ゆきれぽ

2025年5月28日

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『おでかけアンソロジー ひとり旅  いつもの私を、少し離れて』

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ちょうど一年前の今ごろ、私は福井にひとり旅に行きました。

敦賀まで延伸した北陸新幹線に乗って、
久しぶりに福井のおろしそばを食べに行こうと思ったのです。

福井では、おろしそばの食べ歩きを楽しみながら、気になるところにヨリミチしていった結果、
当初考えていたのとは全く異なる旅になりました。

最終的には、最後に食べたとろろそばの美味しさと、
涼しいところで一息つきたいと思って入った福井駅近くのプラネタリウムが印象に残りました。
福井弁での星空解説が良かったのです。

福井に行く前は、おろしそばより、とろろそばに感動し、
プラネタリウムに行くことになるなんて思ってもいませんでした。

でも、だからこそひとり旅は楽しいなと思うのです。
この自由気ままなところがいいのですよね。

あー、またどこかにひとりでふらりと出かけたいなー。

なぜ私が突然一年前のひとり旅のことを思い出し、
また一人旅に行きたくなっているのかと言うと、この本を読んだからです。

『おでかけアンソロジー ひとり旅  いつもの私を、少し離れて』
だいわ文庫

このアンソロジーは、41人の著者による「ひとり旅」をテーマにしたエッセイ集です。
なんと言ってもこの41人の顔ぶれが豪華です。
まず角田光代さんからはじまり、次は村上春樹さんなんですよ。

村上春樹さんは、旅で使う鞄について綴っています。
旅ごとにぴったり適した鞄を選ぶのは難しいという話から、
村上春樹さんが実際に使っている鞄について語っているのですが、
短いエッセイながら面白かったです。

そのほか私が印象に残ったのは、久住昌之さんの高尾山のエッセイです。
リズミカルな文章で、まるで自分も一緒に高尾山を登っている気分になりました。

佐藤春夫さんが台湾の汽車に乗った時に見かけたイナゴの話も面白かったです。
座席に居座ったイナゴが旅しているように見えたという話は読みながらワクワクしました。

池波正太郎さんの文章にはハッとさせられました。
池波さんは、見知らぬ相手が自分にどのような態度を示すかで、
自分自身を知ることになると言います。
旅先では出会う人は皆知らない人だから、
自分が相手にどんな印象をあたえているのか、わかりやすいと。

さて、ここまでの紹介でお気づきかとは思いますが、
このアンソロジーに収録されている著者の中には、
現役作家だけでなく、昔の文豪たちもいます。

そして文豪たちのエッセイがとても面白いのです。
正直な心のうちを書いたエッセイは時代が異なっていても身近に感じられます。
と同時にタイムスリップ気分も味わえます。

そう、この本は読みながら旅気分が味わえるのです。
それも時代も行き先も目的も旅で感じることもみんなバラバラです。

たとえば、旅に本を持っていくのが好きという人もいれば、旅に本はいらないという人もいます。
せっかく旅をしているのに、本の世界に連れて行かれるのはどうなんだ?
とおっしゃるのは、1977年に亡くなった英文学者の吉田健一さん。
その気持ちもわかる!
たしかに本を読んでいると今目の前の旅に集中していない感じがしますものね。
これは今で言うところの、スマホばかり見るなということに近いのかもな。

でもこのアンソロジーを持ってひとり旅するのは悪く無いように思います。(笑)
ひとつひとつのエッセイは短いので、
ちょっとした待ち時間やカフェでコーヒーを飲みながら読むのにもちょうどいいかなと。
それに真似をしたくなる旅のスタイルもあるので、
旅の中で実践してみるのも楽しいかもしれません。

私はフリーライターのすずきなおさんの
「チャンスがなければ降りないかもしれない駅で降りてみる」
をさっそく実践してみたいと思いました。
これなら県内でもすぐにできますしね。

こんな感じで、面白かったエッセイを挙げていったらキリがありません。
とにかくとても面白かったです!

『おでかけアンソロジー ひとり旅  いつもの私を、少し離れて』は、
どのエッセイも短いのでスキマ時間にも読めますし、
文庫なのでバッグにも入れやすく、お求めやすい価格なのもポイントです。

ぜひあなたも気分転換に読んでみてはいかがでしょう。

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