろん心配するわけですが、
おそば屋さんのご夫婦をはじめ、様々な方たち(ネネも含む)が
程よい距離感で見守りながら支えていきます。

そして、成長した姉妹も誰かを支え、
その誰かもまた誰かを支えてと、
それぞれ助け合っていきます。

だからと言って、押しつけがましさはありません。
著者の津村さんは、登場人物たちに無理をさせないようにしたそうです。

その程よい距離感がとても心地良かったです。

物語は、姉の理佐の視点ではじまり、
第二話は、妹の律と、町に移り住んできた青年の視点で、
その後は、律の視点で進んでいきます。

姉妹が成長するにつれて、
関わる人たちも少しずつ入れ替わっていくのですが、
ずっと変わらずそばにいるのが、ヨウムのネネです。
なんとヨウムは五十年くらい生きると言われているそうです。

このネネがいいキャラで、
私もヨウムを飼いたいと思ってしまったくらいです。
今、田島の推しは?と聞かれたら
「ネネ」と答えるくらいにはまっています。

物語は10年刻みで進んでいくわけですが、
水車小屋ではいつもラジオが流れていて、
時代ごとの曲もたくさん出てきます。

ネネはラジオが大好きです。
ラジオの仕事をしている私からしたら嬉しすぎます。
私のリスナーにもヨウムはいたりするのかなあ。

ラジオも物語のいいアクセントになっていますので、
普段ラジオを聴いている皆さんには、ぜひ読んでいただきたいわ。

ではここで、この本を大プッシュされている
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介しましょう。

理佐と律、ふたりの姉妹と、おしゃべりするヨウムのネネ。
それぞれが生きた時代と、自分の人生を重ね合わせて、
その時々で、たくさんの優しい人たちに
支えられてきたことを思い出しました。
全国の書店員が選んだ、本屋大賞ノミネート作、10作品の一冊です。
ぜひ、お読みください!

そうなんですよ。
私も思い出しました。
これまでの人生、多くの人たちに支えられてきたことを。
だから、読んだ後に満たされた気持ちになったのかもな。

ある登場人物がこんなことを言っています。

「自分はおそらく、これまでに出会った
あらゆる人々の良心でできあがっている」

この本を読むと、きっと同じことを感じると思います。
そして、この本もその良心のひとつになるはず。

今日ご紹介した『水車小屋のネネ』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 12:48 pm