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『新・人間関係のルール』

2021年8月4日

あなたはには今、ストレスはありますか?

「ある!」と心の中で即答した方もいるかもしれません。

その原因は「人間関係」でしょうか。
人間関係の問題からストレスを感じることって多いですよね。
私もたいていは人に対してのストレスです。(笑)

イラっとくることを言われたり、嫌味や悪口を言われたり、無視されたり。

私は意地悪なことを言われるたび、その場では笑顔で接するものの、
心の中では私が今感じたのと同じくらいのストレスを感じる出来事が
あなたにも近々ありますように!と思うことで怒りを鎮めています。
私、性格悪いですね。(笑)

でも、そうではなく、嫌な相手に対してこそ
「相手の幸せを祈る」ことが大事なんですって。

『新・人間関係のルール/辛酸なめ子(光文社新書)』

著者は、漫画家、コラムニストの辛酸なめ子(しんさん・なめこ)さんです。

辛酸さんのことをよく知らないという方でも
ネット記事などで辛酸さんのイラストを見かけたことはあるのでは?
ゆるいタッチでありながらも特徴をとらえていて、
ひとめで辛酸さんのイラストだと分かります。

辛酸さん自身、コミュ力が不足しているそうで、
この本では、ご自身が味わった人間関係の問題や
その解決策について綴っていらっしゃいます。

タイトルは『新・人間関係のルール』ですが、
決して堅苦しいものではなく、思わず笑ってしまうようなゆるめのエッセイです。

辛酸さんの失敗談も多いので、
まるでお茶をしながら友人の話を聞いている気分でした。

この本には時代を乗り切るための教訓が書かれています。
たとえば、今、オリンピック真っ只中ですが、
たびたびSNSで炎上がおきていますよね。

なぜ炎上するのか。

人間には、他人が不幸になったりおちていく様を眺めて快感を得る、
という感情があるのだとか。人間ってなんて醜いの!

では、炎上にどう対応したらいいのか。
それは、ネガティブな意見は無視するのがいいんですって。
怖がったとしても反論したとしても
反応することで相手に娯楽を与えることになってしまうのだとか。
だから、スルーして相手の幸せを祈って、自分は徳を積むのがいいそうです。

私もこれからは徳を積んでいけるように頑張ります。
まあ、最初のうちは葛藤もありそうですが。(笑)

また、この本には、様々なコミュニケーションの場面も紹介されています。
アパレル店員さんのセールストーク、
タクシー運転手さんとのやりとり、
同窓会・異業種交流会・女子会でのコミュニケーション、
政治家のコミュ力など。
どの話題も楽しみながら読めました。

特に、アパレル定員さんのセールストークにテンションが上がって
つい商品を買ってしまったエピソードは、まるで私自身の出来事のようで共感!
ニヤニヤが止まりませんでした。

また、タクシーのエピソードも面白かったです。
辛酸さんは、これまで出会ったタクシー運転手を
「洗脳系」「説教系」「怖い話系」「感じ悪い系」「癒し系」
などと分類しています。

たしかにタクシーの運転手さんって個性的な方が多いですよね。

辛酸さんは、嫌な運転手さんとの出会いも含め、
普段の生活では接点がなさそうな人々と
短い時間ながらも交流できたのは得難い体験だった、
と前向きに受け止めています。

これ、大事ですよね!
ストレスを感じた出会いもすべて「得難い体験」と思えば、
心も落ち着きそうですもの。

最近、ストレスがたまりまくっていて
誰に対してもイライラが止まらない方は、
辛酸なめ子さんの『新・人間関係のルール』をお読みになってみては?

ゆるいタッチのイラストと、思わずクスッと笑ってしまうようなエピソードに
日頃のストレスがすうっと消えていくと思いますよ。

私はこの本を読んだ後は、友人と愚痴や失敗談を言い合って、
大いに笑ってスッキリしたあとの気分と似ていました。

本を読んでいる私は受け身のはずなのに
まるで一緒にお喋りしている気分で、
自分の心のモヤモヤを外に出せたような気がして
本を閉じたときは心がスッキリしていました。

yukikotajima 11:55 am

『ブロードキャスト』『ドキュメント』

2021年7月28日

今、オリンピックが開催されていますが、
高校生たちも高校野球や高校総体など今まさに夏の大会期間中です。

また、明日はNHK杯全国高校放送コンテスト、
通称Nコンの決勝が行われます。
学生時代に放送部だった方には懐かしい響きかもしれません。

今日ご紹介する本は、高校の放送部に入部した男子高校生の物語です。

『ドキュメント/湊かなえ(角川書店)』

この本を紹介する前にまずは『ブロードキャスト』をご紹介します。
こちらはすでに文庫化されています。

実は『ドキュメント』は『ブロードキャスト』の続編なのです。

シリーズ1作目の『ブロードキャスト』では、
主人公の圭祐が高校の放送部に入るまでと、
放送部に入ってからの一年目が描かれています。

圭祐は中学時代、駅伝で全国大会を目指していたのですが、
惜しくも出場を逃してしまいます。
高校は、駅伝仲間の友人に誘われ、陸上の強豪校に進学します。
ところが、とある理由から陸上部への入部を
断念することになってしまうのです。
目標を失った圭祐でしたが、声がいいという理由から放送部に誘われます。
そして放送部に入部し、こちらでも全国を目指すことになるという、
ここまでがシリーズ1作目『ブロードキャスト』の物語です。


2作目の『ドキュメント』は、二年生になった圭祐たち放送部の物語です。

三年生の引退後、放送部では全国大会を目指して
テレビのドキュメント作品を作り始めます。

題材は陸上部の活動です。
訳あって陸上部をあきらめざるを得なかった圭祐は
複雑な思いを抱えながら陸上部を追っていきます。

そんなある日、ドローンで撮影した映像の中に、
煙草を持って陸上部の部室に入る同級生の姿が発見されます。

その同級生とは、圭祐が中学時代、同じ陸上部で
高校でも一緒に駅伝をしようと誘ってくれた友人でした。

圭祐は、彼が煙草を吸うはずはない!
と事件解決のために調べ始めます。

***

一作目の『ブロードキャスト』は
挫折した高校生が次の目標を見つけ前に進む青春小説でしたが、
続編の『ドキュメント』は、イヤミスの女王である
湊さんらしさも加わっていて、そういう意味でも楽しめました。

今回、著者の湊さんは、
対面でのコミュニケーションが難しくなった今だからこそ
「“伝える”とは何か」について真剣に考えたそうです。

放送部もその問題と向き合います。
テレビのドキュメント作品を作るうえで、
取材する側が伝えたいことと
される側の思いが一致していればいいですが、
そうではないこともあります。

今、オリンピック真っ只中ですが、
選手によっては、マスコミが伝える内容に対して、
「それはちょっと違う!」
と思うこともきっとあると思うのです。
そんな風に言ったつもりはないのに…と。

私自身、アナウンサーとして伝える仕事をしているので、
この本はかなり勉強になりました。
まっすぐな高校生たちのセリフにはドキリとさせられるものも多く、
初心を思い出しましたし、反省もしました。

そして、高校生たちにがっかりされない大人でいたいと思いました。

「そうそう。田島、しっかりね!」と今、思った方もいるかもしれませんが、
ちょっと待ったー!
「伝える」のはマスコミだけがしているわけではありませんよね?
今の時代、SNSやブログ、YouTubeなどで発信している方も多いですよね。

あなたはちゃんと伝えられていますか?
自分の思いばかりで、人の気持ちを忘れていませんか?
あなたの言葉で傷つく人がいることを考えたことはありますか?

今、ドキリとした方は、ぜひこの本を読んで、放送部のみんなと
「伝える」ということについて考えてみませんか。

また、物語としても大変面白いので、ぜひ!
私は学生時代、放送部ではありませんでしたが、
大学時代に映像制作のゼミでニュース番組やドラマを作っていたので、
自分と重ねて、なつかしさでいっぱいでした。

ところで、『ドキュメント』は、圭祐の高校二年生の物語です。
現在、湊さんは現在、充電期間中だそうですが、
いつか高校三年生の物語も読んでみたいな。

yukikotajima 10:58 am

『テスカトリポカ』

2021年7月21日

先週の水曜に2021年上半期の芥川賞・直木賞受賞作が発表されました。

【芥川賞受賞作】

石沢麻依(いしざわ・まい)『貝に続く場所にて』

李琴峰(り・ことみ)『彼岸花(ひがんばな)が咲く島』


【直木賞受賞作】

佐藤究(さとう・きわむ)『テスカトリポカ』

沢田瞳子(さわだ・とうこ)『星落ちて、なお』


4作品が一度に選ばれるのは、10年ぶりのことだそうです。

先週私がラジオでご紹介した
砂原浩太朗(すなはら・こうたろう)さんの
『高瀬庄左衛門御留書(たかせしょうざえもんおとどめがき)』
は残念ながら受賞ならず!


私も早速、受賞作を読んでみようと本屋さんに行ったところ、
佐藤究さんの『テスカトリポカ』一冊しかありませんでした。

『テスカトリポカ』は、直木賞だけでなく、
5月に発表された山本周五郎賞も受賞している話題作です。
同時受賞はなんと史上二人目のことだとか。

でも。

心の中では、『テスカトリポカ』を読むか迷っていました。

本当は、天才絵師、河鍋暁斎(きょうさい)
の娘の生涯が描かれた沢田瞳子さんの作品が読みたかったのです。

それに、『テスカトリポカ』は、見た目からして恐ろしい雰囲気だし、
内容も怖そうだし、うーん、どうしよう。
と悩みながらも手に取って少し立ち読みしてみたところ、
思いのほか読みやすく、これは続きを読んでみたいとすぐにレジへ向かいました。

ちなみに、先週の直木賞の選考会は、3時間に渡るすごい激論だったそうです。
暴力シーンの多さや臓器売買を扱っていることなどから、
読む人に嫌悪をもたらすのではないかと。
でも、これだけスケールの大きな小説を受賞作にしないのは
あまりにも惜しいという結論になったそうです。

まさにおっしゃる通りです。
正直こわかったけど、この作品には圧倒的なパワーがありました。

読む前はどうしようと悩んだものの
読み始めたらノンストップでした。
結果、読んで良かったです!

どんなお話なのか簡単にご紹介しましょう。

まずは、1996年のメキシコから始まります。
メキシコでは麻薬密売人たちが町のいたるところで目を光らせており、
次々に人が殺されていました。
17歳の少女ルシアはそんな町に別れをつげることにします。

逃げた町で「日本」のことを知った彼女は、
誰も知り合いのいない日本へと向かいます。
そして、日本人との間に「コシモ」という名の男の子がうまれます。

一方、いまだ麻薬戦争が続く2015年のメキシコでは、
麻薬カルテルの幹部であるバルミロが
対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走します。

そして、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーの末永と出会います。

バルミロと末永は新たな臓器売買ビジネスを実現させるため日本へと向かいます。

その日本でバルミロは成長したコシモと出会い、仲間に加えます。

そして、コシモは知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていくことになる、
という物語です。

タイトルの「テスカトリポカ」とは、
かつてメキシコにあった王国「アステカ」の神様のことです。
アステカには神様に人の心臓を献上する儀式があり、
バルミロは、その儀式のことを
幼いころから祖母から聞かされていました。

一方、臓器ビジネスで売買しようとしている臓器も「心臓」です。
でも、この心臓は生きていなければ売り物になりません。
果たして彼らは、誰の心臓を売買しようとしているのでしょうか。

ぜひこの続きは、本のページをめくってみてください。

***

物語には大勢の登場人物が出てきますが、ほぼ悪い人たちです。
皆、自分のことしか考えていないし、
自分が悪いことをしているなんてことは思っていません。

悪でつながった人たちは、簡単に裏切るし、気に入らなけれな殺します。
「悪」の大渋滞で、読んでいる私まで麻痺してきそうなほどでした。

私は普段、本を読んでいるときは、
頭の中に映像を浮かべながら読んでいるのですが、
この本に関しては、残虐なシーンが多すぎて
途中から脳内でモザイクを入れて読んでいました。

でも、本を閉じたいとは思いませんでした。
一度読み始めたら、ぐいぐい引き寄せられてしまうのです。

ただ激しい暴力の描写だけではなく、
物語が丁寧に描かれているので、読んでしまうのだと思います。

悪人同士が、騙し合いながらも
お互い利用しようと近づいていく様はスリルがありますし、
自分がしていることに罪悪感を感じる人も心の揺れも印象的でした。

そして、気付けば夢中で最後まで読んでしまいました。

今回、あらためて小説のすごさを実感しました。

だって、先週、江戸時代の世界をのぞいたと思えば、
今週は麻薬やら臓器密売やらの世界をのぞいているんですよ。

小説だったら、絶対に関わらないタイプの人の心の内も丸見えだし、
知らない世界に足をふみいれることもできます。
それも安全な場所にいながら。

やはり読書は楽しい!

さて、次はどんな世界に行ってみようかしら。

yukikotajima 11:28 am

『高瀬庄左衛門御留書』

2021年7月14日

2021年上半期の芥川賞、直木賞の選考会が今日この後行われ、
受賞作が発表されます。

候補作はこちらです。

【芥川賞】

石沢麻依(いしざわ・まい)『貝に続く場所にて』
くどうれいん『氷柱(つらら)の声』
高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)『水たまりで息をする』
千葉雅也(ちば・まさや)『オーバーヒート』
李琴峰(り・ことみ)『彼岸花(ひがんばな)が咲く島』


【直木賞】

一穂(いちほ)ミチ『スモールワールズ』
呉勝浩(ご・かつひろ)『おれたちの歌をうたえ』
佐藤究(さとう・きわむ)『テスカトリポカ』
沢田瞳子(さわだ・とうこ)『星落ちて、なお』
砂原浩太朗(すなはら・こうたろう)
『高瀬庄左衛門御留書(たかせしょうざえもんおとどめがき)』

一穂ミチさんの『スモールワールズ』は、以前、ラジオでご紹介しました。

◎私の感想は コチラ

***

今日は候補作の中から私が気になった一冊をご紹介します。

今回初めて直木賞候補となった砂原浩太朗さんの
『高瀬庄左衛門御留書(講談社)』です。

タイトルだけをみると、これは漢文か?と突っ込みたくなるほど漢字が並んでいて
何やら難しそうな気配を漂わせているのですが、
白を基調としたシンプルな装丁を見て、
これは美しい物語のような気がすると思い、読んでみることにしました。

この本は、直木賞の候補になっただけでなく、
今年1月の発売以来、話題となっている時代小説です。

主人公は、江戸時代の地方の藩、神山(かみやま)藩で
郡方(こおりがた)を務める高瀬庄左衛門です。

なお、神山藩は架空の藩です。

彼は、20ヵ所の村をまわって、
米の取れ高や見聞きした現地の様子などを
帳面にしるし、上役に提出しています。

タイトルの御留書(おとどめがき)とは、この帳面のことです。

彼は息子に自分の仕事をゆずり、
のんびり趣味の絵でも描いて過ごそうと思っていたものの、
50歳を前にして妻と息子を相次いで亡くします。

息子に子どもはおらず、のこされた嫁の志穂と二人きりになった庄左衛門は、
志穂に実家に戻るよう伝えます。
ところが志穂はここに残りたいと言います。
それも「絵を教えてほしい」とお願いしてきたのです。
この先誰かに嫁ぐのではなく絵で身を立てるようになりたいと。

庄左衛門は、妙な噂が立つことを心配し、住み込みではなく通いで、
それも仕事が休みの日だけ志穂に絵を教えることになります。

志穂もいなくなり、ひとりきりになった庄左衛門は、
はじめて自分で家事をすることになりますが、
慣れないひとり暮らしと、亡き息子の仕事を再び自分ですることになり、
毎日へとへとです。

でも真面目で誠実な彼はしっかりと仕事をしていきます。

彼には15人の仲間がおり、それぞれが受け持ちの村をまわっているのですが、
時には、愚痴を言い合ったり、一緒にお酒を飲んだりして
憂さ晴らしをすることもあり、江戸時代の物語なのに、
まるで今の時代のサラリーマンのようです。

ある日、庄左衛門は志穂から「弟のことで少し気にかかることがある」と言われます。
弟が毎晩のように酒の匂いをさせて帰ってくるのが気がかりだと。

そこで庄左衛門は町へ出向き、
志穂の弟が出入りしている小料理屋の近くの
二八蕎麦の屋台に通い、様子を見ることになります。

そして彼は様々な事件に巻き込まれていくことになります。

ちなみに、このお蕎麦がとても美味しそうで、
本を読んだ後にお蕎麦が食べたくなります。

このあと、庄左衛門は様々な人と関わっていくことになります。
息子を亡くす前は一人静かに好きな絵を描きながら老後を楽しむ予定が、
仕事も一人暮らしも大変なのに事件にも巻き込まれていきます。

でも彼が出会う人には魅力的な人が多いのも印象的でした。
もちろん嫌な人も出てきますが。

物語が進むにつれ、登場人物たちの過去や、事件の真実が明らかになり、
後半になればなるほど、ページをめくる手が止まらなくなりました。

中でも後半、庄左衛門が一緒に過ごすことが多くなる弦之助
とのやり取りが良かったです。

弦之助は、見た目も家柄もいいうえに秀才で性格までいい。
すべてをもっている彼と亡き息子を比べて、嫉妬してしまいます。

ところが、この弦之助が庄左衛門になついてしまうのです。

ぜひ本を読んで、揺れる庄左衛門の心を覗いてみてください。

また、この本の何がいいって、表現が美しいことです。
控えめな文章なのですが、目の前に広がる景色はもちろん、
体温や匂いまで感じられます。
そして、多くを語らずとも登場人物たちの心がわかります。
そういう意味では映画っぽくもありました。
言葉で説明するのではなく、絵で見せる感じが。

またいいなと思えるセリフも多かったです。
一番印象に残ったのは、庄左衛門のこの言葉です。

人などと申すは、しょせん生きているだけで誰かのさまたげとなるもの。
されど、ときには助けとなることもできましょう……
ならして平なら、それで上等。

泣きました。
なんていい言葉。
これからの人生は、この言葉を大切にいきていきたいと思いました。

読み終えた後、ああ終わってしまったかと寂しい気持ちになったのですが、
なんとこの作品、「神山藩シリーズ」としてシリーズ化していくそうですよ!

yukikotajima 11:15 am

『2040年の未来予測』

2021年7月7日

2021年も半年が過ぎました。
今年こそ何かを始めたいと思いながらも
何もできないまま気付いたら半年が過ぎてしまった。
いや、半年どころか、もう何年も経ってしまった。
という方もいるかもしれません。

ここで質問です。
今から20年前、あなたはどちらで何をしていたでしょうか。
20年前はだいぶ前に感じますか。
それともついこの間でしょうか。

今日ご紹介する本は、今から約20年後の
2040年の未来を予測した本です。

『2040年の未来予測/成毛眞(なるけ・まこと)【日経BP】』

元日本マイクロソフト社長の成毛さんが書かれたこの本は、
今年1月に発売されて以来、すでに13万部を突破している話題作です。

先月開催したgraceのマネーセミナーでも
ファイナンシャルプランナーの先生がすすめていらっしゃったので、
私も読んでみることにしました。

20年後の話の前に、20年前と今を比べてみると、
どうでしょう?あなた自身はどんな変化がありましたか?

変わらないものもあれば、変わったものもたくさんあります。

特に大きく違うのはスマートフォンの普及です。
私もスマホの無い生活なんて考えられません。

電話以外にもビデオ通話にメール、検索、買い物もできますし、
音楽もラジオも聞けます。
映画もドラマもスポーツの試合も見られます。
また、私の場合、アクセント辞典や国語辞典も入れているので
辞書としての役割も果たしています。

でも、日本でiPhoneが発売されたのは、2008年の7月。
20年どころか、今からたった13年前のことなんです。

スマホ以外にも、Uber Eats やSpotify、Netflixなどの
新しいテクノロジーの登場によって生活様式が大きく変わりました。

でも、この新しいテクノロジーが登場したときというのは、
多くの人が反対するそうです。

例えば、カメラ、映画、テレビゲームも
当初は受け入れられなかったそうです。
今やすっかりおなじみなのに。

だからこそ、この先、新しいテクノロジーに対して
いち早くその可能性に思いを巡らせられる人には
チャンスがあると、成毛さんはおっしゃいます。

できることなら私はそのチャンスをつかみたい!と思い、
『2040年の未来予測』を読んでみました。

この本では、衣食住から年金・税金・医療費といった未来の経済、
気象にいたるまで様々なカテゴリーの2040年を予測しています。

具体的には、
・お札はなく手ぶらで買い物に行くのが主流になっている
・空飛ぶクルマが当たり前になっている
・就職に学歴が関係なくなる
・医療技術はAIのおかげで格段に進歩する
そうです。

生活が便利になったり医療が進歩したりするのは嬉しいことですね!

その一方で、高齢者が増えることでの問題も挙げています。
働き手不足、年金、医療費、GDPの減少など。
この先、日本はお先真っ暗なのか…と思ってしまうような話題が続きます。

でも、暗いだけではありません。
成毛さんはあるものによって問題がカバーできるとおっしゃいます。

その「あるもの」についてはぜひこの本を読んでお確かめください。

この本を読んで何を感じるかは人によって様々だと思いますが、
私は読んで良かったです。
大変勉強になりましたし、私自身は明るい気持ちになれました。

本の帯に「知っている人だけが悲劇を避けられる」とあります。

今もすでにそうですが、この先は知っている人と知らない人の二極化が
ますます進んでいくように思います。

大人になればなるほど世の中を知った気になってしまいがちですが、
今までの知識だけではこの先、取り残されてしまいますよー。

成毛さんによると、この先、生き残るのは優秀な人ではなく、
〇〇に××した人だそうです。

生き残れるのはどんな人だと思いますか?

yukikotajima 11:07 am

『げんじものがたり』

2021年6月30日

光君(ひかるくん)というと、誰が頭に浮かびますか?

「光源氏」が浮かんだ方は、先日最終回を迎えたNHKのドラマ
『いいね!光源氏くん し〜ずん2』をご覧になっていたのでは?

源氏物語の世界の光源氏が現代にやってくるという物語で、
光を千葉雄大さんが演じていました。
私も見ていましたが、ポテチが大好きなおっとりした光君、最高でした!
なお、この作品は、えすとえむさんの漫画をドラマ化したものです。

私は、源氏物語の漫画というと、
大和和紀(やまと・わき)さんの漫画『あさきゆめみし』を思い出します。
高校時代に受験勉強のために繰り返し読んだため、
今でも登場人物は漫画のキャラクターの顔で覚えています。

受験に役立ったかどうかは別として(笑)漫画のおかげで源氏物語が好きになり、
これまで本や映画、宝塚歌劇団のミュージカルなど、
様々な源氏物語の作品を楽しんできました。

でも、今の京都の言葉で書かれたものは初めて読みました。
今日ご紹介する本はこちら。

『げんじものがたり/いしいしんじ(講談社)』


この小説でもドラマのように光源氏は「光君(ひかるくん)」と呼ばれています。
ただ頭中将は「なかちゃん」ではなく「頭兄(とうにい)」ですが。(笑)

その他、紫の上は「紫ちゃん」、葵の上は「葵さん」など、
おなじみの登場人物たちが今どきの呼び方になっています。

なんと全て今の京都の言葉で書かれています。
それも原文に忠実に訳しているんですって。

平安の都で書かれた『源氏物語』は
本来は「京ことば」で書かれたはずなのに、
これまで与謝野晶子や谷崎潤一郎をはじめ
ほとんどが現代の標準語で書かれてきたのだとか。
そもそも「京ことば」で訳すことは難しいとも言われていたそうです。
その難題に挑まれたのが作家のいしいしんじさんです。

いしいさんが訳された『げんじものがたり』は、
京ことばに加えて、今どきの表現も使われています。

例えば、光君から歌が届いた女性は
「嘘やん、死ぬ!なんてリプしよ!」と言い、
光君も好きな女性のことを
「ていうか、こころの底から無限大に超ラブ」と表現しています。

なんか軽すぎやしないか…と思った方もいるかもしれません。
わかります。私も思いましたから。(笑)

でも、もう一度言います。
いしいさんは、原作に忠実に訳されたそうです。

源氏物語というと、もう少し雅で控えめな印象がありましたが、
今どきの言葉になったことで平安時代の人々が
いかに自分の心に正直であるかがよくわかりました。
特に光君!
今の人たち(私を含む)は、どこか自分の気持ちを
おさえこんでしまうところがありますが、
光君は自分の意のままに生きています。

ただ、言葉は今どきでも時代背景は平安のままですので、
現代の感覚とは異なる点も多々あるということはお忘れなく。

私は途中、平安の物語であることを忘れかけ、
次々に女性に恋していく様子に「光君サイテー!」と
心の中で突っ込んでしまいましたもん。(笑)

やはり同じ話でも使われる言葉によって印象って異なるものですね。

ちなみに、いしいさんの『げんじものがたり』は
作者である紫式部が「ちょっと聞いてよ〜!」と、
お喋りというか、噂話をする感じで進んでいきます。

例えば、光君のお母さん「桐壺の更衣」は帝の寵愛がすぎるあまり
周りの女性たちからいじめられていたのですが、
紫式部はこのように言います。

朝夕のおつとめに出はっても、
まわりからのジェラシー、イヤミばっかし積もっていくし、
それでやろか、えらい病気がちになってしまわはって。

そ・れ・が・や・ねえ!

前世からのご縁が、よっぽど深かったんやろうねえ、
おふたりの間に、ピッカピカの男の子がうまれはったん!

という感じです。笑

ね?まるで紫式部のお喋りを聞いているようでしょ。
ずっとこの調子で進んでいきます。

ちなみに、源氏物語はかなり長いお話ですが、
いしいさん版は光君が23歳の頃までの物語ですので、
それほど長くはありません。

ここのところ梅雨らしいお天気が続いていますね。
ぜひ雨の日の夜は、紫式部の噂話に耳を傾けてみては?

yukikotajima 9:33 am

『花の子ども』

2021年6月16日

今度の日曜日、6月20日は「父の日」ですね。

お子さんのいるお父さんたちは、
いつ自分が「父親」であることを実感しましたか?

妊娠を告げられたとき?
子どもが産まれたとき?
自分と似ている部分を見つけたとき?

今日ご紹介する本は、こちら。

『花の子ども/オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル
訳:神崎朗子(かんざき・あきこ)【早川書房】』

この本は、アイスランド女性文学賞を受賞した
アイスランドの作家による長編小説で、
日本をはじめ24ヵ国で翻訳され、
フランスでは40万部のベストセラーとなるなど、
今、世界中で話題となっています。

アイスランドというと、どんな印象をお持ちですか?
冬が長く、オーロラが楽しめる場所としておなじみかもしれませんが、
実は、ジェンダーギャップ指数が11年連続世界一位、
世界平和度指数は13年連続世界一位と、
すべての人にとって生きやすい成熟した社会を目指し続けているのが、
アイスランドという国なんだそうです。

ご存じでしたか?

『花の子ども』は、そんなアイスランドの小説家が書いた家族の物語です。

主人公は22歳のロッビという男性です。
一年半前に母を亡くし、父と二人で暮らしています。
また、自閉症で施設で暮らすイケメンでオシャレな双子の弟もおり、
時々家族で食事を楽しむなど関係は良好です。

ロッビは、優秀な成績で高校を卒業したものの大学には進学せず、
亡き母が遺した希少なバラを外国の修道院にある歴史あるバラ園に植えたいと
バラを持って旅に出ます。

彼は亡き母と家の庭で土いじりをするのが好きだったのです。

しかし、旅に出た途端お腹が痛くなって病院に行く羽目になったり、
森ではさまよったり、一人旅のはずが人と一緒に旅をすることになったりと
予定外のことばかりが起きます。

そして、長旅の末、庭園に到着するのですが、庭園は見渡す限り荒れ放題。
でも、彼は、しばらくは取り組むべき仕事があるから
将来のことを考えなくてすむぞと思います。
大好きな土いじりをしながら考えればいいかと。

そんなある日。
かつて一夜をともにし、彼の子を産んだ女性から
「一ヶ月、子どもを預かってほしい」とお願いされ、
彼は9か月の赤ちゃんと暮らすことになります。

***

主人公のロッビは、穏やかな性格で怒ったりはしません。
亡き母の大切なバラを歴史のあるバラ園に植えたいという思い以外は、
基本的には流れに身を任せて生きているところがあります。良くも悪くも。
そもそも、よく知らない女性との間に子どもができたのに、どこか他人事ですし。
それどころか、旅で女性と出会う度、あわよくば…と妄想ばかりしています。

性格が悪いわけではなく、自分に自信がないのです。また、幼い。

そんな彼が突然、娘と暮らすことになり、少しずつ変わっていくという物語です。

ここからの物語がとても良かったです。
それまでは、どこか淡々としていましたが、
赤ちゃんが現れてからは、一気に躍動感が出ます。

ぜひロッビの成長を見守りながら読んでみてください。

***

翻訳本というと難しそうな印象ですが、
この本は全体を通して、穏やかな語り口でユーモアもあって読みやすかったです。

そう、穏やかなのです。
設定だけを聞くともっと修羅場的な雰囲気になりそうですが、そうはなりません。

実はアイスランドでは、子どもが生まれることを理由に
結婚する人は決して多くないのだそうです。

また、冒頭お話した通り、ジェンダーギャップ指数も世界一です。

とは言え、この作品が2007年にアイスランド女性文学賞を受賞した際には、
「アイスランド文学において、新たな男性像が描きあげられた」と評されるなど、
この本が書かれた際には、まだまだジェンダーギャップがあったようです。

14年前の本ですが、今の時代を切り取ったまさに「旬」の本だと思いました。

生き方なんて人それぞれで、私はこう生きていこう!と決めても
その通りにいくとは限らないわけで(実際私もそうですし)、
もっと自由に選択していけばいいのかもなと思いました。
若者も大人も男性も女性も。

今日は父の日を前に、新米パパの物語をご紹介しました。

男性だけでなく女性もぜひ読んでみてね!

yukikotajima 11:03 am

『スモールワールズ』

2021年6月9日

今朝、家族とちょっとしたもめごとがあって、
それが心にひっかかっていて、なんか今日はうまくいかない。
でも、そんな心のうちは誰にも見せずに、
とりあえずいつもと同じふうを装っている。

なんて方はいませんか?

家族のことを考えると、ため息をつきたくなる、
という方もいるかもしれませんが、
きっとどの家族にも何かしら問題があったり
秘密があったりするものなのですよね。

外からは幸せそうに見えても実際は違っていたり、
その逆の場合もあります。

今日ご紹介する小説は、6つの家族の物語です。

『スモールワールズ/一穂ミチ(いちほ・みち)【講談社】』

この本は今、全国の書店員さんたちの間で話題になっているそうです。

4月に今年の本屋大賞が発表されたばかりですが、
(今年の本屋大賞は、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』でした)
早くも来年は『スモールワールズ』が大賞をとりそうな勢いです。

私も『スモールワールズ』を読みましたが、たしかに大変面白く、
これは大賞決まりだなと思いました。私の中でも暫定1位です。

『スモールワールズ』は、6つのお話が収録された短編集です。
それも、思い通りにいかない人生を送っている人たちの物語です。

例えば、子どもが欲しいのになかなかできずに人知れず苦しんでいる女性や、
良かれと思ってしたことが相手にとっては迷惑だったことを知り、
心を閉ざしてしまった男性などがいます。

どのお話も短編なのでさらりと読めますが、
軽く読み進めていくうちにドキリとさせられる瞬間がやってきます。
いきなり明かされる事実に、それまでの物語の空気感ががらりと変わるのです。

短編集はたくさんのお話が収録されているので、
読んだ後に強く印象に残るお話もあれば、
すぐに忘れてしまうものもありますが、
この短編集は内容も順番もすべてしっかりと心に残りました。

どのお話も濃く、そのうえタイプが異なっているので、
1冊読み終えた時には6冊分の単行本を読んだ気分でした。

いくつかご紹介しましょう。

『ピクニック』

生後10か月の赤ちゃんが不慮の死を遂げ、ただでさえ悲しいのに、
追い打ちをかけるように身内が赤ちゃんを殺したのではと疑われ、
ある家族が逮捕されてしまいます。
果たして真実とは?

この物語だけ「ですます調」です。

この丁寧な文体が逆に不穏な空気を漂わせていたので
何かありそうだなと感じていたのですが、
私の予想をはるかに超えた展開が待っていました。
ほんと衝撃的でした。

この衝撃、皆さんにも味わっていただきたい!


『花うた』

こちらは往復書簡で構成された物語です。

唯一の家族であった兄を殺された女性が、
服役中の加害者本人に手紙を送ります。

「今、どんな気持ちで過ごしているんですか」と。

しかし返ってきた返事は幼く、まったく反省も見えません。
腹を立てた彼女は、怒りを込めた手紙を再び送ります。

そして文通がはじまり、
毎回加害者に苛立ちを感じながらも本音をぶつけていくうちに
彼女自身の心に変化が生じていきます。

ちなみに、この物語は最初から二人の未来が想像できます。
私も「なるほど、ここにたどり着くまでのお話ってことね」
と思いながら読み進めていきました。
でも、こちらのお話も驚きの展開が待っていました。

この『スモールワールズ』は、どのお話にも
ん?え?どういうこと?なんで?そうきたか!と驚きの瞬間がやってきます。

それがこの短編集の面白いところです。
ぜひ本のページをめくりながら様々な驚きを味わってみてください。

もちろん魅力は「驚き」だけではありません。
なんといっても人間の描き方がいいのです。
人の心の動きを丁寧に描いています。
怒ったり泣いたりやる気をなくしたりしながらも
些細なことに喜んだり涙したり。
なんだか他人事とは思えませんでした。

この本、今後ますます話題になっていきそうだなー。

なお、『スモールワールズ』の特設サイトには、
この本に収録された短編のコミカライズと
特別掌編『回転晩餐会』がアップされており、
どなたでも無料で読むことができます。

まず掌編を読むだけでも一穂ミチさんの作品のイメージがつかめると思います。
掌編は3分で読めますし、声優さんによる朗読でも楽しめますので、
まずはこちらからチェックしてみては?

◎特設サイトは コチラ

yukikotajima 10:32 am

『リボルバー』

2021年6月2日

ゴッホと聞くと、どんな印象をお持ちですか?

・「ひまわり」を描いた人
・日本のことが好き
・自分の耳を切った
・自ら命を絶った
・狂気と情熱の画家
・ゴーギャンと短い共同生活を送っていた

あたりを上げる方が多いでしょうか。

今日ご紹介する本は「ゴッホの死」に迫るアートミステリです。
同時にゴッホとゴーギャンの物語でもあります。

『リボルバー/原田マハ(幻冬舎)』

原田マハさんは、以前ラジオでもご紹介した
『たゆたえども沈まず』という作品でもゴッホを取り上げています。

◎私の感想は コチラ

『たゆたえども沈まず』には、ゴッホのほか、
パリで浮世絵を売っていた高岡市出身の画商
林忠正(はやし・ただまさ)が登場していたことから
富山では特によく読まれたようです。
お読みになった方もいるのでは?

ちなみに、同じゴッホの物語とは言え、
新作『リボルバー』は、『たゆたえ〜』とは異なる解釈ですので、
ゴッホの死の真相も異なります。
私は、新作は、新たな事実が明らかになったのか!という気分で楽しめました。

もちろん、どちらも原田さんが創作された「小説」なんですけどね。
でも、『リボルバー』は、これが真実なんじゃないかと思えてしまいました。

『リボルバー』は、まず現代のお話から始まります。

主人公は、パリの小さなオークション会社で働く
高遠冴(たかとお・さえ)という日本人の女性です。
パリ大学で美術史の修士号を取得し、
現在もゴッホとゴーギャンについて研究しています。

冴はいつか高額の絵画取引に携わりたいと願いながらも
小さな会社ゆえ、なかなかそんな仕事はやってきません。
そんなある日、錆びついた一丁のリボルバー(拳銃)が持ち込まれます。
それも「フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたもの」として。

冴はそのリボルバーを見るなり、偽物だと疑います。
でも、依頼人は「証明できる」と断言。
冴はリボルバーが本物かどうか調べることになります。

そして、物語はゴッホが亡くなる前のゴッホとゴーギャンが
共同生活をしていたころへとさかのぼります。
それもゴーギャンの独白という形で。

ふたりは共同生活をしていたものの、
絵画に対する意見の不一致からゴーギャンはゴッホのもとを去ろうとします。
するとゴッホは自分の耳を切ってしまいます。
その後、ゴッホは療養しながら絵画を描きつづけますが、
結局自ら命を絶ってしまいます。

一方のゴーギャンは、ゴッホと別れた後はタヒチへと旅立ちます。

いったいゴッホとゴーギャンの間に何があったのか。
なぜゴッホは自ら命を絶ってしまったのか。
いや、もしかしたら誰かに殺されたのか。
冴はさまざまな角度から「ゴッホの死」の謎に迫っていきます。

冴がどのように謎を解いていくのかは、ぜひ本を読んで味わってください♪

『リボルバー』、スリリングで大変面白かったです!
あくまでもこの本は「小説」ですが、
これは真実なのではないかと思いながら夢中で読み進めてしまいました。

この本の一番の魅力は、人間としてのゴッホとゴーギャンが描かれていることです。
ダメなところや弱さやずるさも包み隠さずに。
そのおかげで彼らが近い存在に感じられます。

原田さんはこれまでたくさんのアート小説をお書きになっていますが、
原田さんの本を読んだ後に、作品に出てきた画家の作品を見ると、
まるでよく知る友人の絵を見ているような気分になります。

おかげで私には一方的に画家の友人が大勢います。
今はゴッホとゴーギャンが友人です。(笑)

そもそも私がアートに興味を持ったのは原田マハさんの小説がきっかけでした。
以前はどのようにアートを楽しめばいいかわからず
美術館に行っても滞在時間がかなり短かったのに、
今や美術館に行くのが趣味になっています。

ちょうど今、富山県美術館で開催中の
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』で、
ゴッホとゴーギャンの作品が見られます。

私は4月に一度鑑賞していますが、この本を読んだら、また行きたくなってしまいました。
きっと前回とは見え方が違うように思うのです。

主人公の冴は、名画についてこんなことを言っています。
「名画というものは、描かれてから何年経過していようが、
さっき描き上がったかのように生生しく感じられるものだ」と。

たしかに心惹かれる作品って生きている感じがします。

原田さんには、またアートとの距離を縮めて頂きました。
今回も楽しく豊かな読書時間でした。

そうそう、読み終えたら最後に表紙を外してみてくださいね。
ある作品が隠れていますので。

ちなみに、私は『リボルバー』を読んだ後、ゴッホについてもっと知りたくなり、
『ゴッホのあしあと』という原田さんがゴッホの魅力を解説された本を新たに読み、
さらに『たゆたえども沈まず』も再読してしまいました。
おかげで今私の頭の中はゴッホでいっぱいです。(笑)

だからできればゴッホの舞台も見に行きたいんですよねー。
実はこの作品、この夏に舞台化されることが決定しています。
行定勲さんの演出で、主演はNEWSの安田章大さんです。
安田さんがゴッホを演じるそうですよ。

舞台も見たいなあ。でも無理だよなー。
配信してくれないかしら。

また、ゴッホと言えば、富山市のほとり座で、
6月12日(土)から6月18日(金)まで
『ゴッホ〜最後の手紙〜』を上映されるそうです。

こちらも小説同様、ゴッホの最期が描かれています。しかも全編動く油絵で。
こちらは見に行ける!

色々な作品を比較してみるのも楽しそうですね。

yukikotajima 10:30 am

『新・いのちを守る気象情報』

2021年5月26日

昨夜は天気予報通り雨となりましたね。
突然雨が降り始め、雷も鳴っていました。

天気予報を見て、夜に天気が悪くなるのを知り、
昨夜は早めに帰宅された方もいらっしゃるのでは?

私もそんな一人です。

スマホを持つようになってからは
天気予報をチェックする機会が増えたように思います。
また、雨雲レーダーもよく見るようになりました。

洗濯物を外に干したまま外出しても大丈夫か雨雲レーダーを見て確認したり、
毎朝気温をチェックして洋服を選んだりと、
以前よりもまめに天気予報をチェックしています。

気象情報は日々の暮らしに欠かせないものとなっていますが、
それだけでなく、私たちのいのちを守る重要な情報であるということを
この本を読んで再認識しました。

今日ご紹介する本は、

『新・いのちを守る気象情報/斉田季実治(さいた・きみはる)【NHK出版新書】』

です。

著者の斉田さんは、NHK「ニュースウオッチ9」の人気気象キャスターです。

また、現在放送中の朝ドラ『おかえりモネ』の気象考証をつとめていらっしゃいます。

『おかえりモネ』は、気象予報士を目指す女性の物語で、
主人公を清原果耶(きよはら・かや)さんが演じています。

今朝の放送では、山の中で天気が急変し突然雨が降ってきて…と、
何かが起こりそうな中、放送が終わっていました。
ちなみに今週のドラマのタイトルは「いのちを守る仕事です」。
まるでこの本と似たタイトルです。

ところで、この本にはタイトルに「新」とついていますが、
その理由は8年前に一度出された本の改定最新版だからです。

この8年の間に気象情報が大きく様変わりしたことで、
最新版を出すことにしたそうです。

ただ、斉田さんによると
「情報を活かしきれていない状況は、以前と変わっていない」のだとか。

斉田さんは、「いのちを守る情報」を活かすためには、
見る側にもある程度の「知識」が必要であり、
自分だけは大丈夫という「意識」から変えていく必要がある、とおっしゃいます。

私たちがちゃんと理解できないと、
情報を正しく受け取ることができないのですよね。

気象情報は、日々情報が更新されていますので、最新情報を知ることが大事になります。
この本は先日出たばかりですので、まさに今一番新しい情報を知ることができます。

この本では、「大雨」「台風」「雷」「竜巻」「猛暑(熱中症)」
「大雪」「地震(津波)」「火山」の8種類の災害の
防災対策や予報・警報の見方などがわかりやすく解説されています。

過去の事例を取り上げながらなので、わかりやすいですし、
もしかしたらこの災害に巻き込まれていたのは私かもしれないと思うと
緊張感をもったまましっかりと学ぶことができました。

例えば、熱中症については、

・熱中症は重症化してしまうと、治療を受けても手遅れの場合が多くある。
ゆで卵が二度と生卵に戻ることがないのと同じように、
人の体も高熱が続くと回復が難しくなる。

・夜間に熱中症を発症し、翌朝に死亡した状態で見つかる事故が増えている。
室温は28度を超えないように、扇風機やエアコンなどを利用してください。

・梅雨の合間の突然気温が上がった日にも注意!
まだ体が熱さに慣れていないと、
体温の調整機能が気温の急な上昇に追いつかなくなるため。

など、わかりやすい言葉で具体的に解説されているので、頭に残りやすいのです。

また、この本には情報が必要なときにすぐに見直せるように、
それぞれの章の最後に「行動に移すためのチャート」がのっており、
いざというときにすぐにチェックできるようになっています。

熱中症の場合は、

・就寝前にコップ1杯の水、枕元に水
・我慢をしない
・首や脇の下、足の付け根を冷やすと効果的

などが箇条書きで紹介されており、
ひとめで必要な情報がわかります。

この本は一度読んで終わりではなく、
辞書のように必要な時に何度も開いて確認したい本だと思いました。

本のタイトル通り、自分や家族などの大切な人のいのちを守るために、
多くの方に読んで頂きたい一冊です。

それこそ一家に一冊常備してもいい本だと思います。

yukikotajima 11:08 am

『ジュリーの世界』

2021年5月19日

graceの毎週水曜13時45分頃からは
本を紹介するコーナー「ユキコレ」をお送りしています。

このユキコレで紹介する作品はどのように決めているの?とよく聞かれます。

選び方は本によって違います。
新聞や雑誌、SNSなども参考にしますし、
書店員の方に相談することも多いですが、
好きなのは書店をぶらぶらしながら見つけることです。

本の装丁、タイトル、帯、書店員さんのポップなどをチェックしながら、
読みたい本を選ぶ時間が楽しくて好きです。

2018年の本ランキングで1位に選んだ
増山実さんの『波の上のキネマ』もまさにそのようにして出合いました。

商店街のはずれにある小さな映画館の物語で、
祖父がどのようにしてこの映画館を始めたのかが描かれているのですが、
このおじいちゃんの人生がすさまじくて、
読書最高!と読み終えたあとも興奮が止まらなかったほど夢中になって読んだ作品です。
読書に没頭したいという方はぜひ読んでみてください。
きっと本を読んでることすら忘れて作品の世界に入り込めますから。

◎『波の上のキネマ』の田島の感想は コチラ

そんな増山さんの新作を先日、本屋さんで見つけたので、
今度はどんな小説かしら?とわくわくしながら読んでみました。

『ジュリーの世界/増山実(ポプラ社)』

ジュリーと聞くと、年齢が上の皆さんは沢田研二さんを思い出されるかもしれません。

でも、この本のジュリーとは、「河原町(かわらまち)のジュリー」のことです。
1970年代の京都に実在した有名なホームレスだそうです。

この小説は、「河原町のジュリー」がいた時代の1979年の京都が舞台の物語で、
京都の繁華街のど真ん中の交番に赴任した新人巡査の木戸の目線で進んでいきます。

木戸は先輩から「警察官は違和感のアンテナを貼っておかなければいけない」と教わり、
噂の「河原町のジュリー」を初めて目にした時にまさに「違和感」を感じます。
しかし先輩からは「あの男が、この街を歩いていることは違和感でもなんでもない」
と言われてしまいます。
なんでもこの辺りの人は、京都市長や知事の顔を知らなくても
ジュリーの顔は知っているそうです。

ジュリーという名がついているのは、
当時人気のあった沢田研二のようにロングヘアだから?
という人もいるようですが、はっきりしたことはわかりません。

また、彼が誰とも喋らないため、彼についての噂も絶えません。

実はお金持ちだとか、役者をしていたらしいとか、
京都大学の哲学科をトップで卒業したらしいとか。
彼には「これまでの人生」を
人に詮索させずにはおかない何かがあったそうです。

というのも、伸ばし放題の髪と髭に、ボロボロの服、顔は垢まみれにもかかわらず、
卑屈さはなく、かすかに笑みを浮かべ、悠然としていたからです。

木戸は、街でジュリーを見かけるうちに、彼が街に受け入れられていることを感じます。

そんなある日。
書店から小学生の男の子が万引きしたと連絡があり、木戸は書店に向かいます。

そして、ここからはこの少年の物語へと変わります。
少年は、満たされない思いをサザンオールスターズの曲で満たしていました。

サザンの曲を聞くと、おなじみの景色がいつもと違ってキラキラと輝いて見えるほどに
サザンの虜になっていました。

発売されたばかりのウォークマンでサザンの曲を聞ききながら街を歩き、
早く大人になりたいと思っています。

ある日、少年は京都で行われるロックコンサートに
サザンが特別ゲストとして出ることを知ります。

少年はなんとかしてコンサートを観たいと思い、
チケットなしでコンサートを観る手立てを探ります。

この少年の物語がとても良かったです!
純粋ゆえにとんでもない行動を起こしてしまうのですが、
気になる方はぜひ本を読んでください。

そしてこの少年、誰とも会話をしないジュリーに話しかけます。
それもちゃんとコミュニケーションをとります。

この場面がいいのです。
映像が目に浮かんできました。

『ジュリーの世界』には、少年の物語以外にも
木戸がちょっと気になる女性のお話や、現代のお話もあります。
その全てのお話に「河原町のジュリー」が出てきます。
物語の後半にはジュリーの過去も描かれます。

いったいジュリーとは何者なのでしょうか。

気になる方はぜひ本のページをめくってみてください。

増山さんの作品は体感型です。
今回も本を読みながら40年前の京都の街に入り込んだかのような気分になりました。
街が見えるし、音が聞こえるし、匂いがしました。

最後に今の時代のお話が描かれるのですが、
この現代パートを読みながら
まるで私も1979年の京都を生きてきたかのような気分になっていました。

また、過去の作品を彷彿とさせる場面もあり、そういう意味でも楽しめました。
『波の上のキネマ』の密林の中のすさまじさとか、『甘夏とオリオン』の落語とか。

◎『甘夏とオリオン』の感想は コチラ

それから、34年後を予想するやり取りが描かれているのも面白かったです。

例えば、1979年の34年後の2013年にも『男はつらいよシリーズ』が続いていて
タイトルは『寅次郎、不死身宣言』では?なんて予想もあって笑ってしまいました。

今回も楽しい読書時間でした!

yukikotajima 10:55 am

『エレジーは流れない』

2021年5月12日

新緑の眩しい季節ですね。

人生を季節に例えることもありますが、
ちょうど今の季節は10代の青春時代真っ只中といった頃でしょうか。

大人の皆さんはどんな青春時代を送っていましたか?

今日ご紹介する本は今まさに青春時代を生きる男子高校生の物語です。

ですが、彼にはなりたい職業や将来の夢は無く、
毎日ひたすら平穏に暮らしたいと願っています。

『エレジーは流れない/三浦しをん(双葉社)』


著者の三浦さん自身、高校生の頃に大人たちから
「いまが一番いい時期」と言われてもピンと来なかったそうです。
ただ退屈で、さきが見えなくてちょっと不安で、
でも友だちとおしゃべりしているのが楽しかったのだとか。

『エレジーは流れない』の主人公もまさにそんな思いでいます。

物語の舞台は海と山に囲まれたさびれた温泉街です。
高校2年生の怜(れい)は、温泉街で土産物屋を営む母と二人で暮らしています。
彼は自分が住む温泉街のことを
「のどかを超えて、なにもかもが緩慢な町」と言い、
自分自身もなるべく静かに穏やかに日常を重ねていきたいと思っており、
そんな自分のことを、成績も生活態度も悪く無いのにモテないのは
「俺には面白味ってもんがないからだ」と自己分析しています。

一方、一緒につるむ友人たちは個性豊かで自由奔放です。
怜はそんな仲間たちに振り回されながら日々を過ごしています。

また、穏やかに過ごしたいと願いながらも
友人が父親と大喧嘩をしたり恋人にぞっこんだったりする様子を見て、
人に心を開いたり誰かを求めたりできることを
ひそかにうらやましく思っています。

友人からは「もっと正直になれ。欲しいものは欲しいって言えよ!」
と言われてしまうものの、怜にはそれができません。

というのも怜の家は複雑な家庭環境で、
どこか家族に遠慮しているところがあるのです。
実は彼にはもう一人母親がおり、
二つの家を行き来するという二重生活を送っています。
しかし、母親が二人いる理由や、会ったことの無い父親について、
これまで誰にも聞いたことはありません。
そのせいで、ずっとモヤモヤしています。

また、高校2年生になり、卒業後の進路を選択しなければいけなくなったものの、
特にやりたいこともない上に、二人の母親が進路をどう考えているかわからず、
怜は悶々とています。

そんなある日、地元の博物館から「縄文式土器」が盗まれます。
それを知った怜たちいつものメンバーは、そのニュースに興味を抱き…。

続きはぜひ本を読んでみてね!

***

この本を読みながら三浦さんの過去の作品である、
箱根駅伝に出場した大学生たちの物語『風が強く吹いている』を思い出しました。

新作の『エレジーは流れない』の高校生たちには
特に何か大きな夢があるわけではありませんが、
みんなそれなりに真面目に一生懸命生きていて、
人としていい子たちという点で重なるところがありました。

アホだねぇと突っ込みたくなるくらい
どうしようも無かったりするのですが、
でも憎めないんですよね。

のどかな温泉街のちょっとおバカな高校生たちの物語は、
愛すべき高校生たちの物語でもありました。
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、
私は彼らが住む温泉街が大好きになりました。

うちの町も同じくさびれてるよとか、
私の毎日も穏やかというか地味な日々という方もこの物語を読むことで、
きっと大切なことに気付かされるのではないかしら。

また、将来何をしたらいいのかわからなかったり、
本心をなかなか人に言えなかったりする若者たちにもぜひ読んで頂きたいです。

こいつらアホだ!と思いながらも、彼らに救われるところもあると思います。

物語の中で怜のお母さんがとても良いことを言います。
「迷惑なんてかけあえばいい」と。
私自身、人に迷惑をかけたくないと思って生きてきたので
(ってほとんどの人がそう思っていますよね)、
この一言が大変印象に残りました。

なんだかんだで素敵な青春小説でした。

三浦先生、彼らの10年後の物語もいつか書いてくださらないかな。
アラサーになった彼らの物語もぜひ読んでみたい。
いや、アラフォーでもいいかな。
というか、10年ごとに書いて欲しい。

三浦先生いかがでしょう?

yukikotajima 10:46 am

『女の子はどう生きるか』

2021年5月5日

今日は「こどもの日」です。
こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる趣旨で制定されました。

「こどもの日」の今日は、10代の女子たちが自分らしく幸せに生きていくために
ぜひ読んで頂きたい本をご紹介します。

『女の子はどう生きるか 教えて、上野先生!(岩波ジュニア新書』

上野先生というのは、富山出身の上野千鶴子さんのことです。

上野さんは、2019年の東京大学入学式の来賓祝辞のあと、
若いひとたちのあいだで知名度があがり、
高校からの講演依頼が増えているのだとか。
ちなみに、この本にもその祝辞がのっています。

『女の子はどう生きるか』というタイトルを見て
ピンときた方もいるかもしれませんが、
漫画化もされた吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』からきています。
上野さんは、「君たち」と呼びかけられるたびに、ざらっとするそうです。
なぜなら「君たち」は男子であることが多いから。
そこで、女子たちに向けて「女の子はどう生きるか」という本を書かれたそうです。
と同時にこの本は「女の子はどう育てるか」の本にもなっています。
いや違うな。10代の女子たちや、親御さんだけでなく、
昔からの古い価値観のままの大人たち(男女問わず)こそ読むべき一冊だと思います。

だって、10代の女子たちがこの本を読んで
上野さんのアドバイス通りに生きようと思っても、
大人たちが理解していなければ女子たちの翼は簡単に折られてしまうと思うから。
だからこそ大人たちにも読んで頂きたい。

この本は、高校生からの質問に上野さんが答えるというQ&A方式で構成されています。

例えば

生徒会長はなぜ男子だけなの?先生はこれが伝統だからと言います。

これに対する上野さんのアンサーが鋭すぎて思わず笑ってしまいました。

「オトナが「伝統」を持ち出したら、答えられないのをごまかしてるだけ!」

これ、最初の質問なのですが、一問目から切れ味最高です。
こんな感じでバッサバッサと切っていきます。

他には

・理系研究者は女子には無理なの?
・セレブな専業主婦になりたいけど、だめ?
・医学部に行きたいのに女の子なら看護師になれと親に言われた
・どうして日本は女性の政治家が少ないの?
・収入、学歴、背の高さは男性より低いほうがつきあうときや結婚では有利なの?
・彼氏に女子力が低いと言われた

などがあります。

どの質問に対しても、上野さんは話しことばでわかりやすく答えています。

上野さんのアドバイスは、大人の私でも役に立つことばかりです。
一番印象に残ったのは、

「あなたの『これってヘン』という感覚を、これからも大事にしてくださいね」

そうそうそうなのよー!と共感。
でも、私の場合、それおかしく無い?と直接指摘することもある一方で
「まあ、ヘンだけど仕方ないか」と諦めてしまうこともあるので、
これじゃダメだなと反省しました。

時代とともに「常識」は変わっていますしね!

つまり。

昔刷りこまれた古い価値観のままの大人たちが
良かれと思ってした若者たちへのアドバイスが、
今の時代では非常識になることもあるのです。
最近、失言のニュースも多いですよね。
それは価値観をアップデートできていないということです。

自分の価値観が古いかどうかはこの本を読んで確かめてみてください。

もし、この本を読んでイライラしてしまったら…
つまり、そう言うことですね。

私は10代の女子ではなく、もうすっかり大人の女性ですが、
この本を読んで本当に良かったです。
大変面白かったですし、読んだ後は心がスッキリしました。

そうそう、本の最後には、女の子たちにオススメの
本や映画がたくさん紹介されています。
このリストがとてもいいセレクトです。
中には、ドラマ化された『その女、ジルバ』
『逃げるは恥だが役に立つ』などの話題作もあります。

yukikotajima 11:05 am

『脳から見るミュージアム』『ポーラ美術館コレクション展』

2021年4月28日

「先日、神奈川の箱根に行ってきました♪」

今の私はすっかりそんな気分です。
まあ、実際私が訪れたのは富山県美術館なのですけどね。

先週の土曜から富山県美術館では、
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』
を開催しています。

ポーラ美術館の収蔵作品から、
モネやルノワールの印象派、
セザンヌ、ゴッホなどのポスト印象派、
マティス、ピカソといった20世紀を代表する画家たち、
そしてユトリロやシャガールなどのエコール・ド・パリに至るまで、
フランスで活動した作家の絵画と、化粧道具が展示されているという
大変豪華な展覧会です。

※一部の作品は撮影可でした。

◎企画展の詳細は コチラ

作品は時代ごとに展示されているので
各時代のトレンドや特徴がわかりやすい上、
作品の鑑賞ポイントも書かれていたため、
じっくり味わいながら鑑賞できました。

個人的には、以前、東京の美術館に企画展を見に行った
「ピエール・ボナール」や「セザンヌ」の作品は
内心興奮しながら鑑賞しておりました。

そして、これらの作品がここ富山で見られることを嬉しく思うだけでなく、
裏で大勢のスタッフの皆さんが尽力されたのよねと思ったら、
心の中で「ありがとうございます」とお礼を言わずにはいられませんでした。

そんな風に思えたのはこの本を読んだからです。

『脳から見るミュージアム アートは人を耕す(講談社現代新書)』


この本は、人気脳科学者の中野信子(なかの・のぶこ)さんと
東京藝術大学大学美術館准教授の熊澤弘(くまざわ・ひろし)さんが
ミュージアムについてお話になったものをまとめたものです。

タイトルを見ると難しそうですが、まったくそんなことはありません。
対談形式なので読みやすいですし、何より読んでいて楽しかったです。

私がこの本を選んだ理由は、本の帯に
「無数のコレクションがコロナ禍に疲れた脳に効く!」とあったからです。

とは言え、日本では「美」を感じることは不要不急のものと思われがちです。

しかし、そうではないことが、
4万〜4万4500年前のホモ・サピエンスの研究結果からわかったそうです。
絶滅したネアンデルタール人と違って、
今も生き延びているホモ・サピエンスは「美」を必要としていたのだとか。
詳しくは本を読んでいただきたいのですが、
つまり「美」は生きるために必要不可欠なものだということです。

この本では、その「美」を感じることができる場所である
ミュージアムの歴史や存在する意義のほか、
論争やワケありといったミュージアムの影の部分、
日本の面白い美術館や作品の見方、
そして、なぜアートが必要なのかなど、
様々な角度からミュージアムやアートの基礎知識が学べます。

へぇぇと思ったのは、作品の鑑賞時間に関する話題です。
なんと作品一点に7秒しかかけられていないんですって。
短いっ!

また、脳と絡めながらの話題も多く、
例えば、人間の脳は使ううちにゴミがたまるそうで、
それを寝ている時に洗い流しており、
その結果、記憶のつながりもよりよくなるそうなんです。

休館中や展示をしていないときのミュージアムも
まさに同じような作業をしているのだとか。
しかも、その見えにくいものこそ、ミュージアムの根本をなす仕事なんですって。

そもそもミュージアムには、作品を展示するだけでなく、
資料を収集し、調べ、保管するという公的な役割があるのです。

また、常設展にはその美術館の基礎的な活動が見えるので、
ぜひ見ていただきたいそうです。

といった感じで、様々な角度からミュージアムについて知ることができます。
ちなみに私が紹介したのはほんの一部です。正直、かなりディープな話もあります。
美術館に寄せられたクレームとか、ワケあり作品とか。。。

でも、私はこの本を読んだことで、美術館が身近な場所に感じられました。
一見、近寄りがたそうな高尚な雰囲気を醸し出しているものの、
実はとても人間味あふれる場所なんだなと思いました。
いや、人間臭さといったほうが合うかも。

この本を読んで私が一番印象に残ったのは、
短絡的に目減りするものより、
未来に生きる記憶としての知識を蓄積していったほうがいい。

というご意見です。

ミユージアムに行くと、知らず知らずのうちに
体の中で化学反応が起こることがあるのだとか。
すぐには変わらないかもしれないけれど、3年後、10年後には変化があるそうです。

ミュージアムに行くことで得られる知識が蓄積していくって、素敵だと思いませんか?
あなたも未来の自分のために、ミュージアムに行ってみてはいかがでしょう。

yukikotajima 10:10 am

『52ヘルツのクジラたち』

2021年4月21日

先週の水曜日、全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ
「本屋大賞」の授賞式が行われました。

◎本屋大賞の公式サイトは コチラ

ちょうどgraceの生放送中に受賞作が発表され、
大賞に町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち(中央公論新社)』が選ばれました。

先週の放送では、ノミネート作の『お探し物は図書室まで』をご紹介しましたが、
こちらは惜しくも2位でした。

◎私の本の紹介は コチラ

ちなみに3位は、私が1位予想をした
伊吹有喜さんの『犬がいた季節(双葉社)』でした。
こちらも惜しかった!

◎私の本の紹介は コチラ

私はノミネートされた10作品のうち7作品読んでいたにもかかわらず、
大賞受賞作は読んでいなかったので早速本屋さんに買いに行き、読んでみました。

もう本の帯には「本屋大賞第1位」とありました。はやいっ!

なぜ私がこれまでこの本を読まなかったのかというと、それには理由があります。
いや、言い訳ですね。(笑)

話題になっているのは知っていたのですが、
本の紹介に「孤独」や「虐待」といった言葉があり、
本を読んで辛い思いを味わいたくないと思ってしまったのです。

また、去年からのコロナ禍で孤独を感じている方も多いですし、
できれば、読んだ後に元気になったり、何か気付きを得たり、
単純に面白かったりするような本を紹介したいと、
特に去年はそんな思いで本を選んでいました。

でも、読む前のイメージだけで決めつけてはいけませんね。

『52ヘルツのクジラたち』は、確かに読むのが辛くなるような描写もあります。
でも、決して辛く暗いだけのお話ではありませんでした。
なんなら読んだ後に嫌な気持ちになるどころか、心が軽くなっていました。

この作品は本屋大賞を受賞したことで
すでに様々なメディアで紹介されていますが、
私からもどんな作品なのか簡単にご紹介しますね。

タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、
他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、
世界に一頭しかいないクジラのことだそうです。

仲間がいても何も届かないし、届けられないため、
世界で一番孤独だと言われているのだとか。

そして、この物語にも孤独を感じている人たちが出てきます。

主人公はアラサーのキナコという女性です。
物語は彼女が大分の亡き祖母の家に移り住んだところから始まります。

ある理由からひとりでそっと生きていきたいと思い、
携帯電話も解約し、親しかった友人にも連絡せず、
たった一人で大分の田舎町に引っ越します。

とはいえ田舎町でひっそりというのは無理な話で、
町の誰ともと交流せず仕事もしていないため
町の住民たちから「何か訳ありに違いない」と噂の対象になってしまいます。

そんなある日、キナコは親の虐待で口がきけなくなった少年に出会います。

キナコは少年が自分と同じ匂いがすることに気付きます。
自分と同じ「孤独の匂い」が。
孤独の匂いは心にしみつき、なかなか消えないのだとか。

キナコは少年を放っておくことができず、彼との交流がはじまります。

ひとりでひっそり暮らしていきたいと思ったキナコでしたが、
この少年をはじめ様々な人と触れ合うことで
キナコは避けていた自分の過去とも向き合うようになります。

本だから声は聞こえないはずなのだけど、
私にはキナコの声が変化していくのが感じられました。

キナコがどう成長していくかは、
ぜひ本を読みながら見守っていただければと思います。

そうそう!

最後に、本の帯の裏側をチェックするのをお忘れなく〜。
なんとスピンオフが収録されているのです。

この短編を読んだら、また最初から本編を読みたくなってしまったのですが、
最初のパートは、1度目とは全く異なる物語に感じられました。
特に1ページ目は、笑いながら読んでしまいました。
180度物語が変わるってすごいわ。

この本を読む前は、暗く辛い物語はちょっと…と思っていたけれど、
まさかこの本を読んで笑うことになるとは。

やはり読書って面白い。

yukikotajima 10:01 am

『お探し物は図書室まで』

2021年4月14日

今日の14時30分ごろ、今年の「本屋大賞」が発表されます。

本屋大賞は全国の書店員の投票だけで選ばれる賞で、
大賞受賞作は書店員が今一番売りたい本ということになります。

大賞受賞作は本が売れるだけでなく、映画・ドラマ化されることが多いので、
本を読まない人たちからも注目を浴びます。

例えば、湊かなえさんの『告白』小川洋子さんの『博士の愛した数式』
などは映画化され、話題になりましたよね。
2019年に本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』
も先日、映画化されることが発表されたばかりです。

本が大好きな全国の書店員の皆さんが「とても面白いので是非読んで!」
と熱く推薦しているだけあって、やはり大賞受賞作はとても面白いのですが、
実は事前に発表されるノミネート作にもいい作品がそろっています。

本好きの方の中には、ノミネートされた10作品すべてを読んで
どれが1位になるかを予想して楽しんでいる方もいます。

私が読んだのは7作品ですべてを読んでいないのですが、
読んだ中で1位を予想するなら伊吹有喜さんの『犬がいた季節』かな。

◎私の感想は コチラ

でも、山本文緒さんの『自転しながら公転する』も良かったなあ。

◎私の感想は コチラ

なんて挙げていくと止まらなくなりそうですが、
どれが選ばれるかな?と予想するのも楽しいものです。

さて、今年の本屋大賞は、どの作品が選ばれるのでしょうね。
私の予想は当たるのか!?ドキドキ。
発表され次第、graceの中でもお伝えしますね。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

***

さて、今日ご紹介する本は、今年の本屋大賞にノミネートされている作品です。

『お探し物は図書室まで/青山美智子(ポプラ社)』

ノミネート作の中からまだ読んでいないものを選んでみました。
なぜこの作品にしたのかというと、今の時期に合っているように思えたからです。

新年度が始まって今日でちょうど2週間です。
新社会人の中には「今の仕事は向いていないかもしれない」
と思い始めた方もいるのでは?

また、産休・育休中の方の中には同期の出世を知って
羨ましく思っている方もいるかもしれません。

そのほか、働きたくてもうまく働けない人や、
定年退職したものの毎日をどう過ごしていいかわからない人、
本当にしたいことは別にある人など、
仕事や人生について人知れず悩んでいる方はいませんか?

もしどれか一つでもあてはまるようなら、この本を読んでみてください。
読んだ後はきっと心が軽くなると思います。

『お探し物は図書室まで』は連作短編集で、
まさにさきほど挙げた悩みを抱えた5人が登場します。

皆、偶然訪れた町の小さな図書室(図書館ではなく図書室です!)で
司書の女性に探している本を見つけてもらうのですが、本のリストには
目的の本とは別に絵本や図鑑といった関連性のない本も一冊入っています。
そして、リストとともに渡されるのが、
本の付録だという司書さん手作りの羊毛フェルトです。

だいぶ意味が分からないですよね。(笑)

でも、悩める5人は、その本と羊毛フェルトのおかげで、
本のタイトルにもなっている、自分が本当に「探している物」に気付きます。
どのように気付いていったかは、ぜひ本を読んでお確かめください。

ちなみに、この司書さんがなかなかに癖のある人物でして、
その見た目は『ゴーストバスターズ』に出てくるマシュマロマンとか、
ベイマックスようだと表現されます。つまり色白で体が大きいのです。
そして基本的には不愛想です。
でも聞き上手なので、彼女の前ではつい本音がこぼれてしまいます。

私はこの説明からマツコデラックスさんを思い浮かべてしまったため、
脳内では声も表情もマツコさんで再現され続けました。(笑)
いつかドラマ化されたらぜひマツコさんに演じていただきたいわ。

さて、このマツコさん、いえ、司書さんがズバリ悩みを解決するのではなく、
あくまでも誘導、アシストするだけで、皆自分で気付いていきます。

そして、この気付きの過程で出会った人たちの発言が素晴らしいのです。

例えば「夢はあるけど今は時間もお金も勇気もない」という人に対して、
すでに夢を叶えた人が放った言葉がこちら。

「『ない」がある時点でだめ。『ない』を『目標』にしないと」

今はコロナ禍ということもあり、私自身『ない』ことは仕方ない
と思っているところがあったので、ドキリとしました。

この「ドキリ」が本を読みながら何度もやってきました。
それから涙も。思いがけず何度も泣いてしまいました。(いい涙です)

今の仕事や生き方に悩みを抱えている方はもちろん、
新社会人の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
仕事に関するマニュアル本を読むよりこの本を読んだほうが、
きっと心が動くと思います。

私は心、動きましたよ!
そして、この先、迷ったり悩んだりしたときは、またこの本を読みたいなと思いました。
あと、作中に出てくる本も読んでみたくなりました。
まずは久しぶりに『ぐりとぐら』を読んでみようかな。

おまけ。

なんとまるで図書室の本のような装丁です。
ここにもぜひ注目してみてね。

yukikotajima 9:04 am

『クララとお日さま』

2021年4月7日

日々、生活を便利にする新しいアイテムが登場しています。
携帯電話にパソコンにスマートフォン。
20年前はスマホが無くても十分便利だったのに、
今やスマホの無い暮らしなんて想像できません。

そのうち、見た目は人と同じで感情もある
AIロボットが当たり前になる日もやってくるのでしょうね。
ロボットがいない生活なんて信じられない!なんて言っているのかな。

今日ご紹介する本は、まさにそんなAIロボットがいる時代の物語です。

『クララとお日さま/カズオ・イシグロ、翻訳:土屋政雄(早川書房)』

『クララとお日さま』は、2017年にノーベル文学賞を受賞した
日系イギリス人作家、カズオ・イシグロの最新長篇です。

カズオ・イシグロは長崎生まれで、
1960年の5歳のときに父親の仕事でイギリスに渡り、
以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育ち、
その後、イギリス国籍を取得されました。

代表作の『わたしを離さないで』は、
2016年に綾瀬はるかさん主演でドラマ化されたほか、
映画化、舞台化もされるなど話題になりました。

新作の『クララとお日さま』は、ノーベル文学賞受賞後初となる
6年ぶりの新作ということで、日本はもちろん世界中で話題となっています。
予約だけで累計発行部数が65,000部に達したそうですよ。

先日本屋さんに行ったら、この本がずらりと並んでいて、
まるで一枚の壁のようになっていました。
それがとてもオシャレな雰囲気でした。
というのも装丁が素敵なのです。
大きなひまわりと、その横に小さな女の子が立っているイラストで、
まるで絵本の表紙のようです。

***

『クララとお日さま』の主人公は、
人間の形をした人工知能搭載ロボットの「クララ」です。

10代の若者が大人になる手助けのために開発されたAIロボットで、
物語はクララの語りで進んでいきます。

え?AI目線で面白いの?と思う方もいるかも知れませんが、
ロボットとは言え感情や個性もありますので、決して単調ではありません。
それどころか、突飛な行動に出たり、
物語もどこに向かっていくのかわからなかったりするので、
飽きることは一切ありませんでした。

ほぼ人間と変わらないクララですが、違うところもあります。
それは栄養は食事からではなく、お日さまから得ているということです。

本のタイトルにも「お日さま」がついていますが、
クララにとって、お日さまは心身ともに支えてくれる大切な存在です。

物語は、クララが町のショップでほかの様々な商品と並んで、
誰かに買ってもらうのを楽しみにしているところからスタートします。

ところが、優れたロボットでありながらも
型落ちのクララは、なかなか買い手がつきません。

店内の一番目立つところからどんどん後ろへと下げられる中、
病弱な少女「ジョジー」に気に入られます。

ジョジョーは母親と家政婦と暮らし、隣の家には親友の少年が住んでいます。
でも、彼は他の子どもとは何かが違うらしいことがわかります。
他にもおかしなことが色々とあり、なんだか不穏な気配で、
『わたしを離さないで』を読んだときの感覚が蘇ってきたのですが、
著者のイシグロさんによると、新作はこれまでに発表した
『わたしを離さないで』と『日の名残り』の流れをくむものになっているそうです。

そして、その不穏な空気の中で様々な謎が生じ、
いったいどういうことなの?と思ったときにはもう、
本のページをめくる手が止まらなくなっています。

病弱で家で過ごすことの多いジョジーにとってクララは大切な存在です。

クララの仕事は「人の孤独」を癒すことでもあるので、
ジョジーがさびしさを感じないよう献身的に尽くします。

クララにとって一番大事なことは「ジョジーの幸せ」です。
そのためなら、どんなことでもします。
自分のこれまでの知識や経験をフル活用しながら、最善の選択をしていきます。

私たち人間は、きっとたくさん悩みながら物事を決めていくと思うのですが、
クララは「ジョジーの幸せ」だけを考えて選択していきます。
ブレがありません。

でも、ジョジーの心を100%理解できるかといったら、これはかなり難しい。
「心」と「感情」は似ているようで、違うものなのですよね。

そして、クララはある答えにたどりつきます。

***

物語はAIロボットのクララの語り口で進んでいくので
文章そのものは難しくなく、さらりと読めます。
でも、内容は濃かったです。放っておけない様々な問題も出てきますので、
本を読んだ後に語りたくなる方が多いと思います。
私もすでに本を読んだ人と語りたいです!(笑)

また、AIロボットが出てくる近未来の物語なのに、
私には今よりもっと昔の物語に思えました。
人間たちは退化していないか?と思ったのだけど、そうではなく、
私たち人間が良くも悪くも変わっていないということなのかもしれません。
クララがピュアで謙虚だからこそ、
じたばたしている人間たちのみっともなさが際立っていました。
他にも色々感じたことがありましたが、ネタバレになるので、我慢します。(笑)

ピュアでまっすぐなクララから、きっと気付かされることがあると思います。

私はクララから人を良く観察することと謙虚であることを学びました。
自分が!自分が!と自己主張の強い現代こそ、
他人を観察することと、一歩引く謙虚さが大事だなと思いまして。

あなたはクララから何を感じるでしょうか。
ぜひクララのお話に耳を傾けてみてください。
ちなみに小説は440ページとやや長めですので、
じっくりお話に付き合ってあげてくださいね。

yukikotajima 9:30 am

『くしじじいとくそばばあの日本史』

2021年3月31日

今あなたはおいくつですか?

ご自身の年齢を若いと思いますか。
それとも、もう自分は若くないと思うでしょうか。

「人生100年時代」と言われるようになってから
年齢の概念が変わりましたよね。

中には実年齢よりだいぶ若く見える方もいますし、
生き方そのものが若い方もいます。
何歳になっても第一線でお仕事をなさっている方や
フルマラソンを完走する方など、お元気な方は大勢いらっしゃいます。

平均寿命も昔に比べると延びていますが、
実は昔も長生きをして、貪欲に、したたかに、歴史を生き抜いた
ご老人たちが大勢いらっしゃったようなのです。

今日ご紹介する本は、こちら。

『くそじじいとくそばばあの日本史』/大塚ひかり(ポプラ新書)』

なかなか放送では言いづらいタイトルです。(笑)

この本、以前、社会学者の古市憲寿さんがオススメされていまして、
読んでみたい!と思っていたのです。さすが辛口の古市さんセレクトです。

タイトルを耳で聞いたときにもインパクトがありましたが、
本屋さんで目にしたときもなかなかの衝撃でした。
まず、見た目が真っ赤なのと、そこに描かれたくそじじ…
いえ、お爺さんとお婆さんのイラストが
人気イラストレーターの五月女ケイ子さんが描いたものなのでシュール!
本屋さんの新書コーナーで一番目立っていました。

ところで、なぜこんなタイトルなのかというと、
著者の大塚さんは、長谷川町子さんの漫画『いじわるばあさん』が大好きで、
この漫画によく出てくる言葉が「クソばばぁ」だったのだとか。

また、「くそ」にはパワフルという意味もあり、
大塚さんは、超高齢社会となった今こそ、
そんなご老人たちのパワフルさが求められているのでは?と思い、
歴史上の様々なご老人たちを紹介することにしたそうです。

この本には初めて名前を目にするような人物もいますが、
有名な歴史上の人物も登場しています。

たとえば、豊臣秀吉や一休さん、浦島太郎、天海など。

天海は江戸時代の天台宗の僧ですが、
なんと81歳で政界デビューし、100歳を過ぎても政界に君臨し続けたのだとか。

他にも世間体や常識にとらわれずに我が道を行った人として、
葛飾北斎が紹介されています。
90歳で亡くなった時には
「天が私にあと十年、せめて五年の命を与えてくれたら本物の画工になれたのに」
と言ったそうです。
人としては変わり者だったかもしれないけれど、
画業に対する情熱はずっと変わらず、何より謙虚であったことが素晴らしい!

それからもう一つ、北斎は偉大だなと思えることがあるのですが、
それは本を読んで確かめてみてください。

この本には、そんなパワフルなご老人たちが次々に登場し、
みんなすごいなあと思う一方で、老人たちのダメな部分も描いています。

たとえば、最近「キレる老人」が話題になっていますが、
江戸時代にも年を取って怒りっぽくなっている老人はいたようで、
「くどくなる、短気になる、愚痴っぽくなる、
心はひがみっぽくなってカラダは古くなる」
という意味の狂歌もあったそうです。

まるで今と変わりませんね。

この本は、タイトル含めちょっと言葉遣いが気にはなるかもしれません。
でも、悪口だらけではなく、歴史上の
お爺さん、お婆さんへの愛が詰まった一冊になっています。
「くそ」を「かっこいい」に頭の中で変換して読んでみるのがいいかも。

まあ、中には変換する必要のない本当にダメダメな人も出てきますが。(笑)

年を重ねるにつれ、何かと年齢を言い訳に様々なことをあきらめてしまいがちだけど、
私はこの本を読んで、もっとがっついてみてもいいのかもな、と思いました。

でも、ただの「〇〇じじい、ばばあ」にはならないよう注意は必要ですが。
何歳になっても、思いやりや謙虚さは忘れないようにしたいですね!
独りよがりでは、孤独な老人になてしまいますものね。

yukikotajima 10:50 am

ありがとう、寅さん!

2021年3月24日

コロナ禍で家で過ごす時間が増えたことで、
映画やドラマや小説などの過去の名作に触れた方もいらっしゃることと思います。

私はすでにラジオでも何度もお話しているとおり、寅さんにはまりました。

寅さんとは、映画『男はつらいよ』シリーズで
渥美清さんが演じたフーテンの寅こと車寅次郎(くるま・とらじろう)のことです。

1969年に第1作が公開され、
1995年までの26年間に全48作品(特別篇を加えると49作品)
が公開された国民的人気シリーズで、2019年には第50作が公開されました。

旅をしながら日本各地で商売をし、
その旅先で美しい女性たちに恋をし、
実家の柴又に帰ってきては家族と交流というか毎回必ず喧嘩をする、
というお決まりのスタイルをベースに、
毎回素敵なマドンナや日本の名所が登場します。

◎映画『男はつらいよ』の公式サイトは コチラ

↑この公式サイト、とっても楽しく、何度見ても飽きません。

私が寅さんにはまったのは、2019年の年末に公開された
第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』を見たことがきっかけです。

もちろん寅さんの存在は知っていたものの、作品をちゃんと見たことはなく。
でも、マスコミ試写で見ることになりまして。
過去の作品を見ていないのに理解できるかしら?と不安を抱え鑑賞したのですが、
これがとても面白くて、過去のシリーズも見たいと思っていたら、
BSテレ東で去年4月から全話4K修復版の綺麗な映像で放送されることになったのです。

そして、この一年、私は毎週土曜の夜『男はつらいよ』シリーズを見続け、
ついに先週末、全ての作品の放送が終わりました。寅さんロス真っただ中です。(涙)

寅さんのことを何も知らずに見た『お帰り 寅さん』は、
ただただ面白くて、ワガママで陽気で自由なおじさんの物語だと思ったものですが、
シリーズを全て見た後にあらためて見た『お帰り 寅さん』は、
泣けて泣けて仕方ありませんでした。寅さんのセリフの全てがより心に染みました。

吉岡秀隆さん演じる甥の満男の
「人間は、何のために生きてんのかな?」に対する寅さんの名言
「うーん、何て言うかな、ほら、ああ、生まれて来てよかったなって思うことが
何べんかあるじゃない、ねえ。そのために人間生きてんじゃないのか」
というセリフは、初めて聞いた時もいい言葉だと思ったけど、
ちゃんと物語の中で聴くと、さらに心に響きました。
あの寅さんが言うからこその説得力たるや。

私は作品を見る度に感想や印象に残ったセリフを毎回ノートに書いていたのですが、
昭和の下町の粋な表現や会話のテンポが耳に心地良く、
ノートに書くのは楽しい作業でした。言葉や会話が魅力的な作品なのです。

さて、そんな素敵なセリフが一冊にまとまった本があります。
(私のノートでは無く。笑)

前置きが長くなりましたが、今日は寅さんに関連した本を2冊ご紹介します。

まずは『男はつらいよ 寅さんの人生語録 改/山田洋次、朝間義隆』です。

こちらの『〜改』は1993年に発売された本を改題し、
加筆・修正・再編集したものだそうです。
寅さんを愛してやまない牧内先輩から教えて頂きました。
(アナウンサーだけでなく寅さんの先輩でもあります。笑)
牧内さんとはこの一年、よく寅さん談義をしました。

この『人生語録』、最高でした。
寅さんをはじめ、出演者の皆さんの名言やお馴染みのセリフが掲載されているのですが、
私の大好きな初代おいちゃんの「馬鹿だねぇ」も
御前様の「困った」も載っており、読みながらニヤニヤが止まりませんでした。
また、「ケッコー毛だらけ猫灰だらけ、お尻のまわりは…」
などの寅さんの口上も載っているので、声に出して読みたくなりました。

セリフが載っているだけなのシンプルな本なのだけど、
出演者たちの表情や声が浮かんでくる、とても賑やかな一冊でした。


2冊目は、『寅さんの「日本」を歩く 一番詳しい聖地探訪大事典/岡村 直樹』です。

一年中ほとんど旅をしている寅さんのおかげで、
コロナ禍でなかなか旅行にいけなくても旅気分を味わうことができました。
それも風の吹くまま気の向くままの旅で、何と自由な旅を楽しめたことか。
閉塞感のある日々だったからこそ、カラッと明るい映画の空気に救われました。

この本には、そんな寅さんの立ち寄り先、つまり聖地330ヶ所余りが載っています。
温泉、城下町、港町、島などのスポットの他、
寅さんが愛した昭和(公衆電話、ちゃぶ台など)や
全作品ガイドや全ロケ地ガイドまである、かなり読み応えのある一冊です。

ただし、寅さんは富山には来ていないので、富山のロケ地はありません。残念!

寅さん関連の本は本当にたくさん出ていますが、
私はコロナ終息後に寅さんのロケ地に行ってみたいと思って、この本を選んでみました。
これからのんびりと行き先を決めようと思います。

でも、最初に行く場所は決めています。
寅さんの故郷、葛飾柴又です。
早く行きたいなあ。

この一年、私と同じように『男はつらいよ』シリーズをご覧になり、
今、絶賛寅さんロス中の方は、今日ご紹介したこの2冊をぜひ読んでみてください。

また、まだ映画『男はつらいよ』シリーズをご覧になっていない方は、
ぜひ1作目から順番にご覧になってみてくださいね!
そして見終えたら改めてこのブログを読んでみてください。

✴︎✴︎✴︎

[おまけ]

田島が好きな寅さんシリーズ

1『男はつらいよ』

13『寅次郎恋やつれ』

17 『寅次郎夕焼け小焼け』

19『寅次郎と殿様』

32『口笛を吹く寅次郎』

本当は他にもたくさんあるのですが、
キリが無いので、なんとか絞ってこの5作品にしてみました。

寅さん、この一年本当にありがとうございました。
いつか寅さんを感じる旅に出るのが私の夢です。

yukikotajima 11:31 am

『犬がいた季節』

2021年3月17日

卒業シーズンですね。今日は中学の卒業式なのですよね。
卒業生の皆さん、おめでとうございます。
今日ご紹介する本は、卒業シーズンの今、読んでいただきたい一冊です。

『犬がいた季節/伊吹有喜(いぶき・ゆき)【双葉社】』

と〜ってもいいお話でした!
私はこの本を読みながら目が腫れるほど泣きました。
去年春に小川糸さんの『ライオンのおやつ』以来の号泣です。

『犬がいた季節』は、三重県の進学校に通う高校3年生たちを描いた連作短編集です。
どのお話にも「コーシロー」と名付けられた白い犬が出てきます。
コーシローは生徒たちによって学校で飼われているのですが、
なんと著者の伊吹さんの母校に実際にいた犬がモデルになっているのだとか。

この物語は、犬のコーシローが高校で過ごした12年間が描かれています。

まずは、コーシローが学校に迷い込んできた1988年、昭和最後の卒業生の物語です。
この年、「コーシローの世話をする会」が発足し、
実家がパン屋の優花(ゆうか)も会のメンバーになります。

優花は、東京の有名私大に行きたいと思っているのですが、
兄からは「ガリ勉の女は可愛くない」と言われ、
祖父からは「女の子が東京の私立に行ってどうするんだ」とあきれられるなど、
進路について家族からはよく思われていません。
今から約30年前は、女性の進学に関してはたしかにそういう空気ありましたよね。
果たして優花はどんな決断を下すことになるのでしょうか。
また彼女には好きな人がいるのですが、
彼との淡い恋が甘酸っぱいし、せつないしで。
いいお話でした。

次は、1991年に鈴鹿サーキットにF1を見に行った男子二人のお話です。
アイルトン・セナが操るマシンが爆音とともに目の前に現れた時の
二人の喜びようといったらもう。二人の大興奮っぷり最高です!
自転車でサーキットに向かい、テント泊をして過ごした三日間が描かれます。

他には、神戸で被災した祖母と急きょ同居することになった女子や、
ある目的のために援助交際をする女子、
英語教師に思いを寄せる男子の物語などがあります。

全て高校3年生の物語ですが、時代が異なります。
その違いは、それぞれの時代に流行った音楽や出来事、話題の人物などからわかります。
でも私はどの時代の高校生にも懐かしさを感じました。

というのも、きっといつの時代の高校生も
同じようなことで悩んだり、喜んだりしているからだと思います。

特に高校3年生は、本当に悩むことが多いですよね。
進学か就職か。
大学に行くとしたら、地元か県外か。国立か私立か。
自分の学力に見合った大学はどこなのか。
親の思いと自分の思い、どちらを尊重するべきか。
選択肢だらけです。
また、卒業後に進む道が違うせいで、
両想いなのに恋が叶わないなんてこともあるわけです。うう、せつない。

物語の中の高校生たちも数ある選択肢の中から、
自分の選んだ道を進んでいくことになるのですが、
いつの時代も高校生たちのそばにいたのが犬のコーシローでした。
このコーシロー目線のお話も間にはさまれ、物語を優しく彩ります。

最後には令和元年も描かれ、登場人物たちのその後の人生が明らかになります。
物語の最後もとても良かったです。
そうきたかーーーとまた泣きそうになりました。いや、泣いていました。
そうそう、最後まで読んだらカバーを外すのをお忘れなく〜。
最後まで読んだ人にだけわかる素敵なプレゼントがありますよ。

『犬がいた季節』は、まっすぐな、とってもいい物語でした。
みんな優しくて。でも不器用なんです。だから後悔ばかりです。
家族の本心に後で気が付いたり、
好きな人の気持ちに全く気が付かなかったり、思いを伝えられなかったり。
でも、その後悔から学ぶこともあるのですよね。
この本には、生きていくうえで大切なことがたくさん詰まっていました。
人の優しさに涙し、うまくいかない恋に涙し、嬉しくて涙し、悲しくて涙し、
なんだかずっと泣いていました。
ストレートに心に響く本って、いいもんですね。

高校生たちの青春小説ですが、現役の学生さんだけでなく、
かつての高校生、つまり大人にも、いや、大人こそ読んでいただきたい!
私のように大泣きするのはきっと大人だと思うもの。
物語の最後に登場人物たちのその後が描かれていいるのがいいのです。

どのお話も高校を卒業していくシーンで終わりますので、
卒業シーズンの今読むのにぴったりです。
ほんと一人でも多くの方に読んでいただきたいな。

yukikotajima 9:10 am

『オルタネート』

2021年3月10日

最近、独身の年下の友人と話をする度に「マッチングアプリ」の話題になります。

あなたは使ったことあります?

私は使ったことはないのですが、
もう今の時代、出逢いのツールとして確立しているようですね。
しかも都会だけでなく、富山のような地方でも。

さて、今日ご紹介する本は、そんなマッチングアプリがベースの物語です。

NEWSの加藤シゲアキさんの『オルタネート(新潮社)』です。

この作品は、先日、「第42回吉川英治文学新人賞」を受賞し話題になっています。

この新人賞は、過去には、宮部みゆきさんや池井戸潤さんなど
人気作家の皆さんが受賞されています。
アイドルが受賞したのは初めてのことだそうです。

加藤シゲアキさんは、1987年生まれの33歳で、
青山学院大学法学部を卒業されています。
アイドルグループNEWS のメンバーとして活動しながら、
2012年に『ピンクとグレー』で作家デビュー。この作品は映画化もされました。

『オルタネート』は、加藤さんの3年ぶりの長編小説です。
タイトルの「オルタネート」は、高校生限定のマッチングアプリの名前で、
東京のとある高校を舞台に、3人の若者たちの物語が描かれています。

まず一人目は、調理部の部長をつとめる「いるる」。
彼女は、高校生の料理コンテストで全国優勝することを目指しています。
アプリはしていません。

二人目は、オルタネートで運命の相手を見つけようとのめりこむ「なづ」。
彼女は、オルタネートのマッチング結果を信じて疑いません。

そして、高校を中退したことでオルタネートの権利を失った「なおし」。
彼は、かつてのバンド仲間を探しに大阪から東京にやってきます。

そんな3人の物語が同時進行で交互に描かれていきます。

マッチングアプリが軸になっているお話というと、
そこで、くっついたり離れたりと
アプリに振り回される物語を想像してしまいそうですが、
そうではありません。

そもそも「いるる」はアプリは絶対にしたくないと思っているし、
「なおし」はやりたくても高校を中退したためできません。
ただ、三人の中で唯一はまっている「なづ」だけは、アプリの力を信じて疑いませんが。

この3人には、それぞれ悩みがあります。
コンプレックスに苦しんでいたり、
自分の思いが大切な友人に届かなかったり、
家族との関係がうまくいかなかったり。

そんな10代ならでは葛藤や苦悩がこの本には詰まっています。
でも決して暗く重たいわけではなく、
全体を通してみると、透明感に満ちていて、まぶしさを感じました。
悩んだり苦しんだりしながら成長していく彼らの輝きがまぶしいのです。

ちなみに、このメインの3人は物語の中ではそれほど繋がりはありません。
でも、終盤気持ちよく絡み合っていきます。

果たして3人はどんなことに悩み、
その問題とどのように向き合っていくのでしょうか。
ぜひ大人の皆さんは、10代だったころの自分と重ねながら読んでみてください。

料理コンテスト本番の緊張感や
マッチング相手に初めて会う時のドキドキした気持ち、
そして、人の心が動く瞬間のなんとも言えない高揚感をぜひ味わってみてください。

私は若者ならではの大胆な行動や、感情のまま突っ走る勢いに懐かしさを感じました。
そして、ちょっと羨ましくもありました。
ああ、私はなんて聞き分けのいい大人になってしまったものかと。
と同時に私も自分の気持ちにわがままでいよう!とも思いました。

10代はもちろん、大人の皆さんにも読んでいただきたい一冊です。

この作品もデビュー作『ピンクとグレー』のように映像化されるように思います。
できれば映画ではなく、ドラマで丁寧に描いていってほしいな。

yukikotajima 11:51 am

『滅びの前のシャングリラ』

2021年3月3日

もし突然こんなことを言われたら、
あなたは何を感じ、どんな行動に出るでしょうか。

「一ヶ月後、小惑星が地球に衝突し、人類が滅亡する」

人類滅亡と聞くと、30代以上の皆さんは、
1999年のノストラダムスの大予言を思い出すでしょうか。

私は当時、大学生でしたが「滅亡の瞬間どこで誰と何をする?」
なんて話を友人たちとよくしていたように思います。
でも絶対に滅亡することは無いだろうと信じていたので、
みんなどこかのんびりとした雰囲気でふざけ合っていました。

でも、本当に一ヶ月後、人類が滅亡することになったら、
人は何を思い、どんな行動をすると思いますか?

***

今日ご紹介する本は、凪良ゆうさんの話題作
『滅びの前のシャングリラ(中央公論新社)』です。

著者の凪良さんは、去年、『流浪の月』で本屋大賞を受賞し注目を浴びました。
私ももちろんラジオで紹介しています。

◎田島の本の感想は コチラ

実は新作の『滅びの前のシャングリラ』も
去年に引き続き、本屋大賞にノミネートされています。
2年連続で大賞を受賞するのか気になります。
さらに、紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする
「キノベス!2021」の1位にも選ばれるなど、今話題の一冊です。

物語は、学校でいじめを受けている
17歳の友樹(ゆうき)の話から始まります。

彼は、小惑星が地球に衝突して人類が滅亡する
というニュースをテレビで見ても、デマに違いないと思い、
今の憂鬱をすべてリセットしてくれるなら、
小惑星でもなんでも落ちてくればいいと思っています。

どうせ学校に行ってもいじめられるし、
勉強も運動も苦手だし、見た目はぽっちゃりだし…
とやけになっているのです。

彼の母親も「賢い人がどうにかしてくれる」とどこか他人事です。

ところが、徐々に状況は変わっていきます。
スーパーやコンビニでは商品の略奪行為が始まり、
テレビ局では試験放送の映像ばかりが流れ、
ついには自ら命を絶つ人まで出てきます。

残り一ヶ月という宣告を受けて、
地球よりも先に人間が壊れはじめてしまったのですね。

ところが17歳の友樹は、小惑星なんて落ちてしまえばいいと思っていたはずなのに、
あることがきっかけで残りの日々を今度こそ精一杯生きたいと、
前向きな気持ちになっていったのでした。

なぜ彼が「生きたい」と思ったのかは、ぜひ本を読んでください。

本作は、この男子高校生のお話のあとは、
人を殺してしまった男性、恋人から逃げ出した女性、
そして、すべてを手に入れた歌姫のお話が順番に描かれていきます。

全員に共通しているのは、
これまでの人生をあまりうまく生きられなかったということと、
1ヶ月後には生きていないということです。

彼らがこれまでどんな人生を送ってきて
人類滅亡を前にどんな気持ちでいるのかが、
変わりゆく世界の状況とともに丁寧に描かれていきます。

人類滅亡を前に、私たち人間は一体どうなってしまうのでしょうか。

まるでドキュメンタリーのような文章で、
最初から最後まで夢中で本のページをめくっていきました。
とても面白いのでストーリーの先が気になるものの、
この世界が終わってしまうなんて…と思うと寂しさもあり、
そんな相反する気持ちに揺れながら、読み進めていきました。

それにしても、この残り一ヶ月というのが、絶妙でした。
まだだいぶ先のようでもあるけれど、実はあっという間なのですよね。

そして残り一ヶ月というと、絶望しかないように思いますが、そうではありません。

こんな状況だからこそ気付けた幸せもあります。
言い方を変えれば、こんな状況じゃなかったら
もしかしたら一生気付けなかったかもしれない幸せもあって、
読みながら何度も私の目にじんわりと涙が浮かびました。

まさに本のタイトル通り「滅びの前のシャングリラ(理想郷)」でした。

この物語はフィクションですが、
小惑星が衝突して人類が滅亡することなんて絶対に無いとは言い切れません。
だからと言っていつ来るかわからないその日を想像して怯えて過ごすのではなく、
私は、あらためて後悔なく毎日を生きていきたいと思いました。

『滅びの前のシャングリラ』、大変面白かったです。
ぜひお読みください♪

yukikotajima 9:36 am

『商店街のジャンクション』

2021年2月10日

あなたは「着ぐるみ」に入ったことはありますか。

きっと多くの方が「ない」と答えるのでは?

では、「着ぐるみ」に入りたいと思ったことはあるでしょうか。

私はどちらも「ノー」です。
でも、この本を読んだら入ってみたくなりました。

『商店街のジャンクション/村木美涼(早川書房)』

村木さんは、宮城県生まれですが、
なんと2016年からは富山県にお住まいなのだとか。
ようこそ富山へ!

2017年に『窓から見える最初のもの』で
アガサ・クリスティー賞大賞を受賞して作家デビューされたのち、
2019年には『箱とキツネと、パイナップル』で
新潮ミステリー大賞優秀賞を受賞されています。

おめでとうございます〜!

今日ご紹介する『商店街のジャンクション』は、先月下旬に出たばかりの新作です。

本の表紙には二本足で立ってピースをしている犬の絵が描かれ、
帯には「着ぐるみ」とあるので、
表紙を見ただけで、なるほどこのワンちゃんは着ぐるみなのかと気付きます。

この着ぐるみの犬の名前は「チョッキー」です。

チョッキーは、商店街にある古びた映画館の
週末限定の「ナイトシアター」の宣伝チラシを
通りすがりの人々に配るのが仕事で、
男女3人が順番に中に入っています。

この3人はそれぞれ悩みを抱えているのですが、
着ぐるみの中に入ることで悩みが解決するのではと思っています。

3人によると、着ぐるみは、
目立っているようでいて、鉄壁の匿名性をまとっており、
自分のことを誰にも気づかれずにいられる場所であり、
中に入った後は、それまで感じたことのない解放感に満たされるのだとか。

3人は犬の着ぐるみチョッキーの中に入ることで、
自分自身と向き合うようになります。

3人が初めて顔を合わせたのは、
商店街の中の喫茶店、その名も「時計」でした。
店名通り、店内にさまざまな時計が並ぶ不思議なお店ですが、
コーヒーはとても美味しいそうです。飲んでみたい!
そして、このお店の白髪の男性店主が、ある方に言わせると
「近くにいると存在感が薄いのに、離れると存在感が増す」ような人で、
この店主がさらりといいアシストをするのです。

果たして着ぐるみをシェアする3人はそれぞれどんな悩みを抱えていて、
着ぐるみに入り、この喫茶店に通うことで、どんなことに気付くのでしょうか。
続きは本をお読みください。

そうそう、著者の村木さんは富山在住だそうで、
作品の中に「富山」がちょこっと登場しますので、お見逃しなく〜。

最初にも言いましたが、この本を読んで私も着ぐるみの中に入ってみたくなりました。
中に入ったら、世界はどのように見え、私は自分の何に気付くのか知りたくなったのです。

たしかに着ぐるみって不思議な存在ですよね。
だって、着ぐるみの中の人間が突然手を振ってきたら警戒してしまうけど、
同じ人が着ぐるみを着た状態で手を振ってきたら
一瞬で笑顔になって「かわいい〜」とこちらから近づいたり、握手したり、
なんなら一緒に写真を撮ろうよ〜!と言い出したりと、
警戒心はまるで無くなります。

私たちの笑顔は、着ぐるみに向けたものであって、
中の人に向けたわけではないのですよね。
でも、たしかに中には人がいるわけで、冷静に考えると面白いなあと。

存在としては目立つけれど、中の人の印象は薄いわけです。

その感覚を私も着ぐるみの中で味わってみたくなりました。

さて、私は小説を読む度に、いつか映画化されそうだわ!
なんて勝手に想像して楽しんでいるのですが、
『商店街のジャンクション』は舞台化されそうだなあと思いました。
というか、舞台化したものを見てみたい。

どなたかいかがでしょう?(笑)

yukikotajima 11:19 am

『銀の夜』

2021年2月3日

いよいよ今度の土曜日は、気まぐれな朗読会です。
チケットを買ってくださった皆さま、ありがとうございます。

気まぐれな朗読会は、
「気ままプラン」パーソナリティ廣川奈美子さんと
「grace」パーソナリティ田島悠紀子でお届けする朗読会です。

気ままの「気ま」とグレースの「ぐれ」で「気まぐれ」です。

今年は、2月6日(土)18:00〜
富山県民小劇場 オルビス(マリエとやま7階)で開催します。

今年も3部構成です。
例年通り、1部、2部は、廣川さんとともに
3部はそれぞれ作品を読みます。

廣川:「ムシヤシナイ」高田都(たかだ・かおる)
田島:「鍋セット」角田光代(かくた・みつよ)

◎3部の作品の詳細は コチラ

朗読会のチケットは、まだまだ販売中です。
当日は、コロナ対策をしてお届けしますので
もしよかったらお越しください。

◎チケットについて詳しくは コチラ

なお、当日の21時頃(終演後)から3部のみFMとやまYouTubeチャンネルで配信します。
配信は21時頃~22時頃の時間限定ですので、お見逃しなく!

◎FMとやまYouTubeチャンネルは コチラ

***

さて、今回の朗読会で私は、角田光代さんの「鍋セット」を読むのですが、
今日ご紹介するのは、去年11月に発売された角田さんの新作です。

『銀の夜(光文社)』

角田さんの5年ぶりの長編小説なのですが、書かれたのは15年前のことだとか。
『対岸の彼女』で直木賞を受賞された頃に書かれたものだそうです。

それがなぜ今になって単行本として出ることになったのか。
しかも、なおさずにそのままの形で出版したそうです。
その理由は「あとがき」に書かれていますので、
ぜひ本編を読んだ後にお楽しみください。


『銀の夜』は、30代半ばの女性3人の物語です。
時代は、まさに小説が書かれた約15年前の2004年〜05年頃です。

まだSNSも無く、携帯よりも家の電話の子機を使い、
メールはパソコンを開いてチェックしていた時代です。

登場人物の女性3人は高校時代に
3人でバンドを組んでメジャーデビューをしています。

とはいえ活動期間は短く、
今では全員がバンドとは関係のない生活を送っています。

「ちづる」は、結婚し、イラストレーターをしているものの、
仕事はぱっとせず、夫は職場の若い女性と浮気をしています。

「麻友美」は、セレブママになり、
娘を芸能人にしたいと思っているのですが、
娘はなかなかやる気になってくれません。

独身の「伊都子」は、著名翻訳家の母のように生きたいと思い、
あれこれやってみるものの、うまく行きません。

つまり、全員が今の自分に満足していないのです。
でも、このままでいいとも思っておらず、
なんとか今の状況を変えようと、もがいている様が描かれています。

それも誰か1人の一人称ではなく
3人それぞれの視点で描かれているので、
お互いの本音が見えるのが良かったです。

例えば、友人の活躍を応援したいのに、
嫉妬もあってつい意地悪な感情が芽生えてしまい、
でも、それを必死に打ち消そうとしているわけですよ。
この感覚、よくわかる!
きっと誰もが同じような気持ちを味わったことがあるのでは?

角田さんの文章には、人の本音がにじみ出ているのです。
いま私は朗読会に向けて何度も角田さんの作品を声に出して読んでいますが、
やはり同じことを感じました。

その本音によって、作品との距離が近くなっています。

『銀の夜』も、私は彼女たちが他人事とは思えず、
まるで私の友人たちの話を聞いているかのようでした。

15歳の頃にバンドデビューし、キラキラした世界に一瞬でもいた3人は、
どうしてもあの頃と今を比べてしまいます。

三十代も半ばになり、40歳までには何かをしなくてはと思うものの、
充実感や達成感といったものを心底実感できるようなことは
なかなかみつかりません。

私も30代半ばくらいの頃は同じようなことを思っていました。
そして、私の場合はいきなりフルマラソンにチャレンジしたわけですが。(笑)
みんな、40歳を前にすると何かをしたくなるものなのですね。

果たして彼女たちは、この先どう生きていくことになるのか。
続きはぜひ本を読んでみてください。

今日は、角田光代さんの『銀の夜』をご紹介しました。
角田さんといえば、先日、読売文学賞を受賞されました。
おめでとうございます〜!

yukikotajima 9:32 am

『たべる生活』

2021年1月27日

コロナ禍で家で過ごす時間が長くなったことで
「太った!」という話をよく耳にします。
運動不足もあるけれど、一番の理由は食べ過ぎですよね。
私もそんな一人です。

また、太っただけでなく、肌荒れをはじめ
体調があまりすぐれないという方もいるかもしれません。

毎日そんなに忙しくないのに元気が出ないのは、
食べ物のせいかもしれませんよー。

お菓子をつまみながらソファにだらあっと寝転がって
DVDを見る休日は最高で、私も時々やります。
でも、そのひとときは最高にリラックスできても、
次の日には口内炎ができていたり、どこか体がスッキリしなかったりしませんか?

逆に、体にいいものを食べてしっかり寝た後は、お肌も体も調子がいいものです。

そんな時はいつも「体は食べた物でできている」と実感します。

今日ご紹介する本は、『たべる生活/群ようこ(朝日新聞出版)』です。

食に関するエッセイなのですが、
群さんは口にするものは大切と言いながらも、実は料理が苦手なんですって。

だからといって添加物が多いものなどは口にせず、
なるべく体にいいものを自分で作って食べるようにしているのだとか。
ただ、凝ったものは作らず、食材を焼いたり煮たり炒めたりといった
名前をつけられないものを食べているそうです。

群さんがなぜ、口にするものは大切だと思うようになったのかというと、
以前、甘い物の食べ過ぎで体調を崩したことがあるからだそうです。
その時に食生活を見直したんですって。

群さんは、長生きをしたいのではなく、体調不良が嫌だとおっしゃいます。

それ、よくわかるわー。
長生きしたとしても元気じゃなきゃ辛いですもんね。

このエッセイには、群さんが元気でいるために心がけていることや
今の「食事情」について思うことなどが綴られています。
また、群さんのお友達のお話もたくさん出てきます。

例えば、ある料理上手なお友達は、
ご飯を食べに行くと、お店の方にコツを聞くそうです。
プロの料理には必ずひと手間加える何かがあるからと。

最近は、わからないことがあると
なんでもスマホで検索して調べてしまいがちですが、
プロに直接聞くのが一番なのですよね。
そして、そういうプロの方とのコミュニケーションは楽しいものなのですよね。

『たべる生活』は様々な気付きのあったエッセイでした。
あと、私の食生活の反省も。。。

最近、食生活が乱れているなあという方は、
群ようこさんの食エッセイ『たべる生活』を読んでみては?

この本を読んだ後はあらためて
「体は食べた物でできている」
ということに気付かされると思います。

yukikotajima 9:29 am

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』

2021年1月20日

コロナ禍で家にいる時間が増えたことで読書をするようになった方もいるのでは?
中には、読むだけじゃなく自分で小説を書いてみようかな、
と思っている方もいるかもしれません。
そんな方は、小説を書く前に、まずこの本を読んでみてはいかがでしょう?

『マナーはいらない 小説の書きかた講座/三浦しをん(集英社)』

紀伊國屋書店富山店でこの本を目にした時、最初は小説だと思って手に取りました。
でもタイトルには「小説の書きかた講座」とあり
パラパラとめくってみると確かにそんな内容で、
私は小説を読むのは好きだけど書くつもりはないんだよなあと
読むのをやめようと思ったのですが、いや、待てよと。
小説がどのように作られているのかを知るのは面白そうではないかと思い直し、
読んでみることにしました。

これが読んで正解でした。とても面白かったですし、
へえ、こんな風に本は作られていくのかと勉強にもなりました。

著者の三浦しをんさんは、
2006年に『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を
2012年に『舟を編む』で本屋大賞を受賞された人気作家です。
これらを始め、数々の作品が映画化、ドラマ化されています。

この本は、そんな人気作家の三浦しをんさんによる「小説の書きかた」本です。

きっかけは、三浦さんが某短編小説の新人賞の選考をしている時に
「もっとこうしたらいいのに」と感じたことからだそうです。

この本では、推敲、構成、人称、タイトルのつけ方などの基礎を学べるのですが、
具体例が豊富に使われているので、大変わかりやすく、そのうえ面白い!

例えば「セリフ」。
誰が言ったセリフかわかりやすくする戦法の一つに
「宝塚戦法」というものがあるのだとか。

「待ってくれ、アンドレ!」
「どうした、オスカル」

のようにセリフの中で相手の名前を呼ぶとわかりやすいと。(笑)
確かに宝塚ではよくセリフの中で相手の名前を言っているな、
と思わず笑ってしまいました。

また、ほかの例では、三浦さん自身の作品を取り上げていまして、
これがファンにはたまらないのです。(私もファンです)

この作品はこんな風に作られていったのか!
と読みながらワクワクが止まりませんでした。

例えば、箱根駅伝を描いた私も大好きな小説『風が強く吹いている』では、
タイトルのつけ方から取材方法、構成まで細かく明らかにしています。
なんと手書きの構想メモまでオープンにしちゃってます。
ですから三浦しをんさんの作品が好きという方はぜひお読みください。

もちろん三浦さんの作品をそれほど読んでいなくても大丈夫!
読書がお好きな方でしたら未読でも十分楽しめます。

私はこの本を読んで、自分が好きな作品の傾向がはっきりしました。

それは、うまい描写の本です。
ストーリーももちろん大事だけど、
素敵な表現で書かれた作品が私は好きだとあらためて思いました。

三浦さんも「描写」は大事だとおっしゃっています。
小説における描写とは、事細かに説明することではなく、
読者の想像力をよりかきたてるための「材料」だと。

その描写力をあげるためには、
「目に映ったものや感じた気持ちを、ふだんから脳内で言語化する」
ことが大事だとおっしゃいます。また語彙を増やすことも。
語彙と文法力のアップの方法についても書かれているのですが、
それについてはぜひ本を読んでみてください。

アナウンサーとしても大変勉強になった一冊でした。読んで良かった!
また、エッセイとしても面白かったです。
三浦さんが今はまっているものへの愛がすごかった。
ある映画のシリーズを推しているのですが、何度もその話題が出てくるので
とりあえず最初の作品だけでも見てみようかしら、という気持ちになりました。(笑)
やはり何かに対して熱くなれる方が小説家に向いているようですよ。

≪ おまけ ≫

描写がうまいといえば、去年のユキコレランキング1位に選んだ
髙樹のぶ子さんの『小説伊勢物語 業平』は、まさに豊かな表現が心地いい一冊でした。

◎本の感想は コチラ

そして、先日、この本も読んでみました。

『伊勢物語 在原業平 恋と誠』

こちらは、髙樹さんが小説を補足するために書かれた新書です。
小説とセットで読んでいただくと、より理解が深まると思います。

1000年以上前も人間の心は、今と変わりません。恋をして喜んだり泣いたり。
時代は違えど、感じる思いは今と同じだからこそ、
1000年以上前の物語に心動かされるのでしょうね。

また、彼らから学ぶことや気付かされることもあります。
例えば、当時の彼らは、短絡的に勝者と敗者を分けなかったのだとか。
そして、そのような一見曖昧にも見えるふるまいを
髙樹さんは「雅(みやび)」とおっしゃいます。
そこには相手を思いやる気持ちがあるのだと。
まさに今の時代にこそ、この「雅」が必要なのかもしれませんね。
あなたも『小説伊勢物語』で「雅」に触れてみませんか?

***

なが〜いブログになってしまい、申し訳ない。
でも、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

yukikotajima 9:27 am

今年の気まぐれな朗読会は2月6日(土)です。

2021年1月18日

CMでもお知らせしているとおり、
今年も「気まぐれな朗読会」をおこないます。

気まぐれな朗読会は、
「気ままプラン」パーソナリティ廣川奈美子
grace」パーソナリティ田島悠紀子でお届けする朗読会です。

気ままの「気ま」とグレースの「ぐれ」で「気まぐれ」です。

◎去年のレポートは コチラ

今年は、2月6日(土)18:00〜
富山県民小劇場 オルビス(マリエとやま7階)で開催します。

今年も3部構成です。
例年通り、1部、2部は、廣川さんとともに
3部はそれぞれ作品を読みます。

廣川:「ムシヤシナイ」高田都(たかだ・かおる)

田島:「鍋セット」角田光代(かくた・みつよ)

2作品とも
『NHK国際放送が選んだ日本の名作』シリーズ(双葉文庫)
に収録されています。

『ムシヤシナイ』「1日10分のぜいたく

『鍋セット』「1日10分のしあわせ」

入っていますので、良かったらお読みください。どちらもいいお話です。

朗読会のチケットは、すでに販売されています。
今回は80席限定です。(コロナ対策で例年より席数を減らしています)

◎詳しくは コチラ

今年も気まぐれな朗読会をどうぞよろしくお願いします。

yukikotajima 3:07 pm

『コロナと潜水服』

2021年1月13日

先週からの大雪、本当にすごかったですね。
私は雪かきによる全身筋肉痛だけで済みましたが、
もっと大変な思いをされた方もいらっしゃることと思います。
大雪お見舞い申し上げます。

富山の皆さんの中には、コロナに加えてこの大雪で、
ストレスがたまってずっとイライラしている、という方もいるのでは?


今日は、読んだ後に優しい気持ちなれる作品をご紹介します。

『コロナと潜水服/奥田英朗(光文社)』


私の大好きな作家、奥田英朗さんの新作です。
待ってました〜。本屋さんで見つけるや否や購入しました。

五つのお話が収録された短編集なのですが、
タイトルに「コロナ」とある通り、「コロナ」のお話もあります。

コロナ関連の本が最近、増えてきましたね。

先週ご紹介した東野圭吾さんの
『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』
まさにコロナ以降の物語でしたし、
今後はコロナ禍の物語がますます増えていきそうですね。

ただ、『コロナと潜水服』は、全てがコロナのお話ではありませんし、
暗くなるような嫌な内容でもありません。

どのお話もちょっと不思議なファンタジーです。

例えば、ある古民家に住み始めたところ、
誰もいないのに人の足音が聞こえる…といった感じです。
この状況だけだと怪談のようですが、怖い話ではありません。

それどころか、読んだ後は心がじんわり温かくなります。


表題作の「コロナと潜水服」は、五歳の息子には
コロナを感知する能力があると信じるパパのお話です。

どうやらこの息子君は、誰が感染しているのかわかるようなのです。
そんなある日、なんとパパ自身に感染の疑いが。
パパは自主隔離し、あるものを用意するのですが、これが息子を大いに喜ばせます。
さて、そのあるものとは?

他には、会社の早期退職の勧告に応じず、
追い出し部屋に追いやられた男性たちがあることを始める話や、
人気プロ野球選手と付き合うフリーアナウンサーが占い師に恋愛相談に行く話、
ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れた男性がその車に乗ったところ、
不思議なことが次々に起こる話などがあります。

私は特に、会社の追い出し部屋に追いやられた男性たちの物語が好きです。

彼らが職場であるものを発見し、終業後にふざけて遊んでいたところ、
ある年配の男性が現れ、いきなりそれについての指導を始め、
気付けば全員が真剣に取り組むようになり…というお話です。

いったい男性たちが夢中になってしていたこととは?
また、指導者とは何者なのか?

続きはぜひ本を読んでください♪


『コロナと潜水服』、大変良かったです!

どのお話も読んだ後はほっこり。優しい気持ちになれました。
その理由は、全てのお話が「笑顔」で終わっているからです。
また、作品によってはあたたかな涙も。。。

奥田英朗さんらしい素敵な作品でした。

私は奥田さんの人の描き方が好きなのですが、
今作の登場人物もみな人間味にあふれていました。

極端な性格のヒーローが出てくる物語も面白いけれど、
普通の人たちの物語は、どこかほっとします。
そして、そういう本こそ、何度も読み返したくなるのですよね。


先週末からの大雪で私もストレスや不安を感じていましたが、
この本を読んだ後は心が優しさで満たされ穏やかでした。

また、音楽にも癒されました。

奥田英朗さんは音楽、とくに洋楽が大好きなのですが、
この作品にも様々な曲が登場するのです。
しかもラジオから流れてきたという設定が多めなのが嬉しい。

この本には作中の登場曲が楽しめる
Spotify(スポティファイ)のプレイリストがついていますので、
曲を聴きながら読書をすることができ、より作品の世界に浸れます。

しかもどれもいい曲ばかりです。
曲を聞きながら読んでいたから、より充実した読書時間になったのかもな。

この週末は再び雪の予報ですし、
のんびり曲を聴きながら読書でもいかが?

yukikotajima 9:25 am

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』

2021年1月6日

今日が私が担当する新年最初のgraceです。
今年も毎週水曜13時45分ごろからのユキコレでは、
様々な本をご紹介していきますので、お付き合いいただけたらと思います。
よろしくお願いします。

さて、年のはじめに「今年は読書をする」と誓った方もいるかもしれません。

でも、本屋さんにはたくさんの本が並んでいるし、
どの本から読めばいいのかわからない…
と最初の本選びの段階でつまずいてしまうと、
その瞬間、本への苦手意識が芽生えて、本なんて嫌いだ!となりかねません。

普段あまり読書をしていない方は、
ドラマや映画で見た作品の原作を読んでみる、
というのはいかがでしょう?

先に映像で見ているので、物語の世界に入り込みやすいと思います。

それにしても、人気小説はほぼ映像化されますよね。
私もいつからか、小説を読みながら
この作品はいずれ映像化されるに違いない!
と思うようになってしまいました。
そして、その予想はたいていの場合、当たります。(笑)
配役予想は外れてばかりですが。

今日ご紹介する小説もいずれ映像化されると思います。

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人/東野圭吾(光文社)』

東野圭吾さんと言いますと、
加賀恭一郎シリーズガリレオシリーズがあり、
いずれもドラマ化されました。

今作もドラマ化もシリーズ化もされそうな予感がします。

というのも、事件の謎に挑む男性がテレビ映えしそうな方なのです。

その男性というのは、
以前はアメリカでマジシャンをしていたものの
今は東京でバーを経営しており、
見た目は、肩まで伸びた天然パーマに清潔感の無い無精ひげの
長身で痩せた50歳です。なお、顔は端正です。

オダギリジョーさんや藤木直人さんあたりが演じたら合いそう!
阿部寛さんや福山雅治さんも頭に浮かんだけど、
すでに東野作品のドラマに出演されているからなあ。
う〜ん。悩む。。。
なんてことを勝手に妄想する時間も楽しいものです。(笑)

***

物語は、ある名もなき町で起こります。

観光地であるものの、すっかり寂れてしまったその町では、
なんとか観光客を呼び込もうと、ある計画が進行中でしたが、
コロナの影響で頓挫してしまいます。

そんなコロナ禍の中で殺人事件が発生します。

殺されたのは、以前、中学の教師をしていた62歳の男性です。
教え子たちから慕われ、近々開催予定の同窓会にも参加予定でした。

東京で離れて暮らす娘の真世は、警察からの連絡で急きょ実家へ帰ります。

父はなぜ殺されたのか。
そもそも誰に殺されたのか。

警察に聞いても何も答えてくれません。

そんな中、父の弟、真世にとっては叔父である武史が突然現れます。

この武史こそさきほどご紹介した、事件に挑む男性です。

捜査過程を教えてくれない警察より先に、
自分の手で真相を突き止めたい!
と武志は事件の謎を解くために動き始めます。

そして、真世も父を殺した犯人を見つけるため
叔父の手伝いをすることになります。

元マジシャンと姪の二人は、
果たしてどのような方法で謎を解いていくのでしょうか。

続きは、ぜひ本を読んでみてください♪

***

さすが東野圭吾さんです。
頭の中に映像が浮かびっぱなしで、
本を読んでいるのに、映像作品を見ているようでもありました。

元マジシャンが事件の謎を解くというのが、面白かったです!
マジシャンならではの仕掛けが軽やかで素敵でした。
めんどくさいキャラだけど、それも含めて魅力的で、また会いたくなります。

東野さんは、この作品に関して

「このヒーローを生み出せたことで作家生命が延びたかもしれません」

とおっしゃっています。

ってことは、シリーズ化していくということですかね?
楽しみ〜!

なお、この作品は、韓国語や中国語、ベトナム語など
世界7言語での刊行が決定しているそうですよ。

今週末は3連休ですね。
また雪も降るようですし、お家でじっくり読書というのもいいのでは?

yukikotajima 10:11 am

丁寧な生活を送りたい方におすすめの本を2冊

2021年1月2日

あけましておめでとうございます。
2021年最初のラジオは、ネッツカフェドライヴィンです。

今年も引き続き、graceとともによろしくお願いします。


さて、今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは「習慣」です。

新しい年になって二日目です。
今年はどんなことを習慣化していきたいですか?

去年、世界が大きく変わったことで
これまでの習慣を変えざるを得なくなり、
生活のリズムがなかなかつかめなかった方もいたのでは?

この年末年始も、いつもとは違う日々を過ごしている方も多いと思います。

今年はどんな一年になるのだろう…と思うと不安も尽きないですが、
こんな時代だからこそ、私は「丁寧な生活」を習慣化していきたいなと。

規則正しい生活なのはもちろん、
自分の心にも体にも優しくありたいなと思いまして。

今日は、私と同じように丁寧に日々を過ごしていきたいと思う方に
おすすめの本を2冊ご紹介します。


まずは、先日発売されたばかりのエッセイです。

『私は私に時間をあげることにした
/レディーダック(著者) 趙蘭水(訳)【SBクリエイティブ】』


著者のレディーダックさんは韓国の絵本作家さんで、
可愛い絵と温かい文章がSNSで人気なのだとか。

本屋さんでこの本を見たとき、まずタイトルに惹きつけられました。
「私は私に時間をあげることにした」という言葉を見てハッとしました。
私は私の時間を大切にしていたかしらと。

レディダックさんは、様々な情報に振り回されがちな今の時代こそ、
自分の速度で歩んでいくことが大事だとおっしゃいます。

ほんわかした絵と優しさあふれる文章で、
ページをめくるたびに心がどんどんほぐれていきます。

たとえば、雨の日はいつも心がやわらかくなるから好きだと言います。
誰かが待ち合わせ場所に遅刻しても気をつけておいでと思えるからと。

確かに、雨の日は「濡れなかった?暖かくしてね!」と相手を気遣うことが多いかも。
雨の日は知らぬ間にみんな優しい気持ちになっているのかもしれませんね。

この本は、イラスト多めで文章も難しくないので、
読書はちょっと苦手という方でも読みやすいと思います。


もう一冊は、丁寧な生活に欠かせないものである「食」に関する本です。

富山出身の寿木(すずき)けいさんによる
『レシピとよぶほどのものでもない わたしのごちそう365【河出文庫】』です。

Twitterの人気アカウント「きょうの140字ごはん」
で紹介されたレシピに、エッセイも加わった一冊です。

2017年に発売され話題になった本が去年の秋に文庫化されたのを機に
そういえば読んでなかったなと買ってみました。

私は以前からTwitterはフォローしていましたが、
本を読むのは今回が初めてでした。

寿木さんのレシピは、シンプルで簡単なのにお洒落なので作ってみたくなります。
また、文章そのものが滋味にあふれていて、読み物としても楽しい一冊です。
豊かな表現のリズミカルな文章は、
読んでいるだけで心にいい成分が行きわたっていくようです。

たとえば、こんな感じ。

夏がなかったことみたいな、
ひんやり澄ました土鍋がひとつ。
おでん、湯豆腐、炊き込みご飯、
あつあついくつ作ろうか。
乳白色の丸いおしりを
ポンと叩いてあいさつ代わり。

どうですか?
まるで歌のようなかわいい文章です♪

この本には季節ごとのオススメレシピが載っているのですが、
それこそお正月にオススメのレシピもありますよ〜。
たとえば、胃を休める「一年の計スープ」
これ、私も作ってみようと思います。
気になる方はぜひ読んでみてくださいね!

yukikotajima 9:16 am