2025年12月10日
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『スピノザの診察室』『エピクロスの処方箋』
人には寿命がありますので、私もいつかこの世からいなくなります。
いつどのように命が終わるかわからないですが、人生の最期はこの先生に診ていただきたいです。
マチ先生こと、雄町哲郎(おまち・てつろう)先生に。
今日ご紹介するのは、マチ先生の物語です。
『エピクロスの処方箋』
夏川草介
水鈴社
夏川さんは、映画化もされた『神様のカルテ』でお馴染みの人気作家さんで、現役のお医者さまでもあります。
今日ご紹介する『エピクロスの処方箋』は、『神様のカルテ』とは別の医療小説シリーズの最新刊です。映画化が決まった話題作『スピノザの診察室』の続編です。
なお、シリーズですが、『エピクロスの処方箋』だけを読んでも楽しめます。
ですが、私はきっと前作も読みたくなるに違いないと思いましたので、先に『スピノザの診察室』を、そのあとに続編の『エピクロスの処方箋』を読みました。
✳︎
マチ先生は、京都の町中にある小さな地域の病院で働く30代後半の内科医です。
もともと大学病院で数々の難手術を成功させるような医師でしたが、数年前にシングルマザーだった妹が病気で亡くなり、その息子を引き取ることになったことから、拘束時間の長い大学病院から小さな病院へと移ったのでした。
大学病院では目の前にある病気をどう治療するかを考える日々でしたが、今の病院では別の課題と向き合っています。患者は地元の高齢者たちがほとんどで、中には終末期の患者もいます。終末期の患者にどんな言葉をかければいいのか。また、彼らにどんな治療をすればいいのか。マチ先生は日々考えています。
実際、患者さんたち一人一人と真摯に向き合うマチ先生の言葉は、患者さんたちの心を軽くしてくれます。不安でいっぱいの患者さんたちのこわばった顔がゆるむ瞬間が小説の中には何度も出てきます。
また、患者の家族や、マチ先生の甥っ子、病院の仲間たちもマチ先生の言葉に救われたり、何かしらの影響を受けたりしています。それから読者である私も。
小説のタイトルある「スピノザ」「エピクロス」は、哲学者たちの名前なのですが、マチ先生は彼らの本を愛読していて、大きな影響を受けています。例えば、スピノザは、人間の無力は描いても絶望は描かなかったそうですが、マチ先生は研修医にこんなことを言います。「理不尽な世界でもできることはある。降り続く雨を止めることはできないが、傘をさすことはできる」と。
マチ先生の出てくるこの医療小説シリーズは、哲学エンタメシリーズでもあります。哲学と医療だなんて、なんか難しそう…と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。マチ先生の言葉に救われる人はきっといると思います。また、マチ先生の周りには、個性豊かな人物が多く、会話のテンポも良いので、楽しく読めます。
それから、物語にはマチ先生の大好物である京都の和菓子がたくさん出てきます。例えば阿闍梨餅や長五郎餅など。しかも美味しそうに食べるものだから、私も食べたくてたまらなくなりました。ああ、京都に行きたい。(笑)
どちらも心に残るとてもいい本でした。できれば皆さんにも二冊とも読んで頂きたいですが、お時間が無ければ新刊の『エピクロスの処方箋』だけでもいいので、ぜひお読みになってみてください。
ちなみに、新刊では前に勤めていた大学病院からある難しい症例がマチ先生のもとに持ち込まれるところから物語が始まります。マチ先生はそれにどう絡んでいくのでしょう。続きはご自身でお確かめください。
このシリーズ、映画化が決まっているそうですが、調べたところ配役など細かいことは発表されていないようです。マチ先生をどなたが演じるのかしら。楽しみ!きっと映画も面白くなるに違いないと思うわ。
そうそう、出版社の特設サイトにある夏川さんのメッセージも素敵なので、作品とあわせてお読みください。
◎特設サイトは コチラ
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プロフィール
田島 悠紀子
Tajima Yukiko
7月13日生まれ。群馬県出身。
B型。 -
担当番組
・富山ダイハツ オッケイウィークエンド
(毎週土曜 11:00~11:55)・ヨリミチトソラ
(毎週水曜・木曜 16:20~19:00) -
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