ゆきれぽ

2026年2月18日

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『晴れの日の木馬たち』

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私は美術館でアートを見るのが好きです。美術館には普段からよく行っていますし、旅先でも必ず訪れるようにしています。たとえば、先月東京に行った際には、東京ステーションギャラリー「小林徳三郎展」を見てきました。

私が頻繁に美術館に行くようになったのは、原田マハさんの小説『楽園のカンヴァス』を読んだことがきっかけです。それまでは美術館に行っても作品をどう見ればいいかわからなかったのですが、『楽園のカンヴァス』を読んだら美術館にアートを見に行きたくてたまらなくなりました。そして当時の私は本を読んだ直後に、小説に出てきた倉敷の大原美術館に本当に行ってしまいました。(笑)初めての衝撃とは大きいもので、そこから私の美術館通いが始まりました。

そして久しぶりにまた大原美術館に行きたくなっています。なぜならこの本を読んだからです。

『晴れの日の木馬たち』
原田マハ
新潮社

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物語は1910年(明治43年)の岡山・倉敷から始まります。主人公は、「すてら」という名の少女です。彼女は父親と二人で貧しい暮らしを送っていたのですが、父が病気になってしまったことから、紡績会社「倉敷紡績」で働き始めます。

本を読むことが好きなすてらは、工場で働きながら自分でも小説を書くようになります。すてらの小説は会社の社長も知ることになり、社長はすてらに「文章を上達させるために、評論や美術や音楽の知識も増やしたほうがいい」と言って、雑誌「白樺」を渡します。その社長こそ、大原美術館を創設した大原孫三郎です。すてらは小説の中の登場人物ですが、物語には大原孫三郎のような実在の人物も出てきて、物語をより面白くしています。

さて、すてらは社長からのアドバイスのとおり、白樺を熟読し、アートにも興味を持つようになります。そして、引き続き小説も書いていきます。紡績工場で働く少女は、どのようにして作家になっていくのでしょう。ぜひご自身でお確かめください。

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「すてら」は、物語の中の登場人物ですが、私には原田さん自身なのではと思えてなりませんでした。例えば、すてらがアート作品を見た時に感じた思いは、きっと原田さん自身が感じたことなんだろうなと。作品や、その作り手に対してリスペクトが感じられるところも原田さんっぽいなと思いました。まあ、あくまでも私の勝手な想像ですが。

でも私はこの「リスペクト」の姿勢が好きです。すてらをはじめ登場人物たちの、好きなものに対しての愛やリスペクトが、凄まじいほどの熱量で、それも的確に表現されているのですが、そんな文章を読む時間が本当に楽しいのです。同時に私の感受性も磨かれていくような気がしてきます。

『晴れの日の木馬たち』も原田さんの熱い文章に引っ張られらるように、最後までハイテンションで読みました。そして終わり方がこれまた気持ちいいのですが、どうやら物語はここで終わりではなく、この先も続いていくようです。続きも楽しみ!最初の紡績工場から、なんだか朝ドラっぽいなと思ったのですが、まだ物語が続くなら、長い期間ドラマを放送するエピソードもありそうだし、本当に朝ドラ化してくれいないかな。(笑)すてらだけでなく、この時代の女性たちの物語でもありますし。

『晴れの日の木馬たち』は、はじまりの季節の今、読むのにぴったりです。大人の皆さんは初心を思い出し、若者たちは未来に対しての期待がより高まると思います。

やはり原田さんのアートが絡んだ小説は面白い!

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