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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

2024年7月24日

ヨリミチトソラでは、毎週水曜の18時32分ごろから
このブログとの連動で本の紹介をしています。

ラジオで私の本紹介を聞いて、読んでみたいと思いながらも
仕事が忙しくて全然読めていない、という方はいませんか。

今日は、まさに仕事に追われて読書が楽しめなくなった、
という方によって書かれた本をご紹介します。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
三宅香帆(みやけ・かほ)
集英社新書

著者の三宅さんは、1994年生まれの文芸評論家です。

本が読めないことが前提なのは、
本好きの私としては、悲しすぎる…と思ったのですが、
この本は、読めない理由だけが書かれているわけではありません。

実際、三宅さん自身、本が大好きなのに、
働くようになってから本が読めなくなってしまったそうです。
気付いたらスマホばかり見ていたと。
なぜこんなことになってしまったのか、いろいろ調べた結果、
ある答えにたどり着いたそうです。

三宅さんは、読書だけでなく、趣味や好きなことなど、
人生に必要不可欠な文化的な時間が
労働の疲労によって奪われていると言います。
そう、現代人はみんな仕事で疲れすぎているのです。

でもこれまで日本人は働きながら本を読んできたわけです。
どうやって、それができていたのか。
この本では、明治から令和にかけての労働と読書の歴史を追いかけながら、
その問いについて考えています。

具体的な作品を例に挙げながら、
その時代によく読まれた本にはどんな傾向があるのか、
わかりやすく解説されているので、
なるほど、そういうことか!と理解しやすく、
楽しみながら読むことができました。

例えば、70年代には、文庫が創刊されるようになり、
通勤電車の中で読むスタイルが根付いていったそうです。
なお、この時代、人気だったのは、司馬遼太郎さんの作品です。

80年代になると、黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』をはじめ、
村上春樹さん、俵万智さんなどの作品が何百万部も売れる時代になります。

ちなみに、これらの作品に共通していること、わかりますか?
それは「一人称視点」であるということ。
80年代には「社会」ではなく、「自分」の物語が増えていったそうです。
そして、コミュニケーション能力が重視されるようになっていったのだとか。

そして、令和の今は、自分には関係のないこと、
著者はそれを「ノイズ」と言っているのですが、
そのノイズを受けいられなくなっている人が増えているそうです。

でも、三宅さんは、ノイズを受け入れることが大事だと言います。
自分とは異なる価値感や情報に触れることが。

そして、読書こそノイズだと。

でもどうしたら、ノイズを受け入れられるようになるのか。
三宅さんは、この本の中である提案をしています。

それこそが結論なのですが、これがとてもいい提案でした。

三宅さんの探し出した答えとは?
気になる方は、ぜひ本を読んでお確かめください。

また、人気映画の『花束みたいな恋をした』が多く引用されていますので、
この映画がお好きな方もぜひ読んでみてください。

大変興味深く面白い一冊でした!
本への愛はもちろん、人への思いやりが感じられる文章なので、
気持ちよく読むことができました。
本の歴史を知ることができたのも楽しかったです。

yukikotajima 11:27 am

『マリリン・トールド・ミー』

2024年7月17日

毎週水曜のヨリミチトソラでは、18時30分ごろから、
このブログとの連動で、本紹介コーナー「ゆきれぽ」をお届けしています。

ヨリミチトソラのサイトは コチラ

今日ご紹介する本は、富山出身の作家、山内マリコさんの小説です。

『マリリン・トールド・ミー』
山内マリコ
河出書房新社

タイトルのマリリンというのは、「マリリン・モンロー」のことなのですが、
あなたは彼女に対してどんな印象をお持ちですか?

この本を読むと、マリリンの印象が大きく変わると思います。

主人公はコロナが流行り始めた頃に大学生になった杏奈(あんな)です。
コロナ禍でひとりぼっちで過ごしている彼女のところに、
ある日、伝説のハリウッドスター、マリリン・モンローから電話がかかってきて、
いろいろな話をします。

その後、ようやくキャンパスに通いはじめた杏奈は、ジェンダー社会学のゼミに入り、
卒論で「マリリン・モンロー」について書くことにし、研究を始めます。

そして調べれば調べるほど、電話で話したマリリンと、
雑誌や本に書かれたマリリンの印象が大きく異なることに気付きます。
また、60年前のマリリンに共通点も見つけます。

いったいそれらはどういうことなのか。

今日のヨリミチトソラでは、著者の山内マリコさんにお電話をつないで、
今回、マリリン・モンローのことを書こうと思った理由をはじめ、
近況や今執筆中の新作についてお話いただきます。

放送は今日の18時30分ごろからです。
ぜひお聞きください。

***

この本、とても面白かったですし、大変勉強にもなりました。

杏奈は大学でジェンダー社会学のゼミに入るのですが、
本を読みながら私自身もゼミ生の一人として学んでいる気分でした。

今は時代が変わって、昔良かったことでも今はNGということはたくさんあります。
そして、それを理解できている人と、
全くついていけていない人の間に大きな差が生じています。

あ、自分は後者だ…と、今ドキリとした方はいませんか?

それこそマリリンといったらセクシーな女性だよね、
と思っている人はぜひ読んでください。

生まれ育った時代も環境も全く異なる女性二人の物語、とても良かったです!

読み終えた後、あらためて本の表紙のマリリンを見ると、
きっと最初とは全然印象が異なると思います。

yukikotajima 10:33 am

『アルプス席の母』

2024年7月10日

今日このあと15時半から夏の全国高校野球富山大会の開会式が行われます。
今年は43校40チームが出場し、13日(土)に1回戦が行われます。
そして27日(土)に決勝が行われる予定で、
優勝チームは8月7日(水)に開幕する夏の甲子園大会に出場します。
今年富山県代表として甲子園に出場するのは、どのチームになるでしょう。
高校球児たちはもちろん、親御さんたちにとっても大事な夏が始まりましたね。

今日ご紹介する本は、高校球児の母の物語です。

『アルプス席の母』
早見和真
小学館

高校野球の物語ですが、主人公は選手ではなく「母」です。

夫を事故で亡くした奈々子は、神奈川で看護師をしながら
中学生の航太郎と二人で暮らしています。

子どもの頃から野球が大好きな航太郎は、
地元のシニアリーグで活躍するほどに成長します。
高校は大阪の甲子園常連校で野球をしたいと思っていたのですが、
残念ながら声がかからなかったため、
声をかけてくれた大阪の別の高校に行くことにします。

彼が進学した高校は、女子高から共学になって6年で、野球部の歴史も同じです。
でも、最近はそこそこの結果を出しており、
監督は本気で甲子園出場を目指しています。
航太郎は、この監督から声をかけてもらったのでした。

さて、高校進学を機に航太郎は野球部の寮に入るのですが、
なんとそのタイミングで、母の奈々子も息子と共に大阪へと移り、
学校の近くで生活を始めます。

そして、奈々子は野球部の親たちの会「父母会」に入ることになるのですが、
この会がとんでもない場所だったのです。
厳しすぎる掟をはじめ、理不尽なことだらけです。

親たちは、子どもたちの野球の実力だけでしか他の親を見ておらず、
親自身には興味を示しません。
そして、みんなピリピリしています。
監督の態度も酷く、最悪の雰囲気です。

また、大阪弁にも、距離の近い大阪の人たちにも慣れないし、
息子とも全く会えないしで、奈々子はめげそうになりながらも、
たった2年だしがんばる!と自分に言い聞かせます。

そう、高校生活は3年間ですが、部活動は実質たった2年なのですよね。
そう考えると短い!

誰も知り合いのいない大阪での一人暮らしが始まった奈々子と
寮暮らしが始まった息子の航太郎。

果たして二人にはこの先どんな日々が待っているのでしょう。
無事甲子園には出場できるのでしょうか。
続きは、本を読んでお確かめください。

***

私は子どももいないし、高校野球のことも詳しくないけど、
そんな私でも夢中で読んでしまいました。

私も奈々子と同じように、泣いて、笑って、怒って、心配して、応援していました。
今じゃすっかり奈々子は私の友人で、
航太郎は私の甥っ子のような気持ちです。(笑)

子どものいない私でも楽しめましたが、
お子さんが野球をしているお母さんはもちろん、
野球以外の部活や習い事をサポートしている親御さんは、
この作品をより自分のこととして楽しめると思います。
共感したり、そこは違うなあと思ったりしながら。
日々いろいろ思うことがありながらも我慢している親御さんは、
この本の中に仲間を見つけられるかも。

また、野球をしている中高生もぜひ。
この本には思い通りにいかない球児たちも出てきます。
そんな彼らから学ぶこともきっとあると思います。

夏の高校野球シーズンの今の時期にぴったりの一冊です。
さっそく今週末にでも読んでみてください。

読んだ後はきっと甲子園の見え方が変わるはず。
私は球児たちはもちろん、親御さんたちのことも気になってしまいそうです。

親たちの甲子園も熱いっ!

yukikotajima 12:18 pm

『未必のマクベス』

2024年7月3日

今日は7月の一週目の水曜日ですので、明文堂書店とのコラボ回です。

毎月、本を愛する高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本をご紹介していますが、
今回は野口さんだけでなく、北陸の書店員さんたちの推し本でもあります。

これは、北陸のとある書店員さんの「北陸の書店を元気にしたい」
という思いに共感した北陸3県の書店がタッグを組んで、
「心揺さぶられる名作」を推そう!というもので、
今日ご紹介する本は、その、とある書店員さんの推し本です。

『未必のマクベス』
早瀬耕(はやせ・こう)
ハヤカワ文庫

2014年9月に早川書房から単行本として発売され、
当時話題になりましたので、お読みになった方もいるかもしれません。

私は、今回初めて読みました。

タイトルの「マクベス」は、シェイクスピアの四大悲劇の一つです。

マクベス?
聞いたことはあるけれど、どんな話かわかならい…
という方でもご安心ください。

私もそんな一人でしたが、問題ありませんでした。
と言うのも、どんな話か小説の中で紹介されるのです。それも何度も。

物語は2009年のマカオから始まります。
主人公は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わる38歳の男性、中井です。

彼はバンコクでの商談を成功させたあと、マカオを訪れるのですが、
そのマカオでひとりの女性から「あなたの未来を教えてあげる」と、こう告げられます。

「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」と。

商談を成功させた中井は、その直後、
香港の子会社に代表取締役として出向することになります。

まさに会社のトップとして海外での勤務が始まり、
これぞ王としての旅ってことか。なんて優雅な旅!と思いきや、
社内には複数のマイクが隠され、常に盗聴されているし、
秘書からは「誰を信用し、誰を警戒すべきが調べたほうがいい」と言われるなど、
犯罪のニオイがプンプンします。

私も新たな登場人物に出会う度、
この人は信用していいのかしら?と疑い続けながら
本のページをめくっていきました。
また、中井自身もそっちに行くのは危険だよ…
という方に進んでいってしまいます。

果たしてこの物語は、というか、中井はどこに向かっていくのか。
ぜひあなた自身の目でお確かめください。

では、ここで明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介します。

「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。
この一文が、この小説を読みたい!と思えたきっかけでした。
壮大な歴史もの?
ミステリー?
シェイクスピア?

この小説の幕が開いたら
たぶんきっと、たぶん
巻き込まれてしまいます。
異国情緒ただよう何とも魅惑的な小説です。

約6年ぶりに再読しました。
北陸から全国へ
願いが届きますように!

***

まさに私も巻き込まれた一人です。
あなたも巻き込まれてみませんか?

それから、別の意味でも私自身、この作品に巻き込まれました。(笑)

というのも、主人公中井の元上司の名前が「たじまゆきこ」なのです。

ふざけているわけではありません。
漢字は違うのですが、なんと私と同じ名前でした。
もうびっくりですよ!こんなの初めてです。

中井がインターネットで「たじまゆきこ」を検索したら
他の「たじまゆきこ」が出てきたという場面があるのですが、
多分その中に私の名前もあったはず、
なんて勝手に妄想して楽しんでしまいました。

さて、このたじまさん含め、中井の周りには様々な女性たちが登場します。
特に高校時代に出会った同級生のことは、卒業後20年経った今も忘れていません。

物語には、中井の高校時代のお話もあるのですが、
犯罪の世界の緊張感とはまた別のドキドキ感がありました。

そう、この小説は、犯罪小説でありながら、恋愛小説でもあるのです。

10代の頃、思いを伝えることは無かったけど好きだったなあ、という人、
あなたにもいませんか?

この夏、そんなあなた自身の過去も思い出しながら、
『未必のマクベス』を読んでみてはいかがでしょう?

東南アジアの熱気や匂いなどのリアルな空気感と共に、
この夏忘れられない一冊になるかもしれませんよ。

あと、きっと中井のお気に入りのカクテル、
キューバリブレを飲んでみたくなるかも。

私は飲んでみたい!

いつかこの作品、映画化される予感がするわ。
中井は、長谷川博己さんに演じてほしいな。

野口さんをはじめ、北陸書店員の皆さんの推し本、『未必のマクベス』は、
富山県内の明文堂書店全店の「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にもあります!

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 1:59 pm

『青い壺』

2024年6月26日

毎週水曜は、ヨリミチトソラの中で本の紹介をしています。
(このブログとの連動で、毎週水曜18時32分ごろから放送)
基本的には新しい本を中心に選んでいますが、
今日は50年近く前に書かれた本をご紹介します。

『青い壺』
有吉佐和子
文春文庫

実はこの本が今、ブームとなっているのです。

1976年に雑誌に連載され、翌年単行本化されたものの、一度絶版に。
その後、2011年に復刊され、じわじわと売れ続けていたそうですが、
去年、『三千円の使いかた』でおなじみの原田ひ香さんの
本の帯への推薦コメントをきっかけに一気に売れ始めたのだとか。
また、今年は有吉さんの没後40周年ということもあり、注目されているようです。

私も実際に読んで、ブームとなっている理由がわかりました。
だって、とても面白いんですもの!

昔の本と言うと、読みにくそう…と思われそうですが、
全くそんなことはありません。
『青い壺』は読みやすい上に、すこぶる面白いのです。

***

物語の舞台は、昭和の高度成長期の日本です。
無名の陶芸家が美しい「青磁の壺」を生み出します。
その青い壺が、売られたり、プレゼントされたり、盗まれたりしながら、
様々な人の手をわたっていきます。

物語は、13編からなる連作短編集で、
壺を手にした人や、その周囲の人たちのことが描かれています。

例えば、定年後の夫が邪魔で仕方ない妻、
老いて目が見えなくった母親と暮らし始めた独身女性、
スペインで掘り出しものを見つけた美術評論家の男性など、
様々な人が登場します。

そして、いつも誰かのそばに青い壺があります。
つまり、壺が見てきた人たちの物語です。
と言っても壺目線のお話ではなく、
あくまでも壺はそこにあるだけなのですが。

登場人物の中で私が特に印象に残ったのは、老女たちのお話です。

一つは、戦前の裕福だった頃の思い出を語る女性のお話、
もう一つは、50年ぶりに同級生たちと京都で集まることになった老女のお話です。

思い出を語る女性は、キラキラした目でうっとりと忘れられない思い出を語ります。
その話に思わず引き込まれてしまいました。

一方、50年ぶりに同級生たちと会った女性は、
口には出さずとも心の中で思っていることが色々とあります。
基本的には文句が多めなのですが(笑)、素直なところもあって、
なんだかんだで気になるおばあちゃんなのでした。

***

『青い壺』は、約50年前のお話ですが、人間の本質は根本的には変わっていません。
だからこそ、この物語が令和の今、ブームになっているのかもしれません。

変わらないと言えば、今時の若者について、
言葉遣いがなっていないとか、ものを覚える気がない!などとボヤいているのには、
思わず笑ってしまいました。

その一方、時代は戦後ということもあり、
戦争が会話の中に当たり前のように出てくることも印象に残りました。

そんな登場人物たちの戦争に関する会話から、私は亡き祖父を思い出しました。

子供のころ、祖父は戦争の話をよくしていて、
おじいちゃんはいつも昔の話をしていると思っていたのですが、
祖父にしてみたら、昔の話では無かったのかもしれないと、
この本を読んで気付かされました。

***

さて、壺が出会う人たちは、本当に多岐にわたっています。
また、壺に対しての捉え方も違います。
これは素晴らしいものに違いないと思う人もいれば、3,000円で売る人もいます。
そんなモノの価値についての描写も興味深かったです。

読み終わった後、青い壺のその後のことを想像しながら、
青い壺は今もきっと誰かのそばにあるのかもしれないなあ。
いつか私のところにもやってこないかしら、なんてことを思ってしまいました。

『青い壺』だけに、私もすっかりツボにはまってしまったようです!(笑)

有吉さんの他の作品も読んでみたいな。

yukikotajima 11:07 am

『図解・気象学入門 改訂版 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』 

2024年6月19日

昨日のニュースで「線状降水帯」という言葉を何度も耳にしました。
実際には発生しなかったようですが、
「線状降水帯」が発生している時、
雲のかたまりを気象衛星などの画像で見ると、
「にんじん」のような形をしているそうですよ。

また、今週は、遅れている梅雨入りの話題も多いですね。
そろそろ今週末あたりには梅雨入りするのでは、と言われていますが、
この梅雨、日本の西と東で性質が異なるそうなんです。

今日は、そんな気象に関する本をご紹介しましょう。

『図解・気象学入門 改訂版 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』
古川武彦
大木勇人
講談社

この本は、2011年3月に出版された『図解・気象学入門』の改訂版です。
2011年は「線状降水帯」という言葉を耳にすることは無かったですよね。
改訂版は、そういった新しい気象用語を追加し、
さらにわかりやすくするための修正や補充を行った最新完全版だそうです。

「気象学」とは、気象への疑問を解き明かす学問のことで、
「天気予報」の技術の基礎だそうです。

ですから、気象学を学ぶことで、天気予報の理解が深まるというわけです。

そして、この本は、天気予報や気象学の専門家と
理科の教科書作りの専門家のお二人が、
話し合いを重ねて執筆をすすめられたそうで、
まさに教科書のような一冊となっています。

知識の紹介ではなく、
「しくみ」を「なるほど」と深く理解できるような解説を心がけられたそうで、
本のタイトルに「図解」とあるとおり、目で見てわかる内容になっています。

例えばどんなことが書かれているのか、いくつか紹介しますね。

空に浮かぶ雲は、どれくらいの重さかわかりますか。
なんと数十トンもあるんですって。
それなのに落ちてこないのはどうしてでしょう。

ちなみに、雲の寿命は短くて、せいぜい数十分だそうです。

それから、「大気の状態が不安定」という言葉を耳にしたことはありませんか。
それ、どういうことかわかりますか。

また、そろそろ25度を下回らない「熱帯夜」の日がやってきますが、
「熱帯夜」となるのはなぜでしょう。

一方、砂漠では、日中気温が高くても夜は急激に気温が下がりますよね。
その理由はわかりますか。

言葉は聞いたことがあっても、
なぜそうなるのか、その理由やしくみまでは知らないということが、
気象に関しては多いように思います。

この本では、その「しくみ」をわかりやすく解説していますので、
気象に関する気になる疑問が解決します。

大変勉強になった一冊でした。
中でも私が印象に残ったのは、天気予報に関することです。

天気予報と言うと、富山の皆さんの場合、
富山の天気だけを見ていると思いますが、
予報をする際は、富山だけを見ればいいわけではないようなのです。

と言うのも、地球の裏側の気象がたった数日で日本に影響してくるので、
数日後の予報を行うには、地球大気全体を扱わなくてはならないのですって。

地球全体ってすごい…。
これからは天気予報の見方も変わりそうです。

この先、梅雨をはじめ、夏の夕立、台風など、
天気に左右されることが多い季節になっていきます。
ぜひあなたもこの本で「気象」について学んでみてはいかがでしょう。

yukikotajima 11:35 am

『赤と青のガウン オックスフォード留学記』

2024年6月12日

今、日本のプリンセスの本が10万部のベストセラーになっているのをご存じですか。
それはこちら。

『赤と青のガウン オックスフォード留学記』
彬子女王(あきこじょおう)
PHP文庫

実はこの本が発売されたのは2015年です。
9年前の本がなぜ今話題になっているのかというと、
きっかけは、去年5月、X(旧Twitter)に
この本が面白いと投稿されたことだったそうです。

そして今年4月に文庫が発売され、今や大ブームになっているというわけです。

ちなみに、単行本が市場に出回っていなかったことから、
なんと彬子さまみずから出版社に連絡して、
文庫版として発売されることになったのだとか。
彬子さまの行動力すごい!

*

さて、この本は、「ヒゲの殿下」として親しまれた
三笠宮寛仁さまのご長女、彬子さまの英国留学記です。

彬子さまは、オックスフォード大学マートン・コレッジに
2001年9月から1年間と、2004年9月から5年間留学され、
女性皇族として初の博士号を取得されました。専攻は日本美術です。

本のタイトルの「赤と青のガウン」は、
オックスフォード大学の博士課程修了者だけが袖を通せるガウンのことです。

この本には、そのガウンに袖を通すまでの留学生活の日々が綴られています。

プリンセスの留学と聞くと、
一般の方とはだいぶ違うのだろうなあ、と思われるかもしれませんが、
この留学記を読むと、いい意味で裏切られます。

確かに一般の方とは異なるところもあります。

例えば、プリンセスを守る「側衛(そくえい)」と言われる方が常に側にいたり、
パスポートが一般の方とは異なっていたりします。
また、エリザベス女王にアフターヌーン・ティに招かれたお話などは、
プリンセスならではです。

ちなみに、留学中は側衛がいなかったため、
彬子さまは、オックスフォードで生まれて初めて一人で街を歩かれたのだとか。

そういったプリンセスらしい日常だけでなく、
この留学記では、格安航空で移動したり、自炊をしたりと
彬子さまの庶民的な一面も垣間見ることができます。

格安航空を使ったときには、日本のプリンセスだと思われず、
スムーズにチェックインができなかったのだとか。

他にも電車で爆睡してしまった失敗談などもあり、
読めば読むほど、親近感が湧いていきました。

個人的には、彬子さまが専攻されていた日本美術のエピソードが好きです。
彬子さまが日本の大学ではなく
オックスフォードで日本美術を学ばれた理由や
ボランティア・スタッフとして出入りしていた大英博物館の裏側など、
アートに関するお話がどれも面白く、また勉強にもなりました。
実際、彬子さまのお好きな分野ということもあり、
文章もよりイキイキとしていたように感じられました。

他にも、お父様をはじめとした周りの方々とのエピソードや、勉強の大変さなど、
いろいろな意味で興味深い一冊だったのですが、
この本の一番の魅力は、なんといっても文章の面白さです。
美しく品のある知的な文章でありながらも堅苦しくありません。
そしてとても読みやすいのです。

彬子さまの飾らない素直なお人柄がにじみ出た、とても素敵な留学記でした。

yukikotajima 11:40 am

『死んだ山田と教室』

2024年6月5日

あなたはどんな高校生でしたか。
高校時代を振り返ると、どんなことが思い出に残っていますか。

今日は、とある高校の男子高校生たちの物語をご紹介します。

そして今日は6月の一週目の水曜日ですので、明文堂書店とのコラボ回!
本を愛する高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本です。

『死んだ山田と教室』
金子玲介(かねこ・れいすけ)
講談社

こちらは、メフィスト賞の受賞作です。

メフィスト賞は、「究極のエンターテインメントを求む」という掛け声のもと始まった、
賞金ナシ、締切ナシ、下読みナシの公募新人賞で、
去年は、須藤古都離さんの『ゴリラ裁判の日』が、
2019年は、映画化もされた砥上裕將さんの『線は、僕を描く』が選ばれました。
過去には、乾くるみさん西尾維新さん辻村深月さんなどが受賞しています。

『ゴリラ裁判の日』は、田島も野口さんも、去年読んで良かった本の1冊に選びました。

◎詳しくは コチラ

そして今回受賞したのが、金子玲介さんの『死んだ山田と教室』です。

去年の受賞作の『ゴリラ裁判の日』がとても面白かったので、
今回の受賞作も楽しみにしていました。

『ゴリラ裁判の日』は、手話で人間と会話ができるゴリラのお話でしたが、
『死んだ山田と教室』は、事故で亡くなったあと、
教室のスピーカーに憑依してしまったらしい高校生のお話です。

え、憑依?もしや怖い話…?と思われそうですが、
そういうタイプの話ではありません。

というのも、基本的には男子高校生のバカバカしい会話が中心だからです。

舞台は、とある男子高校です。
夏休みが終わる直前、その高校に通う山田が交通事故にあって亡くなります。
山田は、誰にでも優しくて、面白くて、その上勉強までできるという
二年E組の人気者でした。

あるクラスメイトは、クラスの中心の山田がいなくなって、
明日からどうやって過ごせばいいかわからないと言います。
山田いないの無理なんだけど…と。

山田亡きあと、二年E組はずっとお通夜が続いているような雰囲気です。

そこで、担任がみんなを元気づけようと席替えを提案します。

すると、教室のスピーカーから、山田の声が聞こえてきたのです。
でも、姿はどこにもありません。
どうやら山田はスピーカーに憑依してしまったようなのです。

クラスメイト達は最初は戸惑っていたものの、すぐに声だけの山田を受け入れて、
生きていたころと同じように、山田とくだらない話をするようになります。

物語は、この山田とクラスメイトたちとの会話を中心に進んでいくのですが、
このやりとりに何度笑わせられたことか。
くだらなくて、自由で、そして品が無くて。(笑)

でも…山田はもう亡くなっているのです。

そもそもなぜ山田は声だけ復活したのか。
また、いつまでこんな状況が続くのか。
高校生たちのバカバカしさに笑いながらも、いろんなことが気になって、
本のページをめくる手が止まりませんでした。

果たして、この先彼らはどうなっていくのか。
続きは、本を読んでお確かめください。

では、ここで、この本を大プッシュしている
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介します。

「男子校って、こんな感じなのでしょうか(笑)
2年E組の生徒になった気分で、楽しみました!
是非!ファイア山田のオールナイトニッポンをお聴きください♪」


私も野口さん同様、クラスメイトの一人の気分でした。(笑)

最後の一文について少し解説すると、
山田は、土曜の夜に誰もいない教室で
「ファイア山田」として、ラジオのマネをして一人で喋っているのです。

そういう意味では、いつもラジオを聞いているリスナーの皆さんにも
読みやすい一冊だと思います。
いや、読むとういうより、まさにラジオを聞いている感覚で楽しめます。

あなたも男子高校生の気分で青春時代を体感してみませんか。
いろんな感情が味わえますよ。

*

それから本とあわせて、『死んだ山田と教室』の特設サイトもぜひご覧ください。

あらすじコミックや、まるで実写映画の予告編のようなスペシャルムービーもあります。

このムービーがとても良くて、この配役の映画も見てみたくなりました。

◎特設サイトは コチラ

*

そして!

今日ご紹介した『死んだ山田と教室』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 11:08 am

『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』

2024年5月29日

私は本屋さんの中をぶらぶら歩くのが好きです。
なんとなく目に入った本との出会いが楽しいので。

本屋さんでは、新刊本、話題の本などのチェックをして、
雑誌コーナー、文庫もまわって、
あとは、アートコーナーにもよく行きます。

私は美術館に行くのも
アート関連の本を読むのも好きなので、
アートコーナーは欠かせません。

先日も明文堂書店 高岡射水店に行った時、
アートコーナーで何か面白そうな本は無いかなあ
と本棚を眺めていたところ、気になる本を発見しました。

『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』
ちいさな美術館の学芸員
産業編集センター

本の帯には「知れば美術館が10倍面白い!」とあり、
美術館によく行く私は、早速手に取りました。

画家の紹介や絵画の見方を紹介する本は多いですが、
学芸員の仕事や、美術館の舞台裏について知ることのできる本
はなかなかないので、面白そうだなあと思って読んでみることにしました。

著者は「ちいさな美術館の学芸員」とあります。
どうやら都内のとある美術館で働く現役の学芸員さんのようです。

そして、この学芸員さんによるnoteの人気連載を書籍化したのが
この本だそうです。
(※noteは、誰でも情報発信できるWEBサービス)

名前を伏せている分、本音が満載で、
まるで馴染みの学芸員さんとカフェでコーヒーを飲みながら、
こっそり「ここだけの話」を聞いているような気分でした。

ちなみに、学芸員は「美術館の端っこに座っている人」ではありません。
その方は、監視のスタッフです。
これ、よく間違われるそうですよ。

学芸員の仕事は、博物館法によると、
「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究」をする専門職です。
でも実際は美術館に関することなら何でもやっている方が多いようです。

あと、法律上、美術館と博物館に区別はないのだとか。
また、動物園や水族館も法律上はすべて「博物館」なんですって。

へー。

私はこの本を読みながら何度もこの「へー」を口にしていました。
いつぞやの「へーボタン」があれば推し続けていたと思います。(笑)

*

さて、この本は、4つの章に分かれています。

・一つの展覧会ができるまで
・学芸員という仕事の舞台裏
・美術館をもっと楽しむためのヒント
・美術館をささえる仲間たち

まずは、展覧会がどのように作られているのかから始まります。

富山の美術館でも様々な展覧会が行われていますよね。
私も企画展ごとに各美術館を訪れていますので、
展覧会の舞台裏のお話はとても面白かったです。

例えば、企画展では他の美術館の作品が展示されることもありますが、
美術館同士の作品の貸し借りには、基本的にお金が発生しないのだとか。
(中には例外もあるようですが)
これにはびっくり!
私は、レンタル料も大きな収入の一つかと思っていました。

また、作品を展示する際、最後の仕上げとして大事なのがこれだそうです。
「ライティング」。照明の当て方です。

確かに、どの美術館も照明には力を入れていますよね。
もう展覧会は終わっていますが、
この春、秋水美術館で開催されていた『源氏物語と王朝の美』では、
当時は、屏風をろうそくの明かりで見ていたことから、
赤みを帯びた暗めの照明にして、当時の明かりを再現していまして、
そのこだわりに感動しました。

この本を読んで、今後は作品だけでなく、
ライティングにも注意して鑑賞していきたいと
あらためて思いました。

*

第3章の「美術館をもっと楽しむためのヒント」では、
アートは「無駄」で「役に立たない」かもしれない…と書かれていました。
たしかに今は何かと無駄を嫌いがちな時代ですからね。

でも、著者は、その「無駄」こそ、人間らしく生きるには欠かせないと言います。

おっしゃるとおり!
アートだけでなく、それこそラジオだって、
無くても困らない存在かもしれません。

でも、無駄の良さというのもあるものです。

詳しくは、この第3章を読んで頂きたいのですが、
本当は朗読してラジオでお伝えしたいくらいに共感しました。

と言いつつも、私にとって美術鑑賞は楽しい時間なので、
全く無駄ではないんですけどね!(笑)

*

ということで、いくつか抜粋してご紹介しました。
本屋さんで偶然出会った本でしたが、とても面白かったです。

本音満載の話し言葉で、楽しく気軽に読めましたし、
何より次、美術館に行くのがさらに楽しみになりました。

さっそく近々、富山県美術館のエッシャー展に行く予定なので、
この本に書かれていたヒントを参考に楽しんできます♪

アート好きな方はもちろん、
アートは難しくてよくわからないという方もぜひ、
この本を読んでみてください。

きっと美術館がより身近に感じられると思いますよー。

yukikotajima 12:24 pm

『家族解散まで千キロメートル』

2024年5月22日

私が担当している番組には、家族について書かれたメッセージがよく届きます。

お子さんの可愛いエピソードに誕生日のお祝いメッセージ、
時には夫や妻に対する愚痴などもありますが、
どのメッセージからも家族を大事に思っていることは伝わってきます。

そんな大切な家族に、あなたは嘘をついたことはありますか?

今日ご紹介するのは、「わが家は嘘で出来ている」という、ある家族の物語です。

『家族解散まで千キロメートル』
浅倉秋成(あさくら・あきなり)
株式会社KADOKAWA

今注目のミステリ作家、浅倉秋成さんの新作です。

浅倉さんと言えば、2021年に刊行した
『六人の嘘つきな大学生』が話題となりましたが、
なんと、今年の11月に映画化されるそうですよ。
おめでとうございます〜!

◎映画の公式サイトは コチラ

そして私、この本をまだ読んでいなかったことに気づき、
まずはこちらから読んでみました。

『六人の嘘つきな大学生』は、
とある企業の最終選考に残った六人の就活生たちの物語です。
最初は仲良く交流を深めていたものの、
内定者はこの中から一人だけとわかるや否や全員がライバルに。
そんな中、彼らが隠していた嘘が明らかになり…
という、ドキドキ感がたまらない大変面白い一冊でした。

私は映画の配役を知ったうえで読んだので、
もうすっかり映画を見た気になっています。(笑)
もちろん実際の映画も楽しみですが。
ちなみに配役はピッタリです。

*

さて、就活生の嘘の次は、家族の嘘です。
続けて『家族解散まで千キロメートル』を読みました。

こちらもとーっても面白かったです。
『六人の嘘つきな大学生』とはまた別のスリリングな展開で、
ノンストップで最後まで読んでしまいました。

2冊とも騙されまい!と思って意気込んだものの、見事に二度読み。。。
ま、本に騙されるのは嫌いじゃないんですけどねー。(と強がってみた。笑)

さて、『家族解散まで千キロメートル』は、ある家族、喜佐家(きさけ)のお話です。

喜佐家では、古びた実家を取り壊して、
両親はマンションへ転居、姉は結婚、そして弟は独立することになります。

そして、引っ越しの3日前、家族で片づけをしていたところ、
倉庫で見慣れない大きな箱を見つけます。
中を開けてみれば、出てきたのは仏像でした。

何これ?と思った直後、
テレビのニュースで「青森の神社でご神体が盗まれた」とあり、
あらためて仏像を見れば、そのご神体にそっくり。。。

宮司が「今日中に返してくれるなら罪には問わない」と言っていたことから、
家族は、彼らの住む山梨から神社のある青森まで
車でご神体を返しに行くことにします。

ちなみに、家族と言っても、そこに父はいません。
生きてはいるものの、いつもふらふらどこかに出かけてしまうのです。
また何かと問題も多いため、
家族は、このご神体を盗んだのは父に違いないと思ったわけです。

到着予想時刻はギリギリです。果たして間に合うのか。
そもそも、なぜこんなことになっているのか。

ここから怒涛の家族ドライブが始まります。

この先は、ぜひ皆さんも喜佐家と共に
車に乗っている気分で本を読んでみてください。

*

私も喜佐家のドライブにお供しましたが、
いやあ、いろいろな意味で驚かされました。
でも、ただびっくりして終わりではなく、
考えさせられることも多かったです。

物語が面白いから読むスピードもどんどん上がってしまうのだけど、
そのまま一瞬で景色が流れ去っていくのではなく、
登場人物の発した言葉に、思わず立ち止まって一緒に考えてしまうような、
そんな瞬間が何度もありました。

ネタバレになってしまうので、
具体的にここが良かった!という話ができないのが
なんとももどかしい。うううー。

ミステリとしても家族小説としても大変面白い一冊でした。
この作品もいずれ映画化されそうだなー。

*

『家族解散まで千キロメートル』の特設サイトでは、
95ページまで試し読みができますので、
まずはこちらからチェックしてみるのもいいかも。
でも、途中まで読んだら間違いなく続きが気になると思いますが。(笑)

◎特設サイトは コチラ

それでは、あなたも喜佐家のドライブにいってらっしゃ〜い♪

yukikotajima 11:37 am

『不機嫌な姫とブルックナー団』

2024年5月15日

あなたはクラシック音楽はお好きですか。
好きな作曲家はいますか?

私は詳しくはないのですが、
ピアニストの清塚信也さんが監修、MCを務める
NHK Eテレの「クラシックTV」は好きで毎週見ています。

先日の放送ではマーラーが特集されていまして、
思わずこの本が頭に浮かびました。

『不機嫌な姫とブルックナー団』
高原英理(たかはら・えいり)
講談社文庫

この本にもマーラーが出てくるのです。
でも、メインで取り上げられているのは、
本のタイトルにもある「ブルックナー」ですが。

あなたは、ブルックナーをご存じですか?

ベートーヴェンやモーツァルトなどと比べると知名度は低めかもしれませんが、
ブルックナーは、19世紀のウィーンを代表する作曲家で、
今年は、生誕200年の「ブルックナーイヤー」なのです。

この本は、2016年に発売され、今年4月に文庫化されたのですが、
今年はブルックナーイヤーということもあり、よく売れているそうですよ。

*

タイトルの『不機嫌な姫とブルックナー団』を見ると、
いつの時代のお話だろう?と思ってしまいそうですが、現代の物語です。

主人公は、図書館で働く女性「ゆたき」です。
ある日、彼女は一人で大好きなブルックナーのコンサートに行き、帰ろうとしたところ、
「ブルックナー団」を名乗る3人の男性から声をかけられます。

このあと、ブルックナーについて話をしないかと。

彼らは「ブルックナーオタク」、通称「ブルオタ」なのでした。

ちなみにブルオタには男性が多いため、
女性のファンの話も聞いてみたいと、ゆたきは声をかけられたのでした。

ブルックナーは、偉大な作曲家でありながらも、なかなか世に認められず、
また、ひどく変わった、今で言うところの「イタい」人だったそうです。

気が小さくて自信が無く、常に迷い、
他人からの助言をすぐ信じて楽譜を書き換えていたため、
彼の交響曲にはいくつもの改訂版があります。

また、女性に全くモテなかったそうで、
ゆたきによると、ブルックナーは「非モテの元祖」だそうです。

実際、同時代の輝かしい作曲家たち、例えば、
リスト、ショパン、ヴァーグナー、ブラームス、シューマンなどと比べると、
ブルックナーは「ださい」のだとか。

そして、ブルオタたちは、自分たちのようなキモオタは、
輝かしい作曲家たちの世界からは締め出されているから、
自分たちには野暮なブルックナーがお似合いだと言います。

だからこそブルオタたちは、女性のファンであるゆたきに、
ブルックナーのどこか好きなのか聞いてみたいと思ったのでした。

結局、彼女は「ブルックナー団」のブルオタたちと
ブルックナー愛を語ることになるのですが、
どんなトークが繰り広げられるかは、ぜひ本を読んでお楽しみください。

さて、そんな中、ゆたきは、ブルックナー団のメンバーの一人が書いたという小説
「ブルックナー伝(未完)」をすすめられます。

『不機嫌な姫とブルックナー団』には、
その、ブルックナーが主人公の小説も載っていますので、
読者である私たちも読むことができます。

いったいそれはどんな小説なのか。
続きはご自身でお確かめください。

*

この本は、一冊丸ごとブルックナー愛にあふれていました。
何かを好きな人たちの話っていいものですね!

ブルックナーのここは残念だよね、と言いつつも、
根底には愛があるので、ただの悪口にいなっていないのがいいのです。

ブルックナーがお好きな方は間違いなく楽しめると思いますし、
今「推し」がいる人は、推しへの愛や向き合い方にきっと共感できるはずです。

一方、ブルックナーはじめ、クラシック音楽はよくわらかない、
という方でももちろん大丈夫です。

私も詳しくないですが、楽しく読めましたし、色々と勉強にもなりました。

何より文庫ですし、皆さんも気軽に読んでみてくださいね!

それから、作品の中の「ブルックナー伝(未完)」の完全なブルックナー伝が、
今年、『ブルックナー譚』として、中央公論新社から刊行されたそうですので、
良かったらあわせてお読みになってみるのもいいかも。

yukikotajima 12:46 pm

『休むヒント。』

2024年5月8日

GWが終わりました。
どんな連休でしたか。

旅行に行った方、
近場をドライブした方、
家の掃除や片づけをした方、
友人と食事を楽しんだ方、
また、お家でダラダラしていた方もいるでしょうか。

どんなお休みだったにせよ、しっかり休めましたか。

リフレッシュできる休みの過ごし方は、
人によって異なるものです。

アクティブに動きたい方もいれば、
家でのんびり過ごしたい方もいますよね。
また、その時の気分次第でも過ごし方は変わるものです。

その一方で、なかなか上手に休めないという方もいるのでは?

お休みなのに、つい仕事をしてしまったり、
ムリして予定を詰め込んでしまったり、
逆に何もしないまま一日が終わってしまったり。

心当たり、ありませんか。

私は、もちろんあります!(笑)

***

今日は、いろいろな人たちの「休みの日」がのぞける一冊をご紹介します。

『休むヒント。』
編:群像編集部
講談社

タイトルだけを見ると、
上手に休むためのヒントが載っているの?
と思ってしまいそうですが、
この本は、講談社の文芸誌『群像』に掲載された
「休み」にまつわるエッセイを収録したアンソロジーです。

執筆者は33人。
作家の角田光代さん、
声優の斉藤壮馬さん、
星占いでおなじみの石井ゆかりさん、
お笑いカルテット・ぼる塾の酒寄希望さんなど、
幅広い顔ぶれです。

「休み方」も「休みの捉え方」も33通りあります。

具体的な休みの日の過ごし方を綴る方もいれば、
ケガや病気でやむを得ず休むことになってしまった方や、
「休み」について、とことん考えている人もいます。

どのエッセイもそれぞれに面白かったのですが、
中でも私が素敵な休み方!と思ったのは、小西康陽さんです。

自称休むのが下手という方が多い中、
小西さんは、そんな言い訳もなく、
最初から、あるお休みの日を綴っています。

時間に追われることなく、
その時の気分と状況に合わせて動いていく小西さんの穏やかな休日は、
私まで同じような休日を過ごしている気分になれました。

ちなみに、最近の小西さんは、
「目的もなく路線バスに乗って終点まで行く」ことを楽しんでいるそうで、
私も今度真似してみようと思いました。
でも、東京なら帰る手段は多そうだけど、
富山は場所によっては帰れなくなりそうなのですが。(笑)

そのほか、フリーライターの武田砂鉄さん、
作家・詩人・作詞家の高橋久美子さん、
Z世代ライターの竹田ダニエルさん、
イラストレーターの益田ミリさん、
作家の吉田篤弘さんのエッセイも印象に残りました。

このエッセイには、33通りの「休み方」がありますので、
共感もあれば、気付き、それこそ「休むヒント」も得られると思います。

私は、この本を読み終えたあとは、
いい休日を過ごせたときのような満足感がありました。
程よく身体の力が抜けて、頭の中がスッキリした感じで。

あなたも次のお休みの日にでも読んでみては。

yukikotajima 11:20 am

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

2024年5月1日

28日(日)に魚津しんきろうマラソンに出場しました。
人生初のハーフマラソンです。
フルマラソンの大会にはこれまで何度も出ていますが、
ハーフは初めてで、緊張しつつも楽しみながら走れました。

結果はネットタイムで2時間13分でした。
2時間半切りを目指していましたので、目標達成です。

今回は途中まで2時間15分のペースランナーと共に走り、
後半、もうちょっと頑張れそうだなと思ったところでスピードを上げて、
自分のペースで走りました。

走るうえで私が一番大切にしているのは、「自分のペースを守ること」です。
周りの人たちに惑わされず、自分の心と体の声に耳を傾けるようにしています。

今では、走っているときだけでなく、
私の人生そのものも自分のペースを大切にするよう心がけています。
とは言え、こちらはまだまだ無理をしがちで失敗も多いのですが。。。

***

さて、今日ご紹介する本にも、
そんな自分のペースを大切にしたいと思っている人たちが出てきます。

今日は5月1日。
毎月第一週は、明文堂書店とのコラボ回です。

今回は、本を愛する高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本です。

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
著者:ファン・ボルム
訳者:牧野 美加
集英社

こちらは韓国で25万部の売り上げを記録したという韓国で人気の本です。
日本でも今年の本屋大賞の「翻訳小説部門」で第一位に選ばれるなど、
話題となっています。

タイトルに「書店」とあるように、
書店が舞台の小説で、本への愛にあふれています。

本屋大賞は、全国の書店員が選ぶ賞ですが、
きっと野口さんをはじめ、書店員の皆さんは、
「こんな本屋さんを作りたい」と思いながら読んだのではないかしら。

私は書店員ではないものの、本好きの一人として、たくさん共感しましたし、
今やすっかりヒュナム洞書店の常連客の気分です。

なんといっても、ここの本屋さんは居心地が良いですし、
コーヒーも美味しいのです。(実際は飲んでないけど。笑)

それに、いつ行っても面白そうな本と出会えますし、
時々開催されるイベントも楽しそうです。

ヒュナム洞書店は、ソウル市内の住宅街にオープンした書店です。
店主は、会社を辞めて書店を始めたヨンジュという30代の女性です。

書店に併設されたカフェでは、就活に失敗した青年ミンジュンが
バリスタとして働いています。

そして、お店には個性豊かな様々な人がやってきます。
彼らは、それぞれに仕事や家族、将来などの悩みを抱えています。
ですが、書店に集い、関わる中で、自分なりの答えを見つけていきます。

また、お客さんだけでなく店主のヨンジュにももちろん悩みがあります。
彼女の場合、お客さんたちとの関わりだけでなく、
たくさんの本からも生きやすさのヒントを得ています。

そんな本からの気付きや学びに対し、
私も何度「そうそう!そのとおり!たしかに!」と相槌を打ったことか。
あまりにも共感し過ぎて、今ではヨンジュに対してすっかり友人の気分です。(笑)

私もこれまで本からたくさんのことを学び、気付きを得、
時には苛立った心を落ちつかせてもらいました。

そして、この小説にもいい言葉がたくさん出てきます。
それも心が軽くなって温かくなるような。
気付いたら読みながら泣いていたほどです。

私はマラソン中も、自分の人生においても
なるべく自分の心に正直でいたいと思っていたけれど、
この本を読んで、全然正直では無かったことに気付かされました。

また、私だけでなく、きっと誰もが人知れず、
いろんなことを我慢して生きていると思うのです。

でも、この本の前では自分の心に正直になれるのではないかしら。

この本は、この先もきっとまた読むことになりそうな予感がしています。
ちょっと疲れたなあと思ったら、ヒュナム洞書店の扉を開こうと思います。
いい本、いい言葉、そして何よりいい人たちに会いに。

ちなみに「ヒュナム洞」の「ヒュ」は「休」という字だそうですよ。

本や書店が好きな方はもちろん、
なんか私の人生うまくいかない…と思っている方もぜひお読みください。

ではここで、明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さん
のコメントをご紹介しましょう。

「子どものころ、週末に父がよく書店に連れて行ってくれました。
そこで、いつも好きな本を、必ず一冊、買ってくれました。
たくさんの本から、気に入った本を選ぶワクワクした気持ち、
書店に行く楽しみを、この小説を読んで思い出しました。
読んだ人の心に、灯りがともるような、とても素敵なお話です。
ぜひ、書店にお越しください!」

野口さんも素敵な書店員です。
いい本を教えてくださるのはもちろん、
野口さんとのお喋りこそ、私にとって楽しい時間です。

今日ご紹介した『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

それこそ明文堂書店も店舗によってはカフェが併設されていますので、
ヒュナム洞書店のように、コーヒーを飲みながらのんびり過ごせますよ。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 11:23 am

『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』

2024年4月24日

ここのところ、本屋大賞絡みの本を取り上げてきましたが、
今日は、「2024新書大賞」受賞作をご紹介します。

「新書大賞」は、中央公論新社の主催で、
1年間に刊行されたすべての新書から、
その年「最高の一冊」を選ぶ賞です。

本屋大賞は、全国の書店員が選びますが、
新書大賞は、有識者、書店員、各社新書編集部、新聞記者など
新書に造詣の深い方々の投票で決まります。

今年の大賞は、こちらです。

『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』
今井むつみ/秋田喜美(あきた・きみ)
中公新書

この本は、去年5月に発売され、話題になった本ですが、
大賞を受賞したことで、今また注目を浴びているようですよ。

私も大賞受賞を機に読んでみました。
ですが、読み始めてすぐに
「ん?どこかで読んだことがあるような」と思い、
調べたところ、2022年に読んだ
『フリースタイル言語学』を思い出したのでした。

◎詳しくは コチラ

『フリースタイル言語学』もまさに「言語」について書かれた本です。
こちらはわりと軽いノリで、言語を学べますので、
ぜひあわせてお読みください。

さて、今回の『言語の本質』は、お二人の方が執筆されています。

認知科学者と言語学者が、
「言語の本質とは何か」を共に考え、執筆したものです。

お二人は、オノマトペについて考えていたら、
そこから新たな問いがいくつも生まれ、
「言語の本質とは何か」という問いに突き当たったそうです。

ですから前半はオノマトペが中心です。
オノマトペは、もぐもぐ、げらげら、ドキドキ、ワクワクなどの言葉です。

日本人なら、これらのオノマトペを聞いただけで、
なんとなくイメージがわきますよね?

でも、日本語がわからない方には、理解が難しいようで、
たとえば「髪の毛のサラサラとツルツル」の区別がつかないそうです。

逆の場合もあります。

突然ですが、ここでクイズ!

南アフリカのツワナ語で「ニェディ」は、物体の視覚的な様子を表します。
さて、どんな様子でしょうか。

言葉のイメージから想像してみてください。

正解は…

「キラキラ」です。

正解しましたか?
私は、まったくわかりませんでした。

その一方で、音からなんとくこういう意味かな?
とイメージがしやすいものもあるようです。
オノマトペではないのですが、音に関するクイズです。

ベトナム語の「メム」と「クン」、柔らかいことを表すのはどっち?

正解は…

「メム」です。

次はこれ。

オセアニア・ソロモン諸島のサヴォサヴォ語で
「ボボラガ」と「セレ」は、どちらが黒で白でしょう?

正解は…

「ボボラガ」が黒で、「セレ」が白です。

どうですか。当たりましたか?

「なんとくなくこっちかな?」
というイメージで当たった方もいると思いますが、
この本では、なぜそう思うのか、その理由も分析されていますので、
ぜひ本を読んでお確かめください。

この、音のイメージの話とても面白かったです!

オノマトペの話題のあとにも
「なぜヒトはことばを持つのか?」
「子どもはいかにしてことばを覚えるのか?」
「ヒトとAIや動物の違いは?」
など、興味深い話題が続いていき、言語の本質に迫っていきます。

先ほどご紹介した言語に関するクイズや、子どもの可愛い言い間違いなど、
身近な話題も多いので、読みやすいと思います。

『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』は、
それこそ「ワクワク」しながら読めた、大変興味深い一冊でした!

特にオノマトペの分析は面白かったです。
オノマトペがなぜ通じるのか、今まであまり意識してこなかったのですが、
この本を読んだことで、オノマトペに興味を持ちました。

そういえば、今や「普通のことば」になっているものにも
元オノマトペが潜んでいるそうですよ。
例えば「たたく」は、「タッタッ」というオノマトペだったのだとか。
この先もオノマトペ発の新語がうまれそうですね!

今回私が取り上げた内容はほんの一部です。
ぜひあなたも本を読みながら、気付きや驚きを味わってみてください。

yukikotajima 12:10 pm

『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』

2024年4月17日

先週は、本屋大賞受賞作、
宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)
をご紹介しました。

◎私の紹介は コチラ

あなたはもう読んだかな?

本屋大賞は、まず10作品がノミネートされ、
最終的に1位から10位までが決まります。

本屋大賞は、大賞受賞作品だけでなく、上位10作品どれも面白いので、
私も毎年発表を楽しみにしています。

その中から今日は、本屋大賞で9位となった作品をご紹介します。

『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』
作:知念実希人
絵:Gurin.
ライツ社

この本は、児童書です。
児童向けの読み物が選ばれたのは、史上初なんですって。

おめでとうございますー!

著者の知念実希人さんと言えば、
この作品をはじめ、これまで5回本屋大賞に作品がノミネートされている他、
『祈りのカルテ』や『となりのナースエイド』など、
様々な作品が映像化されている人気のミステリ作家です。
また、お医者さまでもあります。

『放課後ミステリクラブ』は、知念さんが初めて、
子どもたちのために本気で書いたという本格児童書ミステリです。

「読書は楽しい」ということを子どもに知ってほしい、
と思ってお書きになったそうですよ。

そう、読書は楽しいのです!

それをわかっていただくには、
やはり本を読んでみずから「面白い!」と思って頂くのが一番です。

この「放課後ミステリクラブ」は、
初めてミステリに触れるのにピッタリだと思います。

登場人物は子どもたちが中心で、殺人事件もありません。
また、挿絵も豊富ですし、漢字にはすべてフリガナがついていますので、
お子さんでも安心して読むことができます。

なお、対象は9歳からですが、内容は本格的なので大人が読んでも楽しめます。

それもそのはず。
知念さんは、「大人のミステリ小説とまったく同じ手法で書いた」そうですよ。

***

さて、『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』は、
まさにタイトルの通り、学校のプールに金魚が放たれるところから始まります。

そこで4年1組の3人、通称「ミステリトリオ」の3人が、
先生からの依頼で事件の謎に挑むことになります。

果たして誰が何のために、学校のプールに金魚を放ったのか。

この続きは、ぜひ本を読んでお楽しみください。

この本は挿絵が豊富で、キャラクターたちはカラーで紹介されているので、
頭の中で映像を浮かべやすいのです。
また、色鮮やかな金魚も美しく、すうっと物語の世界に入り込めました。
小学生の時にこの本を読んでいたら、きっとはまっていたように思います。

ちなみに、この「放課後ミステリクラブ」シリーズは、
すでに『2 雪のミステリーサークル事件』『3 動くカメの銅像事件』
の3巻まで出ているそうですので、あわせてお楽しみください。
なお、シリーズ累計の発行部数は12万部を突破したそうです。

ところで、「ライツ社」は、2016年に創業した新しい出版社です。
ジャンルにとらわれることなく、
自分たちが本当におもしろいと思う本だけを出版しているそうですよ。

本の中に「ライツ社からのおたより」が入っていたのですが、
ここに書かれた文章が良くて、思わず読書をいったん中断し、
「おたより」もしっかり読んでしまいました。

まさに「お知らせ」ではなく、
人のぬくもりを感じる「おたより」でした。

「ライツ社」の他の本もチェックしてみようっと。

それにしても、今年の本屋大賞の上位10作品は、
バラエティに富んでいて面白いなー。

yukikotajima 11:44 am

『成瀬は天下を取りにいく』

2024年4月10日

今日の午後、本屋大賞が発表されました。

本屋大賞は、書店員の投票だけで選ばれる賞です。

過去一年の間、書店員自身が自分で読んで
「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」
と思った本を選んで投票するものです。

事前に上位10作品がノミネート作品として発表されますので、
書店員で無くても大賞を予想することができます。

私もこれまで半分の5作品をラジオでご紹介しました。
その中から私が予想したのは、
津村記久子さんの『水車小屋のネネ』
塩田武士さんの『存在のすべてを』でしたが、
果たして受賞となったのでしょうか。

それでは、発表します!

2024年本屋大賞は…

宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)

でした。

宮島さん、おめでとうございます〜!

ちなみに私が予想した
『水車小屋のネネ』は2位、
『存在のすべてを』は3位でした。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

『成瀬は天下を取りにいく』は、宮島さんのデビュー作なのですが、
本に関する賞をなんと13個も受賞しています。
中でも「中高生におすすめする司書のイチオシ本」をはじめ、
中高の学校の関係者から高い評価を受けています。

というのも主人公が中学生なのです。

今日は、今年の本屋大賞受賞作をご紹介します。

実は前から今日はこの本を紹介しようと決めていたところ、
まさかの大賞受賞となったのでした。

本屋大賞発表の日の紹介なら
ノミネート作品の中から未読の本を選ぼうと思い、
この話題作に決めたのですが、
まさか大賞を受賞するとはびっくりです。
でもバッチリのタイミングとなりました。

さて、『成瀬は天下を取りにいく』は、
「成瀬あかり」という14歳の中学生の物語で、舞台は滋賀県大津市です。
様々な人の視点で物語が進んでいく連作短編集で、
最初は成瀬の友人の島崎みゆきの視点で始まります。

島崎によると、成瀬はスケールの大きな宣言を次々にしていくそうです。
たとえば、成瀬の将来の夢は「二百歳まで生きること」です。

ちなみに、目標に届かなくても成瀬は落ち込みません。
なぜなら、大きなことを百個言って一つでも叶えたら、
「あの人すごい」となるから、だそうです。

いつも突拍子もないことを言い出す成瀬は、
中2の夏休みの始まりには、
「私はこの夏を西武に捧げようと思う」と宣言します。

西武とは、かつて富山にもあったデパートのことです。
彼女たちが住む滋賀県大津市にある西武が
一ヶ月後の八月三十一日に営業が終了することを知った成瀬は、
毎日西武に通って、地元のローカル番組の生中継に映り込むと言い出します。

西武に夏を捧げた成瀬は、
秋には「わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」と宣言します。
なんとこの挑戦に友人の島崎も巻き込まれ、
一緒にM-1グランプリに挑むことになってしまいます。

こんな感じで成瀬は、人の目なんて気にせず、
自分がこれだと思った道を全力で突き進んでいきます。

ですが、成瀬は挑戦したことすべてが成功するとは思っていません。
だからと言って、最初からあきらめているわけでもありません。
また、たとえできなかったとしても、そのことを無駄だとは思いません。

成瀬は「挑戦した経験はすべて肥やしになる」と言います。

ううう。10代でその考えを持てるなんて、すごいよ、成瀬!

誰だって失敗はしたくないものです。
でも、失敗を恐れていたら何もできないですものね。

この本を読んだ人は成瀬のファンになってしまうそうですが、私もその一人です。
いつでも堂々としている成瀬、かっこよすぎます。
成瀬には二百歳まで生きてほしい!

中学生の物語と聞くと、
大人の皆さんは手に取りづらいと思うかもしれませんが、
そんなことはありません。

なんならこれまで色々経験してきた大人のほうがより心に響くかもしれません。

大変面白かったので、この先の成瀬のことも知りたいなあと思ったら、
なんと続編が出ていました!

『成瀬は信じた道をいく』

わーい!近々読もうと思います。

あらためて、『成瀬は天下を取りいく』、
「2024年本屋大賞」受賞、おめでとうございます!

yukikotajima 2:33 pm

『日日是好日』

2024年4月3日

2024年度になりました。

今年度もヨリミチトソラ
毎週水曜18時32分からお送りしている「ゆきれぽ」では、
このブログとの連動で本紹介(時々アートも)をしていきますので、
引き続きどうぞよろしくお願いします。

毎月第一週は、明文堂書店とコラボし、
本を愛する高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本をご紹介しています。

第一週の今週は、コラボ回!
野口さんのオススメ本です。

『日日是好日(にちにちこれこうじつ)
—「お茶」が教えてくれた15のしあわせ—』
森下典子
新潮文庫

この作品は、2018年に映画化されましたので、
映画をご覧になった方もいるのでは。

私も見ました。映画鑑賞後には原作も読みました。
どちらもとても良かったことを覚えています。

◎私の当時の感想は コチラ

一度読んでいるとは言え、野口さんから
「この本は何度読んでもいいし、春に読むのにぴったりだから」
と言われ、私も久しぶりに読んでみました。
せっかくなので読む前に配信で映画を再度鑑賞してから、本を読みました。

今回もとても良かったです!
それも前回より心に響きました。

まずは、どんな作品なのかご紹介しますね。
この本は、お茶を習い始めて25年の著者が、
お茶を習い始めてから今に至るまでを振り返るエッセイです。
うまくいかなかったり、辛かったりしたときでも、
いつもそばには「お茶」があり、
「お茶」から大切なことに気付かされます。

副題に〈「お茶」が教えてくれた15のしあわせ〉とある通り、
著者は、「お茶」から様々なことを教わります。

例えば、
・「自分は何も知らない」と言うことを知る
・「今」に気持ちを集中すること
・たくさんの「本物」を見ること
などです。

映画では、黒木華さんが主人公を
樹木希林さんがお茶の先生を演じていました。
ちょっととぼけた感じの先生と
素直な生徒のやり取りが心地良い映画でした。

この作品は、茶道教室での出来事がメインですが、
お茶を習ったことの無い私でも楽しめました。

それこそ、生きていく上で大切にしたいことが、
たくさん詰まっているのです。

私は本を読む際、いいなと思うところや
肝となる箇所には付箋を貼っていくのですが、
この本は付箋だらけになってしまったほどです。

このエッセイの中で、著者は、世の中には
「すぐにわかるもの」と「すぐにはわからないもの」があると言います。
例えば、ある映画を、子どもの頃、大学生、30代半ばのときに見たら、
毎回印象が変わっていったそうです。それも見る度に深くなっていったと。

倍速視聴などでタイパを重視しがちな今の時代には、
「今すぐにはわからない」というのは、
もっとも無駄なことかもしれません。

でも、そこにこそ意味があるのです。

どんなにいい言葉もいい教えも
自分自身で「そうか」と気付かないと、
なかなか身に付かないものです。

年を重ねていくということは、
昔分からなかったことに気付いていくことなのかもしれませんね。

私もこの本を6年ぶりに読んで、前回以上に心に響きました。
この本を書いた当時の著者とほぼ同じ年齢になった、
というのもあるのかもしれませんが、
今このタイミングで読めて本当に良かったです。

ですが、この本は新社会人の方にもおすすめです。
ものを習うことに対しての大事な教えも書かれています。

ではここで、これまでこの本を何度も読んでいる
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介しましょう。

毎年、春になると、必ず読みたくなる本です。
出会い、別れ、喜び、悲しみ、人生のあらゆる場面が、
一冊に詰まっていて、心地よいリズムのある文章で綴られています。
読むたびに、五感がフル活動しています。

野口さんによると、なんだかんだで一番再読している本だそうです。

以前読んだ方も、まだ読んでいない方も、ぜひ読んでみてください。

この本を読んだあとは、きっとこう思うはず。
日日是好日。毎日がいい日だと。

今日ご紹介した『日日是好日』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 11:03 am

『結婚とわたし』

2024年3月27日

「料理は女が作るもの」
なんて言おうもんなら、
今の時代、間違いなく炎上します。

今や、家事も子育ても女性だけがやればいい、
という時代ではなくなりました。

とは言え。
私の周りの既婚者を見てみると、
まだまだ妻のほうが家事や子育てをしていることが多く、
妻の側も「仕方ない」とあきらめていたりしています。
(もちろん夫婦共にしているご家庭もあると思いますが!)

それ、おかしくない?(怒)
と言っても未婚の私の言葉には説得力がなく、
やり切れない気持ちでいっぱいになるのですが、
既婚者の言葉なら響くのでは?ということで、
今日は、妻の本音が詰まっている、
というか、吐き出された一冊をご紹介します。

『結婚とわたし』
山内マリコ
ちくま文庫

2017年に発売された単行本
『皿洗いするの、どっち? 目指せ、家庭内男女平等!』
(マガジンハウス)の文庫版です。

単行本は、雑誌「an・an」で連載されたエッセイを書籍化したものですが、
文庫版は、まったく別の本として楽しんでもらえるようにと、
連載時の日記形式に戻し、さらに後日談も加筆した〈完全版〉です。

私は発売当時、単行本も読んでいますが、
あらためて、完全版である『結婚とわたし』も読んでみました。

◎2017年の単行本の感想は コチラ

エッセイなので、普段の山内さんの言葉が
そのまま文字起こしされている感じです。

富山出身の山内さんは、以前FMとやまでも喋っていましたので、
声をご存じの方もいらっしゃると思いますが、
私には、山内さんのあの声のままで再生され続けました。

このエッセイには、同棲生活を経て結婚した山内さんが、
夫との生活の中で、家庭内男女平等をめざし奮闘する様が綴られています。

妻側の不満がたっぷり詰まっていますので、
既婚の女性は、「そうそう!」ときっと頷きっぱなしになることでしょう。
ですが、私は男性にこそ読んで頂きたいと思いました。

夫への不満をわざわざ読みたくないよ!と思うかもしれないけれど、
妻の本音を知ることは、無駄では無いと思います。
それに夫の言い分も書かれていますので、
決して一方的な内容ではありません。

それにケンカしつつも仲はいいですし。
山内夫妻のやり取りから気付かされることは、
きっとたくさんあると思います。

何よりエッセイとして面白いのです。
夫のことをあれこれ言っているわりに
山内さん自身の失敗談も多く、
「山内さん、何やってんのよー!(笑)」
と何度突っ込んだことか。

ただ夫の文句を言って、ああスッキリ!では無く、
山内さんが求めているのは、あくまでも「家庭内男女平等」です。
果たしてその目的は果たされるのか。
詳しくは本を読んでお確かめください。
ちなみに、〈完全版〉は、現在の山内さんの言葉(ツッコミ)
が加筆されているのもポイントです。

ここで、著者の山内マリコさんから
リスナーの皆さんへのメッセージをご紹介します。

***

FMとやまをお聞きのみなさん、こんにちは!山内マリコです。
オッケイトークが終了して早3年。
リスナーさんたちに忘れられるんじゃないか、ちょっと心配してます(笑)。

2月に発売された『結婚とわたし』は、
ちょうどオッケイトークがはじまった年に結婚した、
夫との生活を綴った日記エッセイです。
主に家事分担をめぐって繰り広げたケンカを書いています。

先日対談した富山出身の大先輩、上野千鶴子さんも、
「よくこんな赤裸々に書いたわね〜」とおっしゃってました。

ちなみに、富山もたくさん出てきます!

まだ北陸新幹線が開業していなかった頃の
越後湯沢での乗り換えの忙しなさ、
富山へ行く日にインフルエンザでダウンして、
イベントが延期になったこと……

結婚に興味のない人でも、笑って読んでもらえるエッセイになっていると思います。
ぜひぜひ本屋さんで手にとってみてください!

***

山内さん、メッセージをありがとうございました。

ちなみに、毎年富山マラソンに出ている私に
「マラソンなんて絶対にムリ〜!」
と言っていた山内さんでしたが、
なんと先日マラソン大会に参加し、
10キロを完走したそうです。

すごーい!ナイスラン♪

人間、変わろうと思えば、変われるんですね!
ということを、今回私は山内夫妻から教わりました。

yukikotajima 11:00 am

『存在のすべてを』

2024年3月20日

先々週は、今年の本屋大賞にノミネートされている
津村記久子さんの『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
をご紹介しましたが、今日の本もノミネート作です。

◎『水車小屋のネネ』の紹介は コチラ

『水車小屋のネネ』を読んだとき、
今年の大賞はこれでいいじゃないか!と思ったのですが、
その気持ちが揺らいでいます。

だって、この本もとても良かったのですもの。

『存在のすべてを』
塩田武士
朝日新聞出版

塩田さんと言うと、映画化もされた
『罪の声』、『騙し絵の牙』などでおなじみの人気作家です。
ラジオでもこれまで様々な作品を紹介してきました。

塩田さんの文章は、呼吸が合っているのか、気持ち良く読めます。
話がかみ合う人と会話をしているような心地良さがあるのです。
また、映像が見えます。
それも景色だけでなく、人の表情の変化や心の動きまでしっかりと。

今作もノンストップでページをめくり続けました。

物語は、30年前の「二児同時誘拐事件」から始まります。
同じ日に二人に男の子がそれぞれ別の場所で誘拐されます。
一人はすぐに発見されるものの、もう一人は見つかりませんでした。
ところが、3年後、その子どもが帰ってきます。
警察は、これで犯人を捕まえられると思ったものの、
男の子は、空白の3年について、一切喋ろうとはしませんでした。
結局犯人はつかまらないまま、事件は時効を迎えます。

事件から30年後、週刊誌に、
ある人気写実画家の男性が誘拐事件の被害者だったという記事が載ります。

それを見た、事件当時警察担当だった新聞記者の男性は、
あらためて事件を追うことにします。

物語は、その新聞記者をメインに、
誘拐された男の子に関わる人たちの視点も混ざりながら、
真実へと近づいていきます。

誘拐された男の子は、空白の3年間、
いったいどこで誰とどのように過ごしていたのか。
そしてなぜ3年後に突然帰ってきたのか。

この続きは、ぜひ実際に作品を読んでお確かめください。

***

事件を追う警察、新聞記者、
誘拐された男の子、そしてその家族、
さらに彼らに関わる人たち、
それぞれに葛藤があり、
私だったらどうするかしら、
と考えながら読み進めていきました。

ですが、終盤はそんな様々な葛藤に冷静に向き合えなくなり、
ほぼ泣きながら読んでいました。

読み終えた後は、物語では描かれていない
登場人物たちの過去や未来を想像しながら
しばらく余韻に浸りました。

そんな余韻も含め、いい読書となりました。

誘拐事件と聞くと、嫌な気持ちになりそうですが、
この物語は、大切な人を思う気持ちにあふれた愛の物語です。
それも温かな。
ああ、ダメだ。こうやって思い出しただけでまた泣けてくる。(涙)

短絡的な思考になりがちな今の時代にこそ、読んで頂きたい一冊です。

最後にもうひとつ。
誘拐された男の子は、今や人気写実画家として活躍しているのですが、
この物語では、まるで写真のような「写実画」
についても深く掘り下げられていまして、
いつか写実画の美術館であるホキ美術館に行ってみたくなりました。

そういえば、私が好む小説には、何かしらアートが絡むものが多いなあ。
先週もアート旅がテーマだったし。
その前も画家が出てきたし。

ただ、アートと言っても、アプローチは異なっていて、
それぞれに面白さがあるので、ぜひどの作品も読んでみてください。

yukikotajima 12:26 pm

『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』

2024年3月13日

いよいよ今度の土曜日、3月16日に北陸新幹線が
福井県の敦賀まで延伸されます。

近いうちに新幹線に乗って福井をはじめ、関西方面に行きたい、
と考えている方もいるかもしれません。

春ですし、旅に行きたくなりますよね!
あなたはどんな旅をしたいですか。

私は、旅先ではその土地の美味しいものやお酒を味わうのはもちろん、
アートを見るのが好きなので、美術館にも行きたいです。

今日ご紹介する本は、アート旅をしている気分になれる一冊です。

『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』
一色さゆり
文春文庫

一色さんは、2015年に第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、
翌年に受賞作『神の値段』でデビューされました。

東京藝術大学を卒業後、ギャラリー・美術館勤務を経て、作家になったそうで、
これまで数々のアート小説をお書きになっています。

今回の作品も、まさにアート小説です。

本の帯には「あなただけのアートの旅にご案内します」とあり、
その一行を目にしただけで、ワクワクしました。

主人公は、仕事を失ったばかりの女性の優彩(ゆあ)です。
ある日、彼女のもとに見知らぬ旅行会社から
「アート旅」のモニター参加の招待状が届きます。
だまされているのかもしれないと思いながらも
待ち合わせ場所の空港に行ってみれば、
ツアーガイドの桐子が待っていて、無事、旅が始まります。

二人が向かったのは、瀬戸内海の直島です。

空港を出て、リムジンバスに乗って、窓の外の景色を見ているうちに、
私は本を読んでいることを忘れて、
二人と一緒に旅をしている気分になっていました。
直島、とてもいいところでした。(笑)
まあ、実際のところ訪れたことは無いんですけどね。

また、直島以外のアート旅も良かったです。

物語は、4つのお話が収録された連作短編集で、
桐子が勤める旅行会社のアート旅に参加した4組の旅行客たちが登場します。

旅行客たちは、それぞれに悩み抱えています。
結婚する相手を間違えたかな…とか、
何をやってもうまくいかないなあとか。

でも、彼らはアート旅を通して、気持ちに変化が生じます。
それもいい変化が。

旅の楽しみ方について、ガイドの桐子がこんなことを言っています。

想像もしなかった興味深いことに出会える。
そういうユリイカな瞬間を味わっていただきたい。

ちなみに、「ユリイカ」とは、
ギリシャ語で「わかった」と言う意味の、
ひらめいた瞬間を指す言葉だそうです。

桐子のアート旅に参加した旅行客たちも、
その「ユリイカ」な瞬間に出会います。

旅は旅でも、今回は「アート旅」です。

私もアート好きなので、
旅行客たちが、様々なアートをきっかけに
「わかった!そういうことか!」と、
大切なことに気付くのが嬉しく、私も幸せな気持ちになりました。

私にとって、お気に入りの一冊になりました。
いつか、この本を手に同じルートでアート旅をしてみたいな。
文庫なので旅のお供にもぴったりです。

なお、アート旅に興味はあるものの
アートはそんなに詳しくないという方でもご安心ください。

実際この本に出てくる旅行客たちも初心者ですし、
桐子さんという頼れるガイドさんもいますので、安心して楽しめます。

ぜひあなたもアート旅をしている気分で、この本を読んでみてください。

本を読んだ後は、いい旅から帰ってきたあとのような
満たされた気持ちになっていると思いますよ。

この本、シリーズ化してくれいないかなあ。
桐子のアート旅にもっと参加したい!

yukikotajima 12:09 pm

『水車小屋のネネ』

2024年3月6日

先週よりちょっと優しい田島です。(笑)
なぜって、いろいろな人の優しさに触れたからです。
と言っても、本の世界でですが。

今日ご紹介する本は、こちら。

『水車小屋のネネ』
津村記久子
毎日新聞出版

毎月第一週は、明文堂書店とのコラボ回!
高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本の紹介です。

この本は、第59回谷崎潤一郎賞を受賞したほか、
4月10日に発表される本屋大賞にノミネートされています。

ノミネート作を全部読んだわけではないけれど、
私の中では本屋大賞決定です。(笑)
だって、本当に良かったのですもの!

500ページ近くもある長編で、
大きな事件が起こるわけでも
驚くべき事実が明らかになるわけでもないのに、
全く飽きることはなく、
それどころか残りのページが少なくなった時には、
もっとこの世界にいたいと思ってしまった程です。

『水車小屋のネネ』は、二人の姉妹を中心に、
姉妹が出会った人々の40年が描かれた長編小説です。

物語は、1981年から2021年まで10年刻みで進んでいきます。

第一話の1981年では、姉の理佐は18歳、妹の律は8歳です。
姉妹は、身勝手な親から離れて二人で生きることに決め、
姉はおそば屋さんの仕事を見つけます。
それも「鳥の世話じゃっかん」とある求人を。

そのおそば屋さんは、山間の町で夫婦が営んでいるのですが、
そば粉は水車小屋の石臼で挽いています。
そして、その小屋には、そば作りに欠かせない鳥が住んでいます。

まさしくの本のタイトルの水車小屋のネネです。

ネネは、ヨウムという鳥です。
オウムではありません。
ヨウムは、人間の三歳児くらいの知能があり、
とてもかしこく、ものまねが得意で、おしゃべりをします。

私は富山市ファミリーパークで見たことがあります。
灰色で尾の部分が赤い鳥、あなたも見たことはありませんか?

実はこのヨウムのネネが「しゃべり」で、そばづくりを手伝っていたのでした。

そして、求人の条件が、おそば屋さんの仕事のほかに、
ネネの世話もしてほしいというものでした。

ネネは、おしゃべりも歌も大好きで、
ラジオから好きな曲がかかると一緒に歌うような陽気な鳥で、
姉妹ともすぐに仲良くなります。

高校を卒業したての18歳の姉と8歳の妹の二人暮らしですから
町の人たちはもちろん心配するわけですが、
おそば屋さんのご夫婦をはじめ、様々な方たち(ネネも含む)が
程よい距離感で見守りながら支えていきます。

そして、成長した姉妹も誰かを支え、
その誰かもまた誰かを支えてと、
それぞれ助け合っていきます。

だからと言って、押しつけがましさはありません。
著者の津村さんは、登場人物たちに無理をさせないようにしたそうです。

その程よい距離感がとても心地良かったです。

物語は、姉の理佐の視点ではじまり、
第二話は、妹の律と、町に移り住んできた青年の視点で、
その後は、律の視点で進んでいきます。

姉妹が成長するにつれて、
関わる人たちも少しずつ入れ替わっていくのですが、
ずっと変わらずそばにいるのが、ヨウムのネネです。
なんとヨウムは五十年くらい生きると言われているそうです。

このネネがいいキャラで、
私もヨウムを飼いたいと思ってしまったくらいです。
今、田島の推しは?と聞かれたら
「ネネ」と答えるくらいにはまっています。

物語は10年刻みで進んでいくわけですが、
水車小屋ではいつもラジオが流れていて、
時代ごとの曲もたくさん出てきます。

ネネはラジオが大好きです。
ラジオの仕事をしている私からしたら嬉しすぎます。
私のリスナーにもヨウムはいたりするのかなあ。

ラジオも物語のいいアクセントになっていますので、
普段ラジオを聴いている皆さんには、ぜひ読んでいただきたいわ。

ではここで、この本を大プッシュされている
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介しましょう。

理佐と律、ふたりの姉妹と、おしゃべりするヨウムのネネ。
それぞれが生きた時代と、自分の人生を重ね合わせて、
その時々で、たくさんの優しい人たちに
支えられてきたことを思い出しました。
全国の書店員が選んだ、本屋大賞ノミネート作、10作品の一冊です。
ぜひ、お読みください!

そうなんですよ。
私も思い出しました。
これまでの人生、多くの人たちに支えられてきたことを。
だから、読んだ後に満たされた気持ちになったのかもな。

ある登場人物がこんなことを言っています。

「自分はおそらく、これまでに出会った
あらゆる人々の良心でできあがっている」

この本を読むと、きっと同じことを感じると思います。
そして、この本もその良心のひとつになるはず。

今日ご紹介した『水車小屋のネネ』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 12:48 pm

『シャーロック・ホームズの凱旋』

2024年2月21日

今日は、名探偵シャーロック・ホームズが登場する小説をご紹介します。
と言っても、アーサー・コナン・ドイルの小説ではありません。
今日ご紹介するのはこちら。

『シャーロック・ホームズの凱旋』
森見登美彦
中央公論新社

森見さんの作品は、ラジオでもこれまで何冊も紹介しています。
(このブログ内で森見さんの名前で検索していただくと、
これまで私が紹介した本が出てきます)
どの作品もテーマは違えど、全く予想もつかない不思議な世界、
それこそ森見ワールドを冒険している感覚で楽しめるところが好きです。
本のページを開く瞬間は、森見ワールドへの扉を開く気分で、毎回ワクワクします。
しかも、いい意味でのくだらなさが楽しいんです。(ほめてます!)

今回も他には無い森見ワールドを堪能できました。

さて、新作はシャーロック・ホームズの物語です。
でも彼がいるのは、おなじみのロンドンではなく、
架空の都市、ヴィクトリア朝京都です。

森見さんと言うと、『夜は短し歩けよ乙女』をはじめ、
京都が舞台の作品が多いのですが、今回も京都らしき場所が舞台です。
らしきと書きましたが、京都の地名や名所は普通に出てきます。
ホームズが住んでいるのは、ロンドンのベーカー街ではなく、
ヴィクトリア朝京都の寺町通ですし。
でも、紅茶を飲んでスコーンを食べているのですが。(笑)

物語は、助手兼記録係のワトソンの視点で綴られていきます。

ホームズは京都でどんな活躍を見せるのかしら?と思いきや、
なんとスランプに陥って部屋に立てこもっています。それももう一年も。

依頼が来ても、今は「自分自身」という難事件に取り組んでいるから無理!
と全く事件に取り組もうとしません。

ホームズは、ある事件に失敗したことで、スランプに陥ってしまったのでした。

しかもスランプなのはホームズだけではなく、
スランプに陥った男たちがなぜか彼のもとに集まってきて、
お互い傷をなめ合っています。

そんなある日、ホームズは、世間から離れて竹林の片隅で静かに暮らす!
と出て行ってしまいます。

ワトソンはホームズを迎えに行くものの、
「もう戻らない!」と言われてしまい…。

すでに、この設定だけでも楽しいのですが、
この先にお馴染みの森見ワールドが待っていますので、
続きは、本を読んで体感していただけたらと思います。

ホームズシリーズがお好きな方は、
ホームズやワトソン以外にも
ジェイムズ・モリアーティや、アイリーン・アドラーなど
おなじみのメンバーが出てきますので、
きっと、おっ!こんなキャラになっているのか、
と楽しんでいただけると思いますし、
全く知らない方でもわかるように森見さんは書かれたそうですので、
ホームズ知識が無くてももちろん楽しめます。

私も全然詳しくないですが、楽しめました!

でも、アーサー・コナン・ドイルのホームズシリーズも読んでみたくなりました。
読んだあとに、再びこのヴィクトリア朝京都に戻ったら、
一度目とは違う面白さが味わえそうだなと思いまして。

あと、久しぶりに京都に行きたくなりました。
京都の喫茶店でこの本を妄想力全開で楽しんでみたい。

yukikotajima 12:07 pm

『喫茶おじさん』

2024年2月14日

ちょっと一息つきたいと思ったとき、あなたはどこにヨリミチしますか?

お洒落なカフェに行く方もいれば、
昔ながらの喫茶店で過ごしたいという方もいるのでは。

今日は、「純喫茶巡り」が趣味のおじさんの物語をご紹介します。

『喫茶おじさん』
原田 ひ香
小学館

去年の秋に発売されましたので、もうお読みになった方もいるのでは。
ヨリミチトソラにも私が紹介する前に、感想が複数届いています。

原田さんと言うと、ドラマ化された『三千円の使いかた』が人気ですが、
私は『口福のレシピ』『まずはこれ食べて』など、食にまつわる小説も好きです。

↑本のタイトルをクリックしていただくと、私の本紹介が読めます。

新作は喫茶店巡りが趣味のおじさんのお話ですから、
きっと面白いに違いないと、読む前からニヤニヤしながら読み始めました。

主人公の純一郎は、大手ゼネコンを早期退職し、現在無職の57歳です。
妻は大学生の娘が暮らすアパートに行ってしまったため、別居中です。

最初は、コーヒーにやたら詳しいおじさんのお話かな?
と思って読み始めたのですが、そうではありませんでした。

純一郎は、仕事は頑張ってきたつもりなのですが、ぱっとしないまま退職し、
これといった趣味もありません。

ですが、たまたま入った喫茶店で、
「喫茶店、それも純喫茶巡り」を趣味にすることを突然決めます。
ゴルフやお酒などに比べたら出費もそう大きいものでもなさそうだしと。

そして、様々な喫茶店を巡っていきます。

どこにでもいそうな普通のおじさんが、うんちくを語るわけでもなく、
ただただ「おいしいなあ」と、コーヒーや喫茶店の食事を楽しんでいきます。

でも、物語はそれだけでは終わりません。
だって純一郎は、再就職先は決まっていないし、妻とも別居中なわけで、
色々と考えなければいけないことがあるのです。

そのうえ妻や友人などの近しい人たちからは、
毎回同じ言葉をかけられてしまいます。

「あなたは何もわかっていない」と。

また、純一郎は最近大きな失敗をしています。
退職金を使ってあることを始めたのですが、失敗に終わっているのです。

喫茶店でのほほんと楽しみながらも
純一郎は、自分の人生についても考えていくことになります。

純一郎はこの先どんな人生を送っていくことになるのか。
続きは本を読んでお確かめください。

ちなみに、きっと喫茶店に行きたくなると思いますので、
喫茶店でコーヒーでも飲みながら読むことをおすすめします。

今回もお腹が空いた一冊でした。

純一郎は、小難しいことは言わず、ただただ「おいしいなあ」と
喫茶店を楽しむ普通のおじさんなので、
自分自身を重ねながら読む「おじさん」も多いかもしれません。

正直なことを言うと、面倒なことから逃げがちな純一郎に
ちょっとイラっとした瞬間もあったのですが(笑)、
そんな時は、周りの女性たちからビシッと言われていて、
なんだかんだで憎めないおじさんでした。

今回も面白かったです。

家でひとりぼっちであれこれ考えているとマイナス思考になりそうですが、
居心地のいい場所で美味しいものを味わいながらだと、
穏やかな気持ちで自分と向き合えるものなのかも。

私も喫茶店巡りしてみたい。

yukikotajima 12:02 pm

『十角館の殺人』

2024年2月7日

小説の中には、どう考えても映像化は無理だなと思う作品があります。

例えば『十角館(じゅっかくかん)の殺人』

読んだことがある方は「いやいや絶対に不可能でしょ」と思ったのでは。
私も思いました。

でも、実写化され、3月22日からHuluで独占配信されるんですって。
どういうことよー!

さて、今日は2月最初の「ゆきれぽ」ということで、
明文堂書店 書籍担当 野口さんのオススメ本です。

『十角館の殺人 <新装改訂版>』
講談社文庫
綾辻行人(あやつじ・ゆきと)

野口さんも映像化に大興奮で、
このドラマを見るためにHuluに入る!とおっしゃっていました。

さて、『十角館の殺人』は、
日本を代表するミステリー作家、綾辻行人さんの
1987年のデビュー作であり、代表作です。
ここから『〇〇館の殺人』とタイトルのついた「館(やかた)シリーズ」が始まり、
これまでに9作品が刊行されています。

また、日本だけでなく世界でも読まれており、
全世界シリーズの累計は、670万部なんだとか。
大ベストセラーです!

去年秋には、アメリカのタイム誌が選ぶ
「史上最高のミステリー&スリラー本」
オールタイム・ベスト100に選出されました。

そして、今回の映像化と、
1987年の発売から37年経った今も注目され続けている、まさに名作です。

どんなお話かと言うと、
大学のミステリ研究会の7人が、ミス研の合宿で、
十角形の奇妙な館が建つ無人島を訪れるところから始まります。

この島では、この館を建てた建築家の「中村青司」が
半年前に謎の死を遂げており、幽霊の噂もあるため、
島に近づくものは誰もいませんでした。

同じころ本土では、元ミス研のメンバーだった
江南(かわみなみ)のもとに、
死んだはずの中村青司から一通の手紙が届きます。

いったいどいうことなのか、江南は調べることにします。

そんな中、島では学生の一人が殺されます。
自分たち以外誰もいない無人島での殺人に、
学生たちは誰も信じられなくなっていき…。

この続きは、ぜひ本を読んでお楽しみください。

ここで、明文堂書店 書店員の野口さんのコメントをご紹介しますね。

「ミステリーといえば、これ!です。
そして、再読しても面白い本もこれ!です。
孤島と、館の設定もワクワクしますが、
登場人物たちに翻弄されて、行きつ戻りつ。
紙の本の良さを実感できる本です。
もう映像実写化そのものが衝撃です!」

ちなみに、今回ご紹介した『十角館の殺人』は、
刊行から20年後の2007年に
「新装改訂版」としてリニューアルされたものです。
綾辻さんご自身で全面改訂をされたそうですよ。

ただ、当時の空気感はそのまま残したようです。
例えば、誰もがいつでもどこでも煙草を吸っていたり、
合宿で食事の準備をするのが女性だったりするのですが、
いかにも80年代っぽいなあと思ってしまいました。

そんな時代の空気感を感じつつも、
物語から放たれる勢いは鮮やかで、まったく色あせていません。
ですから今読んでも楽しめると思います。

そして、最後まで読めばきっと「映像化は不可能!」と思うはず。(笑)
いや、ほんとどうやって映像化するんだろう。

今日ご紹介した『十角館の殺人』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。
また「館シリーズ」もあわせてどうぞ。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 11:49 am

『人間標本』

2024年1月31日

去年の夏、作家の湊かなえさんにインタビューをさせていただき、
ヨリミチトソラで2週にわたって放送しました。

◎湊さん出演時のブログは コチラ

その際、執筆中の新作について、
「デビュー作『告白』よりもイヤミスな作品です」
とおっしゃっていました。
その語り口から、かなり気合いが入っているのが感じられ、
発売を心待ちにしていたのですが、
先月、ついに発売されました!

『人間標本』
湊かなえ

株式会社KADOKAWA

タイトルからしてインパクトありまくりです。
いったいどんな内容なのかしら、
とドキドキしながら本のページをめくってみたのですが、
想像を超える世界が待っていました。

いやあ、すごかった。。。
怖いけど美しく、そして、これぞイヤミス!といった作品でした。

ちなみに、イヤミスとは、読んだ後に嫌な気持ちになるミステリのことで、
湊さんは、イヤミスの女王と言われています。

この作品は、ページをめくった瞬間から
作品の世界を味わって頂きたいので、
内容に関しては何も知らずに読んで頂きたいのですが、
これではまるでどんな内容かわからないので、
ほんの少しだけご紹介しますね。

本のカバーは、青い蝶です。
物語は、蝶の学者である男性の手記から始まります。
彼は子どもの頃に家族で移り住んだ山奥で
様々な蝶を見つけ心奪われます。
そして、画家である父からの提案で、蝶の標本を作ります。

大人になってからも蝶を愛する気持ちは変わらず、
ついには蝶の学者になるのですが、
ある日、美しい少年たちに出会ったとき、彼はこう思います。
「あの美しい少年たちは蝶なのだ」
「人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな」と。
さらには、自分の息子の姿も蝶として見えてしまい…。

この先は、もう言えないっ。
この後どんな展開が待っているのかは、
ぜひ本をお手に取って、ご自身でお確かめください。

感想すらネタバレになってしまいそうなので
あまり具体的なことは言えないのですが、
ページをめくるのが怖くもあり、一方で楽しみでもある作品でした。

本を読んでいる時に突然やってくる
「えっ?」と思う瞬間が私は好きなのですが、
この『人間標本』でもばっちり味わえました。

ぜひ皆さんもイヤミスの女王の新作をご堪能ください。

特に湊さんのデビュー作『告白』がお好きな方はぜひ。
と言うのも、今作は作家生活15周年記念の作品とのことで、
原点回帰ということと、多くのファンの皆さんからの要望もあって
「イヤミス」をお書きになったそうなのです。
また、同じくリクエストの多かった「父と息子の話」にしたそうです。

夏の富山でのサイン会でファンひとりひとりと、
じっくりやり取りをされている様子を見た時にも感じましたが、
あらためて湊さんは、ファンを大事にされる方だなと思いました。

それから、この本にはたくさんの蝶が出てくるので、
本を読んでいると、どんな蝶なのか知りたくなるのですが、
『人間標本』の特設サイトには、蝶の写真が載っていますので、
作品を読む際、参考にしてみてください。

◎特設サイトは コチラ

この先、蝶を見る度、私はこの作品のことを思い出しそうだわ。

yukikotajima 2:14 pm

『夜明けのはざま』

2024年1月24日

先週の水曜日、芥川賞・直木賞の受賞作が発表されましたが、
来週の木曜日2月1日には、本屋大賞のノミネート作品が発表されます。

本屋大賞は、大賞だけでなくノミネート作品にも面白い作品が多いので、
今年はどんな作品がノミネートされるのか、私も今からとても楽しみです。

今日ご紹介するのは、本屋大賞受賞作家、町田そのこさんの最新刊です。

『夜明けのはざま』
町田そのこ
株式会社ポプラ社

町田さんは、2021年に『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞したほか、
去年は『宙ごはん』、一昨年は『星を掬う』がノミネートされるなど、
本屋大賞ではすっかりおなじみです。

ちなみに、大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』は映画化され、
3月1日に公開されます。

新刊の『夜明けのはざま』は、家族葬専門の葬儀社が舞台の連作短編集です。

この葬儀社は、古民家をリノベーションした一日一組限定の斎場で、
「故人との最後の時間を、温かな空間で、大事なひとたちと静かに過ごしてほしい」
というコンセプトのもと運営されています。

葬儀社が舞台というと、辛く悲しい話は読みたくない、と思う方もいるかもしれません。
でも、私はこの本を読んで、心が軽くなって、そのうえ前向きな気持ちになりました。

というのも、登場人物たちは身近な人の死を通して
「自分らしく生きること」と向き合っていくからです。

例えば、舞台となる葬儀社で働く女性スタッフは、仕事か結婚かで悩んでいます。
彼氏からプロポーズをされるものの、今の仕事を辞めてほしいと言われてしまいます。
でも、仕事にやりがいを感じている彼女は辞めたくはありません。
果たして彼女は悩んだ末にどのような選択をするのか。
その答えは、本を読んでお確かめください。

この葬儀社のある場所は、地方都市の寂れた町です。
多様性なんて考え方はまだ浸透しておらず、昔ながらの考えのままの人も多くいます。

例えば「女なら男に従うのも仕方ない」というような。

この物語にも、そう思っている女性がいます。
「何もおかしくないでしょ?」と本気で思っています。
でも、身近な人の死や様々な人と関わる中で、
「いや、おかしいかも」と気付き始めます。

このブログを読みながら「いやいや、何がおかしいのかわからない」
と思っている方は、ぜひこの短編集を読んでください。
今は色々な考え方や生き方がある、ということに気付けると思います。

登場人物たちは、自分らしく生きるとはどういうことかを、それぞれ考えます。
でも、葛藤もあるし、簡単なことではありません。
それでも前を向く彼らの強さがまぶしく、私も頑張ろう!という気持ちになりました。

正直なことを言うと、最初は、身近な人が亡くなって悲しいだけの話だったら嫌だな…
とちょっとだけ思ってしまったのですが、さすが、町田そのこさんです!
そんな心配は一切必要ありませんでした。
今回も読んで良かったです。とてもいいお話でした。
また、何度も泣きました。
といっても、人が亡くなって悲しいからではなく、
人の本心や優しさに触れる度、私は泣いていました。

そして、私も色々な人のことを分かった気になっているだけで、
全然わかっていないのかもしれないと思いました。

あなたはでどうでしょう?
相手のことを「この人はこういう人だから」と勝手に決めつけていませんか。
それ、実は違うかもしれませんよ。

物語の登場人物たちは、自分自身はもちろん、自分以外の人とも向き合っていきます。
そこからの気付きや学びもたくさんありました。

例えば、「自分の中の『それくらい』を相手に押し付けちゃだめ」
というセリフには、ハッとさせられました。
自分にとっては些細なことでも、相手にとっては大切なことかもしれないのですよね。

町田さんの作品は、読む度に心に残るセリフが出てくるのですが、
今回もたくさんの印象的なセリフがありました。

自分の気持ちが迷子になってしまったときは、
またこの本を開きたいと思いました。

ぜひ多くの方に読んで頂きたい一冊です。

yukikotajima 11:54 am

『祖母姫、ロンドンへ行く!』

2024年1月17日

あなたには、一度でいいからしてみたい旅はありますか。

例えば、飛行機はファーストクラスで、宿泊は五つ星ホテル。
そして、旅先の移動はずっとタクシーなんて、いかがでしょう?

今日ご紹介する本は、そんな豪華旅を実際に楽しんだ
お祖母ちゃんと、その孫娘のエッセイです。

『祖母姫、ロンドンへ行く!』
椹野道流(ふしの・みちる)
小学館

タイトルの「祖母姫(そぼひめ)」というのが、
そのお祖母ちゃんのことです。

そもそもなんで孫と祖母の二人旅なのか。
発端は、お正月に親戚が集まった時に
著者である孫娘がイギリスに留学した話をしたことでした。
祖母が「一度でいいからイギリスに行きたい」と言い出したのです。
それも「お姫様のような旅がしてみたい」と。

そこで、急きょ「ロンドンお姫様旅行計画」を立て、
旅の資金は親戚たちが出し、孫が祖母を連れて行くことに決まります。

祖母の希望は、
「飛行機はファーストクラスで、五つ星ホテルに泊まり、
一流のデパートで買い物をして、最高のディナーを楽しみ、
お友達に自慢できるような素敵なものをたくさん見たい」というもの。

果たして孫娘は、祖母をお姫様のようにもてなすことができるのか。
続きはぜひ本を読んでお確かめください。

***

本を読みながら、二人と一緒にロンドンを旅している気分でした。

ただ、お姫様であるお祖母ちゃん側ではなく、
もてなす側の孫娘の気持ちで読んだため、
常に気を遣い続けることになりましたが。(笑)

というのも、このお祖母ちゃん、なかなかにワガママなんですよ。
そのため孫娘は旅のあいだ振り回され続けます。

それでも、とても楽しい旅でしたし、
お祖母ちゃんの超ポジティブ思考には何度も笑わせられました。

例えば、デパートでコートを試着したときには、
店員さんたちが自分のことを
「日本から、何て綺麗で上品でオシャレな
お婆さんが来たんだろうって言ってたんじゃない?」
と真面目に孫娘に聞いてくるほどです。

お祖母ちゃんの自己評価の高さにはびっくり!

でも、いつも堂々としているお祖母ちゃんは、かっこ良くて素敵です。

孫娘も最初は「偉そうでわがままで厄介な婆さん」だと思っていますが、
徐々に認識が変わっていきます。

また、このお姫様旅は、孫にとっては
ファーストクラスのCAや五つ星ホテルのバトラーから
「ホスピタリティ」を学ぶ旅でもありました。

一流の方たちの「もてなし方」が素晴らしいのです。さりげなくてスマートで。
人に注意をする時でさえ、相手を嫌な気持ちにさせません。

私自身も大変勉強になりました。
一流に触れることは、自分の成長にも繋がるものなのですね。

あなたも孫と祖母の二人旅に便乗して、
一流のサービスを味わってみませんか。

ちなみに、このエッセイは最近のことではなく、
「ずいぶん昔の話」だそうです。
具体的な年代は描かれていませんが、
携帯が普及する前の時代の旅を振り返る形で綴られています。

その、ちょっと懐かしい空気感のせいか、
本を読みながら私自身が今は亡き祖母と旅をしている気分でした。
二人旅をしたことなんて無いのに、不思議なものです。
そういう意味でもいい時間を過ごせました。

yukikotajima 11:24 am

『ザリガニの鳴くところ』

2024年1月10日

田島悠紀子です。
まずは、あらためて地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

FMとやまをはじめとするJFN加盟 38のFM局では、
「JFN募金」の受け付けがスタートしました。

支援の方法は色々ありますが、
良かったら、この募金にも協力いただけたらと思います。
決して多くはありませんが、私も募金しました。

◎詳しくは コチラ

***

さて、今年もヨリミチトソラの毎週水曜の18時32分ごろからは、
このブログとの連動で、本の紹介(時々アートも)をしていきますので、
よろしくお願いします。

今日は、1月最初のゆきれぽということで、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。

『ザリガニの鳴くところ』
ディーリア・オーエンズ
訳:友廣純(ともひろ・じゅん)
ハヤカワ文庫

数年前に世界中で話題になった本ですので、
すでにお読みの方もいるかもしれません。

世界での売り上げは、なんと2200万部を突破したそうです。すごい!
日本でも、2021年の本屋大賞で翻訳小説部門の1位になるなど、話題になりました。
また、2022年11月には映画化もされました。

そんな話題作の文庫版が先月刊行されました。

この本をずっと読みたいと思っていましたので、文庫化のタイミングで読めて、
さらに皆様に紹介できることなり、本当に良かったです。

だって、とても面白かったのですもの!

タイトルの「ザリガニの鳴くところ」とは、
生き物たちが自然のままの姿で生きている場所のことです。

物語の舞台は、まさに自然の中。ノース・カロライナ州の湿地です。
ここで、若い男性の死体が発見されるところから物語が始まります。
その犯人として、湿地に住む一人の少女カイアに疑惑の目が向けられます。

カイアは、6歳で家族に見捨てられてから、
たったひとりで湿地の小さな家で暮らしています。
学校にも行かず、ほとんど人前に姿を見せない彼女を
村の人たちは「湿地の少女」と呼んで、好き勝手に噂しています。
だから犯人に疑われてしまったわけですが。

物語は事件とカイアのパートが交互に描かれ、
徐々に事件の真相へと近づいていきます。
物語後半の裁判のやり取りはドキドキが止まりませんでした。

果たしてカイアは犯人なのか。
詳しくは本を読んでお確かめください。

ここで、明文堂書店 富山新庄経堂店 野口さんのコメントをご紹介します。

「孤独な少女カイアが、困難から自分の力で立ち上がっていく姿が美しく、
湿地の風景とリンクします。
ミステリ、社会問題など、一言では語れない小説でもあり、
心をとらえて離さない魅力的な作品です。
次第に明かされる謎と真相にゾワッとしました」

田島もゾワッとしました。
また、野口さんのおっしゃる通り、この本には様々な魅力が詰まっています。
それも最後の最後まで。
世界中で多くの人に読まれている理由がわかりました。

また、私は本を読む前に配信で映画も見たのですが、映画も素晴らしかったです。
ぜひ映画と小説、セットでお楽しみください。

今日ご紹介した『ザリガニの鳴くところ』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 11:25 am

田島が選ぶ2023年の本は…

2023年12月27日

ヨリミチトソラの毎週水曜18時32分頃からは、
このブログとの連動コーナー「ゆきれぽ」をお届けしています。
本の紹介を中心に、時々アートも取り上げています。

今日は2023年最後の放送ですので、
毎年恒例の田島が選ぶ今年の本を発表します。

また、今年2月からは、
富山県内の明文堂書店全店
ヨリミチトソラ「ゆきれぽ」コーナーができるなど、
本屋さんとのコラボがスタートしました。

毎月第1週は、富山新庄経堂店 文芸書担当
野口さんのおすすめ本を紹介してきました。

そこで、今年は野口さんにも今年の本を選んで頂きました。
まずは、野口さんの選んだ本の発表です。
野口さんのコメントとあわせてご紹介します。

『汝、星のごとく』
凪良(なぎら)ゆう
講談社

『汝、星のごとく』は、昨年からのベスト本です!
そして、「ヨリミチトソラ」の番組内での
田島さんとの初めての紹介本でもあり、
とても思い入れの強い小説です。
その後、本屋大賞を受賞し、多くの方にお届けできました。
恋愛小説にとどまらない力強い作品を、是非お読みください!


『ゴリラ裁判の日』
須藤古都離(すどう・ことり)
講談社

いい意味で、期待を裏切られた作品でした。
ゴリラローズの人生が、何とも愛おしく、何ともドラマティック!
まるで、一本の映画を見ているかのようなロマン溢れる小説でした。
クライマックスのシーンは、感動の一言です!

***

野口さんには2冊選んで頂きました。
どちらも野口さんが興奮気味に私に大プッシュしていたのを
今でもはっきりと覚えています。(笑)

『汝、星のごとく』は、先週の放送で
続編の『星を編む』をご紹介しました。
続編もとても良いので、ぜひセットでお読みくださいね。

◎田島の本紹介は コチラ

***

それでは、田島が選ぶ今年の本です。今回は3冊発表します。
順位は決めません。どれもオススメということで♪

※本のタイトルをクリックすると、私のブログが読めます。


『ゴリラ裁判の日』
須藤古都離
講談社

野口さんとかぶりました〜!(笑)
こちらは、人間に匹敵する知能を持ち、
言葉を理解し、会話もできるローズという名のゴリラのお話です。

文字だけの小説では、ローズの語りはまるで人間の女性のようなのですが、
人間なら問題ないことでも、ゴリラだとそうはいきません。
ゴリラから見た人間の世界は理不尽なことばかりです。
もし自分がゴリラだったらと、
ぜひローズの視点になって読んでみてください。
今の時代にこそ読んで頂きたい一冊です。
後半の意外な展開にもビックリ!


『月の立つ林で』
青山美智子(あおやま・みちこ)
ポプラ社

自分の弱い部分や負の感情に対して、
優しく寄り添い、そして心を楽にしてくれるような一冊です。
人の優しさに触れたくなったら、ぜひこの本を読んでみて。
きっと心が軽くなると思います。
私は今回再読して、またもや泣きました。
ほんと、いい本なんです。

とあるポッドキャストを聞くリスナーたちの連作短編集なので、
ラジオが好きな皆さんにはきっと読みやすいはず。


『リラの花咲くけものみち』
藤岡陽⼦(ふじおか・ようこ)
光文社

北海道の大学で獣医師を目指す女性の物語です。
彼女は大学生活を通して、様々な人や生き物と真摯に向き合い、
その都度、たくさんのことを学びながら成長していきます。

大人はもちろん、高校生や大学生にも読んで頂きたい一冊です。
それこそ、親子でどうぞ。
新年最初の一冊にもいいと思います。

ただし、この本も泣けて泣けて仕方ありませんでしたので、
電車やカフェなどで読む際にはご注意ください。

***

野口さんセレクトの本も含め、どれも大変いい本です。
まだお読みで無い方はぜひ。

なお、ラジオでご紹介した本は、
県内の明文堂書店ヨリミチトソラ「ゆきれぽ」コーナーにあります。

また、富山新庄経堂店には、ヨリミチトソラの本棚もあり、
これまでラジオで紹介してきた本がずらりと並んでおりますので、
ぜひチェックしてみてくださいね。

2023年も「ゆきれぽ」にお付き合い頂き、ありがとうございました。
来年はどんな本との出会いがあるかしら。楽しみ!

田島悠紀子

yukikotajima 12:13 pm

『星を編む』

2023年12月20日

ヨリミチトソラの毎週水曜18時32分頃からは、
このブログとの連動コーナー「ゆきれぽ」をお届けしています。

本の紹介を中心に、時々アートも取り上げています。

また、今年2月からは明文堂書店とのコラボがスタートしました。
富山県内の明文堂書店全店ヨリミチトソラ「ゆきれぽ」コーナーができ、
毎月第1週は、明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さん
おすすめ本を紹介しています。

記念すべきコラボ1冊目は、今年の本屋大賞受賞作である
凪良ゆうさん『汝、星のごとく』(講談社)でした。

この本は去年発売されたのですが、
本屋大賞以外にも様々な賞を受賞するなど、かなり話題になりました。

◎『汝、星のごとく』の私の本紹介は コチラ

『汝、星のごとく』は、瀬戸内の島で出会った高校生男女の物語です。
共に満たされぬ思いを抱えながら生きてきた二人は強く惹かれ合います。
しかし、大人になるにつれて、すれ違うことも増えていき…。
この後どうなるかは、ぜひ本を読んで頂きたいのですが、
物語は、男女それぞれの視点で交互に描かれています。
ですから平等に彼らの本音に触れられます。

とにかく勢いのある作品で、私は駆け抜けるように読み、
読んだ後もしばらく心に居座り続けた作品でした。

そんな『汝、星のごとく』の続編が、先月発売されました。

『星を編む』(講談社)

本音を言うと、続編が出ると知った時、
すでに完結しているのにどういうこと?と思ったのですが、
続編を読んで納得しました。『星を編む』までで、一つの物語だと。
続編も素晴らしかったです!

***

続編の『星を編む』には、3つのお話が収録されています。

まずは、主人公の二人の高校生を支える教師の物語です。
この先生は、前作ではアシスト賞をあげたいくらいの活躍を見せています。
でも、彼がどんな人なのかは具体的には描かれていませんでした。

彼は一人で娘を育てているのですが、
なぜそうなったのか、はっきりとは明かされておらず、
私たち読者は、多分こうなんだろうなと予想するしかありませんでした。
しかし、今回、そんな彼の秘められた過去が明らかになります。
その事実を知ったとき、この続編を読んで良かったと思いました。

次は、二人の編集者たちの物語です。
前作で主人公の男性は、漫画の原作者・作家になるのですが、
2番目のお話は、彼を担当した二人の編集者の仕事ぶりが描かれます。
私はこのお仕事小説が一番好きです。
一冊の本を出すために力を注ぐ編集者たちの思いに胸が熱くなりました。
色々なものと闘っている彼らを見て、私も負けずに頑張ろうと思えました。

そして、最後は、前作の後日談です。
前作の終わりから先の出来事が綴られています。それも何年にもわたって。
登場人物たちがどんな人生を送っていったのかが丁寧に描かれています。

という3つのお話が収録されているのですが、
様々な愛の物語は、どれも大変面白かったです。

正直なことを言うと、続編の『星を編む』は、
前作のオマケという感じかな?と思いながら読み始めたのですが、
全然オマケなんかではありませんでした。

続編を読んで、印象ががらりと変わった登場人物もいましたし。

この作品には、噂の対象になりがちな人ばかり出てきます。
未婚で子どもを育てる男性や、不倫をする人など。

実際、彼らの噂話を聞いたら、
できることならあまり関わりを持たないほうが良さそうだなと思い、
よく知らないくせに、思い込みで悪口を言ってしまう人も少なくないかもしれません。
真実など知ろうともせずに。

私たちはなんて上っ面な世界で生きているんだろう、と思いました。

そんな噂の対象になりがちな彼らは、
何を選び、誰を選び、どこで、誰と、どのように生きていくのか。
この本では、それぞれの人生が丁寧に描かれていきます。
どの人の人生も興味深く、私自身かなり刺激を受けました。
そして、あらためて、すごい作品だなと思えました。
いやあ良かった!

ということで、『汝、星のごとく』を読んだ方は、
『星を編む』もぜひ読んでくださいね。

そして、まだの方は、2冊続けて読んでみてください。
これからこの世界をゼロから知ることができる方が羨ましい!

最近は、感覚のアップデートが大事とよく言われますが、
どうしていいかわからない方は、これら2冊を読んでみてください。
読み終えた時には、世界の見え方が変わっているのを感じられるはずです。

さて、来週のヨリミチトソラ内のゆきれぽでは、
この一年読んだ中で特に良かった本を発表します。
私だけでなく、明文堂書店の野口さんにも発表していただきます。
どうぞお楽しみに!

yukikotajima 12:09 pm