ゆきれぽ

2026年4月29日

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『宙ぶらりんの箱』

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新年度になってもうすぐ一ヶ月ですね。自分なりに頑張ってきたけど、なんかうまくいかないという方もいるかもしれません。そんな時は同じくうまくいっていない人の話に耳を傾けてみるのもいいかもしれません。

『宙ぶらりんの箱』
片島麦子
双葉社

タイトルからして良くないですか?まさに私こそ宙ぶらりんだよ、と思った方はぜひお読みください。(笑)

さて、片島さんと言うと、以前未知生(みちお)さん』という小説をご紹介しました。

◎田島のブログは コチラ

『未知生さん』は、突然この世を去った未知生の葬儀に参列した人たちが、彼の思い出を振り返りながら自分自身についても見つめ直していくという連作短編集です。面白いのが、未知生に対して抱く印象がひとりひとり異なるということです。未読の方はぜひ。色々な気付きも得られますよ。私のお気に入りの一冊です。

『未知生さん』は未知生を知る人たちの語りで構成されていましたが、新刊の『宙ぶらりんの箱』はロープウェイの故障でゴンドラの中に閉じ込められた乗客たちによる連作短編集です。

事故が起きたのは、山の上の神社の秋祭りの日。神社に行くためのロープウェーが故障し、乗客がゴンドラの中に閉じ込められてしまいます。そこには、看護師、子ども連れの家族、女子高生、中年男性、老齢の男女が乗っていたのですが、全員無事に救出されます。

って、それはネタバレしすぎでしょと思った皆さま、ご安心ください。ここまではプロローグです。物語で描かれるのは、事故が起きたあとの彼らの日常です。

助かったのならそれで「めでたしめでたし」じゃないの?と思いきや、そうでは無いのです。故障したゴンドラから無事降りることができた彼らでしたが、事故をきっかけにその後の日常が大きく揺らいでしまうのです。

物語では、そんな彼らのままならない日常が描かれるのですが、うまくいかない感じの描き方が絶妙です。どれも「あー、わかるなあ」と思うことばかりで、私の何がダメだったんだろう…と思わず登場人物に自分を重ねてしまい、気付けば自分の物語として読んでいました。

ちなみに、たまたま同じゴンドラに乗り合わせただけの彼らでしたが、それを機に繋がりがうまれます。恋愛に発展した人や家族ぐるみの付き合いが始まった人もいれば、ある意外なものによって日常に変化が生じた人や、逆に人に変化を与えてしまった人もいます。果たして彼らの日常はどうなっていくのでしょう。

今日からゴールデンウィークです。『宙ぶらりんの箱』は連作短編集ですので、少しずつ読み進められます。ぜひお休みの間じっくりお楽しみください。

また、本の装丁も休日にぴったりです。鮮やかな色合いのシンプルなイラストは、ほのぼのとしていて、見ているだけで癒されます。

それにしても、偶然の出会いから影響を受けることもあれば、私自身が誰かの人生をちょっと変えてしまうこともあるかもしれないのですよね。今年のゴールデンウィークは、そんなことを意識しながら行動してしまいそう。できることならいい影響を受けたいし与えたいと思うけれど、そんなうまくはいかないか。(笑)

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