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『雷龍楼の殺人』

2024年9月25日

毎週ラジオで本を紹介しているため、本についてよく聞かれます。
一番多い質問はこれ。

「本はどのように選ぶの?」

色々な選び方があるので答えは一つではないのですが、
富山が出てくる作品は手に取ってしまうことが多いです。

今日ご紹介する小説も舞台は富山です。

『雷龍楼の殺人』
新名 智
株式会社KADOKAWA

タイトルは「らいりゅうろうのさつじん」と読みます。

著者の新名さんは、2021年『虚魚(そらざかな)』
第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉を受賞し、デビューされました。

デビュー作は私も読んでいまして、ラジオでもご紹介しています。

◎ 『虚魚』の田島の紹介は コチラ

ホラーは苦手なはずなのに読むのがやめられず、
結局最後までページをめくる手が止まらなくなった一冊でした。

新作の『雷龍楼の殺人』も同じく一気読みをしましたが、
今回はホラーでは無く、純度100%の本格ミステリです。
しかも今年のミステリの大注目作なんだとか。

*

物語の舞台は、富山県の沖合に浮かぶ小さな島です。
その島には、かつて集落があったそうですが、
今は外狩家(とがりけ)の屋敷「雷龍楼」があるのみです。

ん?島に屋敷?そんなの富山にあったっけ?と思った皆さん!
私も思いました。(笑)
でも、物語ではリアルな世界とちょっと変えていることもよくあるので、
新名さんの描く富山はどんなところなんだろうと、
逆にワクワクしながら読み進めていきました。

ですから富山の皆さんは、そんなリアルな世界との比較も楽しめると思います。

さて、話を戻します。

その小さな島にある屋敷では2年前、密室で4人が命を落とす変死事件が起こります。
その事件で両親を失った中学生の霞(かすみ)は、
東京にいるいとこの穂継(ほつぐ)の家へ身を寄せているのですが、
ある日、霞は何者かに誘拐されてしまいます。

いとこの穂継は、誘拐犯から
「雷龍楼で『あるもの』を手に入れることができれば霞を解放する」
と言われ、屋敷へと向かいます。

しかし屋敷に到着した夜になんと殺人事件が発生!
それも2年前と同じ密室状態で。
さらに穂継は殺人の疑いをかけられてしまいます。

それを知った誘拐犯は、
このままでは目的のものが手に入らないばかりか、
警察に計画を知られてしまうと思い、
霞に「穂継の疑いを晴らしたければ協力しろ」と迫ります。

そして、霞は誘拐されたまま「完全なる密室殺人」の謎解きに挑むことになります。

果たして密室の謎は解けるのか。

*

物語は、誘拐された霞、富山にいるいとこの穂継、
そして、もう一人の三人の視点で進んでいきます。

また冒頭に「読者への挑戦」があるのですが、ここに意外なことが書かれています。
え、それ書いちゃっていいの?というようなことが。
その言葉をそのまま信じていいものか不信感でいっぱいのままページをめくり、
次々に沸き起こる疑問に対し、これは一体どういうこと?
と私なりの予想をしながら読み進め、
結構いい線いってるのでは?と思っていたのですが、
いやいや、予想できない展開が待っていました。

ああ、そこまでわかっていなかったわー!と悔しさをにじませつつ
最初のページから読み返してみました。

すると、最初はぼんやりとした印象しかなかった文章も
二度目は輪郭がはっきりしていて、
こんなにわかりやすく書かれているのに、
なぜ私は何も感じなかったんだ?と思わず苦笑いしてしまいました。

緩急のあるミステリで面白かったです。
特に最後のたたみかけるような勢いはすごかった!
文字を追う私の目の動きも1.5倍速でした。(笑)

あなたも富山が舞台の本格ミステリに挑んでみませんか?

yukikotajima 10:14 am

『すし本 海から上がって酢飯にのるまで』

2024年9月18日

海なし県の群馬から富山に来てもうだいぶ経ちましたが、
富山に来てからよく食べるようになったものがあります。
それは、お寿司です。

スーパーのお寿司もよく買いますし、
お得な回転寿司のランチも好きです。
また、昔ながらの町のお寿司屋さんでお酒と共に味わうこともあれば、
時には高級なお寿司屋さんでコースをいただくこともあります。

高いお寿司はもちろん美味しいけれど、手頃なお寿司も好きです。
いずれにしても富山に来て、お寿司が好きになりました。

最近は「寿司といえば、富山」という
富山県のキャッチフレーズをよく耳にしますが、
あなたは、お寿司は好きですか?
そして、よく召し上がっていますか?

***

今日はお寿司に関する本をご紹介します。

『すし本 海から上がって酢飯にのるまで』
岡田大介
ビジュアルだいわ文庫

先日、明文堂書店 高岡射水店に行ったら、
すし本コーナーができていました。

この本、5月の発売以来ずっとよく売れているそうです。

私もようやく読んでみました。

最初に言っておきます。
この本を読むと、きっとお寿司が食べたくなります。

私も読んだ翌日の昼に回転寿司に行ってしまいました。

だって写真のお寿司がどれも美味しそうなんですもの。
オールカラーで、どのお寿司も思わず手をのばしたくなるほどです。

著者の岡田さんは、すし職人でありながら、釣りも大好きだそうで、
この本では、すし職人目線と釣り人目線の両面から
すしの美味しさを紹介されています。

つまり『すし本』は、釣り好きのすし職人による「すし図鑑」です。
その数なんと107種類!
それぞれのすしダネが「すしのページ」と「魚のページ」にわかれていて、
お寿司だけでなく、魚そのものの姿を見ることができます。
また、魚の生態や釣り方、寿司の味わい方など
様々な角度から「魚とすし」について学べます。

私が心惹かれたのは、それぞれの魚の美味しい食べ方です。
例えば、マグロの赤身は塩・コショウで食べても美味しいそうです。

また、程よく塩茹でされたホタルイカは特別な味付けは不要なんですって。
酢飯とホタルイカだけで十分なんだとか。

そういえば、ボイルされたホタルイカは酢味噌や生姜醤油とはよく食べるけど、
酢飯と共に食べることって、あまりないかも。
来年の春、食べてみたい!

こんな感じでプロならではの食べ方を教えていただけます。

岡田さんには、あえて握らないネタもあるんですって。
写真を見ると、シャリの上に何ものっておらず、横にすしダネが並んでいます。
そして、食べ方も丁寧に書かれているのですが、
こんな食べ方があるなんて!と驚きつつ、
脳内で妄想しながら食べてみたら、確かに美味しかったです。(笑)

いったいそれは何?と気になる方はぜひ本を読んでお確かめください。

岡田さんは、「すし屋さんは、もっと気楽で、自由で、幸せな場所だ」と言います。
そして、『すし本』は「肩の力を抜いて、すしの美味しさを楽しんでいただきたい」
という思いを前提に書かれたそうです。

実際、とても読みやすかったです。
岡田さんのすし愛・魚愛にあふれた、
まるでそれぞれの魚たちへのラブレターのような一冊でした。
特にそれぞれの魚の美味しさの表現が素晴らしいので、
ページをめくる度、食べたくてたまらなくなりました。

お寿司がお好きな皆さん、ぜひ読んでみてください。
また、釣り好きな皆さんも。

yukikotajima 12:07 pm

『ツミデミック』

2024年9月11日

まだコロナは無くなっていませんが、
コロナ禍前の日常はだいぶ戻ってきましたよね。

とは言え、コロナ禍前とまったく同じかと言うと、
そうでは無いという方もいると思います。
中には生活そのものが大きく変わったという方もいるかもしれません。

別の仕事を始めたり、進学先を変えたり、
考え方そのものが大きく変わったりして、
コロナ禍前に描いていた未来とは
異なる道を選択した方もいることでしょう。

今日ご紹介する本にも、
コロナ禍で人生が思うようにいかなくなった人たちが出てきます。

『ツミデミック』
一穂ミチ
光文社

この夏、第171回直木賞を受賞した話題の短編集です。

一穂さんの短編集というと、
以前、直木賞候補になった『スモールワールズ』も私は好きです。

◎『スモールワールズ』の田島の紹介は コチラ

一穂さんの文章って、目の前に映像がくっきり鮮やかに見えるのです。
的確かつ素敵な表現で、
心の中のぼんやりとした思いや、目の前に見えるものが、
現実以上にしっかり感じられます。

例えるなら、視力矯正された眼鏡をかけたときのような感じです。

私があの時感じていたことは、言葉にするとこういうことなのかと、
自分の言葉にできなかった思いを
しっくりくる言葉で言語化してもらった感じです。

まあ、実際は物語の中の人の話ですから私自身の思いではないのですが、
一穂さんの作品に出てくる人たちは、
どこにでもいそうな身近な人たちなので、自分と重ねたくなるのです。

直木賞受賞作の『ツミデミック』も他人事とは思えませんでした。

本の帯に「パンデミック×犯罪」とあるとおり、
この作品は、コロナ禍が舞台の「犯罪」をテーマにした短編集です。

罪を描いているのに、他人事とは思えないってどういうこと?
と思うかもしれませんが、
本を読んでいると、そう思わずにはいられないのです。
だってみんな普通の人たちなんですもの。

さて、この短編集にはどんなお話があるのか、いくつかご紹介しましょう。

例えば、コロナ禍で仕事がうまくいかない夫から
「働いて少しでも金を稼いでくれ」と言われる妻の話。

夫がとても嫌な言い方をする人で、
妻はそんな夫に腹をたてつつも我慢しています。

そんなある日、たまたますれ違った
フードデリバリーサービスのイケメンにくぎ付けになり、
また会いたいがためにサービスを始めるのですが、
なかなか出会えず、利用回数も増えていき…。

この夫が本当にひどくて、
何でそんな言い方しかできないわけ?とイライラしました。
だからこそ、妻に対して、
いつかお目当てのイケメンがデリバリーしてくれたらいいね!
と思いながら読んでいたのですが…
この先の展開に、いやもうびっくりしました。
あまりにも衝撃的過ぎて、しばらく次の話が読めませんでした。
気になる方はぜひ読んでみてください。

他には、調理師の職を失って家に籠もりがちの男性の話もあります。
ある日、小学一年生の息子が近所の老人から旧一万円札をもらってきたことから
そのお礼というか、あわよくばもっとお金がもらえないかと期待して、
料理人らしく得意の澄まし汁を作って老人の家に持っていき、
そこから奇妙な交流が始まるというお話。

私はこの話が一番好きです。
つっけんどんな老人と調子のいい男性のやり取りは、
どこか『男はつらいよ』の寅さん的で。

最後は、ウイルスではなくパンデミックに人生を壊された人たちが集まって
一台の車に乗って出かけるという話。
いったい彼らの目的とは。

『ツミデミック』は、一冊にコロナ禍の人々の様々な感情が詰まっていました。

人生、いいこともあれば悪いこともあります。
人に傷つけられることもあれば、逆に傷つけてしまうこともあります。
完璧な人なんていないですからね。

この本を読んで、私自身、自分の過去を振り返って、
反省をして、そして感謝をして、ここからまた頑張っていこうと思えました。

一穂さんの本、やはり好きだわ。

yukikotajima 1:31 pm

『捨てられた僕と母猫と奇跡 心に傷を負った二人が新たに見つけた居場所』

2024年9月4日

あなたは何か動物は飼っていますか?

猫を飼っている方は、すでにこの本はチェック済みかもしれません。
今日は猫が出てくる本をご紹介します。

そして今日は9月の1週目の水曜日ですので、明文堂書店とのコラボ回!
本を愛する高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本です。

『捨てられた僕と母猫と奇跡 心に傷を負った二人が新たに見つけた居場所』
船ヶ山 哲(ふながやま・てつ)
プレジデント社

ちなみに野口さんも猫を飼っているそうですよ。

野口さんによると、この本は6月に発売されて以来、ずっと売れているそうです。

本の帯にはこう書かれています。

うつ病を発症した僕が、
子猫と引き裂かれた母猫テコと出会い、
救われた物語。

僕は過度なストレスがきっかけでうつ病を患い、仕事を休職します。

一方、猫のテコは子猫と引き裂かれたり、いじめられたりして、
心に深い傷を負っています。

ある日、僕は保護猫施設でブルブル震えるテコを見て、
守ってあげたいと思い、テコを引き取ることします。
そしてテコとの暮らしが始まります。

この物語は、そんな猫のテコと僕の日々が丁寧に綴られた一冊です。

ここで、この本をオススメされている
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介します。

***

どんな時も変わらずに側にいてくれる存在は、本当にありがたいものです。

振り返ってみると、いつも何かの変わり目に
偶然のようでいて必然の出会いがあったように思います。

シンプルに大切なことを思い出すことのできる実話です!

***

そう、この物語は実話なんですって。
文章から、僕のテコへ向ける優しい眼差しが感じられました。
また、テコのことをとてもよく見ています。
というのもこの本は、僕の視点だけでなく、テコの気持ちも書かれているのです。
でも僕とテコの会話ではなく、
その時に感じたテコの思いが独り言のように物語にはさまれていきます。
お互い信頼し合っているものの、直接会話をしているわけではない、
この距離感がリアルでいいなあと思いました。

今日ご紹介した本は、
富山県内の明文堂書店 全店
「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 11:34 am