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『脳から見るミュージアム』『ポーラ美術館コレクション展』

2021年4月28日

「先日、神奈川の箱根に行ってきました♪」

今の私はすっかりそんな気分です。
まあ、実際私が訪れたのは富山県美術館なのですけどね。

先週の土曜から富山県美術館では、
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』
を開催しています。

ポーラ美術館の収蔵作品から、
モネやルノワールの印象派、
セザンヌ、ゴッホなどのポスト印象派、
マティス、ピカソといった20世紀を代表する画家たち、
そしてユトリロやシャガールなどのエコール・ド・パリに至るまで、
フランスで活動した作家の絵画と、化粧道具が展示されているという
大変豪華な展覧会です。

※一部の作品は撮影可でした。

◎企画展の詳細は コチラ

作品は時代ごとに展示されているので
各時代のトレンドや特徴がわかりやすい上、
作品の鑑賞ポイントも書かれていたため、
じっくり味わいながら鑑賞できました。

個人的には、以前、東京の美術館に企画展を見に行った
「ピエール・ボナール」や「セザンヌ」の作品は
内心興奮しながら鑑賞しておりました。

そして、これらの作品がここ富山で見られることを嬉しく思うだけでなく、
裏で大勢のスタッフの皆さんが尽力されたのよねと思ったら、
心の中で「ありがとうございます」とお礼を言わずにはいられませんでした。

そんな風に思えたのはこの本を読んだからです。

『脳から見るミュージアム アートは人を耕す(講談社現代新書)』


この本は、人気脳科学者の中野信子(なかの・のぶこ)さんと
東京藝術大学大学美術館准教授の熊澤弘(くまざわ・ひろし)さんが
ミュージアムについてお話になったものをまとめたものです。

タイトルを見ると難しそうですが、まったくそんなことはありません。
対談形式なので読みやすいですし、何より読んでいて楽しかったです。

私がこの本を選んだ理由は、本の帯に
「無数のコレクションがコロナ禍に疲れた脳に効く!」とあったからです。

とは言え、日本では「美」を感じることは不要不急のものと思われがちです。

しかし、そうではないことが、
4万〜4万4500年前のホモ・サピエンスの研究結果からわかったそうです。
絶滅したネアンデルタール人と違って、
今も生き延びているホモ・サピエンスは「美」を必要としていたのだとか。
詳しくは本を読んでいただきたいのですが、
つまり「美」は生きるために必要不可欠なものだということです。

この本では、その「美」を感じることができる場所である
ミュージアムの歴史や存在する意義のほか、
論争やワケありといったミュージアムの影の部分、
日本の面白い美術館や作品の見方、
そして、なぜアートが必要なのかなど、
様々な角度からミュージアムやアートの基礎知識が学べます。

へぇぇと思ったのは、作品の鑑賞時間に関する話題です。
なんと作品一点に7秒しかかけられていないんですって。
短いっ!

また、脳と絡めながらの話題も多く、
例えば、人間の脳は使ううちにゴミがたまるそうで、
それを寝ている時に洗い流しており、
その結果、記憶のつながりもよりよくなるそうなんです。

休館中や展示をしていないときのミュージアムも
まさに同じような作業をしているのだとか。
しかも、その見えにくいものこそ、ミュージアムの根本をなす仕事なんですって。

そもそもミュージアムには、作品を展示するだけでなく、
資料を収集し、調べ、保管するという公的な役割があるのです。

また、常設展にはその美術館の基礎的な活動が見えるので、
ぜひ見ていただきたいそうです。

といった感じで、様々な角度からミュージアムについて知ることができます。
ちなみに私が紹介したのはほんの一部です。正直、かなりディープな話もあります。
美術館に寄せられたクレームとか、ワケあり作品とか。。。

でも、私はこの本を読んだことで、美術館が身近な場所に感じられました。
一見、近寄りがたそうな高尚な雰囲気を醸し出しているものの、
実はとても人間味あふれる場所なんだなと思いました。
いや、人間臭さといったほうが合うかも。

この本を読んで私が一番印象に残ったのは、
短絡的に目減りするものより、
未来に生きる記憶としての知識を蓄積していったほうがいい。

というご意見です。

ミユージアムに行くと、知らず知らずのうちに
体の中で化学反応が起こることがあるのだとか。
すぐには変わらないかもしれないけれど、3年後、10年後には変化があるそうです。

ミュージアムに行くことで得られる知識が蓄積していくって、素敵だと思いませんか?
あなたも未来の自分のために、ミュージアムに行ってみてはいかがでしょう。

yukikotajima 10:10 am

『52ヘルツのクジラたち』

2021年4月21日

先週の水曜日、全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ
「本屋大賞」の授賞式が行われました。

◎本屋大賞の公式サイトは コチラ

ちょうどgraceの生放送中に受賞作が発表され、
大賞に町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち(中央公論新社)』が選ばれました。

先週の放送では、ノミネート作の『お探し物は図書室まで』をご紹介しましたが、
こちらは惜しくも2位でした。

◎私の本の紹介は コチラ

ちなみに3位は、私が1位予想をした
伊吹有喜さんの『犬がいた季節(双葉社)』でした。
こちらも惜しかった!

◎私の本の紹介は コチラ

私はノミネートされた10作品のうち7作品読んでいたにもかかわらず、
大賞受賞作は読んでいなかったので早速本屋さんに買いに行き、読んでみました。

もう本の帯には「本屋大賞第1位」とありました。はやいっ!

なぜ私がこれまでこの本を読まなかったのかというと、それには理由があります。
いや、言い訳ですね。(笑)

話題になっているのは知っていたのですが、
本の紹介に「孤独」や「虐待」といった言葉があり、
本を読んで辛い思いを味わいたくないと思ってしまったのです。

また、去年からのコロナ禍で孤独を感じている方も多いですし、
できれば、読んだ後に元気になったり、何か気付きを得たり、
単純に面白かったりするような本を紹介したいと、
特に去年はそんな思いで本を選んでいました。

でも、読む前のイメージだけで決めつけてはいけませんね。

『52ヘルツのクジラたち』は、確かに読むのが辛くなるような描写もあります。
でも、決して辛く暗いだけのお話ではありませんでした。
なんなら読んだ後に嫌な気持ちになるどころか、心が軽くなっていました。

この作品は本屋大賞を受賞したことで
すでに様々なメディアで紹介されていますが、
私からもどんな作品なのか簡単にご紹介しますね。

タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、
他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、
世界に一頭しかいないクジラのことだそうです。

仲間がいても何も届かないし、届けられないため、
世界で一番孤独だと言われているのだとか。

そして、この物語にも孤独を感じている人たちが出てきます。

主人公はアラサーのキナコという女性です。
物語は彼女が大分の亡き祖母の家に移り住んだところから始まります。

ある理由からひとりでそっと生きていきたいと思い、
携帯電話も解約し、親しかった友人にも連絡せず、
たった一人で大分の田舎町に引っ越します。

とはいえ田舎町でひっそりというのは無理な話で、
町の誰ともと交流せず仕事もしていないため
町の住民たちから「何か訳ありに違いない」と噂の対象になってしまいます。

そんなある日、キナコは親の虐待で口がきけなくなった少年に出会います。

キナコは少年が自分と同じ匂いがすることに気付きます。
自分と同じ「孤独の匂い」が。
孤独の匂いは心にしみつき、なかなか消えないのだとか。

キナコは少年を放っておくことができず、彼との交流がはじまります。

ひとりでひっそり暮らしていきたいと思ったキナコでしたが、
この少年をはじめ様々な人と触れ合うことで
キナコは避けていた自分の過去とも向き合うようになります。

本だから声は聞こえないはずなのだけど、
私にはキナコの声が変化していくのが感じられました。

キナコがどう成長していくかは、
ぜひ本を読みながら見守っていただければと思います。

そうそう!

最後に、本の帯の裏側をチェックするのをお忘れなく〜。
なんとスピンオフが収録されているのです。

この短編を読んだら、また最初から本編を読みたくなってしまったのですが、
最初のパートは、1度目とは全く異なる物語に感じられました。
特に1ページ目は、笑いながら読んでしまいました。
180度物語が変わるってすごいわ。

この本を読む前は、暗く辛い物語はちょっと…と思っていたけれど、
まさかこの本を読んで笑うことになるとは。

やはり読書って面白い。

yukikotajima 10:01 am

ビビビとジュルリ

2021年4月15日

今月から木曜graceに新コーナー「シン・トヤマ」がスタートしました。
富山の「新」しいスポットの他、「芯」となるお馴染みの富山もご紹介していきます。
ラジオをお聞きの皆さんからの「シン・トヤマ」情報もお待ちしています。


さて、今週は、富山の新しいスポット「新富山」をご紹介します。

先週末4月10日(土)に富山県美術館3階にオープンしたばかりの
レストラン「BiBiBi & JURULi(ビビビとジュルリ)」です。

FMとやま新人アナウンサーの「みなこちゃん」こと
水梨子(みずなし)アナと行ってきました♪
(みなこちゃんと呼んでるのは私だけかも。笑)

美術館の中のレストランということで、テーマは「アートとイート」

アートで感性を“ビビビ”と
イートで食欲を“ジュルリ”と
刺激するような場を目指しているそうです。

メニューにも「アートとイート」が体現されており、
美術館に所蔵されている作品にインスパイアされたメニューもあります。

例えば、カンディンスキーの作品にインスパイアされたという
富山の旬の食材をふんだんに使った“コンポジション”プレートは、
色とりどりの料理が様々な器に盛り付けられているのですが、
なんと、これらの器を並べ替えて楽しむことができるんです。

ポロックの作品にインスパイアされた“アクション・ペインティング”カレーは、
2色のカレーとカラフルな野菜を混ぜることで、見た目と味わいの変化が楽しめます。

このカレーが美味しかった!
トマトソースのカレーと白エビと牛乳がベースのカレーは、
単体でも混ぜても美味でした〜。

運ばれてきた料理をただ食べて終わりではなく、
ひと手間加えることでアート体験になるのですね。
それも誰でも簡単にできるのがいいですよね。

また、アートだけでなく富山にもこだわっているそうで、
食材は県内 15 市町村で生産されているものを、
食器は富山の職人さん達が作った伝統工芸品を使用しているそうです。
しかもオリジナルを。
食器は木のプレートに鋳物、陶器、磁器、ガラスなどがあり、
それぞれの質感の違いはもちろん、見た目と素材のギャップも楽しめました。

例えば、“コンポジション”プレートの白い四角い器は一見陶器に見えますが、
なんとアルミ製なんだとか。確かに持ってみたら軽くてびっくり。

“コンポジション”プレートは器を動かして楽しんでいただくメニューですから
軽い上に割れる心配が無いは安心ですよね。

ちなみに、これらの器はいずれ店内で買えるようになるのだとか。
また、えごまドレッシングや白エビカレーの販売も予定しているそうですよ。

メニュー表も楽しかったです。

まるで新聞のようなメニュー表には、
メニューのほか、富山で作られた食器の特徴や、
コンポジションってなに?アクション・ペインティングってなに?
といったアートに関する言葉の解説などもあり、
読み物としても楽しめました。
これなら、お料理を待つ間も飽きることはありませんよね。
なお、メニュー表は持ち帰りOKです。

そして、このレストランの最大の魅力は、
大きなガラス窓から見える素晴らしい景色です。
晴れた日には青空と立山連峰を眺めながらお食事が楽しめます。

店内にはその青空を彩るアート作品もあります。
安野谷昌穂(あのたに・まさほ)さんのペインティングやモビール型の立体作品です。

安野谷さんは自然の中で見つけたものなどを活用しているそうで
遠くから見るとオシャレな雰囲気ですが、
よーく見ると一つ一つは面白いアイテムが使われています。


「ビビビとジュルリ」は、様々な角度から楽しめるレストランでした。

「でも、アートはよくわからん…」という方でも大丈夫です。
誰でも簡単にアートに触れることができますので♪

私はアートが(詳しくはないものの)好きで
富山県美術館にはもう何度も足を運んでいますが、
今後はこのレストランもセットで楽しんでいこうと思います。

なお、現在美術館の1階TADギャラリーでは、
映画化もされた写真集『浅田家』でおなじみの写真家、
浅田政志さんの写真展「私の2020年」を開催中です。
浅田さんが富山の人々を撮影した写真などが展示されています。

浅田さんの写真って、たった一枚の写真から
動きやストーリーが感じられるので好きなんですよねー。
写真の中の富山の皆さん、とてもいい顔されてましたよ。
観覧無料ですし、ぜひレストランの帰りにでも立ち寄ってみてください。

そして、4月24日(土)からは、
「ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—」
が始まります。
モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、マティス、ピカソなどの作品
が勢揃いする超豪華な展覧会です。ああ、早く見たい〜。

なお、「ビビビとジュルリ」では今後、
企画展と連動したメニューも登場するそうですよ。こちらも楽しみ!

ぜひ皆さんも美術館での絵画鑑賞と合わせて、
新しくできたレストラン「ビビビとジュルリ」もお楽しみください。

◎ビビビとジュルリの公式サイトは コチラ

◎富山県美術館の公式サイトは コチラ

yukikotajima 9:20 am

『お探し物は図書室まで』

2021年4月14日

今日の14時30分ごろ、今年の「本屋大賞」が発表されます。

本屋大賞は全国の書店員の投票だけで選ばれる賞で、
大賞受賞作は書店員が今一番売りたい本ということになります。

大賞受賞作は本が売れるだけでなく、映画・ドラマ化されることが多いので、
本を読まない人たちからも注目を浴びます。

例えば、湊かなえさんの『告白』小川洋子さんの『博士の愛した数式』
などは映画化され、話題になりましたよね。
2019年に本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』
も先日、映画化されることが発表されたばかりです。

本が大好きな全国の書店員の皆さんが「とても面白いので是非読んで!」
と熱く推薦しているだけあって、やはり大賞受賞作はとても面白いのですが、
実は事前に発表されるノミネート作にもいい作品がそろっています。

本好きの方の中には、ノミネートされた10作品すべてを読んで
どれが1位になるかを予想して楽しんでいる方もいます。

私が読んだのは7作品ですべてを読んでいないのですが、
読んだ中で1位を予想するなら伊吹有喜さんの『犬がいた季節』かな。

◎私の感想は コチラ

でも、山本文緒さんの『自転しながら公転する』も良かったなあ。

◎私の感想は コチラ

なんて挙げていくと止まらなくなりそうですが、
どれが選ばれるかな?と予想するのも楽しいものです。

さて、今年の本屋大賞は、どの作品が選ばれるのでしょうね。
私の予想は当たるのか!?ドキドキ。
発表され次第、graceの中でもお伝えしますね。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

***

さて、今日ご紹介する本は、今年の本屋大賞にノミネートされている作品です。

『お探し物は図書室まで/青山美智子(ポプラ社)』

ノミネート作の中からまだ読んでいないものを選んでみました。
なぜこの作品にしたのかというと、今の時期に合っているように思えたからです。

新年度が始まって今日でちょうど2週間です。
新社会人の中には「今の仕事は向いていないかもしれない」
と思い始めた方もいるのでは?

また、産休・育休中の方の中には同期の出世を知って
羨ましく思っている方もいるかもしれません。

そのほか、働きたくてもうまく働けない人や、
定年退職したものの毎日をどう過ごしていいかわからない人、
本当にしたいことは別にある人など、
仕事や人生について人知れず悩んでいる方はいませんか?

もしどれか一つでもあてはまるようなら、この本を読んでみてください。
読んだ後はきっと心が軽くなると思います。

『お探し物は図書室まで』は連作短編集で、
まさにさきほど挙げた悩みを抱えた5人が登場します。

皆、偶然訪れた町の小さな図書室(図書館ではなく図書室です!)で
司書の女性に探している本を見つけてもらうのですが、本のリストには
目的の本とは別に絵本や図鑑といった関連性のない本も一冊入っています。
そして、リストとともに渡されるのが、
本の付録だという司書さん手作りの羊毛フェルトです。

だいぶ意味が分からないですよね。(笑)

でも、悩める5人は、その本と羊毛フェルトのおかげで、
本のタイトルにもなっている、自分が本当に「探している物」に気付きます。
どのように気付いていったかは、ぜひ本を読んでお確かめください。

ちなみに、この司書さんがなかなかに癖のある人物でして、
その見た目は『ゴーストバスターズ』に出てくるマシュマロマンとか、
ベイマックスようだと表現されます。つまり色白で体が大きいのです。
そして基本的には不愛想です。
でも聞き上手なので、彼女の前ではつい本音がこぼれてしまいます。

私はこの説明からマツコデラックスさんを思い浮かべてしまったため、
脳内では声も表情もマツコさんで再現され続けました。(笑)
いつかドラマ化されたらぜひマツコさんに演じていただきたいわ。

さて、このマツコさん、いえ、司書さんがズバリ悩みを解決するのではなく、
あくまでも誘導、アシストするだけで、皆自分で気付いていきます。

そして、この気付きの過程で出会った人たちの発言が素晴らしいのです。

例えば「夢はあるけど今は時間もお金も勇気もない」という人に対して、
すでに夢を叶えた人が放った言葉がこちら。

「『ない」がある時点でだめ。『ない』を『目標』にしないと」

今はコロナ禍ということもあり、私自身『ない』ことは仕方ない
と思っているところがあったので、ドキリとしました。

この「ドキリ」が本を読みながら何度もやってきました。
それから涙も。思いがけず何度も泣いてしまいました。(いい涙です)

今の仕事や生き方に悩みを抱えている方はもちろん、
新社会人の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
仕事に関するマニュアル本を読むよりこの本を読んだほうが、
きっと心が動くと思います。

私は心、動きましたよ!
そして、この先、迷ったり悩んだりしたときは、またこの本を読みたいなと思いました。
あと、作中に出てくる本も読んでみたくなりました。
まずは久しぶりに『ぐりとぐら』を読んでみようかな。

おまけ。

なんとまるで図書室の本のような装丁です。
ここにもぜひ注目してみてね。

yukikotajima 9:04 am

福光美術館を堪能してきました。

2021年4月8日

今月から木曜graceに新コーナー「シン・トヤマ」がスタートしました。

北陸新幹線開業以降、富山の新スポットが続々と登場しています。
その一方で、昔から長く愛されるお馴染みの富山も見直されています。
コロナ禍を経て地元富山を楽しむ人も増えていますよね。

このコーナーでは、新しい富山の他、
「芯」となるお馴染みの富山もあわせてご紹介していきます。

ラジオをお聞きの皆さんからの「シン・トヤマ」情報もお待ちしています。


さて、今週は皆さんにぜひ行っていただきたい
昔からある富山のスポット「芯富山」をご紹介します。

南砺市にある福光美術館です。

山の中の自然に囲まれた美術館で、
先日訪れた時もウグイスをはじめ様々野鳥が鳴いていました。

館内には、福光に疎開していた版画家の棟方志功や
福光で生まれた日本画家の石崎光瑤の作品が常設展示されています。

中でも私が好きなのが石崎光瑤の「雪」という作品です。

木の枝に雪が積もっている絵なのですが、
枝が垂れ下がっている様子から
北陸地方の水分を含んだ重たい雪であることが分かります。

また雪は何度も厚く塗り重ねているため、
いかにも重たそうなのが伝わってきます。

今にも木から雪が落ちてきそうな気配もあって、
白を基調としながらも躍動感が感じられる、
私のお気に入りの作品です。

まだ見たことのない富山の皆さん、
ぜひ間近でその迫力をご堪能ください。

***

そして、福光美術館と言えば、現在、話題の企画展を開催中です。

「アートって何なん? ーやまなみ工房からの返信ー」です。

この企画展が大人気で、来場者数は例年の倍以上なんですって。
年齢層も幅広くリピーターの方もいるそうです。

この企画展は、社会福祉施設「やまなみ工房」
生み出された作品を展示しているものです。

作品を制作しているのは、施設を利用している障がい者の皆さんで、
もともとは美術とは無関係だったそうです。
では、スタッフが教えたのかというと、
スタッフも美術を学んだことはないのだとか。

でも、彼らの作品は今、世界で高い評価を得ています。

そこで、企画展のタイトルにもなっている
「アートって何なん?」となるわけです。

そもそもアートとは何なのか。
その答えと出合えるのが、この企画展です。

展覧会を企画した学芸員の土居彩子(どい・さいこ)さんによると

「アートとは作品そのものというより、自分の好きな世界を貫き通すこと」

だそうです。

どの作品も制作者の思いのままに作られており、
他の人の手が加わることは無いそうです。
まさに純度100%の作品です。

様々な形や色のボタンが縫い付けられた「ボタンの玉」

ずらりと並ぶお地蔵さん

様々な色の糸で表現された「ゲルニカ」

など唯一無二の作品ばかりです。

館内では制作風景を動画で見ることができるのですが、これがとても良かったです。
約8分くらいですので、ぜひご覧ください。

テレビの中の皆さんはキラキラの瞳で、とても楽しそうに制作していました。
また、色を塗るにしても線を描くにしても、迷いが無いのが印象的でした。
すうっと勢いよく筆を走らせていくさまの、何と気持ちのいいことか。

ここまで好きなものと出合えるなんて羨ましいと思ったのですが、
実は、やまなみ工房のスタッフが様々な画材を用意して、
一人一人に合ったものを本人に見つけてもらっているのだとか。
やはりしっくりくる画材と出合った時は嬉しそうなんですって。

でも、全員がすぐに見つかったわけではなく、
中には10年かかってようやく出合えた人もいたそうです。

また、制作には口を挟まず表現は全て任せているそうです。
だからどこまでものびのびと好きな世界を表すことができるのですね。

ぜひ皆さんも会場で作品を見て、
「アートって何なん?」の答えを見つけてみてください。

また、会場までの通路に飾られた制作者の皆さんの顔写真もご覧くださいね。
この写真がこれまたとてもいいので。

ところで、福光美術館でこの企画展を開催した理由の一つは、
版画家の棟方志功とも通ずるところがあるからだそうです。

企画展を見た後に常設展の棟方志功の作品を見ると、
皆さんもきっと納得されると思います。

ですから企画展だけでなく、常設展も必ず鑑賞してくださいね。
私のイチオシ、石崎光瑤の「雪」もお忘れなく〜。

また、2階で開催中の企画展
「beのコトと人とこの美 Art session in Nanto」もあわせてどうぞ。
こちらでは富山を含む9県から集まった「アール・ブリュット」を紹介しています。

アール・ブリュットとは、
美術の教育や既成概念の影響を受けず、
衝動のままに表現された作品のことです。

日本では「障がい者のアート」と言われることが多いものの、
それだけを指すわけでは無いそうです。

やまなみ工房の作品は、同じ施設で生まれているのに対し、
こちらは個々の家で生まれていることもあり、よりディープ感があります。

そのほか、4月18日(日)には、「じょうはな座」で
やまなみ工房ドキュメンタリー映画「地蔵とリビドー」の上映会が、
26日(月)には、いのくち椿館で
やまなみ工房の山下施設長の講演会がありますので、
これらもあわせてお楽しみください。

◎福光美術館のサイトは コチラ

帰りに新富山スポットにも寄ってきました。

去年9月にオープンしたスターバックスコーヒー 射水歌の森運動公園店です。

店内に飾られているアール・ブリュットを見たかったのです。

作品は高岡市のNPO法人 障害者アート支援工房
「COCOPELLI(ココペリ)」の協力のもと制作されたそうです。

鮮やかな色彩の作品を見ながらコーヒーを飲んで過ごすひととき。良い時間でした。


今の時代、人の顔色をうかがってばかりで、
自分の本当の気持ちがよくわからなくなってきた…
という方もいるのでは?

そんな皆さんは、ぜひ彼らの作品に出合ってみてください。
心、潤いますよ。

yukikotajima 10:43 am

『クララとお日さま』

2021年4月7日

日々、生活を便利にする新しいアイテムが登場しています。
携帯電話にパソコンにスマートフォン。
20年前はスマホが無くても十分便利だったのに、
今やスマホの無い暮らしなんて想像できません。

そのうち、見た目は人と同じで感情もある
AIロボットが当たり前になる日もやってくるのでしょうね。
ロボットがいない生活なんて信じられない!なんて言っているのかな。

今日ご紹介する本は、まさにそんなAIロボットがいる時代の物語です。

『クララとお日さま/カズオ・イシグロ、翻訳:土屋政雄(早川書房)』

『クララとお日さま』は、2017年にノーベル文学賞を受賞した
日系イギリス人作家、カズオ・イシグロの最新長篇です。

カズオ・イシグロは長崎生まれで、
1960年の5歳のときに父親の仕事でイギリスに渡り、
以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育ち、
その後、イギリス国籍を取得されました。

代表作の『わたしを離さないで』は、
2016年に綾瀬はるかさん主演でドラマ化されたほか、
映画化、舞台化もされるなど話題になりました。

新作の『クララとお日さま』は、ノーベル文学賞受賞後初となる
6年ぶりの新作ということで、日本はもちろん世界中で話題となっています。
予約だけで累計発行部数が65,000部に達したそうですよ。

先日本屋さんに行ったら、この本がずらりと並んでいて、
まるで一枚の壁のようになっていました。
それがとてもオシャレな雰囲気でした。
というのも装丁が素敵なのです。
大きなひまわりと、その横に小さな女の子が立っているイラストで、
まるで絵本の表紙のようです。

***

『クララとお日さま』の主人公は、
人間の形をした人工知能搭載ロボットの「クララ」です。

10代の若者が大人になる手助けのために開発されたAIロボットで、
物語はクララの語りで進んでいきます。

え?AI目線で面白いの?と思う方もいるかも知れませんが、
ロボットとは言え感情や個性もありますので、決して単調ではありません。
それどころか、突飛な行動に出たり、
物語もどこに向かっていくのかわからなかったりするので、
飽きることは一切ありませんでした。

ほぼ人間と変わらないクララですが、違うところもあります。
それは栄養は食事からではなく、お日さまから得ているということです。

本のタイトルにも「お日さま」がついていますが、
クララにとって、お日さまは心身ともに支えてくれる大切な存在です。

物語は、クララが町のショップでほかの様々な商品と並んで、
誰かに買ってもらうのを楽しみにしているところからスタートします。

ところが、優れたロボットでありながらも
型落ちのクララは、なかなか買い手がつきません。

店内の一番目立つところからどんどん後ろへと下げられる中、
病弱な少女「ジョジー」に気に入られます。

ジョジョーは母親と家政婦と暮らし、隣の家には親友の少年が住んでいます。
でも、彼は他の子どもとは何かが違うらしいことがわかります。
他にもおかしなことが色々とあり、なんだか不穏な気配で、
『わたしを離さないで』を読んだときの感覚が蘇ってきたのですが、
著者のイシグロさんによると、新作はこれまでに発表した
『わたしを離さないで』と『日の名残り』の流れをくむものになっているそうです。

そして、その不穏な空気の中で様々な謎が生じ、
いったいどういうことなの?と思ったときにはもう、
本のページをめくる手が止まらなくなっています。

病弱で家で過ごすことの多いジョジーにとってクララは大切な存在です。

クララの仕事は「人の孤独」を癒すことでもあるので、
ジョジーがさびしさを感じないよう献身的に尽くします。

クララにとって一番大事なことは「ジョジーの幸せ」です。
そのためなら、どんなことでもします。
自分のこれまでの知識や経験をフル活用しながら、最善の選択をしていきます。

私たち人間は、きっとたくさん悩みながら物事を決めていくと思うのですが、
クララは「ジョジーの幸せ」だけを考えて選択していきます。
ブレがありません。

でも、ジョジーの心を100%理解できるかといったら、これはかなり難しい。
「心」と「感情」は似ているようで、違うものなのですよね。

そして、クララはある答えにたどりつきます。

***

物語はAIロボットのクララの語り口で進んでいくので
文章そのものは難しくなく、さらりと読めます。
でも、内容は濃かったです。放っておけない様々な問題も出てきますので、
本を読んだ後に語りたくなる方が多いと思います。
私もすでに本を読んだ人と語りたいです!(笑)

また、AIロボットが出てくる近未来の物語なのに、
私には今よりもっと昔の物語に思えました。
人間たちは退化していないか?と思ったのだけど、そうではなく、
私たち人間が良くも悪くも変わっていないということなのかもしれません。
クララがピュアで謙虚だからこそ、
じたばたしている人間たちのみっともなさが際立っていました。
他にも色々感じたことがありましたが、ネタバレになるので、我慢します。(笑)

ピュアでまっすぐなクララから、きっと気付かされることがあると思います。

私はクララから人を良く観察することと謙虚であることを学びました。
自分が!自分が!と自己主張の強い現代こそ、
他人を観察することと、一歩引く謙虚さが大事だなと思いまして。

あなたはクララから何を感じるでしょうか。
ぜひクララのお話に耳を傾けてみてください。
ちなみに小説は440ページとやや長めですので、
じっくりお話に付き合ってあげてくださいね。

yukikotajima 9:30 am

街なかで高地トレーニングをしてきました!

2021年4月1日

今日から木曜graceに新コーナー「シン・トヤマ」がスタートしました。

北陸新幹線開業以降、富山の新スポットが続々と登場しています。
その一方で、昔から長く愛されるお馴染みの富山も再び見直されています。
また、コロナ禍を経て地元富山を楽しむ人も増えていますよね。

このコーナーでは、そんな富山の「新」しいスポットやお店、イベントの他、
富山の「芯」となるお馴染みの富山もあわせてご紹介していきます。

ラジオをお聞きの皆さんからの「シン・トヤマ」情報もお待ちしていますよ〜。

初回の今日は、富山市役所の北側、富山駅側の真横に今日オープンした
「Toyama Sakuraビル」をご紹介しました。

「Toyama Sakuraビル」は、株式会社ホクタテが代表企業を務める
株式会社PPP新桜が建築した地上8階建ての官民連携の複合ビルで、
富山市教育委員会や保育園、フィットネスクラブ、
テレワークに最適な自習室などが入居しています。
ビルの維持、管理、運営は、ホクタテが行っていくそうです。

◎詳細は コチラ

施設内の「ワークブース Sakura」は、
個別ブースや会議室、個別防音ブースなどがあり、
仕事や学習に集中できる環境が整っています。
高速Wifiやドリンクサービスもあります。
月額利用の他、ビジター利用もできるそうです。

私も中に入ってみましたが、とても静かで落ち着いた環境なので、
勉強や仕事がはかどりそうだと思いました。


他には、富山初となる「低酸素ルーム」を兼ね備えたジム
「APA(アピア)コンディショニングジム×ハイアルチ」が入居しています。

なんとこのジムは、標高2500メートル級の立山室堂と同じ環境が再現されており、
街なかにいながら高地トレーニングができるんです。

しかも、高地つまり低酸素状態ではカラダに負担がかかるため、
きつい運動をしなくても高い効果を得ることができ、
その効果は30分歩くだけで2時間分の運動に匹敵するのだとか。
また、気圧は変化しないため、高山病にかかる心配もないんですって。

低酸素環境では体の細胞が活性化するため美容効果も高く、
都会では30代以上の女性に人気だそうです。

低酸素と言うとなんだかとても苦しそうですが、全くそんなことはありませんでした。

実は私、先日体験をしてきました〜!

楽しく30分歩いただけで、辛さは全くありませんでした。
早歩きをしていたら、あっという間に終わってしまった感じです。

低酸素状態で30分トレーニングした後は、コンディショニングエリアで
ストレッチや筋トレなどの体のリカバリーができます。
私はブルブル高速振動のパワープレートを使用したのですが、
びっくりするくらい足が軽くなりました。
顔や頭までブルブル揺らして全身スッキリ!

リカバリーの時間を入れても1時間弱くらいと短時間でしたが、満足度は高かったです。

高地トレーニングに興味のある方はもちろん、
運動したくてもなかなか時間が無いという方にもオススメです。

また、運動経験がなくても、一人一人のレベルに合わせて
歩く速度を変えることができますので、無理せずトレーニングができますし、
スタッフの方が一人一人に合ったアドバイスをしてくださいますので、安心です。


陽気で気さくなスタッフの河上さんにお世話になりました。ありがとうございました!

今ならオープン記念で無料体験もしているそうですので、
まずは一度体験してみてはいかがでしょう?

◎詳細は コチラ

私は低酸素状態でのトレーニングは初めてでしたが、
とても良かったので、また利用したいなと思っています!


今日からスタートの新コーナー「シン・トヤマ」、
来週からは毎週木曜の14時25分頃からお送りします。
ぜひ皆さんオススメの「シン・トヤマ」も教えてくださいね!

◎graceのサイトは コチラ

yukikotajima 6:14 pm