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『げんじものがたり』

2021年6月30日

光君(ひかるくん)というと、誰が頭に浮かびますか?

「光源氏」が浮かんだ方は、先日最終回を迎えたNHKのドラマ
『いいね!光源氏くん し〜ずん2』をご覧になっていたのでは?

源氏物語の世界の光源氏が現代にやってくるという物語で、
光を千葉雄大さんが演じていました。
私も見ていましたが、ポテチが大好きなおっとりした光君、最高でした!
なお、この作品は、えすとえむさんの漫画をドラマ化したものです。

私は、源氏物語の漫画というと、
大和和紀(やまと・わき)さんの漫画『あさきゆめみし』を思い出します。
高校時代に受験勉強のために繰り返し読んだため、
今でも登場人物は漫画のキャラクターの顔で覚えています。

受験に役立ったかどうかは別として(笑)漫画のおかげで源氏物語が好きになり、
これまで本や映画、宝塚歌劇団のミュージカルなど、
様々な源氏物語の作品を楽しんできました。

でも、今の京都の言葉で書かれたものは初めて読みました。
今日ご紹介する本はこちら。

『げんじものがたり/いしいしんじ(講談社)』


この小説でもドラマのように光源氏は「光君(ひかるくん)」と呼ばれています。
ただ頭中将は「なかちゃん」ではなく「頭兄(とうにい)」ですが。(笑)

その他、紫の上は「紫ちゃん」、葵の上は「葵さん」など、
おなじみの登場人物たちが今どきの呼び方になっています。

なんと全て今の京都の言葉で書かれています。
それも原文に忠実に訳しているんですって。

平安の都で書かれた『源氏物語』は
本来は「京ことば」で書かれたはずなのに、
これまで与謝野晶子や谷崎潤一郎をはじめ
ほとんどが現代の標準語で書かれてきたのだとか。
そもそも「京ことば」で訳すことは難しいとも言われていたそうです。
その難題に挑まれたのが作家のいしいしんじさんです。

いしいさんが訳された『げんじものがたり』は、
京ことばに加えて、今どきの表現も使われています。

例えば、光君から歌が届いた女性は
「嘘やん、死ぬ!なんてリプしよ!」と言い、
光君も好きな女性のことを
「ていうか、こころの底から無限大に超ラブ」と表現しています。

なんか軽すぎやしないか…と思った方もいるかもしれません。
わかります。私も思いましたから。(笑)

でも、もう一度言います。
いしいさんは、原作に忠実に訳されたそうです。

源氏物語というと、もう少し雅で控えめな印象がありましたが、
今どきの言葉になったことで平安時代の人々が
いかに自分の心に正直であるかがよくわかりました。
特に光君!
今の人たち(私を含む)は、どこか自分の気持ちを
おさえこんでしまうところがありますが、
光君は自分の意のままに生きています。

ただ、言葉は今どきでも時代背景は平安のままですので、
現代の感覚とは異なる点も多々あるということはお忘れなく。

私は途中、平安の物語であることを忘れかけ、
次々に女性に恋していく様子に「光君サイテー!」と
心の中で突っ込んでしまいましたもん。(笑)

やはり同じ話でも使われる言葉によって印象って異なるものですね。

ちなみに、いしいさんの『げんじものがたり』は
作者である紫式部が「ちょっと聞いてよ〜!」と、
お喋りというか、噂話をする感じで進んでいきます。

例えば、光君のお母さん「桐壺の更衣」は帝の寵愛がすぎるあまり
周りの女性たちからいじめられていたのですが、
紫式部はこのように言います。

朝夕のおつとめに出はっても、
まわりからのジェラシー、イヤミばっかし積もっていくし、
それでやろか、えらい病気がちになってしまわはって。

そ・れ・が・や・ねえ!

前世からのご縁が、よっぽど深かったんやろうねえ、
おふたりの間に、ピッカピカの男の子がうまれはったん!

という感じです。笑

ね?まるで紫式部のお喋りを聞いているようでしょ。
ずっとこの調子で進んでいきます。

ちなみに、源氏物語はかなり長いお話ですが、
いしいさん版は光君が23歳の頃までの物語ですので、
それほど長くはありません。

ここのところ梅雨らしいお天気が続いていますね。
ぜひ雨の日の夜は、紫式部の噂話に耳を傾けてみては?

yukikotajima 9:33 am

『読書をする子は〇〇がすごい』

2021年6月23日

あなたは子どもの頃、絵本を読むのは好きでしたか?
大人になった今、どれくらいの頻度で本を読んでいますか?

私はラジオで毎週本の紹介をしている通り、本は好きで
子どもの頃からずっと読んでいます。

私の家にはたくさんの本や絵本があったので
本好きな母の影響かな?と思って母に聞いてみたところ、
私が通っていた保育園では毎月一冊、
指定の絵本を買うことが決められていたそうです。
そして私は毎月、新しい絵本を喜んで読んでいたようです。

小学生になると学校の図書室に通い、
小5のときには本を読んでは絵日記のように
絵と文で感想を書くことにはまっていたところ成績が下がり、
父親から「読書禁止令」が出たほどです。

結局大人になった今もそのころと変わらないことをしているのですが。笑


小さなお子さんがいらっしゃる方は、
お子さんは絵本をよく読んでいますか?
またお家には何冊くらいの絵本があるでしょうか。

そんなに無いかなという方は、お子さんの目に入るところに
面白そうな絵本を置いてみてください。

子どもの頃から絵本や本に親しむことで、いいことがたくさんあるそうです。

今日ご紹介する本は、こちら。

『読書をする子は〇〇がすごい/榎本博明(日経プレミアシリーズ)』


榎本さんは心理学博士で、
著書には『伸びる子どもは〇〇がすごい』
『ほめると子どもはダメになる』などがあります。

この本には、読書をすることでどんないいことがあるのか、
たくさんのメリットが挙げられていまして、
読書好きの私には共感の連続でした。

例えば、

「小説を読むことで語彙力や読解力が身につくだけでなく、
自分以外の視点に対する想像力が高まっていく」

とおっしゃいます。

自分と違う考えの人に触れることで
他者の立場や、ものの見方・感じ方に想像力を働かせることができると。

そうなんですよ。
実際は人の心をのぞくことは不可能だけど、本の場合はのぞけちゃうのです。
そして、登場人物の思いに対して、自分はそうは思わないけど、
こう思う人もいるのかと知ることができるわけです。

よく「ふつうはこうだろ!(怒)」とキレる人がいますが、
そういう人は、もしかしたら想像力が足りないのかもしれません。

この本によると、2歳から7歳の幼児期は
自分の視点からしか物事を見ることができないそうです。

でも、相手の立場を想像できるようになると、
相手を思いやった行動を取れるようになっていくのだとか。

そこで大事なのが読書というわけです。

ちなみに、榎本さんは、大人になっても自分の視点でしか語れず、
他者の視点に立てない人がいると言います。

また、相手が言っていることの意味が分からなかったり、
文章が読めなかったりする若者が増えているそうで、
2022年度から高校の国語の授業では
契約書や自治体の広報などの実用文の読み方を学ぶ授業が始まるそうです。

中には「うちの子は普段からよく喋るから大丈夫!」
という人もいるかもしれませんが、
日常会話はできても、授業についていけない子どももいるそうです。

言語は「生活言語」と「学習言語」に分けられ、
授業で使うのは、思考の道具である「学習言語力」なんですって。

この学習言語力を磨くためにも「読書」は大事だと言います。

今、子どもたちの学力の二極化が見られるそうです。
そこには読解力が強く関係しているのだとか。
読書をすることで、その読解力が高まってくそうですよ。

もっと詳しくお知りになりたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。
きっと読んで良かった!と思えるはずです。

いやいや、自分はもう大人になっちゃったからもう手遅れだよー。
と思う方もいるかもしれませんが、あきらめないでください。

何歳になっても読書習慣によって
脳の発達を促すことができるそうですよ。

これまで本を読んでこなかった方は、
お子さんと一緒に読むのがいいそうです。

他にもこの本には、お子さんが本を読むようになるためのヒントや
やってはいけないことなどが具体的に書かれています。

お子さんのいる方だけでなく、多くの方に読んで頂きたい一冊です。
おすすめです!

yukikotajima 11:44 am

『花の子ども』

2021年6月16日

今度の日曜日、6月20日は「父の日」ですね。

お子さんのいるお父さんたちは、
いつ自分が「父親」であることを実感しましたか?

妊娠を告げられたとき?
子どもが産まれたとき?
自分と似ている部分を見つけたとき?

今日ご紹介する本は、こちら。

『花の子ども/オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル
訳:神崎朗子(かんざき・あきこ)【早川書房】』

この本は、アイスランド女性文学賞を受賞した
アイスランドの作家による長編小説で、
日本をはじめ24ヵ国で翻訳され、
フランスでは40万部のベストセラーとなるなど、
今、世界中で話題となっています。

アイスランドというと、どんな印象をお持ちですか?
冬が長く、オーロラが楽しめる場所としておなじみかもしれませんが、
実は、ジェンダーギャップ指数が11年連続世界一位、
世界平和度指数は13年連続世界一位と、
すべての人にとって生きやすい成熟した社会を目指し続けているのが、
アイスランドという国なんだそうです。

ご存じでしたか?

『花の子ども』は、そんなアイスランドの小説家が書いた家族の物語です。

主人公は22歳のロッビという男性です。
一年半前に母を亡くし、父と二人で暮らしています。
また、自閉症で施設で暮らすイケメンでオシャレな双子の弟もおり、
時々家族で食事を楽しむなど関係は良好です。

ロッビは、優秀な成績で高校を卒業したものの大学には進学せず、
亡き母が遺した希少なバラを外国の修道院にある歴史あるバラ園に植えたいと
バラを持って旅に出ます。

彼は亡き母と家の庭で土いじりをするのが好きだったのです。

しかし、旅に出た途端お腹が痛くなって病院に行く羽目になったり、
森ではさまよったり、一人旅のはずが人と一緒に旅をすることになったりと
予定外のことばかりが起きます。

そして、長旅の末、庭園に到着するのですが、庭園は見渡す限り荒れ放題。
でも、彼は、しばらくは取り組むべき仕事があるから
将来のことを考えなくてすむぞと思います。
大好きな土いじりをしながら考えればいいかと。

そんなある日。
かつて一夜をともにし、彼の子を産んだ女性から
「一ヶ月、子どもを預かってほしい」とお願いされ、
彼は9か月の赤ちゃんと暮らすことになります。

***

主人公のロッビは、穏やかな性格で怒ったりはしません。
亡き母の大切なバラを歴史のあるバラ園に植えたいという思い以外は、
基本的には流れに身を任せて生きているところがあります。良くも悪くも。
そもそも、よく知らない女性との間に子どもができたのに、どこか他人事ですし。
それどころか、旅で女性と出会う度、あわよくば…と妄想ばかりしています。

性格が悪いわけではなく、自分に自信がないのです。また、幼い。

そんな彼が突然、娘と暮らすことになり、少しずつ変わっていくという物語です。

ここからの物語がとても良かったです。
それまでは、どこか淡々としていましたが、
赤ちゃんが現れてからは、一気に躍動感が出ます。

ぜひロッビの成長を見守りながら読んでみてください。

***

翻訳本というと難しそうな印象ですが、
この本は全体を通して、穏やかな語り口でユーモアもあって読みやすかったです。

そう、穏やかなのです。
設定だけを聞くともっと修羅場的な雰囲気になりそうですが、そうはなりません。

実はアイスランドでは、子どもが生まれることを理由に
結婚する人は決して多くないのだそうです。

また、冒頭お話した通り、ジェンダーギャップ指数も世界一です。

とは言え、この作品が2007年にアイスランド女性文学賞を受賞した際には、
「アイスランド文学において、新たな男性像が描きあげられた」と評されるなど、
この本が書かれた際には、まだまだジェンダーギャップがあったようです。

14年前の本ですが、今の時代を切り取ったまさに「旬」の本だと思いました。

生き方なんて人それぞれで、私はこう生きていこう!と決めても
その通りにいくとは限らないわけで(実際私もそうですし)、
もっと自由に選択していけばいいのかもなと思いました。
若者も大人も男性も女性も。

今日は父の日を前に、新米パパの物語をご紹介しました。

男性だけでなく女性もぜひ読んでみてね!

yukikotajima 11:03 am

『スモールワールズ』

2021年6月9日

今朝、家族とちょっとしたもめごとがあって、
それが心にひっかかっていて、なんか今日はうまくいかない。
でも、そんな心のうちは誰にも見せずに、
とりあえずいつもと同じふうを装っている。

なんて方はいませんか?

家族のことを考えると、ため息をつきたくなる、
という方もいるかもしれませんが、
きっとどの家族にも何かしら問題があったり
秘密があったりするものなのですよね。

外からは幸せそうに見えても実際は違っていたり、
その逆の場合もあります。

今日ご紹介する小説は、6つの家族の物語です。

『スモールワールズ/一穂ミチ(いちほ・みち)【講談社】』

この本は今、全国の書店員さんたちの間で話題になっているそうです。

4月に今年の本屋大賞が発表されたばかりですが、
(今年の本屋大賞は、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』でした)
早くも来年は『スモールワールズ』が大賞をとりそうな勢いです。

私も『スモールワールズ』を読みましたが、たしかに大変面白く、
これは大賞決まりだなと思いました。私の中でも暫定1位です。

『スモールワールズ』は、6つのお話が収録された短編集です。
それも、思い通りにいかない人生を送っている人たちの物語です。

例えば、子どもが欲しいのになかなかできずに人知れず苦しんでいる女性や、
良かれと思ってしたことが相手にとっては迷惑だったことを知り、
心を閉ざしてしまった男性などがいます。

どのお話も短編なのでさらりと読めますが、
軽く読み進めていくうちにドキリとさせられる瞬間がやってきます。
いきなり明かされる事実に、それまでの物語の空気感ががらりと変わるのです。

短編集はたくさんのお話が収録されているので、
読んだ後に強く印象に残るお話もあれば、
すぐに忘れてしまうものもありますが、
この短編集は内容も順番もすべてしっかりと心に残りました。

どのお話も濃く、そのうえタイプが異なっているので、
1冊読み終えた時には6冊分の単行本を読んだ気分でした。

いくつかご紹介しましょう。

『ピクニック』

生後10か月の赤ちゃんが不慮の死を遂げ、ただでさえ悲しいのに、
追い打ちをかけるように身内が赤ちゃんを殺したのではと疑われ、
ある家族が逮捕されてしまいます。
果たして真実とは?

この物語だけ「ですます調」です。

この丁寧な文体が逆に不穏な空気を漂わせていたので
何かありそうだなと感じていたのですが、
私の予想をはるかに超えた展開が待っていました。
ほんと衝撃的でした。

この衝撃、皆さんにも味わっていただきたい!


『花うた』

こちらは往復書簡で構成された物語です。

唯一の家族であった兄を殺された女性が、
服役中の加害者本人に手紙を送ります。

「今、どんな気持ちで過ごしているんですか」と。

しかし返ってきた返事は幼く、まったく反省も見えません。
腹を立てた彼女は、怒りを込めた手紙を再び送ります。

そして文通がはじまり、
毎回加害者に苛立ちを感じながらも本音をぶつけていくうちに
彼女自身の心に変化が生じていきます。

ちなみに、この物語は最初から二人の未来が想像できます。
私も「なるほど、ここにたどり着くまでのお話ってことね」
と思いながら読み進めていきました。
でも、こちらのお話も驚きの展開が待っていました。

この『スモールワールズ』は、どのお話にも
ん?え?どういうこと?なんで?そうきたか!と驚きの瞬間がやってきます。

それがこの短編集の面白いところです。
ぜひ本のページをめくりながら様々な驚きを味わってみてください。

もちろん魅力は「驚き」だけではありません。
なんといっても人間の描き方がいいのです。
人の心の動きを丁寧に描いています。
怒ったり泣いたりやる気をなくしたりしながらも
些細なことに喜んだり涙したり。
なんだか他人事とは思えませんでした。

この本、今後ますます話題になっていきそうだなー。

なお、『スモールワールズ』の特設サイトには、
この本に収録された短編のコミカライズと
特別掌編『回転晩餐会』がアップされており、
どなたでも無料で読むことができます。

まず掌編を読むだけでも一穂ミチさんの作品のイメージがつかめると思います。
掌編は3分で読めますし、声優さんによる朗読でも楽しめますので、
まずはこちらからチェックしてみては?

◎特設サイトは コチラ

yukikotajima 10:32 am

『リボルバー』

2021年6月2日

ゴッホと聞くと、どんな印象をお持ちですか?

・「ひまわり」を描いた人
・日本のことが好き
・自分の耳を切った
・自ら命を絶った
・狂気と情熱の画家
・ゴーギャンと短い共同生活を送っていた

あたりを上げる方が多いでしょうか。

今日ご紹介する本は「ゴッホの死」に迫るアートミステリです。
同時にゴッホとゴーギャンの物語でもあります。

『リボルバー/原田マハ(幻冬舎)』

原田マハさんは、以前ラジオでもご紹介した
『たゆたえども沈まず』という作品でもゴッホを取り上げています。

◎私の感想は コチラ

『たゆたえども沈まず』には、ゴッホのほか、
パリで浮世絵を売っていた高岡市出身の画商
林忠正(はやし・ただまさ)が登場していたことから
富山では特によく読まれたようです。
お読みになった方もいるのでは?

ちなみに、同じゴッホの物語とは言え、
新作『リボルバー』は、『たゆたえ〜』とは異なる解釈ですので、
ゴッホの死の真相も異なります。
私は、新作は、新たな事実が明らかになったのか!という気分で楽しめました。

もちろん、どちらも原田さんが創作された「小説」なんですけどね。
でも、『リボルバー』は、これが真実なんじゃないかと思えてしまいました。

『リボルバー』は、まず現代のお話から始まります。

主人公は、パリの小さなオークション会社で働く
高遠冴(たかとお・さえ)という日本人の女性です。
パリ大学で美術史の修士号を取得し、
現在もゴッホとゴーギャンについて研究しています。

冴はいつか高額の絵画取引に携わりたいと願いながらも
小さな会社ゆえ、なかなかそんな仕事はやってきません。
そんなある日、錆びついた一丁のリボルバー(拳銃)が持ち込まれます。
それも「フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたもの」として。

冴はそのリボルバーを見るなり、偽物だと疑います。
でも、依頼人は「証明できる」と断言。
冴はリボルバーが本物かどうか調べることになります。

そして、物語はゴッホが亡くなる前のゴッホとゴーギャンが
共同生活をしていたころへとさかのぼります。
それもゴーギャンの独白という形で。

ふたりは共同生活をしていたものの、
絵画に対する意見の不一致からゴーギャンはゴッホのもとを去ろうとします。
するとゴッホは自分の耳を切ってしまいます。
その後、ゴッホは療養しながら絵画を描きつづけますが、
結局自ら命を絶ってしまいます。

一方のゴーギャンは、ゴッホと別れた後はタヒチへと旅立ちます。

いったいゴッホとゴーギャンの間に何があったのか。
なぜゴッホは自ら命を絶ってしまったのか。
いや、もしかしたら誰かに殺されたのか。
冴はさまざまな角度から「ゴッホの死」の謎に迫っていきます。

冴がどのように謎を解いていくのかは、ぜひ本を読んで味わってください♪

『リボルバー』、スリリングで大変面白かったです!
あくまでもこの本は「小説」ですが、
これは真実なのではないかと思いながら夢中で読み進めてしまいました。

この本の一番の魅力は、人間としてのゴッホとゴーギャンが描かれていることです。
ダメなところや弱さやずるさも包み隠さずに。
そのおかげで彼らが近い存在に感じられます。

原田さんはこれまでたくさんのアート小説をお書きになっていますが、
原田さんの本を読んだ後に、作品に出てきた画家の作品を見ると、
まるでよく知る友人の絵を見ているような気分になります。

おかげで私には一方的に画家の友人が大勢います。
今はゴッホとゴーギャンが友人です。(笑)

そもそも私がアートに興味を持ったのは原田マハさんの小説がきっかけでした。
以前はどのようにアートを楽しめばいいかわからず
美術館に行っても滞在時間がかなり短かったのに、
今や美術館に行くのが趣味になっています。

ちょうど今、富山県美術館で開催中の
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』で、
ゴッホとゴーギャンの作品が見られます。

私は4月に一度鑑賞していますが、この本を読んだら、また行きたくなってしまいました。
きっと前回とは見え方が違うように思うのです。

主人公の冴は、名画についてこんなことを言っています。
「名画というものは、描かれてから何年経過していようが、
さっき描き上がったかのように生生しく感じられるものだ」と。

たしかに心惹かれる作品って生きている感じがします。

原田さんには、またアートとの距離を縮めて頂きました。
今回も楽しく豊かな読書時間でした。

そうそう、読み終えたら最後に表紙を外してみてくださいね。
ある作品が隠れていますので。

ちなみに、私は『リボルバー』を読んだ後、ゴッホについてもっと知りたくなり、
『ゴッホのあしあと』という原田さんがゴッホの魅力を解説された本を新たに読み、
さらに『たゆたえども沈まず』も再読してしまいました。
おかげで今私の頭の中はゴッホでいっぱいです。(笑)

だからできればゴッホの舞台も見に行きたいんですよねー。
実はこの作品、この夏に舞台化されることが決定しています。
行定勲さんの演出で、主演はNEWSの安田章大さんです。
安田さんがゴッホを演じるそうですよ。

舞台も見たいなあ。でも無理だよなー。
配信してくれないかしら。

また、ゴッホと言えば、富山市のほとり座で、
6月12日(土)から6月18日(金)まで
『ゴッホ〜最後の手紙〜』を上映されるそうです。

こちらも小説同様、ゴッホの最期が描かれています。しかも全編動く油絵で。
こちらは見に行ける!

色々な作品を比較してみるのも楽しそうですね。

yukikotajima 10:30 am