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『ルームメイトと謎解きを』

2022年5月19日

今日の14:25頃からのgrace内コーナーシン・トヤマでは、
富山出身の今注目の若手作家、楠谷 佑(くすたに・たすく)さんをご紹介します。

楠谷さんにお電話をつないで、作品や執筆活動、出身地の富山について伺う予定です。

1998年に富山県で生まれた楠谷さんは、現在は埼玉県にお住まいです。
高校在学中に『無気力探偵〜面倒な事件、お断り〜』でデビュー。
軽妙な筆致、ユニークなキャラ造形、確かな構成力で、
書下ろし文庫で着々とファンを増やしていらっしゃいます。

そんな楠谷さんの新作『ルームメイトと謎解きを』
先月13日にポプラ社から発売されました。
楠谷さんにとって初の長編ミステリだそうです。

『ルームメイトと謎解きを』は、
全寮制の男子高で起きた不可解な殺人事件に
寮のルームメイトの二人が挑むという青春ミステリーです。

この二人というのは、雛太(ひなた)絵愛(えちか)で、
雛太の視点で物語が進んで行きます。

雛太は、158センチの身長で見た目もかわいく幼く見えることから
7歳から空手をしています。

絵愛は、180センチ以上の身長に目を引く顔立ちで、勉強もできます。
しかし、動物にしか心を開かず、
ハリネズミに「へっくん」という名前をつけ可愛がっています。

雛太がワトソン、絵愛がホームズといった感じです。

そんな二人が通う高校で殺人事件が起きてしまいます。
現場の状況から犯行が可能なのは寮の住人だけであることがわかります。
果たして犯人は誰なのか。
雛太と絵愛の二人でその謎に挑むという物語です。

私も本を読みながら犯人の予想をしましたが、見事に外しました。(笑)

本格的なミステリですが、爽やかな青春小説でもあって、
読んでいて楽しかったです。

最初はぎこちなかった雛太と絵愛の二人の距離が縮まっていく様がいいのです。
この二人のコンビが活躍する様子をもっともっと見てみたくなりました。
シリーズ化しないかな。

また、他の登場人物たちも個性派ぞろいなので、いずれドラマ化されそうな予感!

ぜひ皆さんも富山出身の若手作家、楠谷佑さんの初の長編ミステリ
『ルームメイトと謎解きを』を読んでみてください。

yukikotajima 11:44 am

『13歳からの地政学』

2022年5月18日

連日、ロシアのウクライナ侵攻関連のニュースが報じられています。
この軍事侵攻に関して、あなたははどれくらい理解できているでしょうか。

・そもそもの発端は。
・なぜロシアはウクライナを侵攻したのか。
・この状況はいつ終わるのか。
・どうしたら終わらせることができるのか。

子どもに聞かれたものの、うまく答えられなかったという親御さんもいるのでは。

この軍事侵攻は2つの国の問題だけでなく、
様々なモノの値段が上がるなど、
日本も含め世界的に様々な問題が起きています。

そんな中、今注目されている学問があります。

「地政学」です。

地政学とは、地形的条件がその国の政治や外交政策など
に及ぼす影響を研究する学問のことで、
最近は、どの書店でも「地政学」関連の本を目にするようになりました。

私は気になりつつも難しそうだなと思っていたのですが、
ある本をみつけて、これなら読めそうだと買ってみました。

『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海/田中孝幸(東洋経済新報社)』

著者の田中さんは国際政治記者で、新聞記者として20年以上のキャリアを積み、
世界40各国以上で政治経済から文化に至るまでを取材されたそうです。

この本は「13歳からの」のあるように
13歳が読んでもわかる内容になっています。

ですが、大人の皆さんにもオススメです。

『ハゲタカ』の著者、真山仁さんも

「大人にこそ読ませたい 未来を生き抜く必読書
戦争、平和、日本の行く末を知る羅針盤がここにある!」

と絶賛しています。

この本は、物語形式で進んでいきますので、
小説を読む感覚で「地政学」を学ぶことができます。

主な登場人物は3人。

・県内の進学校に通う高校一年生の大樹(だいき)
勉強は得意だけど、特にやりたいことはありません。

・妹の中学一年生の杏(あん)
勉強よりもおしゃれや流行のアイドルのほうが好きです。

・アンティークショップの年齢不詳の男「カイゾク」
左目に黒い革の眼帯を着けたその風貌から
近所の子どもたちから「カイゾク」と呼ばれています。

そのカイゾクの店のウィンドウにあった
アンティークの「地球儀」を兄妹で見ていたところ、
カイゾクに声をかけられ、こう提案されます。

「7日間ここに来て、わしの話を聞き、
最終日にわしの出す問題に答えられたら、
この地球儀をさしあげよう」

そこで、カイゾクによる7日間のレッスンが始まります。
初日は「海」に関するお話でした。

地球儀を見ると、青くて丸いことに気付きます。
青は海です。海は地球の7割を占めています。

世界中の貿易は9割以上が海を通っているそうです。
特に島国の日本は99%が船による貿易なんだとか。

また、世界の船の行き来を仕切っているのがアメリカで、
世界の貿易で使われる通貨の8割がドルなんですって。

つまりアメリカが世界で最も強いということです。

でも、日本も世界での存在感で言うと、大国の部類に入るそうですよ。
詳しくは、本を読んでみてね!

旬なところでは、NATOの説明もあります。

昨日、スウェーデンとフィンランドの北欧2ヵ国が
NATOへの加盟申請文書に署名し、
今日の午後にも申請書を提出する見通しですが、
皆さんはNATOのことは理解できていますか?

他にも

・経済成長って何?
・核ミサイルはどこにある?
・なぜ領土を求め続けるのか
・なぜ戦争を起こそうとするのか
・なぜ過去のことが蒸し返されるのか

と言った気になる話題が満載です。

この本では、こういった様々な世界の問題に対して、
カイゾクさんが、中学生と高校生の兄妹の疑問に答える形で
世界のしくみを説明しているので、とにかくわかりやすいのです。

カイゾクさんの話を興味深く聞いているうちに世界を知ることができます。
私はこの本を読んだ後に新聞を読んだところ、
いつもよりも文章が易しく感じられました。

この兄妹から気付かされることも多かったです。
妹の杏がカイゾクさんとの話の中で
「私の常識が世界の常識じゃない」と気付くのですが、
これ、世界どころか身近な人とのやり取りの中でも同じことが言えますよね。

自分の常識が他の人と同じかと言ったらそんなことは無いのですよね。

「ふつうは〇〇でしょ!」と口にしがちな方は、
ちょっと冷静に自分の思う「ふつう」について考えてみては。

もしかしたら知らぬ間に独りよがりになっていた…
なんてこともあるかもしれませんよ。

この本を読んで私は世界が近く感じられるようになりましたし、
もっともっと色々なことを知りたいと思いました。

アインシュタインは学びについてこんなことを言っています。

「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。
自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる」

そして、この本によると

「知識を増やすということは、だまされないように武装すること」

だそうです。

『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』は、
物語を読んでいるうちに世界のしくみを楽しく学べます。

一家に一冊いかがでしょう。

yukikotajima 12:13 pm

『生贄探し 暴走する脳』

2022年5月11日

GWが終わりましたね。皆さんはどんなGWをお過ごしでしたか。

私はGW中にたまった本の整理をしました。
中には買ったまま読んでいない本もありまして、
せっかくなので読んでみることにしました。

『生贄探し 暴走する脳/中野信子、ヤマザキマリ(講談社+α新書)』

脳科学者の中野さんと、漫画家・随筆家のヤマザキさんという
日頃から交流のあるご友人同士の対談がベースになっています。

約一年前に発売された本ですので、すでにお読みになった方もいるのでは。

私もだいぶ前に買ったのですが、かなりインパクトのあるタイトルゆえ
ラジオで紹介するタイミングをはかっていたところ、そのまま忘れました。(笑)
でも先日ふとこの本の帯を見た時に、紹介するなら今だ!と思ったのです。
というのも本の帯にこう書かれていたからです。

「あの人だけいい思いをするなんて許せない!」

今年は3年ぶりにGWらしいことをした方も多かったのでは。
その一方で、思い通りのGWにならなかった方もいることでしょう。
SNSにアップされる楽しそうな写真を見る度、
「うらやましいなあ」だけならまだしも、心に余裕がなくなると
「あの人だけいい思いをするなんて許せない!」
という負の感情が湧き上がってしまうことも、正直ありますよね。(苦笑)

まあ、そう思ったところで自分の心に留めている場合が多いと思いますが、
中には、気に入らない相手に対して攻撃してしまう人もいます。

コロナ禍では「自粛警察」が話題になりましたよね。

中野さんによると、自らを「正義」と思い込んでしまうと、
人間は、どんなに残虐なことでも心の痛みをあまり感じることなく
やれるようになってしまうそうです。
このとき脳は、自分のことを客観的に見る機能がオフになってしまうのだとか。
そして、脳の快感を覚える部位を刺激するドーパミンが出ているそうです。

つまり、自分は正しいと思って相手を攻撃している時は、
気持ちいいってことなんですよね。

中野さんは、コロナ禍はウイルス以上に
「正義中毒」のパンデミックが起きたとおっしゃいます。

また、私たち日本人は「世界でもいじわる行動が突出している」そうなのです。
それは有名なことわざからもわかります。

「出る杭は打たれる」

海外に似たようなことわざは無いそうです。

たしかにこのコロナ禍を振り返ると、
ウイルスも怖ったけれど「他人の目」も怖かったですよね。

そういう私こそ正義中毒になっていないか?
と自分自身を振り返ると、いや、思い当たることあるな…と反省。

私は正しい。
良かれと思って…。
という考えこそ、
正義中毒の始まりかもしれませんよー。

自分こそ正義と思っている人ほど、
正義の快さにあっという間に人格を乗っ取られてしまうそうです。

では、本当の正義とは?
自分と分かち合えない意見や思想とぶつかったら?
豊かで多様性のある生き方のためには何が必要なの?

これらの答えを知りたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。

大変勉強になった一冊でした。
面白く読めただけでなく、反省もたくさんしました。
読んで良かった!というか、買ってすぐに読むべき本だったわ。

yukikotajima 10:03 am

『八月の母』

2022年5月4日

今度の日曜は母の日ですね。
お母さんへ日頃の感謝を込めてプレゼントを送ったり
一緒にご飯を食べたりする予定の方もいるでしょうか。
いい日になりますように。

その一方で、母の日と聞くと複雑な気持ちになる方もいるかもしれません。
お母さんだからと言って全員がいい人とは限らないですからね。

今日ご紹介する本にも母親たちが出てきますが、
子どもに惜しみなく愛情を注ぐようなお母さんたちではありません。

『八月の母/早見和真(株式会社KADOKAWA)』

早見さんと言うと、以前ラジオで『店長がバカすぎて』をご紹介しました。

◎田島の本紹介は コチラ

こちらはタイトル通り、バカな店長に振り回される女性店員の物語で
書店が舞台になっています。
タイトルはインパクトがありますが、とても面白い一冊でした。

今回の早見さんの新作『八月の母』は、
『店長がバカすぎて』とはタイプが異なります。
ですが、どちらの作品も読んだ後にそれぞれ光を感じました。

『八月の母』は、「母性」「親子愛」「家族愛」「人間の業」を描いた長編小説で、
物語の舞台は愛媛県伊予市です。
早見さんは、実際愛媛に引っ越して、この作品を執筆されたのだとか。

物語はプロローグ、第一部、第二部、エピローグにわかれています。

プロローグでは、ある女性が子どもを出産した日のことを思い出しています。
そして、自分はどのようにして、この世に生まれたのか、ふと考えます。

第一部は、1977年から始まります。
小学生の美智子は、学校では明るい女の子でしたが、
偉そうな父、そんな父に加勢する祖母、そして感情の無い母との暮らしは、
決してハッピーなものではありませんでした。

ある日、家を出て行くと言った母に美智子はついていくことにします。
そして、母との暮らしが始まるのですが、
ある時から美智子はお金を貯めて愛媛を離れ東京で生きていくことを目標にします。
つまり、ここを出たいと強く思うような生活を送っていたのでした。

次の物語は、美智子の娘エリカの物語です。
エリカがどんな女性に成長していったのかが
学校の先生や同級生の男子、恋人の視点で描かれます。

ちなみに、これまでの経験からエリカは、
「男性という生き物に期待していない」
「願いなんてどうせ叶わない」と期待することを放棄しています。

第二部は、2012年の愛媛県伊予市の団地が舞台です。
エリカの息子の恋人「紘子」の視点で、
団地の様子や母になったエリカについて描かれます。

紘子は「紘子もうちの子。ママと呼んで」と呼ぶエリカのことが大好きでした。
家に居場所が無かった紘子は、居心地のいい団地に入り浸るようになります。

エリカは、「私は子どもたちに自由に生きてもらいたい。
自分が親からもらえなかったものをあの子たちに与えてあげたい」
と自分の子どもだけでなく他の子どもたちも受け入れます。

そして、団地は紘子の他にも様々な若者たちが出入りする場所になっていき…。

ここから先はぜひ本を読んで頂きたいのですが、
正直なことを言うと、私は読むのが苦しかったです。
でも、そんな気持ちに反して最後までやめることはできませんでした。
この物語がどこに着地するのか気になってしまいまして。
皆さんも途中でやめたりせず、ぜひ最後のエピローグまでしっかり読んでくださいね。

最初にも言いましたが、読後に私は光を感じました。
それがどんな光なのかは、ぜひ本のページをめくりながら感じてください。

もうどうしようもない。諦めるしかない。と思っていることがある方は、
こんな選択もあるのかと、ハッとさせられるのではないかしら。

もうすぐ母の日です。
母親と言ってもひとりの人間です。
ある登場人物がこう言います。

「母親ということに過度な期待をしたらいかん」

お母さんも一人の人間なんですよね。
母って、母性って、家族って何なのでしょうね。
母の日を前にこの本を読んで考えてみませんか。

圧倒的な熱量を感じた一冊でした。

yukikotajima 12:28 pm

『ピンピン、ひらり。』

2022年4月27日

先日、医師の鎌田實(かまた・みのる)先生の講演会の司会をつとめました。

現在、長野県の諏訪中央病院名誉会長のほか、
日本チェルノブイリ連帯基金理事長、地域包括ケア研究所所長など
様々な立場でご活躍です。

鎌田先生は、御年73歳の現役のお医者様なのですが、
私の第一印象はもっとお若く見えました。

なんといっても背筋がピンと伸びていて姿勢が良く、足取りも軽かったからです。
やはり姿勢のいい方はお若く見えるものですね。
私もお腹に力を入れてすっと背筋を伸ばして、ステージへと向かいました。

ちなみに、鎌田さんは実年齢マイナス12歳サバを読むことをすすめています。
一回り下の年齢なら、知り合いは笑ってくれるし、
時々信じてくれる人がいれば、それはそれで嬉しいと。

サバを読むことで、見た目にも気を遣うようになり、
背筋を伸ばすことを意識するようになったそうです。
さらに、胸郭を広げる運動をしたり、
タンパク質もしっかり摂ったりしたことで見た目が変わり、
若々しくなったと褒められ、ますますアクティブに動き回るようになったのだとか。

そして今の目標は「PPH」だそうです。

PPHとは「ピンピン、ひらり」のことだそうです。
死ぬ間際までピンピン元気に生きて、ひらりと逝きたいそうです。

鎌田先生はご自身の入院治療体験がきっかけで
「老い」をしっかりと生きていく覚悟を決めたそうです。

今日ご紹介する本はこちら。

『ピンピン、ひらり。鎌田式しなやか老活術/鎌田實(小学館新書)』

鎌田先生がご自身の体験から得た老いの受け止め方や、
元気な時間を延ばす生活習慣、老いの価値の見つけ方のほか、
自由な発想で老いを楽しむ人たちの紹介など、
鎌田流の「新しい老いの生き方」を指南している本です。

たとえば、これは先日の講演会でもお話になっていたのですが、
「貯筋」つまり筋肉を貯えることが大事だそうです。
筋肉があれば、何歳になっても元気で過ごせるし、自分の足で出かけられると。

また、老化に関係する慢性炎症を防ぐ作用があったり、
気持ちをポジティブにするホルモンを出したりもするのだとか。
筋肉スゴイ!

私も最近は筋肉を増やすことに力を入れているので、
ますますトレーニングを頑張ろうと思いました。

この本には今の筋力の状態を知る5つのポイントが載っていますので、
ぜひ本を読んでチェックしてみてください。

なお、5つのポイントの中には「活舌が悪くなった」があり、
grace内コーナー『お口の中から健康に』の中でもご紹介した
「パタカラ体操」も取り上げられていました。

「パ・タ・カ・ラ・パ・タ・カ・ラ」
と早口で言うことで口腔機能が鍛えられるそうです。

また、コロナ禍を経て怒りっぽくなっている人が増えているそうなのですが、
イラっときたら「パ・タ・カ・ラ・パ・タ・カ・ラ」を6秒続けて言うと
心が落ち着いてくるのでオススメだそうです。
この「6秒」はアンガーマネジメントでおなじみですね。

口腔機能が鍛えられる上に怒りもおさまるなんて、魔法の言葉ですね!
ぜひイライラしたら「パタカラパタカラ・・・」を言ってみてください。

私は40代(鎌田式ですとアラサー)ですが、この本を読んで良かったです。
鎌田先生と同年代の方はもちろん、若い方もぜひ読んでみてください。
年を重ねていくことも悪くないかもと前向きな気持ちになれるのはもちろん、
すぐに実践できることがたくさん書かれていますので、勉強になります。
何より文章が楽しいので、気軽な気持ちで読めると思います。

yukikotajima 12:00 pm

『徳川15代将軍 解体新書』

2022年4月20日

大河ドラマが好きで毎年欠かさず見ている方もいると思います。
私も大人になってからは、ほぼ見ています。

今年は違いますが、大河には徳川家の将軍がよく出てきます。
来年の大河ドラマは、家康が主人公の『どうする家康』ですし。
家康を松本潤さんが演じます。

なんといっても家康が開いた江戸幕府は260年以上も続きましたからね。
そして将軍は15人にのぼりました。

この15人のうち、あなたは何人の名前を言えますか。
また、それぞれの将軍が何をしたのか答えられますか。

家康、秀忠、家光…
そのあとは、えーっと…綱吉、吉宗でしょ、
最後は慶喜だったよね?

なんて方はいませんか。(笑)

今日は、15人の徳川将軍について
わかりやすく紹介された本をご紹介します。

『徳川15代将軍 解体新書/河合敦(ポプラ新書)』

15人の将軍はそれぞれどのような人物で、何を成し遂げたのか。
15人のうち一番の名君は誰だったのか。
もし現代に生きていたなら、どのような仕事をしていたのか。
といった視点で、それぞれの将軍について説明されています。

たとえば「家康」は、江戸幕府を開いた歴代最強の初代将軍で、
身長は159センチ、現代の仕事予想は「政治家・社長・薬剤師」です。

薬剤師の理由は、家康は薬マニアで、医師が用意した薬ではなく
自分で調合した薬ばかり飲んでいたからだそうです。

また、『暴れん坊将軍』でおなじみの八代将軍「吉宗」は、
人望、カリスマ性、歴代NO.1!倹約家将軍で、
身長は155.5センチ、現代の仕事予想は「アイドル・政治家・社長」です。

吉宗がおこなった享保の改革は、傾いた幕府の財政を好転させました。
また、目安箱を設置し庶民の声を政治に反映させたほか、
「どうしても見てみたい!」と海外から馬や象を輸入するなど、
新しいものを好む傾向にあったようです。

では、徳川将軍の中で名君は家康か吉宗なのかと言うと、
著者の河合さんは、一番の名君は六代将軍の「家宣」だと言います。

「家宣(いえのぶ)」、ご存じですか。
家宣の前の五代将軍は犬公方「綱吉」です。
家宣は綱吉の生類憐みの令を撤廃したことでひとびとから人気があったようです。
そのほか河合さんが家宣を名君だと言う理由は、ぜひ本を読んで確かめてみてください。

この本、大変面白かったです!

それぞれの将軍の良いところダメなところを
具体的なエピソードを交えて紹介しているので人柄が伝わってくるのです。
知識を得るだけでなく、読み物としても楽しめました。

ちなみに、私は十四代将軍の「家茂」がいいなあと思いました。
21歳で亡くなってしまったため、政治手腕を発揮できなかったのですが、
陽気で思いやりのある優しい青年だったようです。

たとえば、老齢の重臣に字を習っているときに重臣が失禁してしまい、
それを隠すために重臣の頭に水をかけ手をたたいて大笑いし、
逆に近臣たちから「たちの悪い悪戯ですぞ」とたしなめられてしまったそうです。

優しさが伝わるエピソードですよね。
ちなみに、著者の河合さんによると
家茂は「大奥のアイドル」だったそうですよ。(笑)

ぜひあなたも徳川15代将軍について、楽しみながら学んでみませんか。

yukikotajima 11:25 am

『同志少女よ、敵を撃て』

2022年4月13日

先週、「2022年本屋大賞」が発表され、
大賞に逢坂冬馬(あいさか・とうま)さんの
『同志少女よ、敵を撃て(早川書房)』が選ばれました。
おめでとうございます〜!

本屋大賞は、全国の書店員がいちばん売りたい本を投票で選ぶ賞です。
大賞受賞作は映像化されることも多く、
2020年の大賞受賞作『流浪の月』は5月13日に映画が公開されます。

今年の大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』は逢坂さんのデビュー作で、
アガサ・クリスティー賞大賞を受けたほか、直木賞候補にもなりました。

◎本屋大賞の公式サイトは コチラ

先日いくつかの書店をまわってみたのですが、
どのお店もこの作品が一番目立つところに山積みになっていまして、
書店員の皆さんの熱い思いを感じました。

この作品は、第二次世界大戦中の旧ソビエトとドイツの戦いを舞台に、
故郷をドイツ軍に襲撃され母を殺された少女がソ連軍の狙撃兵になり、
女性だけのスナイパー部隊の一員として戦争を生き抜いていく物語です。
なお、女性狙撃手がいたのは事実だそうです。

物語をもう少し詳しくご紹介していきますね。

モスクワ郊外の小さな村に住む少女セラフィマの夢は、
モスクワの大学に進学して外交官になって
戦争が終わったらドイツとソ連の橋渡しをすることでした。
そのためにドイツ語も学ぶなど、真面目で心優しい少女でした。

ところが、ある日、村をドイツ軍が襲い、母も村の皆も殺されてしまいます。
助けに来てくれた思われた女性兵士は母の亡骸に火を放ち、
セラフィマにこう問います。「戦いたいか、死にたいか」と。

「母を殺したドイツ軍も、あんたも殺して、敵(かたき)を討つ」
と答えた彼女は、女性の狙撃兵訓練学校で訓練を受けることに。

厳しい訓練ののち、ついに狙撃手専門の特殊部隊として戦うことになるのですが、
初陣で初めて敵兵を殺し、戦友も失った彼女は泣き続けます。

しかし時間が経つにつれ、戦友を失った怒りは敵への憎悪へと変わっていくのでした。

若い兵士がこんなことを言います。
「凄いよね、復讐の力って。生きる希望を与えてくれる」

セラフィマたちは戦いを続けていくうちに強くなるだけでなく、
仲間で集まっても、銃の話と狙撃技術の話しかしなくなります。
みんな若い女性たちなのに。。。

でも、戦争で戦う兵士たちも戦争前は普通の人たちで夢もありました。

セラフィマが外交官になりたかったように、
他の兵士たちにも、女優、サッカーのドイツ代表のキャプテン、
子どもを育てていつか孫に会いたいなど、それぞれ夢がありました。

この普通の会話が、戦争の悲惨さをより際立たせていました。
というのもこの物語は、ほぼ戦争の描写だからです。
それもあまりにも生々しくて、何度も本を閉じたくなったほどです。

正直なことを言うと、この本が以前から話題になっていたことは知っていましたが、
「少女が復讐のために狙撃兵になる」物語を読みたいとは思えませんでした。

でも、本屋大賞の授賞式で著者の逢坂さんが暴力や戦争を否定していたことや、
小さな声に耳を傾けたいと思っていること、
そして、増刷で得た印税を難民支援に寄付していたことなどを知り、
買って読んでみることにしました。

この本には、ウクライナの話題も出てきます。
セラフィマと共に戦う女性兵士はウクライナ出身ですし、
エピローグには「ロシア、ウクライナの友情は永遠に続くのだろうか」とあり、
フィクションの物語が現実の世界と繋がっていることにも気付かされます。

そして最後まで読んでわかりました。
これは反戦の物語だと。

読む前から本のタイトルや表紙、帯を見ただけで読みたくない、
と思ったことを反省しました。

セラフィマたち女性の狙撃兵が上官から「何のために戦うか」聞かれるのですが、
それぞれ理由を述べる中、セラフィマは「女性を守るため」と答えます。
「復讐」ではなく。

戦時中、女性を守るとはどういう意味なのか。
ぜひ本のページをめくってお確かめください。

この本は戦争について書かれた本ですが、
女性同士の繋がりを描いたシスターフッドの物語でもあります。
ですから戦争小説はちょっと苦手…と言う女性もぜひ。
いや、男性にこそ読んで頂きたい。
つまり、みんなってことですね。(笑)

私のように本のタイトルや表紙の少女の絵だけで判断せず、ぜひ読んでみてください。
読んだ後は、表紙もタイトルも印象がだいぶ異なっているはずです!

yukikotajima 11:25 am

『日本語の大疑問』

2022年4月6日

今日の午後、「本屋大賞」が発表されます。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

私はノミネートされている10作品のうち5作品読んでいます。
私の予想は、一穂ミチさんの『スモールワールズ』ですが、
どの作品が選ばれるのでしょうか。楽しみ!

さて、新年度になったということで、
初心にかえって「日本語」に関する本を読んでみました。

『日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白い ことばの世界/国立国語研究所』

国立国語研究所(こくりつこくごけんきゅうじょ)は、
昭和23(1948)年に、日本人の言語生活を豊かにする目的で誕生した、
日本の「ことば」の総合研究機関で、ことばの専門家が集まり、
言語にまつわる基礎的研究や応用研究を行っているそうです。

この本は、国立国語研究所(略称 国語研)に寄せられた
日本語に関する疑問・質問に国語研の関係者が答えたものです。

また、あくまでも言語の研究をするところであり、
正しいことばの使い方を決めるところではないそうです。

ですから、例えば「やばみ」や「うれしみ」といった言葉を取り上げ、
なぜこのような表現が使われるようになったのか、まじめに分析しています。

「うれしい」をなぜ「うれしみ」とするのか。
名詞化するなら「うれしさ」ではないのか。

大人の皆さんの中には、「〇〇み」という使い方を見聞きするたびに
眉をひそめながら「何その使い方?」と思っている方もいるかもしれません。
そんな方はぜひこの本を読んでみてください。
ことばの専門家の分析を見ると、なるほど!と納得できると思います。
今どきの言い方をするなら「わかりみ」が深いです。(笑)

そのほか、私が一番読んでいて楽しかったのは、「絵文字」についての話題です。

今やすっかりおなじみの絵文字は、実は日本が発祥なんです。
NTTドコモが1999年に開発したiモードに最初に絵文字が搭載され、
当時人気のiPhoneには絵文字はありませんでした。
その後、当時日本で唯一iPhoneを販売していたソフトバンクの孫社長が
日本での普及には絵文字の導入が欠かせないと強く主張したことで
2011年に絵文字がemojiとしてiPhoneに搭載され、
一気に世界中に広がっていったそうです。

そして、2016年にはニューヨーク近代美術館が、
NTTドコモが作成した最初の絵文字176個を常設収蔵品として購入しました。

その絵文字もどんどん進化しているのですが、
詳しくはこの本を読んでみてください。

他に興味深かったのは、「お客様に知られずに伝えたい言葉」です。
そのお店独自の隠語についての話題は、
大学時代のファミリーレストランでのアルバイトを思い出し懐かしくなりました。
当時、私はカーサで働いていたのですが、
トイレ掃除のことを「C番チェック」と言ってました。

皆さんの職場にも隠語はありますか?

それから、日本語が好むリズムも面白かったです。
たとえば、「バーバ」はいいけれど「ババー」は好まれないそうです。

といった感じで「日本語」を様々な角度から分析していて、楽しく学ぶことができました。
やはり「学び」は楽しくなくちゃね!

今年度は、たくさん「学ぶ」一年にしていきたいと思っています。
大人になればなるほど「学ぶこと」「知ること」が楽しく感じます。
謙虚な気持ちで新しい世界をどんどん知っていきたいなと。
仕事も「新人」の気持ちであらためて頑張ります!
今年度もどうぞよろしくお願いします。

yukikotajima 11:41 am

『タラント』

2022年3月30日

まもなく新年度ですね。
この春から大学生で一人暮らしが始まる方もいることでしょう。
今どんな気持ちですか。
不安を感じつつもこれからの日々への期待が大きいでしょうか。

大人の皆さんは、当時どんな気持ちでしたか。

私はフワフワしていました。
初めての一人暮らしも、東京での大学生活も、アルバイトも。
大学卒業後どこでどんな人生を送っていくのか、
全く想像もできなかったからこそ、ふわふわしていたように思います。

では今はどうかというと、当時ほどではありませんが時々感じます。(笑)

たとえば、同世代の友人の活躍を知った時などは、
おめでとう!と思うと同時に私は何も成し遂げていないなあと焦りを感じたり、
私の人生これでいいのかなと思ってしまったりして、
大学生の時のようなふわふわとした気持ちになります。

あなたにもありませんか。

今日ご紹介する本の主人公の女性も
他の友人たちと比べると自分は何もできていないと思っています。
というか、彼女の場合すでにあきらめてしまっているのですが。

『タラント/角田光代(中央公論新社)』

主人公は、まもなく40歳になる「みのり」です。
香川出身で大学進学とともに上京します。

物語は2019年から始まり、
大学に入学した1999年、社会人時代の2000年代、
そしてコロナ禍が始まった2020年までが、
時代を行ったり来たりしながら進んでいきます。

まもなく40歳という2019年のみのりは、結婚し東京の洋菓子店で働いています。
仕事は真面目にしているものの、向上心はまったくなく、
それには何か理由がありそうなことが伺えます。

一方、大学に進学したばかりの1999年のみのりは、
つまらなくて退屈な自分こそ世の中の役に立つようなサークルに入って
自分を鍛えるべきだと思い、ボランティアサークル入ります。
そして、国内外での活動を経て世界が開いていく感覚を味わったみのりは、
私にもできることがあったと気付き、
社会人になってからも海外でのボランティア活動を続けていきます。

でも、ある日、正義感からある過ちを犯してしまい、
何に対してもやる気をなくしてしまいます。

しかし、戦争で左足を失った90代の祖父のもとに
若い女性から手紙が届いたことをきっかけに、みのりの心に変化が生じます。

みのりは送り主の女性が誰なのか、中学2年生の甥と調べることします。
ちなみに、この甥もある理由から学校に行っていません。

女性のことを調べるうちに、祖父の過去も明らかになっていきます。
と同時に、みのり自身も変わっていきます。

祖父の過去とは。
なぜ甥は学校に行けなくなったのか。
そして、人生をあきらめたみのりはどう変わっていくのか。
この続きは、ぜひ本のページをめくってみてください。

まもなく新年度ですが、はじまりの季節にぴったりの一冊です。
このままではいけないと思いながらも
どう一歩を踏み出せばいいのかわからない人は、
この本を読むことから始めてみてはいかがでしょう。
きっと欲しかった言葉と出合えるのではないかしら。

***

また、この作品は、ただ文字を追って物語を頭の中に浮かべるだけでなく、
自分だったらどう思うんだろう?何が正解なんだろう?
と、ずっと考え続けた小説でもありました。

ボランティア活動について、戦争について、正義感について、
そして私の場合ラジオについても考えさせられました。
そう、ラジオの話題も出てきます。

ハッとさせられることも多く、
物語としての面白さはもちろん、
気付きや学びも多い一冊でした。

たとえばどういうこと?って思いましたよね。
本当は事細かに伝えたいのですが、
ぜひ本を読みながらハッとしていただきたいので、あえて言いません。

ネタバレせずにこの本の魅力を紹介するのは本当に難しい〜。
この私の紹介では全然物足りなさを感じますもの。ああ、もどかしい。

とにかく素晴らしい作品でしたので、ぜひ読んでください。(笑)

そうそう!富山の話題もちょこっと出てきます。
富山出身者が言いそうなセリフがありまして、思わず笑ってしまいました。

yukikotajima 12:31 pm

『20歳の自分に教えたいお金のきほん』

2022年3月23日

もうすぐ新年度です。
春から社会人という方もいることでしょう。
今、どんな気持ちでしょうか。

大人の皆さんの中には、
初々しい新社会人の姿を見ながら
もう一度、新人の頃からやり直したいなあ。
今なら、きっともっと色々上手くやれるのに!
なんて思う方もいるかもしれません。

もし、当時の自分に何か伝えるとするなら、
どんなことを言いたいでしょうか。

私は、お金についてもっと勉強して!と言いたいです。

若いころは、何だか難しそうだからとお金に関して学ぶこともせず、
積み立てはしていたものの、ある程度貯まると使うということを繰り返してきました。
まさに「アリとキリギリス」のキリギリス人生を送っていました。
ま、それはそれで楽しかったからいいのですが。(笑)

でも、これではいかん!とNISAやiDeCoをきっかけに色々勉強するようになりました。

そして、NISAを機に個別株にも注目するようになったのですが、
投資は日本だけでなく世界情勢が大きく影響するので、
これまでどこか他人事だった遠い国の出来事が
身近なことに感じられるようになりました。

とは言え、まだまだ初心者なので、株価の値動きに心が揺れまくる日々です。
でも、それも含め、世界とつながっていることを実感していますし、
投資を始めて良かったなと思います。
何より今は知ること、学ぶことが楽しいです。

いや、でも「お金」のことは難しそう…という方もいると思いますが、
新年度を前に「お金の基本」を学んでみるのはいかがでしょうか。

今日ご紹介する本は、こちら。

『20歳の自分に教えたいお金のきほん/池上彰』

本のタイトルには2つの意味があるそうです。
ひとつは、もうすでに大人の皆さんに
もうひとつは、現在の若者に向けているそうです。

この本では、経済、投資、税金などの
経済ニュースの基礎の基礎をやさしく解説しているので、
一冊読むと「お金の基本」が身に付きます。

たとえば、コロナ禍で経済は大打撃を受けたのに
日経平均株価だけは上昇を続けました。
「景気が悪くなれば株価が下がる」という常識が通用しませんでした。
それはどうしてなのか。

なんでだろうね。と思うだけで終わっていませんか?
この本にはその理由がわかりやすく説明されいますので、
気になる方はぜひ読んでみてください。

また、経済の基礎知識がクイズ形式で問われるなど、
楽しみながら学ぶことができます。

たとえば。

・日本のお札(紙幣)を発行するところは?

答えは「日銀」です。これは簡単でしたかね。
では、「硬貨」はどこが発行しているかご存じですか。

正解は「政府」です。硬貨には「日本国」と書かれています。
なぜ硬貨は国が発行しているのか。その理由もぜひ本を読んで確認してください。

私がとくに興味深く読んだのは「税金」についてです。
・税金が何に使われているか、
・一生でどれくらい税金を払うか
皆さんは、ご存じですか。

私はお酒が好きでよく飲みますが、
ビールを飲む人は、一生で約219万円の税金を払うそうです。

また、30年ほど前までは、生活必需品でないものなどには
「物品税」という税金がかかっていたそうです。
別名「贅沢税」とも言われ、貴金属、ゴルフ用具、大型テレビ
などのぜいたく品が対象だったそうです。

また、レコードやCDもそうだったんですって。
でも、童謡は子どものために必要なものなので、
物品税はかからなかったそうです。

しかし、「およげ!たいやきくん」が大ヒットしたときに、
大勢の大人たちもこのシングルを買いました。

このとき国税庁は、物品税をかけると言ったそうです。
しかし、レコード会社は「童謡」だと主張。

最終的には「童謡」だと認められたのですが、
その決め手になったものがありました。
いったい何だと思いますか。
その答えはぜひ本を読んで確かめてください。

「お金の基本」と言うと、自分の知らない言葉や数字がたくさん出てきて、
もう読む気が起きない!と思う方もいるかもしれませんが、
この本は、具体的な話が多く頭の中でイメージしやすいので、
自分のこととして理解することができるんです。
だから眠くなるどころか、どんどんページをめくりたくなりました。

さんも新年度を前に今一度、「お金の基本」を学んでみてはいかが。

yukikotajima 11:50 am

『妄想美術館』

2022年3月16日

ラジオでもよくお話しているとおり、
私は美術館が好きでよく行っています。

でも20代まではちょっと苦手な場所でした。
アートに疎く、どう楽しめがいいのかわからなかったのです。

それが原田マハさんのアート小説と出合ってから、
美術館で作品を鑑賞することが好きになりました。
原田さんのアートに対する愛と尊敬があふれた小説を読むと、
どの作品も身近なものに感じられるのです。
そして、作品に会いに行きたくなり、
気付けば美術館によく足を運ぶようになりました。

それまで難しいと思っていたアートも
興味を持ってみると逆に面白くてたまらなくなりました。
アートは自分には無い視点と出合えるところがいいのです。
これは小説にも同じことが言えます。
芸術家や小説家の皆さんのユニークな発想に触れることで、
いたって平凡な自分の感性が磨かれ、
自分がちょっとだけ素敵な人間になったような気がします。

それこそ、素敵なアート作品や小説に出合い感性が磨かれたあとは、
おなじみの日常や景色でさえ、なんだか美しく感じられて、
そんな見方ができたことに喜びを感じます。

また、アートを学んだり知ったりするのも楽しいものです。
今日ご紹介する本も勉強になったのはもちろん、とても面白かった!

『妄想美術館/原田マハ、ヤマザキマリ(SB新書)』

小説家の原田マハさんと、漫画家のヤマザキマリさんによるアート談義です。

原田さんは、『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』
などの様々なアート小説でおなじみです。
原田さんはただアートが好きというわけではなく、
美術史を学ぶために30歳で再び大学生になったり、
ニューヨーク近代美術館で働いていたこともあったりと
アートを学び、アートの最先端で働いていた方なのです。

ヤマザキさんは、映画化もされた『テルマエ・ロマエ』でおなじみの漫画家です。
イタリア・フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻し、
現在は東京造形大学客員教授でもあります。
また、様々なアート番組にも出演されています。

そんなアートが大好き&詳しいお二人が
アートについてあれこれ自由に語っているのが、この『妄想美術館』です。

本の帯に「新感覚アートガイド」とあるとおり、
お二人の好きな美術館・作家・作品のほか、
初めての美術館体験や、名画にまつわる裏話、美術鑑賞の秘訣などが載っています。
また、こんな美術館をつくりたい!という
お二人の「妄想美術館」についても熱く語っていて、
とても楽しく読めました。

私はアートが好きと言っても
まだまだ知らないことばかりですので、
この本はかなり勉強になりました。

例えば、西洋と日本の美術館では展示の仕方が異なるそうで、
ヨーロッパでは額にガラスがなく、むき出しで展示されていることが多いのだとか。
その理由は、ガラスに反射してほかのものが映り込んでしまうと、
絵を模写しにくいからなんですって。
また、日本の家は窓が多すぎて絵が飾れない作りになっているそうです。
そのかわり、ふすまや屏風から日本の美術は発展していったのですって。
そう言われると大いに納得!

それから、美術館に行っても、どう鑑賞すればいいかわからない方もいると思いますが、
初心者の方は、理解しなきゃという義務感を払拭して、
なにかいいなあと感じられるものがあったら、
立ち止まってじっくり鑑賞すればいいそうです。
そして、興味を持ったら、深く知っていけばいいと。

この本には、様々なアート作品が登場するのですが、知らなくても大丈夫です。
カラーで作品が紹介されていますので、絵を実際に見ながら本を読むことができ、
まるでお二人の会話に混ざっている気分で楽しめます。

ちなみに、どんな感じの会話かと言いますと、
「モナ・リザ」で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチのことは、
「もし現代にいたら、SNSでエゴサーチしてそう」とか、
「インスタ映え、なんて思いながら、自分の絵をアップしてそう」という感じです。
どうです?楽しくないですか?

そのほか、お二人の小説や漫画についての裏話なども語っていますので、
それぞれの作品のファンの方もきっと楽しめると思います。

そして、この本を読んだ後は、きっと美術館に行きたくなるはずです。
私は世界各地の美術館に行きたくて、うずうずしています。
ほんと楽しいおしゃべりでした!

ところで、ヤマザキさんがアートについてこんなことをおっしゃっています。
「アートは、多様性を受け入れ、自分の世界を拡げる手がかりになる」

一方、原田さんはこうおっしゃいます。
「大人になるまでに美術館で幸せな空気を覚えてもらえたら、
きっと戦争がない世の中になる」

こんな時だからこそ、お二人の言葉がより心に響きました。

yukikotajima 9:28 am

『赤と青とエスキース』

2022年3月9日

約一ヶ月後の来月6日に今年の本屋大賞が発表されます。

全国の書店員の投票だけで選ばれる「本屋大賞」は、
大賞受賞作はもちろん上位の作品も面白いので、私も毎年楽しみにしています。
また、映像化されることも多く、
2019年の本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの小説
『そして、バトンは渡された』に続き、
2020年の大賞受賞作となった凪良ゆうさんの『流浪の月』も映画化され、
5月13日に公開されます。

ちなみに、去年の大賞は、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち』でした。
そして2位となったのが、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』でした。

いずれも以前、ラジオでご紹介しました。
(↑作品のタイトルをクリックして頂くと、私の本の紹介が読めます)

そして、今年の本屋大賞にも青山さんの作品がノミネートされています。

◎本屋大賞の公式サイトは コチラ

今日ご紹介するのは、去年11月に発売された青山さんの新作です。

『赤と青とエスキース(PHP研究所)』

エスキースとは、下絵のことです。
この本には、「本番を描く前に、構図を取るデッサンのようなもの」とあります。

物語は、メルボルンから始まります。
メルボルンに留学中の女子大生が、現地に住む日系人の男性と恋に落ちます。
そして、二人は彼女が日本に帰るまでの期間限定で付き合うことに。
帰国の直前、現地の画家の卵が、彼女をモデルにした「エスキース」を描きます。

『赤と青のエスキース』は、そのエスキースをめぐる連作短編集です。

次の物語は、30歳の額職人の男性のお話です。
彼は、学生時代にとある絵画を見た時に、
この絵の魅力をもっと引き出せるような額をつけてあげられらいいのに
と思ったことをきっかけに額職人になります。
しかし、来る発注は既製品ばかりで、なかなかオーダーメイドの依頼はありません。
そんなある日、ある絵画が工房にやってきたことで、
オリジナルの額縁を作ることになり…というお話です。

短編集の中で私はこの額職人のお話が一番好きです。
絵にぴったり合うのはどんなフレームなのか、
あれこれ考える額職人の目の輝きまでが見えるかのようで、
読んでいてワクワクしました。

この作品を読んだあと、たまたま美術館を紹介するテレビ番組を見たのですが、
作品以上にどんな額縁が使われているのか、そればかりが気になってしまいました。
今度、美術館に行ったら、額縁メインで鑑賞してしまいそうです。

その次は、40代の漫画家の男性の物語です。
彼は、大きな賞を受賞した、かつてのアシスタントから
雑誌の対談相手に指名され、久しぶりに顔を合わせることになるというお話です。

作品も素晴らしい上にモデルのようなイケメンの元弟子を前にした
中年の漫画家の正直な心のうちが綴られています。
この作品も良かった。心も瞳も潤いました。

次は、恋人と別れ輸入雑貨店で働く50代の女性のお話です。

どの短編にも「エスキース」が様々な形で出てきます。

最初のお話を読んだ時は20代の若者たちの不器用な恋物語なのねと思いましたが、
話が進むにつれ、登場人物たちの年齢が上がっていくのが興味深く、
それぞれの年代の悩みや本音が丁寧に描かれているのが印象的でした。

悩んでいるのは若者だけじゃないもんね。
その年代ごとにいろいろあるわけで。

この物語には、様々な人が出てくるのですが、
ひとりひとりに対して、著者の青山さんの優しいまなざしを感じました。

また、この本には、ほほう、なるほどそうきたか!と思うしかけがあります。
本の帯に「二度読み必至」とある通り、
最後まで読むと、もう一度読みたくなります。
そして、同じ物語なのに一度目と二度目では感じ方が変わります。
私は、最初は勢いよく、二度目はしみじみと読みました。

本を読みながら、ドキリとして頂きたいので、
まっさらな気持ちで、それこそ一度私の本紹介もいったん忘れて(笑)、
頭の中を真っ白なキャンバスにして、
本のページをめくりながら色をのせていってください。

そして最後にあらためて表紙をご覧ください。
より美しく見えるはず。

ちなみに、著者の青山さんによると、
この作品は「マンガ大賞2020」を受賞した
漫画『ブルーピリオド』からも影響を受けているそうです。
どんな作品だろうと気になり、試しにNetflixでアニメを見たところ
面白くて久しぶりに一気見してしまいました。

『ブルーピリオド』は、ある日、美術に目覚めた男子高校生が
東京藝術大学を目指すという受験物語で、
熱いストーリーや魅力的なキャラクターはもちろん、
美術についても色々学べるのも楽しかったです。

ぜひ『赤と青とエスキース』と合わせてお楽しみください。

yukikotajima 11:08 am

『ボタニカ』

2022年3月2日

先月、2023年前期の朝ドラが、「日本の植物学の父」と呼ばれた
牧野富太郎をモデルにした物語であることが発表されました。
演じるのは神木隆之介さんで、ドラマのタイトルは「らんまん」に決まったそうです。

また、朝ドラだけでなく小説の主人公にもなっています。

今日ご紹介するのは、牧野富太郎が主人公の『ボタニカ(祥伝社)』です。
直木賞作家の朝井まかてさんの小説で、今年の一月に発売されました。

本の表紙には、蝶ネクタイをつけて朗らかに笑う老人のイラストが描かれ、
帯には、ただひたすら植物を愛し…とか、
莫大な借金、学会との軋轢もなんのその、などと書かれていたので、
お金が無く敵が多い中でも大好きな植物の研究に取り組み続けた
ピュアで穏やかな男性の物語なのね、
とイメージを膨らませページをめくれば、
植物たちに「おまんの名前は?」語りかける少年富太郎が出てきて、
思った通りの美しい物語だわと思って読み進めていきました。

ところが、私の勝手なイメージはすぐに打ち消されました。

植物が大好きなことに違いはないのですが、
植物をはじめ自分の好きなことにしか興味が無いのです。
また、家が裕福なため欲しいものはなんでも買ってもらえるし、
小学校はすでに知ってることばかりでつまらん!
と中退してしまうというわがままっぷりです。

さらに、知らぬ間にというか、ちゃんと話を聞いていなかったせいで
結婚することになってしまうのですが、どこか他人事で、
ある人からは「君は人に対して無神経だ。
身近な人間にも植物と同じように心を向けて、大事にしないと」と叱られるほどです。

結局、結婚したものの家業は妻に任せ(というかおしつけ)、
もっと植物について知りたいと一人東京へ。
なんと学生でも無いのに東京大学理学部植物学教室に出入りを許されることになります。
そして、植物の研究は熱心におこなうのですが、
東京で出逢ったスエという若い女性との間に子どもができ、
一緒に暮らし始めることになります。
さらに本など研究に必要なものを次々に買い、気づけば借金だらけ。
お金がなくなると実家の妻にお金を催促する始末。

自由すぎるー!

富太郎は明るく正直な性格ゆえ第一印象は良いのですが、
植物のことしか考えていないので、敵を作りやすいのです。

間違っていることに対しては、
たとえ立場が上の人だろうが「違う」とはっきり指摘し、
「学会の中に閉じ籠っておらんと、野山を歩けばよいのに」と思います。

「もっと教授を立てろ」とアドバイスされることもあるのですが、
そんなことをしても日本の植物学は進歩しない!と反発します。

その一方で、植物に興味を持つ人なら、
たとえ相手が十二歳であろうと対等に扱っています。
みな、友人、仲間だと。

また、学歴や肩書への興味もまったくありません。

ただただ植物が好きで、いろんなことを知りたいし、
知ったことは世の中に広めたいと思っているだけなのです。

わからないことは本を読んで調べ、
さらに深く知るために植物を観察するということを
何歳になっても続けていきます。

この本には、そんな富太郎の正直な思いが綴られています。

私は正直なことを言えば、最初は、なんなんだこの人は!
ちょっと苦手だ…と思いながら読んでいましたが、
気付いたときには、彼のファンになっていました。

そして、富太郎の作った植物図鑑を見てみたいと思い、
図書館に行って見てきました。

富太郎が自画自賛していたとおり、植物画は素晴らしかったです。
ただ正確というだけでなく、植物への愛を感じました。

色々な人に迷惑をかけながら完成させた図鑑は、とても丁寧に作られていて、
植物に詳しくない私が見ても楽しく読むことができましたし、
この図鑑を目にした人は、富太郎を応援したくなったに違いないと思いました。

それにしても。。。

爽やかなイメージのある朝ドラで、
この自由すぎる富太郎をどのように描くのかしら。

どう描いたとしても、自分の「好き」を貫くさまにきっと勇気づけられる気がします。

yukikotajima 11:44 am

『ウエスト・サイド・ストーリー』『わたしのウエストサイド物語』

2022年2月23日

あなたには繰り返し何度も見ているお気に入りの作品はありますか。

私は『ウエストサイド物語』です。

始めて見たのは高校生の時、友人の舞台でした。
音楽もダンスもストーリーも何もかもがかっこよくて
何だこの作品!と衝撃を受けました。

その直後1961年版の映画を見てさらにはまって、
これまでに何度も繰り返し見ています。
また、少年隊、宝塚歌劇、劇団四季などの舞台も見に行きました。

その『ウエストサイド物語』をスティーブン・スピルバーグ監督が映画化すると知り、
どれだけ楽しみにしていたことか。

2月11日の公開直後に見てまいりました。
スピルバーグ版の『ウエスト・サイド・ストーリー』も素晴らしかったです。

◎映画の公式サイトは コチラ

この作品は「ロミオとジュリエット」をモチーフにしたミュージカルで、
ブロードウェイで1957年に初演されました。
1961年に映画化され大ヒット!アカデミー賞では作品賞など10部門を受賞しました。
そしておよそ60年の時を経て、スピルバーグ監督が映画化しました。

物語の舞台は、多くの移民たちが暮らす
1950年代後半のニューヨークのウエスト・サイドです。
プエルトリコ系移民の若者たちのグループ「シャークス」と、
ヨーロッパ系移民の「ジェッツ」は激しく対立しています。
そんな中、ジェッツの元リーダーのトニーが
シャークスのリーダーの妹であるマリアと恋に落ち、
物語が動き出します。

この作品の何がいいって、私が一番好きなのは音楽です。
最初から最後までどの曲も本当にかっこいい!
スピルバーグ版でも、おなじみの音楽が聞こえてきただけで
思わず涙が出てきてしまったほどです。

また、最初の映像から前作を意識した作りになっていまして、
うわ、こうきたか!とスピルバーグ監督の1961年版への愛、リスペクトを感じました。

でも、1961年版とは違う驚きや感動ももちろんありました。
様々な角度から撮影していることで作品に躍動感がありました。
例えば、シャークスとジェッツが両端から集まるシーンは上から撮影し、
人より先に大勢の影を見せることでよりシャープに感じられましたし、
街なかで「アメリカ」を歌いながら踊るシーンは
華やかでダイナミックでいきいきとしていて、
去年見た「イン・ザ・ハイツ」を思い出しました。

1961年版は舞台からの映画化ということで舞台っぽさがありましたが、
今回は街全体を使って撮影されていたことで
物語がよりリアルなものとして感じられました。

また、登場人物たちの心情がわかりやすくなっていたり、
現代的な感覚が取り入れられていたりと
今の時代にアップデートされた作品になっていたのも印象に残りました。

1961年版でアニタを演じたリタ・モレノが
別の役で再び出演しているのも感動的でした。
リタ・モレノのアニタも本当にかっこいいので、
スピルバーグ版をご覧になった方は、ぜひ1961年版もご覧くださいね。

そして1961年版と言えば、映画を見た後に本屋さんに立ち寄りましたら、
ある本が目に飛び込んできまして、
映画を見た直後の興奮もあり、思わず手に取ってしまいました。

前置きがかなり長くなりました。(笑)
今日ご紹介する本は、こちらです。

『わたしのウエストサイド物語
/ジョージ・チャキリス 訳:戸田 奈津子(双葉社)』

1961年の『ウエストサイド物語』で
シャークスのリーダー「ベルナルド」を演じた
俳優のジョージ・チャキリスの自伝で、
字幕翻訳家の戸田奈津子さんが翻訳しています。
去年アメリカで発売され、大きな反響を読んだそうです。

ジョージ・チャキリスは、1961年版でベルナルドを演じ、
アカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞しました。

そんな彼が、映画やダンス、音楽を好きになったきっかけや
『ウエストサイド物語』にまつわる裏話のほか、
『ロシュフォールの恋人たち』といった
これまでの出演作について語った一冊です。

『ウエストサイド物語』に関して言えば、
もともと彼は、舞台版のロンドン公演では
「ジェッツ」のリーダー「リフ」を演じていたのですが、
映画では敵対するグループのリーダーをすることになります。
この本には当時の正直な心の内が綴られています。
そのほか、映画で最初に撮影したシーンや、今でも大事にしているあるアイテムの話、
最初は「ウエスト」ではなく「イーストサイド物語」だったエピソードなど、
ファンにはたまらない内容になっています。

「ウエストサイド物語」が大好きな方は、
このジョージ・チャキリスの自伝もぜひ読んでみてください。
そして、本を読んだ後は1961年版の映画もまたご覧になってみてください。
私はこれまでに何度も見ているのに、また新しい視点で見ることができ楽しめました。

yukikotajima 9:23 am

『黛家の兄弟』

2022年2月16日

17歳の頃と30歳の頃のご自身を比べると、どう変わりましたか?

10代の後半から30代前半は、人生の中でも変化が大きい時期ですよね。

私の場合は、群馬の高校から東京の大学へ進学し、
卒業後はFMとやまで局アナを10年つとめ、
フリーランスとして活動し始めたのが30代の前半です。

人によっては結婚、出産をする時期でもありますよね。
となりますと、色々な経験を経て、考え方が大きく変わる方もいるかもしれません。

私も17〜30歳は失敗も多く落ち込むことも多かったけれど、
様々なことを学んだ日々でもありました。
あなたはいかがでしょうか。

今日ご紹介する小説は、ひとりの武士の17歳の頃と30歳の頃が描かれた成長物語です。

『黛家(まゆずみけ)の兄弟/砂原浩太朗(講談社)』

著者の砂原さんは、ラジオでもご紹介した小説、
『高瀬庄左衛門御留書』が去年1月の直木賞の候補になりました。

◎私の本の紹介は コチラ

架空の藩「神山藩」で郡方を務める高瀬庄左衛門が主人公の物語で、
控えめながらも美しい文章が印象的な作品でした。

新作の『黛家の兄弟』は、「神山藩シリーズ」の第2弾です。
とはいえ、それぞれ主人公も年代も違っていて続き物ではありませんので、
第1弾を読んでいなくても問題なく楽しめます。

今回の主人公は、17歳の若い武士です。
本のタイトルにもなっている黛家は、神山藩で代々筆頭家老を務めています。
主人公は、黛家の三男の新三郎(しんざぶろう)です。
彼には2人の兄がいます。

長男の栄之丞(えいのじょう)は、すらりとしていてかっこいいものの、
ちょっと冷たい印象もあります。
次男の壮十郎(そうじゅうろう)は、喧嘩っ早く、自由な遊び人です。
そして、三男の新三郎は、道場仲間の圭蔵と穏やかな日々を過ごしています。

17歳の進三郎は人を好きになることもよくわからずにいるほど純朴でした。
ですが、そんな新三郎のもとに結婚の話がきます。
相手は子どもの頃から知る2つ年上の美女「りく」です。
進三郎は彼女のことを整いすぎていて苦手意識を持っています。
また、実はりくは長男の栄之丞のことが好きなのではないかと、ひそかに思っています。

ですが、りくの父親の所望ということもあり、大目付を務める黒沢家に婿入りします。
と同時に圭蔵も側仕えとして黒沢家に入ることになります。

すぐ上の兄からは「おまえは苦労知らずだから、大目付などつとまるのか」
と言われてしまうものの、進三郎は真面目に仕事に取り組みます。

そんなある日、大事件が起き、
神山藩で代々筆頭家老を務めていた黛家から、
次席家老の漆原へと筆頭家老の座が変わってしまいます。

進三郎は、理不尽な顛末に悔しさを感じつつも何もできず、
そんな自分自身を「未熟は悪でござる」と責めます。

そして、13年後。
30歳になった進三郎の物語が始まります。

この2部がすごい!驚きの連続でした。
ぜひ本のページをめくりながら驚いてほしいので詳しい感想を言うのを控えますが、
私だったら人間不信におちいりそうです。(笑)

でも、純朴だった新三郎はすっかり成長して、
ただまっすぐなだけの若者ではなくなっています。
心身共に強くなります。お酒もの飲めるようになるりますしね!

お酒と言えば、進三郎が好んで飲んでいる「天之河」というお酒があるのですが、
これがとても美味しそうで飲んでみたくなりました。

ちなみに前作『高瀬庄左衛門御留書』には、
美味しそうなお蕎麦が出てきまして、お蕎麦が食べたくなりました。(笑)

前作の時にも思いましたが、砂原さんの文章は私も登場人物たちと
同じものを見たり感じたりしているかのような気分になるのです。
そして、美しく品のある文章なので、読んでいるだけで心が整っていくかのようです。

また、読みやすいのも大きな特徴です。
時代小説は読みづらそうだから苦手と言う方でも
砂原さんの文章はすうっと頭に入ってきますので、きっと楽しめると思います。

それからミステリ好きの方もぜひ。
私も読みながら心の中で「えー!!!」と何度叫んだことか。

『黛家の兄弟』は、読書の様々な面白さがぎゅうっとつまった一冊でした。
面白かった!

そうそう、この「神山藩」シリーズは今後も続いていくそうですよー。
次作は来年発売予定だそうです。

yukikotajima 12:12 pm

『おんなの女房』

2022年2月9日

先週の土曜日は「気まぐれな朗読会」でした。
大雪の中お越しくださった皆さま、ありがとうございました。

FMとやまでは、3部のみ3月6日(日)18時から放送しますので、
ぜひお聞きください。

今回の朗読は登場人物が多くセリフも多かったので、
それぞれのキャラクターを想像しながら読むよう心がけました。

私は読書が好きで様々な本を読んでいますが、
ストーリーが面白く夢中になって文字を目で追ってしまう作品もあれば、
声に出して読みたくなる本もあります。

言葉選びが楽しかったり、表現が美しかったり、
語り口調だったり、文章のリズムが心地良かったりするとき、
私はつい声に出して読んでしまいます。

息遣いまで無理せず楽しく読める作品に出合うと、もう止まらなくなります。

今日ご紹介する小説は、まさにそんな本でした。
書いているというより、喋っていて、
1ページ目から声に出さずにはいられませんでした。

もはや本を読んでいるのか、お話を聞いているのかわからなくなるほどでした。
そして、目の前に登場人物が浮かび上がってきて、途中からは物語の世界にいました。
心地よい語り口だけでなく、色が見え、香りがし、温度も感じる作品でした。

今日ご紹介するのは、蝉谷めぐ実(せみたに・めぐみ)さんの
『おんなの女房(角川書店)』です。

蝉谷さんは、2020年に発売されたデビュー作『化け者心中』が、
「第11回小説 野性時代 新人賞」
「第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞」
「第27回中山義秀文学賞」を受賞し、
デビュー作ながら文学賞三冠という快挙を成し遂げました。

デビュー作の『化け物心中』は歌舞伎ミステリで、
続々重版がかかるなど大きな反響を呼んだそうです。

新作の『おんなの女房』も歌舞伎がテーマになっています。
でも、前回の続編ではなく新しい物語です。
今回は、歌舞伎の「役者の女房」が主人公です。

しかも「女形(おんながた)」の女房です。
つまり本のタイトル『おんなの女房』とは、そういうことです。

物語の舞台は江戸後期の江戸です。
武家の娘・志乃(しの)は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぎます。
夫となった燕弥(えんや)は、今大注目の女形です。

この燕弥は、家でも女性としてふるまいます。
それもその時に演じている役の女性のままに。

毎回役が変わるたびに別人になってしまう夫の前で
志乃は何が正解かわからずにいます。

でも、彼女は、父親の三歩後ろにいる母親を見習い、
自分も女の役目をきちんと果たしていこうと自分なりに夫を支えていきます。

たとえば、どう接していいかわからない時は、
「お姫様」と呼ぶようにしています。
少しでも彼自身が残っている時は嫌がるから。
その様子から、どれくらい役になりきっているかわかるそうです。

最初はそんな調子で物語が始まるので、
志乃ちゃん、だいぶ変わった人に嫁いでしまってかわいそう。
というか、夫の三歩後ろというのもなんか嫌だ!と私は思ってしまったのですが、
夫の顔色を伺うだけだった彼女も色々な人とのかかわりの中で、
「おんなの女房」として少しずつ成長していきます。

そして、志乃と燕弥は惹かれ合うことになるのですが、
この二人の恋物語がいい!

私は最初は志乃を応援していましたが、
気付けば志乃に自分を重ねながら読んでいましたので、
役者の女房の気分で一緒に喜んだり不安になったりしていました。

だからこそ最後は涙。

本を閉じたとき、あまりにも現実の世界が静かで、
一瞬わけがわからなったくらいに、作品の世界に没頭してしまいました。

それから、志乃以外にも役者の女房が二人出てきて
物語に華を添えるのではなく…かき乱します。(笑)

夫婦の物語が静かで緊張感があるからこそ、
女房達の激しさがいいアクセントになって物語をより面白いものにしています。

もうすぐバレンタイン。恋の季節ですね。
現代のラブストーリーもいいけれど、江戸の恋物語もいいものですよ。

今週末にでも一気読みしてみては。

yukikotajima 12:07 pm

『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』

2022年2月2日

みなさんは、買い物をする時、本当に欲しいものだけを買えていますか?
なぜか買う予定のないものまで買ってしまうことはありませんか?
たとえば、レジの横に置いてある特価商品をカゴに入れてしまったり、
本当は洋服を1着だけ買うつもりだったのに2着で割引と言われて、
あわててもう1着買ってしまったりしたことはありませんか?

私は恥ずかしながら、よーーくあります。
まあ、ラジオをお聞きの方はすでにご存知かもしれませんが。(笑)

でも、私のような人は珍しくはないようです。

私たち人間は、無意識のうちに
何らかの情報や意図のもとに動かされているそうなんです!

今日は、そんな無駄遣いをしがちな皆さまにオススメの本をご紹介します。

『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学(新星出版社)』

本の監修は、東京大学の教授の阿部誠さん。
マーケティングの第一人者です。

「行動経済学」という言葉を聞いたことはありますか?
「経済学」ではなく「行動経済学」です。
「学」とついている時点で難しそうだからムリー!思ってしまいそうですが、
「行動経済学」は身近なものなので難しくありません。

行動経済学とは、人間が必ずしも合理的に行動しないことに着目し、
人間の心理的、感情的側面の現実に即した分析を行う経済学のことです。

これまでの伝統的な経済学では、
人間は常に合理的な選択をするものと定義されていましたが、
行動経済学は人間にはいい加減なところもあるよ!
という点に注目した新たな学問で、
経済学と心理学のハイブリッドと言われることもあるそうです。

そう、私たちは「いい加減」なんです!(笑)
ちなみにこの本には「ほどよく合理的」とあります。

この本は、実例をあげてイラストや図解で「行動経済学」を説明していますので、
自分だったらどういう行動を取るか想像しながら学ぶことができ、
楽しく、そしてとても分かりやすかったです!

例えば、同じ内容でも言い方や書き方が異なると、私たちの選択も変わるんですって。

ここで問題です。
AとBの説明では、どちらの商品を欲しいと思うでしょうか。

A 満足度90%
B 10人に1人は満足できない

実際には同じことを言っているのですが、
Aは好印象を、Bは不安を抱く人が多くなるそうです。

また、栄養ドリンクなどでよく見かける「タウリン1000mg」といった表記も
「1g」より「1000mg」のほうが多く感じられますよね。

同じことを言っていても表記が変わるだけで印象が異なります。

また、僅かな差で印象が大きく変わることもあります。
2000円と1980円では、20円しか違わないのに、
1980円のほうがとてもお得に感じられませんか?

これは、私たちの頭には「1000円台」という印象が
強くインプットされるからなんですって。

それから、私たちは2択より3択のほうか選びやすいそうです。
そして選ぶのは真ん中のものであることが多いのだとか。

たしかに保険の契約にしてもレストランのコースにしても3択って多いですよね。
そして、迷った時は真ん中を選びがちです。

実際、竹と梅だけだったメニューに高価な松が追加されたことで、
真ん中の竹を選択する人が増えるそうです。

つまり、私たち人間は主体的に選んでいるつもりでも
無意識のうちに何らかの情報や意図のもとに動かされているんですって。

でも、その意思決定のくせを知ることができれば、
お金の使い方を見直すことができます。
逆にビジネスシーンに活かすこともできます。
この本にはマーケティングの成功事例などものっています。

監修をされた阿部教授によると、

人間の持つ非合理な一面に着目した「行動経済学」は
消費行動に関わるすべての人に役立つ

そうです。

私は、「行動経済学」を知ることは「人間」を知ることでもあると思いました。

みんな実はあまり深く考えずに日々いろいろな選択をしていると思ったら、
ちょっとくらいいい加減なところがあっても、
ま、それが人間ってもんよ、と人に対しておおらかな気持ちになれそうだなと思って。

この本で言いたいことは、決してこんなことじゃないかもしれないけれど、
不寛容な時代だからこそ、ちょっとくらい間違えても、人間ってそんなもんなのよ、
と思える心の余裕も必要なのかもなあと。

でも、自分自身はなるべくなら間違えたくなーい!という方は、
ぜひこの本を読んで「行動経済学」を学んでみてください。

私は読んで良かったです。
今後、買い物をする際にはちょっと冷静になって
「行動経済学」を思い出そうと思います。

やはり学ぶって楽しいわ!
次はどんな学問の扉を叩いてみようかしら。

yukikotajima 11:05 am

『パラソルでパラシュート』

2022年1月26日

先週の水曜日、芥川賞・直木賞の受賞作が発表され、
ユキコレでは受賞作の米澤穂信さんの『黒牢城』をご紹介しました。

◎『黒牢城』の紹介は コチラ

その翌日には、本屋大賞のノミネート作品が発表されました。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

本屋大賞は、全国の書店員の投票だけで選ばれる賞で、
これまで大賞受賞作は映画化されることも多く、
おととしの本屋大賞の凪良ゆうさんの『流浪の月』は、
映画化され今年5月に公開されます。

今年はどの作品が選ばれるのでしょうか。
ちなみに、ノミネートされた10作品はすべて読めますので、
ぜひ皆さんも読んで予想してみてはいかがでしょう。

また、いいなと思えた作家さんとの出会いがあったら
その作家さんの他の作品を読んでみるのもいいと思います。

私は、ノミネート作の中ですと、
本を読んだ直後に、この本は本屋大賞に選ばれそうだと
予想していた本があります。(笑)

それは、一穂ミチさんの『スモールワールズ(講談社)』です。

◎私の本紹介は コチラ

『スモールワールズ』は、6つのお話が収録された短編集です。
それも、思い通りにいかない人生を送っている人たちの物語です。
短編なのだけど空気感ががらりと変わる瞬間があって、
さらりと読めてしまうのにドキリとさせられるタイプの短編集で、
とても面白く読めました。

まだお読みではない方は、ぜひお読みになってみてください。

今日ご紹介するのは、その一穂さんの新作です。

『パラソルでパラシュート(講談社)』

今回は長編小説です。

ただ今回の登場人物たちも思い通りにいかない人生を送っています。

私はこれをやりたい!という夢を持っていて、
その夢に向かって頑張る人の物語はよくありますが、
この物語は、やりたいことも、できることもない29歳の女性の物語です。

大阪の一流企業の受付で契約社員として働く美雨(みう)は、
29歳になり、この仕事もあと一年だなと思っています。
でも、その後やりたいこともなく、どうしていいのかわからずにいます。

ある日、売れないお笑い芸人の亨(とおる)に出会い、
芸人の皆さんと交流が始まります。
そして、退屈だった日々に変化が生じ…という物語です。

前作の『スモールワールズ』は、本ならではの楽しさがありましたが、
今作は、映像で見たいと思いました。

映画で見たら、きっと素敵な作品になるんじゃないかなと思っていたら、
まるで映画の予告編のようなPVを発見!

このままぜひ映画化してほしいー。

***

みんながみんな、やりたいことがあるわけではないし、
夢をもっていても叶うわけでもありません。
そして、求めるのもの人それぞれです。
仕事が好きな人もいれば、仕事以外に人生の楽しみがある人もいます。

芸人さんが出てくるというと、
ハイテンションな物語?と思いそうですが、
そんなことはなく、いい意味で普通の人たちの物語でした。

私がいいなと思ったのは、美雨の女性の先輩の生き方です。

年を重ねた今も受付の仕事をしていることで、
ひどいことを言われることもあるのですが、
先輩は傷ついていないと言います。

そして、働かなければ好きなものに囲まれることもできないし、
私は私を救ってくれるものを守れたら他はどうでもいいと。

先輩、かっこいい!!!

私を救ってくれるものを持つって大事ですね。
趣味でも押し活でも好きな食べ物でも。

あなたはどうですか。あなたを救ってくれるものは何でしょう?

美雨のように、特にやりたいこともなければ、
自分にできることなんて無いかも、と思っている方は、
この本を読むことで何かヒントをもらえるかも。

ああ、ほんと、この作品、映画化してくれないかなー。
音とか間とか空気感とか、そういったものは絶対に映画に向いていると思うのよねえ。

yukikotajima 11:49 am

『黒牢城』

2022年1月19日

今日、第166回芥川賞・直木賞が発表されます。

【芥川賞候補作】

石田夏穂『我が友、スミス』
九段理江『Schoolgirl』
島口大樹『オン・ザ・プラネット』
砂川文次『ブラックボックス』
乗代雄介『皆のあらばしり』

【直木賞候補作】

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』
彩瀬まる『新しい星(文藝春秋)』
今村翔吾『塞王の楯(集英社)』
柚月裕子『ミカエルの鼓動(文藝春秋)』
米澤穂信『黒牢城(KADOKAWA)』

今日のユキコレ(grace内13:45頃〜)は、
直木賞候補作の中から一冊ご紹介します。

米澤穂信さん『黒牢城(こくろうじょう)』です。

米澤さんは3回目の候補です。
また、『黒牢城』はすでに様々な賞を受賞しています。

「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」
「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」
の4大ミステリランキングすべてで第1位を獲得したほか、
過去一年間で最も「面白い」と評価されたエンタテインメント小説に贈られる
山田風太郎賞も受賞したという、今、大注目の作品です。

すでにお読みになった方もいらっしゃるのでは?
そんな方はぜひ感想をgrace宛にお寄せください。

***

『黒牢城』は、米澤さんの作家デビュー20周年の集大成となる作品だそうです。

物語の主人公は、実在の人物「荒木村重」です。

信長に謀反を起こした人と言えば、明智光秀が有名ですが、
光秀より前に信長を裏切ったのが、「荒木村重」です。

本能寺の変より四年前、村重は信長に背き有岡城に立て籠ります。
そこに織田側の官兵衛がやってきて「この戦は勝てない」と言い放ちます。
頼りにしている毛利勢もきっと来ないと。

官兵衛とは、大河ドラマにもなった軍師・官兵衛のことです。

実際、毛利を信じていいのか確信を持てない村重は、
痛いところを突かれと思うものの、今さらどうすることもできないとも思います。

そして目の前の官兵衛が自分にとって害になるのかどうか考えた挙句、
官兵衛を帰すことも殺すこともせず、土牢(つちろう)に入れることにします。

長い間、狭い土牢にいたことで官兵衛が足や腰を悪くしてしまったのは、
よく知られていますよね。

城に籠り、いつ信長が攻めてくるかわからない中、城内では次々に事件が起きます。

村重自身、謀反を起こしていますが、彼もまた信じていた仲間から次々に裏切られます。

事件が起こる度、村重は事件を調べていくものの、
なかなか裏切り者をみつけることができません。

そんな時、頼るのが官兵衛でした。
土牢に行き、官兵衛に相談します。

最初に起きた事件は、密室殺人です。
官兵衛の時のように、人質を殺さずに捕らえたままにすると決めたものの、
ある日、人質は殺されてしまいます。
矢で殺されたものの、その矢は見つからないし、
どこからどのように殺したのかもわかりません。

さらに、この事件のせいで、城内では村重に対する信頼が揺らぎ始めます。

そして、村重は地下の牢にいる官兵衛のもとへ行き、
仲間の裏切りや不可解な事件について話し始めます。

ずっと牢にいた官兵衛でしたが、いとも簡単に真相を解き明かします。

このあとも城内で事件が起きる度、村重は官兵衛に相談していきます。

また、ある時は、戦で相手方のトップを討ったのが誰かわからず、
村重はこれまた官兵衛に相談します。

相手のトップの名前はわかっても顔までわからなかったため、
討ち取った首を見てもどれが相手方のトップかわからないわけです。
さて、官兵衛は牢にいながらどのようにして謎を解くのか。

そもそも囚われの身でありながら村重の相談に乗る官兵衛は、いったい何を考えているのか。。。

***

史実がベースの時代小説でありながら、ミステリとしても楽しめ、
さらに、トップとして部下をどう動かしていくか、
といった今に通ずる部分もあるという、
様々な楽しみが味わえる一冊でした。

読み終えたとき、「税別1,600円」という本の値段を見て
思わず「安すぎる!」と声に出してしまったほどです。

とても面白かったです!

この時代、とにかく人の心をつかむのが大変で、
ちょっとしたことで簡単に寝返ってしまったり、
信じていた人が実は裏切り者だったなんてことも多いようで、
村重も誰を信じていいかわからなくなります。

また、チームのトップとして、チームの士気を上げるのはもちろん、
チーム内で誰が活躍したのか、ちゃんと見極める必要もあります。
ここを間違えると、トップへの不信感が強まり、
自分のもとを離れてしまいかねませんしね。
そのあたりの心の揺れが私は一番印象に残りました。

ちなみに、もし今日、直木賞を受賞すると
一気に本が無くなることが予想されますので、
読みたい方は、発表前に買ったほうがいいかも。

yukikotajima 11:59 am

『声をあげて、世界を変えよう!』

2022年1月12日

おとといの月曜は「成人の日」でした。
新成人の皆さん、おめでとうございます。

大人の皆さんは、今の若者たちのことをどう思っているでしょうか。

大人はいつの時代も「今どきの若者は…」と否定的に見がちですが、
この本を読めば、きっと若者たちに対する印象が変わるはずです。

今日ご紹介する本はこちら。

『声をあげて、世界を変えよう! よりよい未来のためのアンダー30の言葉
/アドーラ・スヴィタク、訳:長尾莉紗、イラスト:カミラ・ピンヘイロ』

この本には、30歳以下の世界の若者45名の功績とスピーチが収録されています。

45人の中には、タリバンによって襲撃されたノーベル平和賞受賞者で
教育機会論者のマララさんや、環境活動家のグレタさんもいます。

また、今の時代の若者だけでなく、かつての若者たち、
たとえば、フランスの英雄ジャンヌ・ダルクや
1960年代や1990年代の若者もいます。

どの若者も常識を疑い、
おかしいことはおかしいと声をあげ、
どうしたらよくなるのか改善策を自分たちで考え、
実際に行動を起こしています。

「これ、おかしいよね?誰かやってくれないかな」ではなく、
どうしたらいいのか、自分で解決すべく行動に移しているところがすごい!

たとえば、設計者・発明家のケネス・シノヅカさんは、
アルツハイマー病を患う祖父が夜中にベッドから起きて
外にさまよい出てしまうことを心配し、靴下センサーを開発します。
その靴下を履いた人がベッドから出ると、
介護者にアラートが送られるという仕組みです。
なんと彼が14歳の時のことです。

ケネスさんは、スピーチでこう話しました。

「世界変えることは、ほんの小さな出来事をきっかけに、
ひとりの人間の手によって始まるのです」


青少年の活動を支援する活動家のイシタ・カティヤルさんは、
「大人になったら何になりたい?」と子どもに尋ねるのをやめて、
子どもたちに今何ができるかを尋ねて、
その夢をサポートしてほしいと訴えます。
そして、今を生きることが、よりよい未来を創ると言います。


起業家・服飾デザイナーのメガン・クラッスルは、
年齢の低い女子に合ったブラジャーが無いことに気付き、
妹やその世代の女子たちのために、
ネットで生地の仕入れ先を調べ、
仕立て屋さんやアパレル業界の大人たちに相談しながら
自ら作ってしまいます。

この低年齢向けの下着は大人気となり、
彼女は「タイム」誌の「最も影響力のあるティーン25人」
にも選ばれたそうです。


他には、女の子の早すぎる結婚に反対する14歳の活動家、
廃品から音楽プレーヤーとラジオ送信機を組み立てた14歳の発明家、
北朝鮮を逃れてきた人権活動家、
12歳で報道メディアを立ち上げたジャーナリストなどもいます。


大人になればなるほど、良くも悪くも現状を受け入れるというか、
考えることを放棄してあきらめてしまいがちですが、
若者たちは未来をあきらめていません!

この本は、彼らと同世代の10代から大人まで
多くの皆さんに読んで頂きたい一冊です。
きっと若者たちから気付かされることがあると思います。

そうそう、この本はカラフルでポップなイラストもいいんです。
この本に出てくる若者たちは写真ではなくイラストで描かれているのですが、
どの若者もピュアで力強いまなざしが印象的です。

yukikotajima 11:20 am

『最強脳』『スマホ脳』

2022年1月5日

明けましておめでとうございます。
今年も毎週水曜の13:45頃〜のユキコレ(grace内コーナー)では、
私、田島オススメの本を紹介していきますので、
どうぞよろしくお願いします。

さて、年末年始はずっとスマホを見ていた方もいるのでは?
普段あなたはどれくらいの頻度でスマホをチェックしていますか?

なんと私たちは1日に2600回以上スマホをさわり、
平均して10分に一度スマホを手に取っているんですって。
時間すると一日4時間だそうです。

何の本の話をしているか、もう気付いた方もいるのでは?
2021年に一番売れた本『スマホ脳』です。

本を書かれたのは、スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン先生。
日本のメディアにもよく登場していましたよね。

ハンセン先生によると、スマホの使い方を間違えると、
睡眠障害、うつ、記憶力・集中力・学力の低下、依存といった
様々な問題を引き起こしてしまうそうです。

では、どうしたらいいのか?

ハンセン先生のもとには、たくさんの質問が寄せられたそうです。
中でもご自身のお子さんを心配する親御さんからの質問が多かったのだとか。

今日ご紹介するのは、そういった質問に対する答えとなる本です。

『最強脳 『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業
/アンデシュ・ハンセン 著 、久山葉子 訳(新潮新書)』


この本は「私たちの脳の取り扱い説明書」と言える本で、
親子で読めるように書いたそうです。
ハンセン先生が『スマホ脳』の前に書かれた『一流の頭脳』のジュニア版で、
教育大国スウェーデンでは、10万人の小学生が読んだのだとか。

そもそも私たち現代人の脳は、4万年前の「サバンナ脳」と同じなんですって。
食べ物を集めたり、獲物をつかまえたりしていた時代と同じままなのです。

そして、当時から私たち人間は「生きのびるために良いこと」をすると、
ドーパミンが出て、気分が良くなるそうです。

ところが、今の時代、私たちは獲物をつかまえなくても
いつでも好きなものが食べられますよね。

でも、気分が良くなることはしたいので、
お菓子やジュースもたくさん食べたいし飲みたくなるそうです。
また、スマホも同じで、スマホを使うことで多くのドーパミンが出るのだとか。

もちろん、スマホにはいい面もたくさんありますが、
ドーパミンのわなにはまらないようにすることが大切だそうです。

今の子どもたちは、すぐにごほうびをもらうことに慣れてしまっているからこそ、
何に時間を使うかが大事だと言います。

では何に使えばいいのか。
脳トレ?実は、脳トレはそのトレーニングがうまくなるだけで、
脳のトレーニングにはならないのですって。知らなかったー!

では何をすればいいのか。
それは、「運動をすること」です。

実は、本の2ページ目にさっそく答えが書かれています。

そして、この本には、なぜ運動が脳にいいのか、どんな運動をしたらいいのかが、
小中学生向けのわかりやすい表現で書かれています。
詳しくは、この本を読んでみてくださいね。

ちなみに、スウェーデンの小学校では、毎日体育の授業をしたことで、
成績が上がったという研究結果もあるそうですよ。

また、ハンセン先生によると、この本をしっかり読んだ人は、
前よりも幸せな気分になり、賢くなり、集中もできるようになり、
ストレスに強く、発想力が豊かになり、ゲームも上手くなり、
さらには記憶力も良くなるのだとか。

私はこのハンセン先生の言葉を読んだだけでいい気分になりました。
きっとたくさんのドーパミンが出たように思います。

そして、大人の私も今年は去年以上に運動をするぞ!
とあらためて誓いました。
今年は体を鍛えるために運動を頻繁にしようと思っていましたが、
体だけでなく脳もあわせて鍛えられるなんて、なんだか得した気分です♪

『スマホ脳』が未読の方もこの本だけでもぜひ読んでみてください。
親子向けで読みやすいので、難しい本は嫌!という方にもオススメです。

あなたも新年の1冊目にいかが?

yukikotajima 11:52 am

2021年ユキコレランキング!田島が選んだ1位の本は…

2021年12月28日

今日のgraceは、年末の特別編成のため
火曜日ですが、私、田島がgraceを担当します。
そして、今日が年内最後のgraceです。

明日明後日のgraceはありません。

さて、毎年最後のgraceの本紹介コーナー「ユキコレ」では、
田島が選ぶ本ランキング「ユキコレ ランキング」を発表しています。

最近は、リスナーの皆さんからも発表を楽しみにしている!
と言われることが増え、嬉しい限りです。

先日、紀伊国屋書店富山店に行ったときには、
書店員の方から「今年の田島賞は?」と聞かれました。(笑)

毎年のことですが、今年も悩みました。
選ぶ基準は、その年ごとに少しずつ異なるのですが、
共通しているのは、いかに心に残り続けたか、ということです。

たくさんの本を読んでいると、
読んだ直後は「ああ、面白かった!」と思っても
しばらくすると忘れてしまう本もあります。それも多々。。。
今年の本ですらそうです。

そんな中でもずっと心に残り続け、時々ちらりと思い出す作品があります。

今年私が選んだ本は、読書中は心が大きく動かされ、
読んだ後は心が温かくなり、その後もじわじわ保温が続くような作品です。

***

※本のタイトルをクリックすると、田島の本の感想ページが開きます。


1位:『犬がいた季節/伊吹有喜(いぶき・ゆき)【双葉社】』

この作品は、目が腫れるほど泣きました。
昨夜、あらためて読み直しましたのですが、やはり泣きました。

『犬がいた季節』は、三重県の高校に通う高校三年生たちの連作短編集で、
どのお話にも学校で生徒たちが世話をしている「コーシロー」という犬が出てきます。
物語は、1988年から2000年までコーシローが高校で過ごした12年間が描かれています。

どの時代の高校生たちも色々悩んでいます。
自分の気持ちを人に伝えられなかったり、あとから人の本心を知ったり。
そして、悩んだり後悔したりしながら、自らの道を選び進んでいきます。

最後には、令和元年も描かれ、登場人物たちのその後の人生も明らかになります。

現役の高校生にも、大人の皆さんにもぜひ読んで頂きたい一冊です!


2位:『ばにらさま/山本文緒(文藝春秋)』

この秋、お亡くなりになった山本文緒さんの作品です。
山本文緒さんの作品には、多感な学生時代からたくさん影響を受けました。

『ばにらさま』は、二度読みしたくなる短編集で、
短いお話ながらも「え?どういうこと?」という驚きに満ちた
読書の面白さ、本ならではの楽しさを堪能できた一冊でした。


3位:『川のほとりで羽化するぼくら/彩瀬まる(角川書店)』

こちらは、五感を感じさせる文章が読んでいて心地良い一冊でした。

「今の時代」が切り取られた短編集で、
たとえば、働く妻に代わって家事育児をメインにする夫などが出てきます。

どうしたらもっと自分らしく生きていけるのだろう…
と思っている方は、この短編集からきっとヒントが貰えると思います。

***

偶然ですが、選んだ3冊ともに短編集でした。
長編も読みましたが、今年私の心をつかんだのは短編集だったようです。
短編ですと、まとまった時間が取れそうに無いという方でも
少しずつ読み進めることができますので、読みやすいと思います。

ぜひ年末年始の本選びの参考になさってみてください。

今年も私の本紹介にお付き合い頂きありがとうございました。

yukikotajima 11:51 am

『新版 いっぱしの女』『ちいさな手のひら事典 薬草』

2021年12月22日

graceでは、毎週水曜日の13時45分ごろから
「田島悠紀子コレクション、略してユキコレ」のコーナーで
様々な本をご紹介しています。

今日は、リスナーの皆さんからgrace宛に
「読みたい!」「早速読んだよ」とメッセージが届くなど、
すでにgraceも話題になっている本です。

『新版 いっぱしの女/氷室冴子(筑摩書房)』

約30年前の1992年に刊行され、今年「新版」として再刊行された
人気小説家、氷室冴子さんの名作エッセイです。

北日本新聞の「02」で山内マリコさんが紹介されているのを機に
この本のことを知りました。

そして、早速読んでみたのですが、これがとても良かった!

本が良かったことと、リスナーの皆さんからのメッセージのことを
山内さんに伝えたところ、とても喜んでいて、
ぜひ多くの方に読んでいただきたいとおっしゃっていました。
ちなみに、山内さんは来年、新刊が出る予定だそうです。
こちらも楽しみですね!

さて、話を『新版 いっぱしの女』に戻します。

著者の氷室冴子さんは、
1980年代から90年代にかけて活躍された作家さんで
2008年にお亡くなりになりました。

『なんて素敵にジャパネスク』や『クララ白書』、
スタジオジブリがアニメ化した『海がきこえる』
といったヒット作で知られています。
昔よく読んだわ〜。懐かしい〜。という方もいるのでは?
私は氷室さんと言うと「コバルト文庫」の印象が強いです。

『いっぱしの女』は、氷室さんが30代のころ、お書きになったエッセイです。
1992年の今から約30年前に書かれたのですが、まったく古さを感じません。
それどころか今の時代に合っているのです。

もし今、このエッセイに書かれているようなことをSNSにアップしたなら、
きっとたくさんの「いいね」がつき、そして拡散されると思います。

当時、氷室さんは様々なインタビューを受けながら違和感を感じていたそうです。
何でこんな質問をするんだろう?とか、
あとからインタビュー記事を見た時に、私こんな言い方してたっけ?とか。
記事ではキャピキャピの女の子語になっていることが多かったそうです。

そこで、自分がどういう“三十女”なのか、知ってみたいと思って
エッセイを書くことにしたのだとか。

エッセイは、人との会話の中で感じた違和感などが正直な言葉で綴られています。

「違和感」は伝え方次第では「ただの愚痴」になってしまいますが、
氷室さんの場合は、読んでいて共感できますし、
時には相手を打ち負かすこともあり、スカッとします。

例えば、独身の氷室さんはそれだけで
年上の既婚女性から嫌なことを言われることもあるものの、
その女性に対して、相手が黙ってしまうくらいの一言を放ちます。

また、氷室さんは「あなたってこういうタイプよね」と言われる度に、
そのイメージの枠に押しこめられてしまいそうで嫌だったそうです。

これ、私も苦手です。
「田島ってこういうタイプだよね」と言われる度、
それとは逆のことをしたくなりますもん。(笑)

あと、「女ってこうでしょ?」という言い方にも注意が必要だと言います。
氷室さんですら使ってしまい、「女」を「私」に書き直していたそうです。

確かに「女って他人の不幸が好き」のような
女性をひとくくりにするような言葉って
少し前までは当たり前のように使われていましたよね。
さすがに令和の今は、そういった決めつけは前よりは減ってきたように感じますが。

でも、氷室さんは30年前からその違和感に気付いていたのですよね。さすがです!

『いっぱしの女』は、約30年前の本なのに、まったく古びていません。
もちろん、懐かしさを感じる話題もありますが、でも感覚的なものは今と変わりません。

令和の今、復刊されたのは、やっと時代がこの本に追いついたということなのかも。
ほんとこの本を読んで良かった!

ぜひ男女問わずお読みください。
きっと大事な気付きがたくさんあると思います。

***

今日はもう一冊!
クリスマス前なので、クリスマスプレゼントにオススメの本です。

『ちいさな手のひら事典 薬草(グラフィック社)』

こちらは、富山県美術館のミュージアムショップで買ったものです。

レトロな装丁の可愛さに惹かれ買ってしまいました。
サイズは手にすっぽり収まるくらいで、
ページの縁は金で彩られていて華やかなので、
クリスマスプレゼントにもいいと思います。

「小さな手のひら事典」シリーズは、
「花言葉」「月」「魔女」「天使」「ねこ」
などもあります。

ちなみに、ミュージアムショップで一番人気は「ねこ」だそうです。
私は「花言葉」が欲しかったのですが、無かったので「薬草」にしてみました。

ハーブなどの薬草の由来や効用がイラストともに紹介されています。

例えば「ラベンダー」という名前は、
古代ローマ人が、ラベンダーで湯に香りをつけて入浴していたことから、
ラテン語で「水で洗う」という意味の「ラヴァーレ」にちなんでいる、
といったようなことが載っていて、読み物としても楽しめました!

***

さて、毎年最後の「ユキコレ」では、
私、田島が選ぶ「本ランキング」を発表しています。

本来なら12月29日が年内最後の水曜日なのですが、
今年は年末の特別編成につき
12月28日(火)が、私が担当する年内最後のgraceになります。

いいですか。火曜日ですよー。

なお、29日(水)30日(木)のgraceはありません。
来週は、27日(月)が垣田さん、28日(火)が田島です。

そして、「ユキコレ本ランキング」は、28日(火)の14時25分ごろ発表します。
合わせてこちらのブログにも同じ内容でアップしますので、
どうぞよろしくお願いします。

さて、私はどの本を今年の1位にするのでしょう?
良かったら皆さんの今年1位の本も教えてください!

yukikotajima 11:56 am

『虚魚』

2021年12月15日

あなたは肝試しをしたことはありますか?
また怪談はお好きでしょうか。

私は子どもの頃からかなりの怖がりで、
家族で旅行に行っても夜の宿の雰囲気が怖くて寝られず、
子どもの頃は母の手をずっと握り続けていました。

なぜこんなに怖がりになったのかというと、多分、テレビのせいかと。(笑)

私が子どもの頃は、テレビで怖い話をよくやっていたんですよ。
見なきゃいいのに、なぜか見てしまって
夜、なかなか寝られないなんてことを繰り返していました。

さすがに大人になった今は、怖がりも落ち着きましたが、
積極的に肝試しをしたいとは思いません。

でも、あえて怖い場所に積極的に行く人たちもいるようです。

今日ご紹介する本は、本当に人が死ぬ怪談を探し、
その怪談が本物かどうか確かめ続ける若い女性二人の物語です。

『虚魚(そらざかな)/新名智(にいな・さとし)【角川書店】』

新名さんは、この作品で横溝正史ミステリ&ホラー大賞大賞を受賞しデビューしました。

この賞は、歴史ある「横溝正史ミステリ大賞」と「日本ホラー小説大賞」を
2018年に統合した新たな文学新人賞のことです。

『虚魚』は、選考委員の皆さんから絶賛され大賞受賞となったそうです。

たとえば、『闇祓』が話題の辻村深月さんは、

怪談と怪異を巡る新たな小説の形が一緒に解き放たれた、と感じた。文句なしの大賞。

と評しています。

***

『虚魚(そらざかな)』とは、どんなお話なのか、ご紹介しましょう。

20代の女性二人、三咲とカナちゃんは、ある理由から一緒に暮らしています。
実は二人の利害関係が一致しているのです。

三咲は、怪談師として活躍しており、
日本各地の「体験した人が本当に死ぬ怪談」を集めています。

両親を事故で亡くした三咲は、
幽霊や怪談、呪いや祟り、オカルトや超常現象などの情報を集めては、
その怪談で両親を事故死させた男を殺したいと思っています。
呪いや祟りなら法律を犯すことなく殺せるからと。

一方のカナちゃんは、ある理由から、呪いか祟りで死にたいと思っています。

三咲は初めてカナちゃんに会ったときに「わたしで実験してみなよ」と言われ、
二人はともに暮らし、様々な怪談を試し続けています。

ところが、どの怪談も嘘ばかりです。

そんなある日、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂を耳にします。
三咲は早速、その怪談を調べ始めます。
すると、同じ川の河口で似たような怪談がいくつも発生していることがわかります。

様々な噂をまとめると、
その魚は言葉を発し、その言葉を聞いたことで死んでしまうらしいことがわかります。
いったいその魚とは?

二人は様々な人から協力を求め、その不思議な魚を探しことにします。

果たして、その魚とは?
そして、二人の目的は達成できるのか。
(となると、カナちゃんは呪い殺されてしまうわけですが…)
どんな結末が待っているのか。
ぜひドキドキしながら本のページをめくってみてください。

***

私、怖い話は苦手なのに!
最近、ホラー系にも手を出すようになってしまいました。(笑)
そして、この本も怖いと思いながらも
結局ノンストップで最後まで読んでしまいました。

三咲とカナちゃんの二人のキャラクターが程よくドライで、
文章もテンポがいいので、ページをめくる手は止まらず、サクサク読めました。

だからと言ってサラリと読めてしまうかといったら、そういうわけでもありません。

ちゃんと怖いです。(笑)それも色んな意味で。

三咲とカナちゃんと一緒に「本物の怪談」を探している気分で
本のページをめくってみてください。

二人はいったい何を見つけるのでしょうか。

yukikotajima 11:10 am

『冬を越えて』

2021年12月8日

昨日は二十四節気の一つ「大雪(たいせつ)」でした。
まさに大雪の降る頃と言われています。
富山は先週の木曜日に初雪を観測して以来、雪は降っていませんが、
これからどんどん寒さが厳しくなっていきます。

今日もどんよりとしたおなじみの北陸の冬の空の色をしていますが、
この鉛色の空が続くことで、
冬は元気が出ない…という方もいるかもしれません。

冬には「冬季うつ」もありますしね。

日照時間が短くなると起きるとも言われているうつ病のことで、
悲しみや絶望感、過眠、過食などの症状があるようです。

また、季節と関係なく、人生そのものを四季にあてはめ、
良くないことが続いたときにも「冬の時代」と言うことがありますよね。
あなた自身は、今どの季節の状態でしょうか?
また、これまで何回、人生の冬を経験してきたでしょうか。

今日ご紹介する本は、そんな「冬の時代」を過ごす
40歳の女性の「人生体験記」です。

『冬を越えて/キャサリン・メイ 訳:石崎比呂美』


この本は、イギリスでは去年2月に発売され、
11月にコロナ禍のアメリカで発売されたところ話題になり、
『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー入りを果たしたそうです。
そして、現在では20を超える国での出版が決まっている世界的な話題作です。

著者は、ロンドン近郊の町に住む女性です。

四十歳を目前にストレスから仕事を辞めることにした直後、
夫が病気で倒れてしまいます
その後、自分自身も体調を崩し、
さらに息子も不登校になってしまうなど、
まさに冬の時代を過ごしています。

著者によると、人生の冬は突然やってくることもあれば、
ゆっくり忍び寄ることもあるそうです。
そして、その冬を避けることはできないのだとか。

でも、著者は10代の頃から冬の過ごし方を学んでおり、
冬がやってきそうな頃にはわかるようになったそうです。

では、冬の時代がやってきてしまったとき、どうすればいいのかというと、
春が来るまで、できるだけ快適に冬を乗り切る方法
を見つけることが大事なのだとか。

冬がやってきてしまった著者は、
冬をよく知る人たちと話をし、冬に対する理解を深めていきます。

たとえば、家で静かに手を動かす仕事もいいそうで、
編み物にはヨガと同じくらい血圧を下げ、
慢性痛を緩和する効果もあるそうです。

冬季うつの方からは、家じゅうの電球をすべて明るいものに変えて、
点けっぱなしにしているという話を聞きます。

また、話を聞くだけでなく、どうやって冬をしのぎ、春を迎えるのか、
著者自身、実際、色々試していきます。

アイスランドに旅に行ってサウナに入ってみたり、
真冬の海に入る冷水浴をしてみたり。

とは言え、冬の時代を快適に過ごす方法は人によって違います。
ですから、この本でも「こうすれば絶対に元気になる!」
というような決めつけはしていません。
だからこそ信頼できますし、読んでいて疲れません。

今まさに、冬の時代を過ごしている方は、
あなたは自身の方法で心と体をいたわってみませんか。
この本を読むのも、ひとつの方法かと思います。

そうそう!

「冬の時代」というと、
まるで冬が悪者のように思えてしまいますが、
悪いことだけではありません。

冬は考えを深め、身体を休める時期であり、
暮らしを整え、英気を養うための季節だと著者は言います。
冬の木も死んでなどいない。春に備えているだけだと。

また、すべてが壊れるときは、なんでも手に入れるチャンスで、
それこそが冬の贈り物だと言います。

冬の時代を過ごしている方は、
読んだ後、すこ〜し春が近づいたように感じられるのではないかしら。

気になる方は、無理せずご自身のタイミングで読んでみてくださいね。

yukikotajima 12:27 pm

『夜が明ける』

2021年12月1日

今、あなたは何かに対して頑張っていますか?

仕事、趣味、勉強、家事など
人によって力を入れていることは異なると思いますが、
いずれにしても、あなたを突き動かす原動力はなんでしょう?

今日ご紹介する小説は、
友人から、ある俳優に似ていると言われたことで、
その俳優になりきることを人生を捧げた男性「アキ」と、
そのきっかけを作ってしまった友人である「俺」の物語です。

『夜(よ)が明ける/西加奈子(新潮社)』

物語は「俺」の目線で進んでいきます。

二人が出会ったのは高校時代です。
「俺」はいたって普通の家庭で育ちましたが、
アキは、母親にネグレクトされていました。
また、アキは身長が191センチもある上、
高校生らしい溌剌とした雰囲気は無かったため、
みんなから恐れられていました。

共通点などない二人でしたが、「俺」がアキに
「知る人ぞ知るフィンランドの映画に出てくる俳優に似ている」
と伝えたところから、交流が始まります。

そして、その俳優になりきることがアキの人生の目的になり、
学校内でもモノマネをし始め、気付けばアキは人気者になります。

二人の交流は、高校を卒業して離れ離れになってからも続いていきます。
「俺」はテレビの制作会社に就職、アキは劇団に所属してと
二人とも夢に向かって頑張り始めます。
ところが、2人とも理不尽なことも多く、なかなか思い通りにはいきません。
そして、気付けば33歳。
大人になった二人はそれぞれどんな人生を送っているのか。
ぜひこの続きは、本のページをめくってみてください。

10代後半から30代前半の二人の男性の物語には、
今の日本の問題がぎゅうっと詰まっていました。
働いても働いてもお金が足りないという貧困と過重労働の問題、
職場でのパワハラ、親から子への虐待…。

とくに「俺」が働くテレビの制作の現場が酷くて、
体力もやる気もあった「俺」がどんどん壊れていく様が
リアルな温度と質感で描かれているため、
読んでいるうちに「俺」が私自身のような気がしてきて、
辛さを自分のこととして感じている私がいました。

肩書きだけで偉そうな人に対して苛立ちを感じながらも何も言えず、
その一方で上の立場の人にも正論を堂々と言える正しすぎる女性の後輩。
一見いい人にそうに見えて、自分の思い通りにさせようとする年上の女性。
突然いなくなるADたち。文句ばかりの出演者たち。
もうこれでもかというほど、ストレスが積み重なっていきます。

読みながら本当にしんどくなりました。
もはや私は本を読んでいるのか、体感しているのかわからなくなるほどでした。

西さんの文章からは、温度とか匂いとか表情とか音とか
感覚的なものすべてが実際、感じられるのです。
そのため、西さんの作品を読む度、作品の世界に入りすぎちゃうのです。

今回も入り込みました。
だからこそ、読み終えたときに光が見えました。
今回の本のタイトルの『夜が明ける』の通り、
読み終えた時、視界が、そして心が、明るくなるのを感じました。

頑張っても頑張ってもうまくいかない。
それは、自分の努力が足りないから。
自分ができない人間だから。
全ては自分のせい…。
と、思っている方はいませんか?

そんな方にはぜひこの本の言葉に出合ってほしいと心から思います。

それから、読み終えたら、本のカバーも外してみてくださいね。
本のヌードも素敵ですから。
読んだ人だけがわかる感動がありますよ。

ちなみに躍動感ある力強いタッチの表紙のイラストは
西さん自身がお描きになっています。

yukikotajima 11:39 am

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』

2021年11月24日

あなたのまわりには「頭のいい人」はいますか?
また、あなた自身は「頭のいい人」になってみたいと思いますか?

そりゃあ「頭のいい人」になってみたいけれど、
そんなの無理に決まってるよ、と思いました?

でも「頭のいい人」がどんなことをしているのか知ることはできます。
そして、それを真似することで、人生がちょっと生きやすくなるかもしれません。

今日ご紹介する本はこちら。

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた
/中野信子(アスコム)』

著者は、脳科学者の中野信子さんです。

中野さんは、東京大学を卒業し、
東大の大学院で医学博士号を取得した後、
フランス国立研究所に研究者として勤務し、
世界中のたくさんの「頭のいい人」の姿を見てきたそうです。

そして、逆境も自分の見方にして、したたかに生き抜いていくのが、
世界で通用する、本当に賢い人の要件だと強く思われたそうです。
と同時に、日本人にはそれが足りないと。

でも、少し意識を変えるだけで「頭のいい人」には誰でもなれるそうです。

そして、脳のメカニズムから見ても
「世界で通用する頭のいい人」がやってきたことは
理にかなっているそうなんです。

では、具体的に「頭のいい人」はどんなことをやっているのか、
少しご紹介しましょう。

苦手なことはきっぱりと断る

苦手なことはできる人に任せる。
人は誰かに頼りにされると嬉しいものなので、
結果的に頼んだ人も頼まれた人もハッピーというわけです。

逆に自分で抱え込んでしまってはいい結果は残せないそうです。

決まった儀式を行う

勉強や仕事の前に集中力が高まる動作をする。
中野さんの場合は、サイフォンで美味しいコーヒーをいれているそうです。

また、どうしてもやる気が出ない時は
「ちょっとだけガマンして、5分間だけ集中してやってみる」
と、脳は勝手に勉強モードに入ってくれるのだとか。

集中力を身につけるのではなく、集中できる状態を作る

詳しくはこの本を読んで頂きたいのですが、
途中で邪魔が入らないようにすることも大事なんですって。
たとえば、スマホのメッセージを見てすぐに返信したとしても、
頭をもとの集中状態に戻すのに30分以上かかることもあるそうですので、
集中したい時は、スマホは見えないところに置いたほうが良さそうですね。

生きる指針も友となる人物も本の中では必ず出会える

これは本好きの私が一番共感したことです。
私には味方はいないなと思っても本の中には絶対にいる、
と考えれば、前向きに色々なことに挑戦していけるそうです。
確かにその通りです!

ちなみに、本ではなく「マンガ」を使って勉強するのもいいそうです。
著者の中野さんは受験生時代に
あるマンガを地理の先生からすすめられたそうです。
この作品、有名ですが私はちゃんと読んだことが無いので、
今度、読んでみようと思います。
マンガのタイトルはぜひ本を読んで確かめてください。

という感じで「世界で通用する頭のいい人」たちの
31の習慣が紹介されています。

ぜひあなたもこの本を読んでできることから始めてみてはいかがでしょう?
中野さんによると、3週間続けることがポイントだそうです。

今から本を読んで3週間というと、ちょうど年末年始の頃ですね。
新しい年を新しい自分で生きていくのも良さそうじゃないですか?

yukikotajima 11:47 am

『闇祓』

2021年11月17日

セクハラ、パワハラ、モラハラをはじめ
今や様々なハラスメントがありますが、
こちらは聞いたことはあるでしょうか。

ヤミハラ

ヤミハラとは、闇ハラスメントの略です。
闇ハラスメントは、精神・心が闇の状態にあることから生ずる、
自分の事情や思いなどを一方的に相手に押しつけ、不快にさせる言動・行為。
本人が意図する、しないにかかわらず、相手が不快に思い、
自身の尊厳を傷つけられたり、脅威を感じた場合はこれにあたるそうです。

ヤミハラなんて初めて聞いた!という方もいるかもしれませんが、
人気作家の辻村深月(つじむら・みづき)さんが作った言葉です。

今日ご紹介する本は、10月29日(金)に発売されたばかりの
辻村さんの小説『闇祓(ヤミハラ)』です。

辻村さんはこれまで様々な賞を受賞されていますが、
最近では2018年に『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞されました。
この本、とても良かったです。まだお読みでない方はぜひ!

今回の『闇祓』は、辻村さんにとって初の本格ホラーミステリ長編です。

物語は5つの章にわかれており、
学校、職場、団地などの様々な場所でのヤミハラが描かれています。

つまり、どこにでもヤミハラは存在するということです。

第一章は、高校2年生の澪(みお)が主人公です。
クラスの委員長で、周りからは「優等生」と言われ、
自分でも人に対して気を遣いすぎると思っています。

そんな澪が、転校してきたばかりでクラスになじめずにいる
男子に対してもいつも通り親切に接したところ、
ずっと見つめられたり、突然、家に行っていいか聞かれたりしてしまいます。

恐怖を感じた彼女は、憧れの部活の男子の先輩に助けを求めます。
頼りがいもあって優しい先輩に澪はどんどん惹かれていきます。

しかし、ある日、転校生から「先輩と仲良くするな」と言われてしまいます。

この続きは、ぜひ本を読んでみてください。

第一章だけでもかなり濃かったです。
この後はきっとこうなるのでは?という私の予想は簡単に裏切られ、
別の恐怖が襲ってきました。いやあ、ほんとこわかった!

そして、第二章も同じパターンでくるのかしら?と思ったら、
こちらもまたまた予想が外れまして、
本のページをめくりながら、ずっとドキドキしていました。

学校にも会社にも近所にもヤミハラをする人たちはいるもので、
一見いい人そうだったり、優しそうだったりする人から
ヤミハラをされることもあるので注意が必要です。

距離感がおかしく、一方的に自分の都合や事情、思いを押し付ける人、
あなたのまわりにもいませんか?

この人おかしい!と思って離れられればいいけれど、
追いつめられることで、考えることすら嫌になってしまうこともありますよね。

この物語にも自分が一番正しいと思っている人が出てきます。
職場の上司がそういう人で、間違いを指摘しても全く伝わりません。
そして、部下は思うのです。この人には絶望的に、言葉が通じないと。

時々いますよね、こういう人。
自分の話ばかり押し付けて、全く人の話を聞かない人。

そういう人の話を聞いた後の疲労感たるや。。。
でも、その方は、逆に元気になっていたりるすのですね。
話をしながら元気を奪っているんじゃないかなと思いますもん。

わかるー!今、共感された方もいるかもしれませんが、
今、ちょっと気持ち良くないですか?

自分のほうが正しいと思って、
間違っている人を非難しているときって、
ちょっと快感だったりしませんか?

でも、その正しさが行き過ぎると、それもヤミハラになります。
この物語にも正しすぎる人が出てきます。

他にも様々なヤミハラがこの物語には出てきます。

ちなみに、本のタイトルはヤミハラと読みますが、
カタカナではなく闇を祓うという漢字が使われています。
その意味については、ぜひ最後まで本を読んで確かめてください。

本当はもっと色々言いたいことはあるのだけど、
なるべく情報はいれずに読んでいただきたいので、だいぶ我慢しました。(笑)

『闇祓』は、フィクションですが、どこまでもリアルな物語で、
読み終えた直後に、まさにヤミハラを感じた出来事が続きまして、
ヤミハラという言葉を知らなかったときは嫌だなという感情だけでしたが、
ヤミハラ認定すると、結構ヤミハラってあふれているのかもと思いました。

と同時に私がヤミハラ加害者にならないようにしなければ、とも思いましたが。

あなたも『闇祓』で様々なヤミハラを客観的に見てみませんか?
そうそう、もちろん怖いだけでなく、物語としても大変面白かったです!

yukikotajima 11:37 am

『君の顔では泣けない』

2021年11月10日

毎週水曜のgraceでは13時45分頃からの「ユキコレ」
様々な本をご紹介しています。

今日ご紹介する本は、小説野性時代の新人賞を受賞した話題作です。

『君の顔では泣けない/君嶋彼方(きみじま・かなた)【角川書店】』

9月の終わりに出たばかりなのですが、
この本、今、話題になっているようです。

ここまでの情報だけで「読んでみたい!」と思った方は、
今日の私のブログは読まないでください。(笑)

内容に関する情報を一切いれずに読んでいただいたほうが
え?どういうこと?という心地いい裏切りが味わえますので。

でも、そうなると、この本の紹介が一切できないので、
少しのネタバレならOKという方は、最後までブログをお読みください。(笑)

では、紹介していきます。

***

この本は、こんな一文でスタートします。

年に一度だけ会う人がいる。夫の知らない人だ。

この一文からどんなことを想像しますか?

私は不倫のお話かなと思いました。

夫と娘を残して、ある人に会いに行く妻。
そのある人というのは地元の男性であることが分かります。
久しぶりに会った二人は喫茶店で会話を始めます。

でも、女性のほうは自分のことを「俺」と言い出します。
そして、相手の男性はどうやら女性であることがわかります。

ん?私、名前を勘違いしてる?どういうこと?
と、ここで一度こんがらがります。(笑)

もしかして心と体が一致していない二人の物語?
そして、それを結婚した旦那さんに伝えていないということ?
と思いながらページをめくったところに答えが書かれていました。

二人は15年前に体が入れ替わってしまったようなのです。
しかも一度も体は元に戻っていないのだとか。

女性になった彼は、なんと結婚もして出産までしています。

二人が入れ替わったのは高校一年生の時です。
きっといつかは戻るだろうと思って
入れ替わったことは二人だけの秘密にすることにします。

家族にも友人にもバレないよう
二人はそれぞれの家のルールや家の間取りの他、
好きな食べ物など、お互いのことを伝え合います。

そして、二人はそれぞれ自分の顔を見ながら話をするわけですが、
彼は自分の辛そうな顔を見るのは、辛いと思い、あることを誓います。

元に戻った時に体の本来の持ち主である彼女が辛い思いをしないよう、
女性として完璧に生きて、家族も友人も騙してみせると。

物語は、入れ替わってから15年後と
入れ替わった当時のことが交互に描かれていきます。

また、交互というと、こういった入れ替わりの物語の場合
男女それぞれの視点で描かれることが多いですが、
この物語は、女性になった男性の目線だけで進んでいきます。

そのため女性になったことで感じたことがメインになっているのですが、
あまりにも女性の体や心のことが丁寧に描写されているので、
私は著者は女性だと思って疑いませんでした。

でも、読み終えた後に著者のことを調べたらなんと男性だったのです。
びっくり!

ちなみに主人公の彼は、女性になったことで
世の中の女性たちが様々な努力をしていたり
理不尽な思いをしていたりすることに気付きます。

また、客観的に自分の家族を見ることになるのですが、これが生々しかった。
他人だから仕方ないのだけど、態度がよそよそしいのです。

男女が入れ替わる物語は数多くあれど、
この物語からは今の時代の空気感を感じました。
また、設定はファンタジーだけど感覚的なものはとてもリアルでした。
一言でいうなら浮ついていない感じです。

物語では、2人が入れ替わってからしばらく経った時に、
男性になった彼女のほうは、自分の状況を受け入れ
「私は好きなことをする」と言い出します。

それに対し、彼は相変わらず元に戻った時のことを第一に考えています。
戻った時に自然にふるまえるように
彼女らしく生きていくことに力を注いでいます。自分らしく、ではなく。

果たして入れ替わった二人はその後どう生きていくことになるのでしょうか。

***

大変面白かったです!

この二人は、入れ替わったことを二人だけの秘密にしていますが、
この世界にたった一人でも自分のことをわかってくれる人がいる、
というだけで生きやすくなったりするのですよね。
もちろん100%全てを理解し合うことは絶対に無理です。
でも、味方がいるということは心強いよなと。

ちなみに、この物語では主人公の2人は恋愛関係にはありません。
それがいいなあと思いました。
男女の友情は成り立つのか?というような議論が以前はよくありましたが、
そうえいば最近は聞かなくなりましたよね。

恋愛に発展しない男女の物語は今後増えていくのかも。

そして、この物語、近いうちにきっとドラマ化されそうな予感がするわ。

yukikotajima 11:33 am

『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』

2021年11月3日

コロナ禍以降、健康への意識が高まった方もいらっしゃるのでは?

私もそんな一人です。
去年一年間の運動不足の結果、体重がじわじわと増え、
これではいかん!と思って運動を再開しました。
最近は、11月7日の富山マラソンに向けて練習をする日々を送っています。
あー、いよいよだ!緊張する〜。
富山マラソンへの参加を決め、トレーニングをするようになってから、
自分の体についても考えるようになりました。

今日ご紹介するのは「人体のしくみ」について書かれた本です。

『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険
/山本健人(やまもと・たけひと)【ダイヤモンド社】』

こちらは、9月1日の発売以来、発行部数が8万部を突破したという話題作です。

著者の山本健人さんは、現役の医師です。
また、「外科医けいゆう」としてSNSやブログで情報を発信しています。
Twitterのフォロワーは8万人という人気のお医者さまです。

山本さんによると、医学を学ぶことは、途方もなく楽しくて、
知れば知るほど、学ぶことの楽しさが増していくそうです。

そして、この学ぶこと知ることによる興奮を多くの人に味わってもらいたい!
と思ってこの本を書かれたそうです。

確かに、文章から山本さんのワクワク感が伝わってきました。
私は山本さんにお会いしたことはありませんが、
目をキラキラ輝かせながら文章をお書きになっていたのがわかりました。

医学の本と言うと、知らない&難しい言葉だらけで
頭の中に全く文章が入ってこないイメージでしたが、
この本は、まるで山本さんのお喋りを聞いているかのごとく、すいすい読めました。

もちろん知らない言葉もたくさん出てくるのですが(笑)、
実際に読者に「こうやってみて!」と自分の体で実験させたり、
難しい話もわかりやすい例えを交えながら説明しているので、
飽きずに読み進めることができるのです。

実験の例をいくつかあげますね。

2本のペン先を体の表面に当てて、その間の距離を縮めていくと、
ある距離から「二点で触れられていること」がわからなくなるのだとか。

また、右手で握りこぶしを作って親指を立てて、
目をつむって、何も見ずに左手で右手の親指をつかんでみる実験もあります。

こちらはすぐにできますので、ぜひやってみてください。
どうですか。きっと簡単につかめたのでは?

こんな感じで実際に試しながらなので理解もしやすいのです。
ちなみに、今挙げた2つの理由については、本を読んで確かめてくださいね。

他にも、高温多湿の夏に食べ物は腐るのに、なぜ人間は腐らないのかとか、
医師のガウンは白ではなく水色である理由とか、
医療ドラマでよく出てくる「メス」は意外に使わないとか、
興味がわきやすい話題が多いのです。
ちなみに、手術に使われる金属製の器具には、人物名のついたものが多いそうです。
日本語なら「田島!山口!」などど呼び続けているようなものなんですって。(笑)


さて、『すばらしい人体』は、5つの章にわかれています。

まずは、人体の構造がいかによくできているかから始まり、
その美しい人体がどのような経緯で「病気」という状態に至るのか、へと続きます。
そのほか、医学の偉人たちの功績や、最新の健康の常識、
医学に進歩をもたらした科学技術などの章もあります。

私が特に好きなのは、偉人たちの物語です。
偉人たちがどのように病気や治療薬を発見したのかが綴られているのですが、
ノーベル賞を受賞した人たちがいる一方で、
世界で初めて真実にたどり着いたのに
その功績が認められなかった天才医師も少なくないんですって。
誰よりも先取りし過ぎて誰にも理解してもらえなかったのです。

『すばらしい人体』は、医学に関する知識を得る面白さがあるのはもちろん、
読み物としても大変面白い一冊でした。

読んだ後は、日々頑張っている自分の体に対して
「いつもありがとう!」とねぎらいたくなりましたし、
大切にしていきたいとも思いました。

あなたも「人体のしくみ」について楽しく学んでみませんか?

yukikotajima 10:53 am