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『お探し物は図書室まで』

2021年4月14日

今日の14時30分ごろ、今年の「本屋大賞」が発表されます。

本屋大賞は全国の書店員の投票だけで選ばれる賞で、
大賞受賞作は書店員が今一番売りたい本ということになります。

大賞受賞作は本が売れるだけでなく、映画・ドラマ化されることが多いので、
本を読まない人たちからも注目を浴びます。

例えば、湊かなえさんの『告白』小川洋子さんの『博士の愛した数式』
などは映画化され、話題になりましたよね。
2019年に本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』
も先日、映画化されることが発表されたばかりです。

本が大好きな全国の書店員の皆さんが「とても面白いので是非読んで!」
と熱く推薦しているだけあって、やはり大賞受賞作はとても面白いのですが、
実は事前に発表されるノミネート作にもいい作品がそろっています。

本好きの方の中には、ノミネートされた10作品すべてを読んで
どれが1位になるかを予想して楽しんでいる方もいます。

私が読んだのは7作品ですべてを読んでいないのですが、
読んだ中で1位を予想するなら伊吹有喜さんの『犬がいた季節』かな。

◎私の感想は コチラ

でも、山本文緒さんの『自転しながら公転する』も良かったなあ。

◎私の感想は コチラ

なんて挙げていくと止まらなくなりそうですが、
どれが選ばれるかな?と予想するのも楽しいものです。

さて、今年の本屋大賞は、どの作品が選ばれるのでしょうね。
私の予想は当たるのか!?ドキドキ。
発表され次第、graceの中でもお伝えしますね。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

***

さて、今日ご紹介する本は、今年の本屋大賞にノミネートされている作品です。

『お探し物は図書室まで/青山美智子(ポプラ社)』

ノミネート作の中からまだ読んでいないものを選んでみました。
なぜこの作品にしたのかというと、今の時期に合っているように思えたからです。

新年度が始まって今日でちょうど2週間です。
新社会人の中には「今の仕事は向いていないかもしれない」
と思い始めた方もいるのでは?

また、産休・育休中の方の中には同期の出世を知って
羨ましく思っている方もいるかもしれません。

そのほか、働きたくてもうまく働けない人や、
定年退職したものの毎日をどう過ごしていいかわからない人、
本当にしたいことは別にある人など、
仕事や人生について人知れず悩んでいる方はいませんか?

もしどれか一つでもあてはまるようなら、この本を読んでみてください。
読んだ後はきっと心が軽くなると思います。

『お探し物は図書室まで』は連作短編集で、
まさにさきほど挙げた悩みを抱えた5人が登場します。

皆、偶然訪れた町の小さな図書室(図書館ではなく図書室です!)で
司書の女性に探している本を見つけてもらうのですが、本のリストには
目的の本とは別に絵本や図鑑といった関連性のない本も一冊入っています。
そして、リストとともに渡されるのが、
本の付録だという司書さん手作りの羊毛フェルトです。

だいぶ意味が分からないですよね。(笑)

でも、悩める5人は、その本と羊毛フェルトのおかげで、
本のタイトルにもなっている、自分が本当に「探している物」に気付きます。
どのように気付いていったかは、ぜひ本を読んでお確かめください。

ちなみに、この司書さんがなかなかに癖のある人物でして、
その見た目は『ゴーストバスターズ』に出てくるマシュマロマンとか、
ベイマックスようだと表現されます。つまり色白で体が大きいのです。
そして基本的には不愛想です。
でも聞き上手なので、彼女の前ではつい本音がこぼれてしまいます。

私はこの説明からマツコデラックスさんを思い浮かべてしまったため、
脳内では声も表情もマツコさんで再現され続けました。(笑)
いつかドラマ化されたらぜひマツコさんに演じていただきたいわ。

さて、このマツコさん、いえ、司書さんがズバリ悩みを解決するのではなく、
あくまでも誘導、アシストするだけで、皆自分で気付いていきます。

そして、この気付きの過程で出会った人たちの発言が素晴らしいのです。

例えば「夢はあるけど今は時間もお金も勇気もない」という人に対して、
すでに夢を叶えた人が放った言葉がこちら。

「『ない」がある時点でだめ。『ない』を『目標』にしないと」

今はコロナ禍ということもあり、私自身『ない』ことは仕方ない
と思っているところがあったので、ドキリとしました。

この「ドキリ」が本を読みながら何度もやってきました。
それから涙も。思いがけず何度も泣いてしまいました。(いい涙です)

今の仕事や生き方に悩みを抱えている方はもちろん、
新社会人の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
仕事に関するマニュアル本を読むよりこの本を読んだほうが、
きっと心が動くと思います。

私は心、動きましたよ!
そして、この先、迷ったり悩んだりしたときは、またこの本を読みたいなと思いました。
あと、作中に出てくる本も読んでみたくなりました。
まずは久しぶりに『ぐりとぐら』を読んでみようかな。

おまけ。

なんとまるで図書室の本のような装丁です。
ここにもぜひ注目してみてね。

yukikotajima 9:04 am

『クララとお日さま』

2021年4月7日

日々、生活を便利にする新しいアイテムが登場しています。
携帯電話にパソコンにスマートフォン。
20年前はスマホが無くても十分便利だったのに、
今やスマホの無い暮らしなんて想像できません。

そのうち、見た目は人と同じで感情もある
AIロボットが当たり前になる日もやってくるのでしょうね。
ロボットがいない生活なんて信じられない!なんて言っているのかな。

今日ご紹介する本は、まさにそんなAIロボットがいる時代の物語です。

『クララとお日さま/カズオ・イシグロ、翻訳:土屋政雄(早川書房)』

『クララとお日さま』は、2017年にノーベル文学賞を受賞した
日系イギリス人作家、カズオ・イシグロの最新長篇です。

カズオ・イシグロは長崎生まれで、
1960年の5歳のときに父親の仕事でイギリスに渡り、
以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育ち、
その後、イギリス国籍を取得されました。

代表作の『わたしを離さないで』は、
2016年に綾瀬はるかさん主演でドラマ化されたほか、
映画化、舞台化もされるなど話題になりました。

新作の『クララとお日さま』は、ノーベル文学賞受賞後初となる
6年ぶりの新作ということで、日本はもちろん世界中で話題となっています。
予約だけで累計発行部数が65,000部に達したそうですよ。

先日本屋さんに行ったら、この本がずらりと並んでいて、
まるで一枚の壁のようになっていました。
それがとてもオシャレな雰囲気でした。
というのも装丁が素敵なのです。
大きなひまわりと、その横に小さな女の子が立っているイラストで、
まるで絵本の表紙のようです。

***

『クララとお日さま』の主人公は、
人間の形をした人工知能搭載ロボットの「クララ」です。

10代の若者が大人になる手助けのために開発されたAIロボットで、
物語はクララの語りで進んでいきます。

え?AI目線で面白いの?と思う方もいるかも知れませんが、
ロボットとは言え感情や個性もありますので、決して単調ではありません。
それどころか、突飛な行動に出たり、
物語もどこに向かっていくのかわからなかったりするので、
飽きることは一切ありませんでした。

ほぼ人間と変わらないクララですが、違うところもあります。
それは栄養は食事からではなく、お日さまから得ているということです。

本のタイトルにも「お日さま」がついていますが、
クララにとって、お日さまは心身ともに支えてくれる大切な存在です。

物語は、クララが町のショップでほかの様々な商品と並んで、
誰かに買ってもらうのを楽しみにしているところからスタートします。

ところが、優れたロボットでありながらも
型落ちのクララは、なかなか買い手がつきません。

店内の一番目立つところからどんどん後ろへと下げられる中、
病弱な少女「ジョジー」に気に入られます。

ジョジョーは母親と家政婦と暮らし、隣の家には親友の少年が住んでいます。
でも、彼は他の子どもとは何かが違うらしいことがわかります。
他にもおかしなことが色々とあり、なんだか不穏な気配で、
『わたしを離さないで』を読んだときの感覚が蘇ってきたのですが、
著者のイシグロさんによると、新作はこれまでに発表した
『わたしを離さないで』と『日の名残り』の流れをくむものになっているそうです。

そして、その不穏な空気の中で様々な謎が生じ、
いったいどういうことなの?と思ったときにはもう、
本のページをめくる手が止まらなくなっています。

病弱で家で過ごすことの多いジョジーにとってクララは大切な存在です。

クララの仕事は「人の孤独」を癒すことでもあるので、
ジョジーがさびしさを感じないよう献身的に尽くします。

クララにとって一番大事なことは「ジョジーの幸せ」です。
そのためなら、どんなことでもします。
自分のこれまでの知識や経験をフル活用しながら、最善の選択をしていきます。

私たち人間は、きっとたくさん悩みながら物事を決めていくと思うのですが、
クララは「ジョジーの幸せ」だけを考えて選択していきます。
ブレがありません。

でも、ジョジーの心を100%理解できるかといったら、これはかなり難しい。
「心」と「感情」は似ているようで、違うものなのですよね。

そして、クララはある答えにたどりつきます。

***

物語はAIロボットのクララの語り口で進んでいくので
文章そのものは難しくなく、さらりと読めます。
でも、内容は濃かったです。放っておけない様々な問題も出てきますので、
本を読んだ後に語りたくなる方が多いと思います。
私もすでに本を読んだ人と語りたいです!(笑)

また、AIロボットが出てくる近未来の物語なのに、
私には今よりもっと昔の物語に思えました。
人間たちは退化していないか?と思ったのだけど、そうではなく、
私たち人間が良くも悪くも変わっていないということなのかもしれません。
クララがピュアで謙虚だからこそ、
じたばたしている人間たちのみっともなさが際立っていました。
他にも色々感じたことがありましたが、ネタバレになるので、我慢します。(笑)

ピュアでまっすぐなクララから、きっと気付かされることがあると思います。

私はクララから人を良く観察することと謙虚であることを学びました。
自分が!自分が!と自己主張の強い現代こそ、
他人を観察することと、一歩引く謙虚さが大事だなと思いまして。

あなたはクララから何を感じるでしょうか。
ぜひクララのお話に耳を傾けてみてください。
ちなみに小説は440ページとやや長めですので、
じっくりお話に付き合ってあげてくださいね。

yukikotajima 9:30 am

『くしじじいとくそばばあの日本史』

2021年3月31日

今あなたはおいくつですか?

ご自身の年齢を若いと思いますか。
それとも、もう自分は若くないと思うでしょうか。

「人生100年時代」と言われるようになってから
年齢の概念が変わりましたよね。

中には実年齢よりだいぶ若く見える方もいますし、
生き方そのものが若い方もいます。
何歳になっても第一線でお仕事をなさっている方や
フルマラソンを完走する方など、お元気な方は大勢いらっしゃいます。

平均寿命も昔に比べると延びていますが、
実は昔も長生きをして、貪欲に、したたかに、歴史を生き抜いた
ご老人たちが大勢いらっしゃったようなのです。

今日ご紹介する本は、こちら。

『くそじじいとくそばばあの日本史』/大塚ひかり(ポプラ新書)』

なかなか放送では言いづらいタイトルです。(笑)

この本、以前、社会学者の古市憲寿さんがオススメされていまして、
読んでみたい!と思っていたのです。さすが辛口の古市さんセレクトです。

タイトルを耳で聞いたときにもインパクトがありましたが、
本屋さんで目にしたときもなかなかの衝撃でした。
まず、見た目が真っ赤なのと、そこに描かれたくそじじ…
いえ、お爺さんとお婆さんのイラストが
人気イラストレーターの五月女ケイ子さんが描いたものなのでシュール!
本屋さんの新書コーナーで一番目立っていました。

ところで、なぜこんなタイトルなのかというと、
著者の大塚さんは、長谷川町子さんの漫画『いじわるばあさん』が大好きで、
この漫画によく出てくる言葉が「クソばばぁ」だったのだとか。

また、「くそ」にはパワフルという意味もあり、
大塚さんは、超高齢社会となった今こそ、
そんなご老人たちのパワフルさが求められているのでは?と思い、
歴史上の様々なご老人たちを紹介することにしたそうです。

この本には初めて名前を目にするような人物もいますが、
有名な歴史上の人物も登場しています。

たとえば、豊臣秀吉や一休さん、浦島太郎、天海など。

天海は江戸時代の天台宗の僧ですが、
なんと81歳で政界デビューし、100歳を過ぎても政界に君臨し続けたのだとか。

他にも世間体や常識にとらわれずに我が道を行った人として、
葛飾北斎が紹介されています。
90歳で亡くなった時には
「天が私にあと十年、せめて五年の命を与えてくれたら本物の画工になれたのに」
と言ったそうです。
人としては変わり者だったかもしれないけれど、
画業に対する情熱はずっと変わらず、何より謙虚であったことが素晴らしい!

それからもう一つ、北斎は偉大だなと思えることがあるのですが、
それは本を読んで確かめてみてください。

この本には、そんなパワフルなご老人たちが次々に登場し、
みんなすごいなあと思う一方で、老人たちのダメな部分も描いています。

たとえば、最近「キレる老人」が話題になっていますが、
江戸時代にも年を取って怒りっぽくなっている老人はいたようで、
「くどくなる、短気になる、愚痴っぽくなる、
心はひがみっぽくなってカラダは古くなる」
という意味の狂歌もあったそうです。

まるで今と変わりませんね。

この本は、タイトル含めちょっと言葉遣いが気にはなるかもしれません。
でも、悪口だらけではなく、歴史上の
お爺さん、お婆さんへの愛が詰まった一冊になっています。
「くそ」を「かっこいい」に頭の中で変換して読んでみるのがいいかも。

まあ、中には変換する必要のない本当にダメダメな人も出てきますが。(笑)

年を重ねるにつれ、何かと年齢を言い訳に様々なことをあきらめてしまいがちだけど、
私はこの本を読んで、もっとがっついてみてもいいのかもな、と思いました。

でも、ただの「〇〇じじい、ばばあ」にはならないよう注意は必要ですが。
何歳になっても、思いやりや謙虚さは忘れないようにしたいですね!
独りよがりでは、孤独な老人になてしまいますものね。

yukikotajima 10:50 am

ありがとう、寅さん!

2021年3月24日

コロナ禍で家で過ごす時間が増えたことで、
映画やドラマや小説などの過去の名作に触れた方もいらっしゃることと思います。

私はすでにラジオでも何度もお話しているとおり、寅さんにはまりました。

寅さんとは、映画『男はつらいよ』シリーズで
渥美清さんが演じたフーテンの寅こと車寅次郎(くるま・とらじろう)のことです。

1969年に第1作が公開され、
1995年までの26年間に全48作品(特別篇を加えると49作品)
が公開された国民的人気シリーズで、2019年には第50作が公開されました。

旅をしながら日本各地で商売をし、
その旅先で美しい女性たちに恋をし、
実家の柴又に帰ってきては家族と交流というか毎回必ず喧嘩をする、
というお決まりのスタイルをベースに、
毎回素敵なマドンナや日本の名所が登場します。

◎映画『男はつらいよ』の公式サイトは コチラ

↑この公式サイト、とっても楽しく、何度見ても飽きません。

私が寅さんにはまったのは、2019年の年末に公開された
第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』を見たことがきっかけです。

もちろん寅さんの存在は知っていたものの、作品をちゃんと見たことはなく。
でも、マスコミ試写で見ることになりまして。
過去の作品を見ていないのに理解できるかしら?と不安を抱え鑑賞したのですが、
これがとても面白くて、過去のシリーズも見たいと思っていたら、
BSテレ東で去年4月から全話4K修復版の綺麗な映像で放送されることになったのです。

そして、この一年、私は毎週土曜の夜『男はつらいよ』シリーズを見続け、
ついに先週末、全ての作品の放送が終わりました。寅さんロス真っただ中です。(涙)

寅さんのことを何も知らずに見た『お帰り 寅さん』は、
ただただ面白くて、ワガママで陽気で自由なおじさんの物語だと思ったものですが、
シリーズを全て見た後にあらためて見た『お帰り 寅さん』は、
泣けて泣けて仕方ありませんでした。寅さんのセリフの全てがより心に染みました。

吉岡秀隆さん演じる甥の満男の
「人間は、何のために生きてんのかな?」に対する寅さんの名言
「うーん、何て言うかな、ほら、ああ、生まれて来てよかったなって思うことが
何べんかあるじゃない、ねえ。そのために人間生きてんじゃないのか」
というセリフは、初めて聞いた時もいい言葉だと思ったけど、
ちゃんと物語の中で聴くと、さらに心に響きました。
あの寅さんが言うからこその説得力たるや。

私は作品を見る度に感想や印象に残ったセリフを毎回ノートに書いていたのですが、
昭和の下町の粋な表現や会話のテンポが耳に心地良く、
ノートに書くのは楽しい作業でした。言葉や会話が魅力的な作品なのです。

さて、そんな素敵なセリフが一冊にまとまった本があります。
(私のノートでは無く。笑)

前置きが長くなりましたが、今日は寅さんに関連した本を2冊ご紹介します。

まずは『男はつらいよ 寅さんの人生語録 改/山田洋次、朝間義隆』です。

こちらの『〜改』は1993年に発売された本を改題し、
加筆・修正・再編集したものだそうです。
寅さんを愛してやまない牧内先輩から教えて頂きました。
(アナウンサーだけでなく寅さんの先輩でもあります。笑)
牧内さんとはこの一年、よく寅さん談義をしました。

この『人生語録』、最高でした。
寅さんをはじめ、出演者の皆さんの名言やお馴染みのセリフが掲載されているのですが、
私の大好きな初代おいちゃんの「馬鹿だねぇ」も
御前様の「困った」も載っており、読みながらニヤニヤが止まりませんでした。
また、「ケッコー毛だらけ猫灰だらけ、お尻のまわりは…」
などの寅さんの口上も載っているので、声に出して読みたくなりました。

セリフが載っているだけなのシンプルな本なのだけど、
出演者たちの表情や声が浮かんでくる、とても賑やかな一冊でした。


2冊目は、『寅さんの「日本」を歩く 一番詳しい聖地探訪大事典/岡村 直樹』です。

一年中ほとんど旅をしている寅さんのおかげで、
コロナ禍でなかなか旅行にいけなくても旅気分を味わうことができました。
それも風の吹くまま気の向くままの旅で、何と自由な旅を楽しめたことか。
閉塞感のある日々だったからこそ、カラッと明るい映画の空気に救われました。

この本には、そんな寅さんの立ち寄り先、つまり聖地330ヶ所余りが載っています。
温泉、城下町、港町、島などのスポットの他、
寅さんが愛した昭和(公衆電話、ちゃぶ台など)や
全作品ガイドや全ロケ地ガイドまである、かなり読み応えのある一冊です。

ただし、寅さんは富山には来ていないので、富山のロケ地はありません。残念!

寅さん関連の本は本当にたくさん出ていますが、
私はコロナ終息後に寅さんのロケ地に行ってみたいと思って、この本を選んでみました。
これからのんびりと行き先を決めようと思います。

でも、最初に行く場所は決めています。
寅さんの故郷、葛飾柴又です。
早く行きたいなあ。

この一年、私と同じように『男はつらいよ』シリーズをご覧になり、
今、絶賛寅さんロス中の方は、今日ご紹介したこの2冊をぜひ読んでみてください。

また、まだ映画『男はつらいよ』シリーズをご覧になっていない方は、
ぜひ1作目から順番にご覧になってみてくださいね!
そして見終えたら改めてこのブログを読んでみてください。

✴︎✴︎✴︎

[おまけ]

田島が好きな寅さんシリーズ

1『男はつらいよ』

13『寅次郎恋やつれ』

17 『寅次郎夕焼け小焼け』

19『寅次郎と殿様』

32『口笛を吹く寅次郎』

本当は他にもたくさんあるのですが、
キリが無いので、なんとか絞ってこの5作品にしてみました。

寅さん、この一年本当にありがとうございました。
いつか寅さんを感じる旅に出るのが私の夢です。

yukikotajima 11:31 am

『犬がいた季節』

2021年3月17日

卒業シーズンですね。今日は中学の卒業式なのですよね。
卒業生の皆さん、おめでとうございます。
今日ご紹介する本は、卒業シーズンの今、読んでいただきたい一冊です。

『犬がいた季節/伊吹有喜(いぶき・ゆき)【双葉社】』

と〜ってもいいお話でした!
私はこの本を読みながら目が腫れるほど泣きました。
去年春に小川糸さんの『ライオンのおやつ』以来の号泣です。

『犬がいた季節』は、三重県の進学校に通う高校3年生たちを描いた連作短編集です。
どのお話にも「コーシロー」と名付けられた白い犬が出てきます。
コーシローは生徒たちによって学校で飼われているのですが、
なんと著者の伊吹さんの母校に実際にいた犬がモデルになっているのだとか。

この物語は、犬のコーシローが高校で過ごした12年間が描かれています。

まずは、コーシローが学校に迷い込んできた1988年、昭和最後の卒業生の物語です。
この年、「コーシローの世話をする会」が発足し、
実家がパン屋の優花(ゆうか)も会のメンバーになります。

優花は、東京の有名私大に行きたいと思っているのですが、
兄からは「ガリ勉の女は可愛くない」と言われ、
祖父からは「女の子が東京の私立に行ってどうするんだ」とあきれられるなど、
進路について家族からはよく思われていません。
今から約30年前は、女性の進学に関してはたしかにそういう空気ありましたよね。
果たして優花はどんな決断を下すことになるのでしょうか。
また彼女には好きな人がいるのですが、
彼との淡い恋が甘酸っぱいし、せつないしで。
いいお話でした。

次は、1991年に鈴鹿サーキットにF1を見に行った男子二人のお話です。
アイルトン・セナが操るマシンが爆音とともに目の前に現れた時の
二人の喜びようといったらもう。二人の大興奮っぷり最高です!
自転車でサーキットに向かい、テント泊をして過ごした三日間が描かれます。

他には、神戸で被災した祖母と急きょ同居することになった女子や、
ある目的のために援助交際をする女子、
英語教師に思いを寄せる男子の物語などがあります。

全て高校3年生の物語ですが、時代が異なります。
その違いは、それぞれの時代に流行った音楽や出来事、話題の人物などからわかります。
でも私はどの時代の高校生にも懐かしさを感じました。

というのも、きっといつの時代の高校生も
同じようなことで悩んだり、喜んだりしているからだと思います。

特に高校3年生は、本当に悩むことが多いですよね。
進学か就職か。
大学に行くとしたら、地元か県外か。国立か私立か。
自分の学力に見合った大学はどこなのか。
親の思いと自分の思い、どちらを尊重するべきか。
選択肢だらけです。
また、卒業後に進む道が違うせいで、
両想いなのに恋が叶わないなんてこともあるわけです。うう、せつない。

物語の中の高校生たちも数ある選択肢の中から、
自分の選んだ道を進んでいくことになるのですが、
いつの時代も高校生たちのそばにいたのが犬のコーシローでした。
このコーシロー目線のお話も間にはさまれ、物語を優しく彩ります。

最後には令和元年も描かれ、登場人物たちのその後の人生が明らかになります。
物語の最後もとても良かったです。
そうきたかーーーとまた泣きそうになりました。いや、泣いていました。
そうそう、最後まで読んだらカバーを外すのをお忘れなく〜。
最後まで読んだ人にだけわかる素敵なプレゼントがありますよ。

『犬がいた季節』は、まっすぐな、とってもいい物語でした。
みんな優しくて。でも不器用なんです。だから後悔ばかりです。
家族の本心に後で気が付いたり、
好きな人の気持ちに全く気が付かなかったり、思いを伝えられなかったり。
でも、その後悔から学ぶこともあるのですよね。
この本には、生きていくうえで大切なことがたくさん詰まっていました。
人の優しさに涙し、うまくいかない恋に涙し、嬉しくて涙し、悲しくて涙し、
なんだかずっと泣いていました。
ストレートに心に響く本って、いいもんですね。

高校生たちの青春小説ですが、現役の学生さんだけでなく、
かつての高校生、つまり大人にも、いや、大人こそ読んでいただきたい!
私のように大泣きするのはきっと大人だと思うもの。
物語の最後に登場人物たちのその後が描かれていいるのがいいのです。

どのお話も高校を卒業していくシーンで終わりますので、
卒業シーズンの今読むのにぴったりです。
ほんと一人でも多くの方に読んでいただきたいな。

yukikotajima 9:10 am

『オルタネート』

2021年3月10日

最近、独身の年下の友人と話をする度に「マッチングアプリ」の話題になります。

あなたは使ったことあります?

私は使ったことはないのですが、
もう今の時代、出逢いのツールとして確立しているようですね。
しかも都会だけでなく、富山のような地方でも。

さて、今日ご紹介する本は、そんなマッチングアプリがベースの物語です。

NEWSの加藤シゲアキさんの『オルタネート(新潮社)』です。

この作品は、先日、「第42回吉川英治文学新人賞」を受賞し話題になっています。

この新人賞は、過去には、宮部みゆきさんや池井戸潤さんなど
人気作家の皆さんが受賞されています。
アイドルが受賞したのは初めてのことだそうです。

加藤シゲアキさんは、1987年生まれの33歳で、
青山学院大学法学部を卒業されています。
アイドルグループNEWS のメンバーとして活動しながら、
2012年に『ピンクとグレー』で作家デビュー。この作品は映画化もされました。

『オルタネート』は、加藤さんの3年ぶりの長編小説です。
タイトルの「オルタネート」は、高校生限定のマッチングアプリの名前で、
東京のとある高校を舞台に、3人の若者たちの物語が描かれています。

まず一人目は、調理部の部長をつとめる「いるる」。
彼女は、高校生の料理コンテストで全国優勝することを目指しています。
アプリはしていません。

二人目は、オルタネートで運命の相手を見つけようとのめりこむ「なづ」。
彼女は、オルタネートのマッチング結果を信じて疑いません。

そして、高校を中退したことでオルタネートの権利を失った「なおし」。
彼は、かつてのバンド仲間を探しに大阪から東京にやってきます。

そんな3人の物語が同時進行で交互に描かれていきます。

マッチングアプリが軸になっているお話というと、
そこで、くっついたり離れたりと
アプリに振り回される物語を想像してしまいそうですが、
そうではありません。

そもそも「いるる」はアプリは絶対にしたくないと思っているし、
「なおし」はやりたくても高校を中退したためできません。
ただ、三人の中で唯一はまっている「なづ」だけは、アプリの力を信じて疑いませんが。

この3人には、それぞれ悩みがあります。
コンプレックスに苦しんでいたり、
自分の思いが大切な友人に届かなかったり、
家族との関係がうまくいかなかったり。

そんな10代ならでは葛藤や苦悩がこの本には詰まっています。
でも決して暗く重たいわけではなく、
全体を通してみると、透明感に満ちていて、まぶしさを感じました。
悩んだり苦しんだりしながら成長していく彼らの輝きがまぶしいのです。

ちなみに、このメインの3人は物語の中ではそれほど繋がりはありません。
でも、終盤気持ちよく絡み合っていきます。

果たして3人はどんなことに悩み、
その問題とどのように向き合っていくのでしょうか。
ぜひ大人の皆さんは、10代だったころの自分と重ねながら読んでみてください。

料理コンテスト本番の緊張感や
マッチング相手に初めて会う時のドキドキした気持ち、
そして、人の心が動く瞬間のなんとも言えない高揚感をぜひ味わってみてください。

私は若者ならではの大胆な行動や、感情のまま突っ走る勢いに懐かしさを感じました。
そして、ちょっと羨ましくもありました。
ああ、私はなんて聞き分けのいい大人になってしまったものかと。
と同時に私も自分の気持ちにわがままでいよう!とも思いました。

10代はもちろん、大人の皆さんにも読んでいただきたい一冊です。

この作品もデビュー作『ピンクとグレー』のように映像化されるように思います。
できれば映画ではなく、ドラマで丁寧に描いていってほしいな。

yukikotajima 11:51 am

『滅びの前のシャングリラ』

2021年3月3日

もし突然こんなことを言われたら、
あなたは何を感じ、どんな行動に出るでしょうか。

「一ヶ月後、小惑星が地球に衝突し、人類が滅亡する」

人類滅亡と聞くと、30代以上の皆さんは、
1999年のノストラダムスの大予言を思い出すでしょうか。

私は当時、大学生でしたが「滅亡の瞬間どこで誰と何をする?」
なんて話を友人たちとよくしていたように思います。
でも絶対に滅亡することは無いだろうと信じていたので、
みんなどこかのんびりとした雰囲気でふざけ合っていました。

でも、本当に一ヶ月後、人類が滅亡することになったら、
人は何を思い、どんな行動をすると思いますか?

***

今日ご紹介する本は、凪良ゆうさんの話題作
『滅びの前のシャングリラ(中央公論新社)』です。

著者の凪良さんは、去年、『流浪の月』で本屋大賞を受賞し注目を浴びました。
私ももちろんラジオで紹介しています。

◎田島の本の感想は コチラ

実は新作の『滅びの前のシャングリラ』も
去年に引き続き、本屋大賞にノミネートされています。
2年連続で大賞を受賞するのか気になります。
さらに、紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする
「キノベス!2021」の1位にも選ばれるなど、今話題の一冊です。

物語は、学校でいじめを受けている
17歳の友樹(ゆうき)の話から始まります。

彼は、小惑星が地球に衝突して人類が滅亡する
というニュースをテレビで見ても、デマに違いないと思い、
今の憂鬱をすべてリセットしてくれるなら、
小惑星でもなんでも落ちてくればいいと思っています。

どうせ学校に行ってもいじめられるし、
勉強も運動も苦手だし、見た目はぽっちゃりだし…
とやけになっているのです。

彼の母親も「賢い人がどうにかしてくれる」とどこか他人事です。

ところが、徐々に状況は変わっていきます。
スーパーやコンビニでは商品の略奪行為が始まり、
テレビ局では試験放送の映像ばかりが流れ、
ついには自ら命を絶つ人まで出てきます。

残り一ヶ月という宣告を受けて、
地球よりも先に人間が壊れはじめてしまったのですね。

ところが17歳の友樹は、小惑星なんて落ちてしまえばいいと思っていたはずなのに、
あることがきっかけで残りの日々を今度こそ精一杯生きたいと、
前向きな気持ちになっていったのでした。

なぜ彼が「生きたい」と思ったのかは、ぜひ本を読んでください。

本作は、この男子高校生のお話のあとは、
人を殺してしまった男性、恋人から逃げ出した女性、
そして、すべてを手に入れた歌姫のお話が順番に描かれていきます。

全員に共通しているのは、
これまでの人生をあまりうまく生きられなかったということと、
1ヶ月後には生きていないということです。

彼らがこれまでどんな人生を送ってきて
人類滅亡を前にどんな気持ちでいるのかが、
変わりゆく世界の状況とともに丁寧に描かれていきます。

人類滅亡を前に、私たち人間は一体どうなってしまうのでしょうか。

まるでドキュメンタリーのような文章で、
最初から最後まで夢中で本のページをめくっていきました。
とても面白いのでストーリーの先が気になるものの、
この世界が終わってしまうなんて…と思うと寂しさもあり、
そんな相反する気持ちに揺れながら、読み進めていきました。

それにしても、この残り一ヶ月というのが、絶妙でした。
まだだいぶ先のようでもあるけれど、実はあっという間なのですよね。

そして残り一ヶ月というと、絶望しかないように思いますが、そうではありません。

こんな状況だからこそ気付けた幸せもあります。
言い方を変えれば、こんな状況じゃなかったら
もしかしたら一生気付けなかったかもしれない幸せもあって、
読みながら何度も私の目にじんわりと涙が浮かびました。

まさに本のタイトル通り「滅びの前のシャングリラ(理想郷)」でした。

この物語はフィクションですが、
小惑星が衝突して人類が滅亡することなんて絶対に無いとは言い切れません。
だからと言っていつ来るかわからないその日を想像して怯えて過ごすのではなく、
私は、あらためて後悔なく毎日を生きていきたいと思いました。

『滅びの前のシャングリラ』、大変面白かったです。
ぜひお読みください♪

yukikotajima 9:36 am

『商店街のジャンクション』

2021年2月10日

あなたは「着ぐるみ」に入ったことはありますか。

きっと多くの方が「ない」と答えるのでは?

では、「着ぐるみ」に入りたいと思ったことはあるでしょうか。

私はどちらも「ノー」です。
でも、この本を読んだら入ってみたくなりました。

『商店街のジャンクション/村木美涼(早川書房)』

村木さんは、宮城県生まれですが、
なんと2016年からは富山県にお住まいなのだとか。
ようこそ富山へ!

2017年に『窓から見える最初のもの』で
アガサ・クリスティー賞大賞を受賞して作家デビューされたのち、
2019年には『箱とキツネと、パイナップル』で
新潮ミステリー大賞優秀賞を受賞されています。

おめでとうございます〜!

今日ご紹介する『商店街のジャンクション』は、先月下旬に出たばかりの新作です。

本の表紙には二本足で立ってピースをしている犬の絵が描かれ、
帯には「着ぐるみ」とあるので、
表紙を見ただけで、なるほどこのワンちゃんは着ぐるみなのかと気付きます。

この着ぐるみの犬の名前は「チョッキー」です。

チョッキーは、商店街にある古びた映画館の
週末限定の「ナイトシアター」の宣伝チラシを
通りすがりの人々に配るのが仕事で、
男女3人が順番に中に入っています。

この3人はそれぞれ悩みを抱えているのですが、
着ぐるみの中に入ることで悩みが解決するのではと思っています。

3人によると、着ぐるみは、
目立っているようでいて、鉄壁の匿名性をまとっており、
自分のことを誰にも気づかれずにいられる場所であり、
中に入った後は、それまで感じたことのない解放感に満たされるのだとか。

3人は犬の着ぐるみチョッキーの中に入ることで、
自分自身と向き合うようになります。

3人が初めて顔を合わせたのは、
商店街の中の喫茶店、その名も「時計」でした。
店名通り、店内にさまざまな時計が並ぶ不思議なお店ですが、
コーヒーはとても美味しいそうです。飲んでみたい!
そして、このお店の白髪の男性店主が、ある方に言わせると
「近くにいると存在感が薄いのに、離れると存在感が増す」ような人で、
この店主がさらりといいアシストをするのです。

果たして着ぐるみをシェアする3人はそれぞれどんな悩みを抱えていて、
着ぐるみに入り、この喫茶店に通うことで、どんなことに気付くのでしょうか。
続きは本をお読みください。

そうそう、著者の村木さんは富山在住だそうで、
作品の中に「富山」がちょこっと登場しますので、お見逃しなく〜。

最初にも言いましたが、この本を読んで私も着ぐるみの中に入ってみたくなりました。
中に入ったら、世界はどのように見え、私は自分の何に気付くのか知りたくなったのです。

たしかに着ぐるみって不思議な存在ですよね。
だって、着ぐるみの中の人間が突然手を振ってきたら警戒してしまうけど、
同じ人が着ぐるみを着た状態で手を振ってきたら
一瞬で笑顔になって「かわいい〜」とこちらから近づいたり、握手したり、
なんなら一緒に写真を撮ろうよ〜!と言い出したりと、
警戒心はまるで無くなります。

私たちの笑顔は、着ぐるみに向けたものであって、
中の人に向けたわけではないのですよね。
でも、たしかに中には人がいるわけで、冷静に考えると面白いなあと。

存在としては目立つけれど、中の人の印象は薄いわけです。

その感覚を私も着ぐるみの中で味わってみたくなりました。

さて、私は小説を読む度に、いつか映画化されそうだわ!
なんて勝手に想像して楽しんでいるのですが、
『商店街のジャンクション』は舞台化されそうだなあと思いました。
というか、舞台化したものを見てみたい。

どなたかいかがでしょう?(笑)

yukikotajima 11:19 am

『銀の夜』

2021年2月3日

いよいよ今度の土曜日は、気まぐれな朗読会です。
チケットを買ってくださった皆さま、ありがとうございます。

気まぐれな朗読会は、
「気ままプラン」パーソナリティ廣川奈美子さんと
「grace」パーソナリティ田島悠紀子でお届けする朗読会です。

気ままの「気ま」とグレースの「ぐれ」で「気まぐれ」です。

今年は、2月6日(土)18:00〜
富山県民小劇場 オルビス(マリエとやま7階)で開催します。

今年も3部構成です。
例年通り、1部、2部は、廣川さんとともに
3部はそれぞれ作品を読みます。

廣川:「ムシヤシナイ」高田都(たかだ・かおる)
田島:「鍋セット」角田光代(かくた・みつよ)

◎3部の作品の詳細は コチラ

朗読会のチケットは、まだまだ販売中です。
当日は、コロナ対策をしてお届けしますので
もしよかったらお越しください。

◎チケットについて詳しくは コチラ

なお、当日の21時頃(終演後)から3部のみFMとやまYouTubeチャンネルで配信します。
配信は21時頃~22時頃の時間限定ですので、お見逃しなく!

◎FMとやまYouTubeチャンネルは コチラ

***

さて、今回の朗読会で私は、角田光代さんの「鍋セット」を読むのですが、
今日ご紹介するのは、去年11月に発売された角田さんの新作です。

『銀の夜(光文社)』

角田さんの5年ぶりの長編小説なのですが、書かれたのは15年前のことだとか。
『対岸の彼女』で直木賞を受賞された頃に書かれたものだそうです。

それがなぜ今になって単行本として出ることになったのか。
しかも、なおさずにそのままの形で出版したそうです。
その理由は「あとがき」に書かれていますので、
ぜひ本編を読んだ後にお楽しみください。


『銀の夜』は、30代半ばの女性3人の物語です。
時代は、まさに小説が書かれた約15年前の2004年〜05年頃です。

まだSNSも無く、携帯よりも家の電話の子機を使い、
メールはパソコンを開いてチェックしていた時代です。

登場人物の女性3人は高校時代に
3人でバンドを組んでメジャーデビューをしています。

とはいえ活動期間は短く、
今では全員がバンドとは関係のない生活を送っています。

「ちづる」は、結婚し、イラストレーターをしているものの、
仕事はぱっとせず、夫は職場の若い女性と浮気をしています。

「麻友美」は、セレブママになり、
娘を芸能人にしたいと思っているのですが、
娘はなかなかやる気になってくれません。

独身の「伊都子」は、著名翻訳家の母のように生きたいと思い、
あれこれやってみるものの、うまく行きません。

つまり、全員が今の自分に満足していないのです。
でも、このままでいいとも思っておらず、
なんとか今の状況を変えようと、もがいている様が描かれています。

それも誰か1人の一人称ではなく
3人それぞれの視点で描かれているので、
お互いの本音が見えるのが良かったです。

例えば、友人の活躍を応援したいのに、
嫉妬もあってつい意地悪な感情が芽生えてしまい、
でも、それを必死に打ち消そうとしているわけですよ。
この感覚、よくわかる!
きっと誰もが同じような気持ちを味わったことがあるのでは?

角田さんの文章には、人の本音がにじみ出ているのです。
いま私は朗読会に向けて何度も角田さんの作品を声に出して読んでいますが、
やはり同じことを感じました。

その本音によって、作品との距離が近くなっています。

『銀の夜』も、私は彼女たちが他人事とは思えず、
まるで私の友人たちの話を聞いているかのようでした。

15歳の頃にバンドデビューし、キラキラした世界に一瞬でもいた3人は、
どうしてもあの頃と今を比べてしまいます。

三十代も半ばになり、40歳までには何かをしなくてはと思うものの、
充実感や達成感といったものを心底実感できるようなことは
なかなかみつかりません。

私も30代半ばくらいの頃は同じようなことを思っていました。
そして、私の場合はいきなりフルマラソンにチャレンジしたわけですが。(笑)
みんな、40歳を前にすると何かをしたくなるものなのですね。

果たして彼女たちは、この先どう生きていくことになるのか。
続きはぜひ本を読んでみてください。

今日は、角田光代さんの『銀の夜』をご紹介しました。
角田さんといえば、先日、読売文学賞を受賞されました。
おめでとうございます〜!

yukikotajima 9:32 am

『たべる生活』

2021年1月27日

コロナ禍で家で過ごす時間が長くなったことで
「太った!」という話をよく耳にします。
運動不足もあるけれど、一番の理由は食べ過ぎですよね。
私もそんな一人です。

また、太っただけでなく、肌荒れをはじめ
体調があまりすぐれないという方もいるかもしれません。

毎日そんなに忙しくないのに元気が出ないのは、
食べ物のせいかもしれませんよー。

お菓子をつまみながらソファにだらあっと寝転がって
DVDを見る休日は最高で、私も時々やります。
でも、そのひとときは最高にリラックスできても、
次の日には口内炎ができていたり、どこか体がスッキリしなかったりしませんか?

逆に、体にいいものを食べてしっかり寝た後は、お肌も体も調子がいいものです。

そんな時はいつも「体は食べた物でできている」と実感します。

今日ご紹介する本は、『たべる生活/群ようこ(朝日新聞出版)』です。

食に関するエッセイなのですが、
群さんは口にするものは大切と言いながらも、実は料理が苦手なんですって。

だからといって添加物が多いものなどは口にせず、
なるべく体にいいものを自分で作って食べるようにしているのだとか。
ただ、凝ったものは作らず、食材を焼いたり煮たり炒めたりといった
名前をつけられないものを食べているそうです。

群さんがなぜ、口にするものは大切だと思うようになったのかというと、
以前、甘い物の食べ過ぎで体調を崩したことがあるからだそうです。
その時に食生活を見直したんですって。

群さんは、長生きをしたいのではなく、体調不良が嫌だとおっしゃいます。

それ、よくわかるわー。
長生きしたとしても元気じゃなきゃ辛いですもんね。

このエッセイには、群さんが元気でいるために心がけていることや
今の「食事情」について思うことなどが綴られています。
また、群さんのお友達のお話もたくさん出てきます。

例えば、ある料理上手なお友達は、
ご飯を食べに行くと、お店の方にコツを聞くそうです。
プロの料理には必ずひと手間加える何かがあるからと。

最近は、わからないことがあると
なんでもスマホで検索して調べてしまいがちですが、
プロに直接聞くのが一番なのですよね。
そして、そういうプロの方とのコミュニケーションは楽しいものなのですよね。

『たべる生活』は様々な気付きのあったエッセイでした。
あと、私の食生活の反省も。。。

最近、食生活が乱れているなあという方は、
群ようこさんの食エッセイ『たべる生活』を読んでみては?

この本を読んだ後はあらためて
「体は食べた物でできている」
ということに気付かされると思います。

yukikotajima 9:29 am

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』

2021年1月20日

コロナ禍で家にいる時間が増えたことで読書をするようになった方もいるのでは?
中には、読むだけじゃなく自分で小説を書いてみようかな、
と思っている方もいるかもしれません。
そんな方は、小説を書く前に、まずこの本を読んでみてはいかがでしょう?

『マナーはいらない 小説の書きかた講座/三浦しをん(集英社)』

紀伊國屋書店富山店でこの本を目にした時、最初は小説だと思って手に取りました。
でもタイトルには「小説の書きかた講座」とあり
パラパラとめくってみると確かにそんな内容で、
私は小説を読むのは好きだけど書くつもりはないんだよなあと
読むのをやめようと思ったのですが、いや、待てよと。
小説がどのように作られているのかを知るのは面白そうではないかと思い直し、
読んでみることにしました。

これが読んで正解でした。とても面白かったですし、
へえ、こんな風に本は作られていくのかと勉強にもなりました。

著者の三浦しをんさんは、
2006年に『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を
2012年に『舟を編む』で本屋大賞を受賞された人気作家です。
これらを始め、数々の作品が映画化、ドラマ化されています。

この本は、そんな人気作家の三浦しをんさんによる「小説の書きかた」本です。

きっかけは、三浦さんが某短編小説の新人賞の選考をしている時に
「もっとこうしたらいいのに」と感じたことからだそうです。

この本では、推敲、構成、人称、タイトルのつけ方などの基礎を学べるのですが、
具体例が豊富に使われているので、大変わかりやすく、そのうえ面白い!

例えば「セリフ」。
誰が言ったセリフかわかりやすくする戦法の一つに
「宝塚戦法」というものがあるのだとか。

「待ってくれ、アンドレ!」
「どうした、オスカル」

のようにセリフの中で相手の名前を呼ぶとわかりやすいと。(笑)
確かに宝塚ではよくセリフの中で相手の名前を言っているな、
と思わず笑ってしまいました。

また、ほかの例では、三浦さん自身の作品を取り上げていまして、
これがファンにはたまらないのです。(私もファンです)

この作品はこんな風に作られていったのか!
と読みながらワクワクが止まりませんでした。

例えば、箱根駅伝を描いた私も大好きな小説『風が強く吹いている』では、
タイトルのつけ方から取材方法、構成まで細かく明らかにしています。
なんと手書きの構想メモまでオープンにしちゃってます。
ですから三浦しをんさんの作品が好きという方はぜひお読みください。

もちろん三浦さんの作品をそれほど読んでいなくても大丈夫!
読書がお好きな方でしたら未読でも十分楽しめます。

私はこの本を読んで、自分が好きな作品の傾向がはっきりしました。

それは、うまい描写の本です。
ストーリーももちろん大事だけど、
素敵な表現で書かれた作品が私は好きだとあらためて思いました。

三浦さんも「描写」は大事だとおっしゃっています。
小説における描写とは、事細かに説明することではなく、
読者の想像力をよりかきたてるための「材料」だと。

その描写力をあげるためには、
「目に映ったものや感じた気持ちを、ふだんから脳内で言語化する」
ことが大事だとおっしゃいます。また語彙を増やすことも。
語彙と文法力のアップの方法についても書かれているのですが、
それについてはぜひ本を読んでみてください。

アナウンサーとしても大変勉強になった一冊でした。読んで良かった!
また、エッセイとしても面白かったです。
三浦さんが今はまっているものへの愛がすごかった。
ある映画のシリーズを推しているのですが、何度もその話題が出てくるので
とりあえず最初の作品だけでも見てみようかしら、という気持ちになりました。(笑)
やはり何かに対して熱くなれる方が小説家に向いているようですよ。

≪ おまけ ≫

描写がうまいといえば、去年のユキコレランキング1位に選んだ
髙樹のぶ子さんの『小説伊勢物語 業平』は、まさに豊かな表現が心地いい一冊でした。

◎本の感想は コチラ

そして、先日、この本も読んでみました。

『伊勢物語 在原業平 恋と誠』

こちらは、髙樹さんが小説を補足するために書かれた新書です。
小説とセットで読んでいただくと、より理解が深まると思います。

1000年以上前も人間の心は、今と変わりません。恋をして喜んだり泣いたり。
時代は違えど、感じる思いは今と同じだからこそ、
1000年以上前の物語に心動かされるのでしょうね。

また、彼らから学ぶことや気付かされることもあります。
例えば、当時の彼らは、短絡的に勝者と敗者を分けなかったのだとか。
そして、そのような一見曖昧にも見えるふるまいを
髙樹さんは「雅(みやび)」とおっしゃいます。
そこには相手を思いやる気持ちがあるのだと。
まさに今の時代にこそ、この「雅」が必要なのかもしれませんね。
あなたも『小説伊勢物語』で「雅」に触れてみませんか?

***

なが〜いブログになってしまい、申し訳ない。
でも、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

yukikotajima 9:27 am

今年の気まぐれな朗読会は2月6日(土)です。

2021年1月18日

CMでもお知らせしているとおり、
今年も「気まぐれな朗読会」をおこないます。

気まぐれな朗読会は、
「気ままプラン」パーソナリティ廣川奈美子
grace」パーソナリティ田島悠紀子でお届けする朗読会です。

気ままの「気ま」とグレースの「ぐれ」で「気まぐれ」です。

◎去年のレポートは コチラ

今年は、2月6日(土)18:00〜
富山県民小劇場 オルビス(マリエとやま7階)で開催します。

今年も3部構成です。
例年通り、1部、2部は、廣川さんとともに
3部はそれぞれ作品を読みます。

廣川:「ムシヤシナイ」高田都(たかだ・かおる)

田島:「鍋セット」角田光代(かくた・みつよ)

2作品とも
『NHK国際放送が選んだ日本の名作』シリーズ(双葉文庫)
に収録されています。

『ムシヤシナイ』「1日10分のぜいたく

『鍋セット』「1日10分のしあわせ」

入っていますので、良かったらお読みください。どちらもいいお話です。

朗読会のチケットは、すでに販売されています。
今回は80席限定です。(コロナ対策で例年より席数を減らしています)

◎詳しくは コチラ

今年も気まぐれな朗読会をどうぞよろしくお願いします。

yukikotajima 3:07 pm

『コロナと潜水服』

2021年1月13日

先週からの大雪、本当にすごかったですね。
私は雪かきによる全身筋肉痛だけで済みましたが、
もっと大変な思いをされた方もいらっしゃることと思います。
大雪お見舞い申し上げます。

富山の皆さんの中には、コロナに加えてこの大雪で、
ストレスがたまってずっとイライラしている、という方もいるのでは?


今日は、読んだ後に優しい気持ちなれる作品をご紹介します。

『コロナと潜水服/奥田英朗(光文社)』


私の大好きな作家、奥田英朗さんの新作です。
待ってました〜。本屋さんで見つけるや否や購入しました。

五つのお話が収録された短編集なのですが、
タイトルに「コロナ」とある通り、「コロナ」のお話もあります。

コロナ関連の本が最近、増えてきましたね。

先週ご紹介した東野圭吾さんの
『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』
まさにコロナ以降の物語でしたし、
今後はコロナ禍の物語がますます増えていきそうですね。

ただ、『コロナと潜水服』は、全てがコロナのお話ではありませんし、
暗くなるような嫌な内容でもありません。

どのお話もちょっと不思議なファンタジーです。

例えば、ある古民家に住み始めたところ、
誰もいないのに人の足音が聞こえる…といった感じです。
この状況だけだと怪談のようですが、怖い話ではありません。

それどころか、読んだ後は心がじんわり温かくなります。


表題作の「コロナと潜水服」は、五歳の息子には
コロナを感知する能力があると信じるパパのお話です。

どうやらこの息子君は、誰が感染しているのかわかるようなのです。
そんなある日、なんとパパ自身に感染の疑いが。
パパは自主隔離し、あるものを用意するのですが、これが息子を大いに喜ばせます。
さて、そのあるものとは?

他には、会社の早期退職の勧告に応じず、
追い出し部屋に追いやられた男性たちがあることを始める話や、
人気プロ野球選手と付き合うフリーアナウンサーが占い師に恋愛相談に行く話、
ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れた男性がその車に乗ったところ、
不思議なことが次々に起こる話などがあります。

私は特に、会社の追い出し部屋に追いやられた男性たちの物語が好きです。

彼らが職場であるものを発見し、終業後にふざけて遊んでいたところ、
ある年配の男性が現れ、いきなりそれについての指導を始め、
気付けば全員が真剣に取り組むようになり…というお話です。

いったい男性たちが夢中になってしていたこととは?
また、指導者とは何者なのか?

続きはぜひ本を読んでください♪


『コロナと潜水服』、大変良かったです!

どのお話も読んだ後はほっこり。優しい気持ちになれました。
その理由は、全てのお話が「笑顔」で終わっているからです。
また、作品によってはあたたかな涙も。。。

奥田英朗さんらしい素敵な作品でした。

私は奥田さんの人の描き方が好きなのですが、
今作の登場人物もみな人間味にあふれていました。

極端な性格のヒーローが出てくる物語も面白いけれど、
普通の人たちの物語は、どこかほっとします。
そして、そういう本こそ、何度も読み返したくなるのですよね。


先週末からの大雪で私もストレスや不安を感じていましたが、
この本を読んだ後は心が優しさで満たされ穏やかでした。

また、音楽にも癒されました。

奥田英朗さんは音楽、とくに洋楽が大好きなのですが、
この作品にも様々な曲が登場するのです。
しかもラジオから流れてきたという設定が多めなのが嬉しい。

この本には作中の登場曲が楽しめる
Spotify(スポティファイ)のプレイリストがついていますので、
曲を聴きながら読書をすることができ、より作品の世界に浸れます。

しかもどれもいい曲ばかりです。
曲を聞きながら読んでいたから、より充実した読書時間になったのかもな。

この週末は再び雪の予報ですし、
のんびり曲を聴きながら読書でもいかが?

yukikotajima 9:25 am

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』

2021年1月6日

今日が私が担当する新年最初のgraceです。
今年も毎週水曜13時45分ごろからのユキコレでは、
様々な本をご紹介していきますので、お付き合いいただけたらと思います。
よろしくお願いします。

さて、年のはじめに「今年は読書をする」と誓った方もいるかもしれません。

でも、本屋さんにはたくさんの本が並んでいるし、
どの本から読めばいいのかわからない…
と最初の本選びの段階でつまずいてしまうと、
その瞬間、本への苦手意識が芽生えて、本なんて嫌いだ!となりかねません。

普段あまり読書をしていない方は、
ドラマや映画で見た作品の原作を読んでみる、
というのはいかがでしょう?

先に映像で見ているので、物語の世界に入り込みやすいと思います。

それにしても、人気小説はほぼ映像化されますよね。
私もいつからか、小説を読みながら
この作品はいずれ映像化されるに違いない!
と思うようになってしまいました。
そして、その予想はたいていの場合、当たります。(笑)
配役予想は外れてばかりですが。

今日ご紹介する小説もいずれ映像化されると思います。

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人/東野圭吾(光文社)』

東野圭吾さんと言いますと、
加賀恭一郎シリーズガリレオシリーズがあり、
いずれもドラマ化されました。

今作もドラマ化もシリーズ化もされそうな予感がします。

というのも、事件の謎に挑む男性がテレビ映えしそうな方なのです。

その男性というのは、
以前はアメリカでマジシャンをしていたものの
今は東京でバーを経営しており、
見た目は、肩まで伸びた天然パーマに清潔感の無い無精ひげの
長身で痩せた50歳です。なお、顔は端正です。

オダギリジョーさんや藤木直人さんあたりが演じたら合いそう!
阿部寛さんや福山雅治さんも頭に浮かんだけど、
すでに東野作品のドラマに出演されているからなあ。
う〜ん。悩む。。。
なんてことを勝手に妄想する時間も楽しいものです。(笑)

***

物語は、ある名もなき町で起こります。

観光地であるものの、すっかり寂れてしまったその町では、
なんとか観光客を呼び込もうと、ある計画が進行中でしたが、
コロナの影響で頓挫してしまいます。

そんなコロナ禍の中で殺人事件が発生します。

殺されたのは、以前、中学の教師をしていた62歳の男性です。
教え子たちから慕われ、近々開催予定の同窓会にも参加予定でした。

東京で離れて暮らす娘の真世は、警察からの連絡で急きょ実家へ帰ります。

父はなぜ殺されたのか。
そもそも誰に殺されたのか。

警察に聞いても何も答えてくれません。

そんな中、父の弟、真世にとっては叔父である武史が突然現れます。

この武史こそさきほどご紹介した、事件に挑む男性です。

捜査過程を教えてくれない警察より先に、
自分の手で真相を突き止めたい!
と武志は事件の謎を解くために動き始めます。

そして、真世も父を殺した犯人を見つけるため
叔父の手伝いをすることになります。

元マジシャンと姪の二人は、
果たしてどのような方法で謎を解いていくのでしょうか。

続きは、ぜひ本を読んでみてください♪

***

さすが東野圭吾さんです。
頭の中に映像が浮かびっぱなしで、
本を読んでいるのに、映像作品を見ているようでもありました。

元マジシャンが事件の謎を解くというのが、面白かったです!
マジシャンならではの仕掛けが軽やかで素敵でした。
めんどくさいキャラだけど、それも含めて魅力的で、また会いたくなります。

東野さんは、この作品に関して

「このヒーローを生み出せたことで作家生命が延びたかもしれません」

とおっしゃっています。

ってことは、シリーズ化していくということですかね?
楽しみ〜!

なお、この作品は、韓国語や中国語、ベトナム語など
世界7言語での刊行が決定しているそうですよ。

今週末は3連休ですね。
また雪も降るようですし、お家でじっくり読書というのもいいのでは?

yukikotajima 10:11 am

丁寧な生活を送りたい方におすすめの本を2冊

2021年1月2日

あけましておめでとうございます。
2021年最初のラジオは、ネッツカフェドライヴィンです。

今年も引き続き、graceとともによろしくお願いします。


さて、今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは「習慣」です。

新しい年になって二日目です。
今年はどんなことを習慣化していきたいですか?

去年、世界が大きく変わったことで
これまでの習慣を変えざるを得なくなり、
生活のリズムがなかなかつかめなかった方もいたのでは?

この年末年始も、いつもとは違う日々を過ごしている方も多いと思います。

今年はどんな一年になるのだろう…と思うと不安も尽きないですが、
こんな時代だからこそ、私は「丁寧な生活」を習慣化していきたいなと。

規則正しい生活なのはもちろん、
自分の心にも体にも優しくありたいなと思いまして。

今日は、私と同じように丁寧に日々を過ごしていきたいと思う方に
おすすめの本を2冊ご紹介します。


まずは、先日発売されたばかりのエッセイです。

『私は私に時間をあげることにした
/レディーダック(著者) 趙蘭水(訳)【SBクリエイティブ】』


著者のレディーダックさんは韓国の絵本作家さんで、
可愛い絵と温かい文章がSNSで人気なのだとか。

本屋さんでこの本を見たとき、まずタイトルに惹きつけられました。
「私は私に時間をあげることにした」という言葉を見てハッとしました。
私は私の時間を大切にしていたかしらと。

レディダックさんは、様々な情報に振り回されがちな今の時代こそ、
自分の速度で歩んでいくことが大事だとおっしゃいます。

ほんわかした絵と優しさあふれる文章で、
ページをめくるたびに心がどんどんほぐれていきます。

たとえば、雨の日はいつも心がやわらかくなるから好きだと言います。
誰かが待ち合わせ場所に遅刻しても気をつけておいでと思えるからと。

確かに、雨の日は「濡れなかった?暖かくしてね!」と相手を気遣うことが多いかも。
雨の日は知らぬ間にみんな優しい気持ちになっているのかもしれませんね。

この本は、イラスト多めで文章も難しくないので、
読書はちょっと苦手という方でも読みやすいと思います。


もう一冊は、丁寧な生活に欠かせないものである「食」に関する本です。

富山出身の寿木(すずき)けいさんによる
『レシピとよぶほどのものでもない わたしのごちそう365【河出文庫】』です。

Twitterの人気アカウント「きょうの140字ごはん」
で紹介されたレシピに、エッセイも加わった一冊です。

2017年に発売され話題になった本が去年の秋に文庫化されたのを機に
そういえば読んでなかったなと買ってみました。

私は以前からTwitterはフォローしていましたが、
本を読むのは今回が初めてでした。

寿木さんのレシピは、シンプルで簡単なのにお洒落なので作ってみたくなります。
また、文章そのものが滋味にあふれていて、読み物としても楽しい一冊です。
豊かな表現のリズミカルな文章は、
読んでいるだけで心にいい成分が行きわたっていくようです。

たとえば、こんな感じ。

夏がなかったことみたいな、
ひんやり澄ました土鍋がひとつ。
おでん、湯豆腐、炊き込みご飯、
あつあついくつ作ろうか。
乳白色の丸いおしりを
ポンと叩いてあいさつ代わり。

どうですか?
まるで歌のようなかわいい文章です♪

この本には季節ごとのオススメレシピが載っているのですが、
それこそお正月にオススメのレシピもありますよ〜。
たとえば、胃を休める「一年の計スープ」
これ、私も作ってみようと思います。
気になる方はぜひ読んでみてくださいね!

yukikotajima 9:16 am

★2020年本ランキング★

2020年12月23日

今日は2020年最後のユキコレ(grace内の本紹介コーナー)ということで、
毎年恒例の田島が選ぶ本ランキング「ユキコレ ランキング」を発表します。

今年は、いや、今年も悩みましたー。

今年私が読んだ作品は、派手さはないものの
じんわり心に染みわたる作品が多かったように思います。

その中から本の世界に没頭した作品を選んでみました。

※本のタイトルをクリックすると、田島の本の感想ページが開きます。


1位:『小説伊勢物語 業平/髙樹のぶ子(日本経済新聞出版)』


在原業平が主人公とされる平安時代の歌物語
「伊勢物語」を現代語訳ではなく、小説化した作品です。

450ページをこえる本の厚みと重厚感あふれる装丁から
見た目は難しそうな気配を漂わせていますが、中身は軽やか。
リズミカルな言葉の響きが心地いい作品でした。


2位:『ライオンのおやつ/小川糸(ポプラ社)』


今年一番泣いた本です。
医師から余命を告げられた女性が人生の最後に過ごした
ホスピスでの日々が描かれています。

こちらも1位の作品と同じく表現豊かな文章で
声に出して読みたくなりました。


3位:『なぜ僕らは働くのか
‐君が幸せになるために考えてほしい大切なこと‐
/監修:池上彰(Gakken)』

こちらは小説ではありません。

監修を担当された池上彰さんが、将来の働き方について
中学生や高校生に考えてもらおうと思ってお作りになった本ですが、
大人にもオススメです。

池上さんによると、大人の方がこの本を読むと
「きっと初心に返って仕事への意欲が湧いてくることでしょう」
だそうです。

新しい年の一冊目にいかが?


以上、悩みに悩んで選んだ3冊です。
良かったら年末年始にでも読んでみてください♪

***

今年も一年、私のブログ「ゆきれぽ」(ほぼ本の感想)にお付き合いいただき、
ありがとうございました。

本の感想は、毎週水曜の13時45分ごろ〜の
grace内コーナー「ユキコレ」でご紹介しています。

来年最初の「ユキコレ」の放送日は、1月6日(水)の13時45分ごろ〜です。

なお、年内のgraceの放送は、明日12月24日が最後です。
(12月30日、31日は休止です)

それではよいお年を〜♪

yukikotajima 1:50 pm

『いつの空にも星が出ていた』

この間の日曜日、家のパソコンで
富山グラウジーズ対千葉ジェッツの試合を見ました。

Bリーグになってから富山はまだ一度も千葉に勝ったことがありません。
でも、今シーズンの富山は二日続けて負けていないのです。

だから昨日は千葉に負けたけど、今日は勝つはず!
と願いながら試合を見つめていました。

前半は終始、千葉がリードし、やはり今日も負けてしまうのか…
と思ったら、後半、選手たちが躍動し、ダブルオーバータイムに!

結果は129-130と惜しくも一点差で敗れてしまいましたが、
一瞬たりとも目が離せない大変面白い試合で、
私は興奮しっぱなしでした。

ドキドキしたり喜んだり泣いたり。

どんな人でも感じるままに感情を表に出せる
スポーツ観戦って、すごくないですか?

あなたには、そんな夢中になって見てしまうスポーツや
応援しているチームはあるでしょうか。


今日ご紹介するのは、横浜ベイスターズのファンの皆さんのお話です。

『いつの空にも星が出ていた/佐藤多佳子(講談社)』


本の表紙には夜のスタジアムのイラストが描かれ、
帯には「どこまでも熱くて、かぎりなく純粋な、人生と応援の物語」
とあり、なんだか明るそうな内容だし、
今年最後に紹介するのに良さそうだと思って選んでみました。

実は私、本を手に取った時は、
ベイスターズの本であるとは、まったく気付いていませんでした。

ちなみに、ベイスターズが好きなFMとやまの堀池アナに
この本をすすめたら、表紙を見るやいなや
「ハマスタだー!」と叫んでいました。(笑)
ファンはこの表紙を見ただけでわかるのですね。さすがです。
堀池さんは早速この本を購入したそうです。


今回の作品は、4つのお話が収録された短編集で
登場人物も、高校の先生、女子高生、
家業の電気店を継いだ若者、小学生の男子とバラバラです。

でも全員に共通しているのが、横浜ベイスターズが好きであるということ。

物語は、最初は1984年、次は1997年、98年と、お話ごとに時代が異なります。
それも昔から今へと進んでいきます。

その時代ごとの出来事や選手の名前も出てきますので、
ファンの方にはたまらないと思います。

でも、私のように詳しくなくても大丈夫!
野球や横浜ベイスターズのことがわからなくても
好きなスポーツやチームがある人ならきっと共感できると思いますし、
何よりそれぞれの短編が面白いのです。

私は1997年の女子高生の物語が好きです。

もともとは彼氏がベイスターズが好きで
一緒に応援しているうちに自分も好きになるという
ありがちなお話なのですが、それがいいのです。
彼女が本当にベイスターズのファンになる瞬間なんて最高です!
(詳しくは本を読んでね)

(また私がこの主人公と同世代ということもあり、
色々な意味で懐かしさもありました)

彼女の他にも、誰とも野球の話はしないけど家で一人で見ている人や、
好きな選手がチームから離れてしまったことで
試合を見なくなってしまったものの
やっぱり好きな気持ちがおさえられない人など、
様々なファンが登場します。

横浜ベイスターズファンや野球好きの方はもちろん、
ほかのスポーツでも応援しているチームがある方には、
ぜひ読んでいただきたい一冊です。

初めてファンになった時、
好きな選手が移籍や引退をした時、
チームがなかなか勝てずにいる時、
それぞれの瞬間の思いが素直な言葉で綴られています。

例えばこんな感じ。
87歳のおじいちゃんが小学生に言うセリフです。

「その気持ちをジジイになるまで持っていけ。

強い時も弱い時も、雨の日も風の日も、
フロントがクソでもベンチがアホでも、
チーム名が変わってもマスコットが変わっても」

言葉は汚いけど、かっこいい!
長くファンをしている人だからこその言葉です。

大変熱く面白い一冊でした。

yukikotajima 9:20 am

『家族じまい』

2020年12月16日

今年は家にいる時間が増えたことで
家族と向き合うことも多かったのでは?

あらためて家族の大切さに気付いた方もいれば、
コロナ離婚という言葉もあったように
逆に気持ちが離れてしまった方もいたようですね。

あなたは家族とはどんな関係ですか?

親、きょうだい、子ども、それぞれとの関係はいかがでしょう?
うまくいってますか?

今日ご紹介する本は、ある家族にまつわる物語です。

『家族じまい/桜木紫乃(集英社)』

『ホテルローヤル』で直木賞を受賞した桜木紫乃さんの新作です。
『ホテル〜』は映画化されこの秋公開されましたので、ご覧になった方もいるのでは?


新作の『家族じまい』は、5人の女性が主人公の連作短編集です。

まずは、美容室でパートとして働く48歳の智代(ともよ)のお話です。

彼女は子育てにひと区切りつき、夫と2人で暮らしています。
それなりに夫とはうまくやっているつもりでしたが、
ある日、夫の後頭部に円形脱毛症を見つけ、
何かあったのかと気になりながらも、なかなか聞くことができずにいます。
そんな中、自分の親や仕事の問題も重なっていきます。

他には、智代の妹や母親の姉などが登場します。
全員女性で一人以外は親族です。

連作短編集ですので、主人公が入れ替わりながら
でも登場人物は同じまま物語が進んでいきます。

話の軸になるのは智代の両親です。

母親は認知症で記憶を無くしつつあり、父親が面倒を見ています。

…と紹介すると良い父親のようですが、
以前は好き勝手生きていて家族を振り回し続けていたのでした。

そのため姉の智代は長い間、両親とは距離を置いており、
一方、妹は両親とは頻繁に連絡を取り合い、二世帯住宅を考えるほどです。

そして、この姉妹はそれほど仲がいいわけでもなく、
それぞれ相手に対して不満を抱えています。

というか、出てくる人みんながそれぞれの事情を抱えています。

この作品は、主人公が変わることで物事の見え方も変わっていきます。

なるほど、そういう事情もあったのかと客観的に見ながら、
あらためて人によって考え方や感じ方は様々だと気付かされました。
いや、人というか家族の、といった方がいいかな。

相手が他人の場合は自分と考えが違っていてもまだ理解できると思うのですが、
家族の場合はそうはいかなくないですか?

家族というだけでお互い理解できて当然!
と思ってしまうところがあるように思います。
そしてもし理解してもらえなかった場合、
家族なのに私のことをわかってくれない、と思ってしまうのですよね。

でも家族だからって全員が同じ考えとは限らないのですよね。

この本の主人公たちも皆、考え方はバラバラてす。
それ故、衝突もあります。

現実の世界では人の心の中をのぞけないので、
あくまでも想像するしかできませんが、
小説の場合、堂々とのぞけます。

それぞれの人の本音を知る時間は楽しいし、
そういう風に思う人もいるのか、と勉強にもなります。

この本は特に、様々な考え方の人が登場するので、
そういう意味でも読みごたえがありました。


また、この本の何がいいって、文章が素晴らしいのです!

本の帯に書かれている作家の村山由佳さんのコメントが
まさに私の言いたかったことなのでご紹介します。

「どうやったらこんな一行が書けるんだろう」
と唸る文章が、随所に、あくまでさりげなく配される

まさにその通りです。
桜木さんの文章は、これ以上綺麗にはまる言葉があるのかというくらいに、
ぴたっと正しくそこにおさまっているのです。

例えば…

ストレスを感じた時に飲む百円の缶酎ハイのことを
「高くても百円の、心の隙間を埋める投資」と言ったり、
自分の話も別の人の記憶に混ぜ合わせると
別の色合いが浮かび上がり新たな模様が現れる、
と表現したりしているのです。

くぅ。こんな表現できそうでできないよー。

これも好きです。

会話の最後はいつのときも、明るい明日の話題がいいのだ。
そうでなくては、翌日の太陽が暗い。

『家族じまい』は、素敵な文章に触れたいという方にもオススメです。
もちろん家族に関しての悩みを抱えている方にも。

そうそう、著書の桜木さんによると、
「家族じまい』の「しまい」は、
終わりの「終い」ではなく「仕舞い」なのだとか。
詳しくは作品を読んでみてください。

決して後ろ向きではない物語ですよ。

yukikotajima 11:06 am

『彼女の名前は』

2020年12月9日

先月、富山で映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が公開されました。
あなたはご覧になりましたか?
私は見に行こうと思った日に、もう上映が終わっていて見られず。。。
見たかったなー。

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』の原作は、
韓国で130万部を突破したベストセラー小説です。

現代女性の生きづらさを描いた小説として、日本でも話題になりました。

私ももちろん読みましたし、ラジオでもご紹介しました。

◎田島の本の感想は コチラ

***

今日ご紹介する本は、この『82年生まれ、キム・ジヨン』を書かれた
チョ・ナムジュさんによる短編集です。

『彼女の名前は(筑摩書房)』

著者が、9歳から69歳まで60人余りの女性に取材をして書いた
28のお話が収録されています。

取材がベースになっているものの、ノンフィクションではなく小説です。

例えば…
・セクハラと戦う女性
・初めて会社で育休を取った女性
・仕事の忙しい娘の代わりに孫の面倒を見る女性
・路線バスの女性運転手
・国会の清掃職員
などの女性が登場します。

出てくる女性たちは皆、普通の女性たちです。

著者のチョ・ナムジュさんは
「特別ではない、大したことのない、そんな女性たちの人生」
を書いたそうです。

それも社会の不条理に声をあげる女性たちを丁寧に描いています。

そう、女性たちはみんな何かと戦っているのです。
セクハラと、会社と、義理の家族と…。

そして、その戦いは自分のためだけではありません。

この苦しい思いを他の誰かに味わわせたくない。
私で終わりにしなければ!という思いで戦っているのです。

女性たちが立ち上がる理由は、「次の人」のためです。

ある女性はこう言います。

私だってそうだったんだよ。
あたしたちの頃はもっとひどかったんだから。

そんなことを言う先輩にはなるまい。

ドキリとしました。
だって、私も年上の人たちからよく言われてきたし、
私自身も年下に言ったことがあったから。
反省。。。

私だって辛い思いをしたのだからあなたも我慢して。ではなく、
こんな思いは、もう他の人にはさせない。私で終わらせなければ!
と思う人が増えれば、世の中はいい方向に変わっていくのですよね。

辛い時は、なんで自分ばかりがこんな思いをしなきゃならないのよ…
と気持ちが自分に向いてしまいがちですが、
私がこの状況を変えることで後に続く人たちもきっと楽になる!
と思えば、確かに頑張れそうな気がします。

この本は韓国のお話ですので、日本とは異なる部分もあります。
日本ではそんな話は聞いたことないな、と驚くような話もあり、
私には韓国のほうがより酷い状況に感じられました。
詳しくは実際に本を読んで頂きたいのですが、
それこそ、大ヒット映画『パラサイト 半地下の家族』のような話もありました。

でも、日本でも今よりもっと女性が生きづらかった時代もあるわけで、
これまで様々な理不尽と戦ってきた女性がいるから、
今がだいぶ生きやすい時代になっているんだよな、
ということにあらためて気付かされました。

先輩方、本当にありがとうございます。

これからは、私も次に続く人たちのために、
しっかり生きていきたいと思いました。

この本の中で、40歳についてこう書かれていました。

40を過ぎたら自分の顔にも自分を取り巻く社会にも責任を持つべき。

すでに40歳をこえている私には耳の痛い言葉でした。
私、社会に責任を持てているだろうか。
そもそもひどい顔をしていないかと。
40歳を過ぎるとこれまでの生き方で顔つきが変わるのだそうです。
あなたはどんな顔をしているでしょうか。

著者のチョ・ナムジュさんは、
『82年生まれ、キム・ジヨン』によって
問題が社会に認識されたことはよかったけど、
認識だけではダメで、半歩でも前に進もうと、
そのためにこの本を書かれたそうです。

『彼女の名前は』は、多くの方に読んでいただきたい一冊です。男女問わずぜひ!

yukikotajima 9:08 am

『きみの瞳が問いかけている』『とわの庭』

2020年12月2日

先日、映画『きみの瞳(め)が問いかけている』を鑑賞しました。
話題の『きみのめ』です!

実は11月末までの鑑賞チケットを持っていたことをすっかり忘れていて、
先日あわてて見に行ったのでした。

なんてことをgraceの月曜火曜担当の垣田さんにお話したら、
垣田さんも全く同じことをしていました。
しかも見た作品まで同じでした。(笑)

映画はとても良かったです。
久しぶりに王道の恋愛映画を見たのですが、王道の安心感っていいですね。
王道最高〜!

映画を見たあとの私の心は、瑞々しい映画の世界のように清らかな気持ちでした。
とても美しい映画でした。

主演の横浜流星さんもずっと見つめていたくなるほどの美しさでした。
私が10代だったら部屋にポスターを貼っていたに違いない(笑)。

今までは、ドラマ『初めて恋をした日に読む話』のピンク髪の不良高校生の
ゆりゆり(役名)が一番のはまり役だと思っていたけど、
この映画の塁(るい)も良かったです。
塁はある出来事から夢を失くしてしまうのですが、
横浜さんは影のある役が似合いますね。

一方、相手役の吉高由里子さんは明るいキャラクターが合っていました。
吉高由里子さん演じる明香里は、事故で視力を失くしてしまいます。
でも、目が不自由でありながらも、一人で暮らし、仕事もしています。
何より明るくかわいい女性です。

『きみのめ』は、そんな夢を失くした男性と
視力を失くした女性の恋模様が描かれた
王道のラブストーリーです。

若い方だけでなく、大人の女性の皆さんもぜひ。
きっと心が満たされると思いますよ〜♪

◎映画の公式サイトは コチラ

***

かわっては本のお話です。

ご紹介する本の主人公の女性も
映画『きみのめ』と同じく視覚障がい者です。

『とわの庭/小川糸(新潮社)』

ちなみに、映画『きみのめ』と、この小説は全く別の作品です。

ただ、どちらの主人公も目が不自由という点では、重なるところが多々ありました。

例えば、いずれの主人公も目が見えないので匂いや音で判断したり、
洋服選びはスマホを使って色や模様をチェックしたり。
とくにお花などの自然の匂いに敏感なのが印象的でした。

『とわの庭』も本のタイトル通り、庭の植物の匂いが感じられる作品でした。

主人公は「とわ」という女性です。
物語はとわの子どもの頃のお話からスタートします。
とわは目が見えなくてもママがいれば幸せでしたし、
ママもとわのことが大好きでした。

後半は大人になったとわの物語が描かれます。

とわがどのように大人になっていったのかは、
ぜひ本を読んでいただけたらと思います。
本当はその間のことを言いたいのだけど、我慢します。
この作品は、ネタバレを一切したくないタイプのお話なのです。

私はこの本のことを何も知らずに読んだので、途中かなりの衝撃を受けました。
読んでいる最中は、喜怒哀楽のすべての感情が入り混じっていました。
こんなにも感情が揺さぶられることになるなんて!
というくらいに気持ちが動き、さらに何度も涙がこぼれました。

でも、読み終えた後は穏やかでした。

そもそも私が『とわの庭』を読んでみたいと思ったのは、
小川糸さんの新作だったからです。

小川糸さんと言いますと、今年春に
『ライオンのおやつ』をラジオでご紹介しました。

本屋大賞の2位にもなった話題作です。

◎『ライオンのおやつ』の感想は コチラ

余命を告げられた女性が人生の最後に過ごした
ホスピスでの日々が綴られた小説で、涙が止まりませんでした。
今年一番泣いた作品です。

『とわの庭』は、そんな小川糸さんの新作ということで、
きっといいに違いない!と思って、中身は一切確認せずに読み始めたのでした。

実際とても素敵な物語でした。

淡い黄色の本の表紙を見ると穏やかそうな雰囲気ですが、
「とわ」の人生には色々なことが起こります。

でも、とわはいつでも前向きです。

なぜなら彼女はたくさんの人やモノから力をもらっていたから。
ママが読み聞かせてくれた物語に、ピアノの音、そして大好きな友達など。

この本を読んで私は、とわちゃんから力をもらいました。

***

『きみのめ』と『とわの庭』は、いずれも視覚障がい者が主人公です。
内容は全然異なりますが、主人公2人に共通しているのは、
2人とも前向きで明るいということと、丁寧に暮らしていることです。

偶然とはいえ、これら二つの作品を同時に味わって、
目が見える私のほうが、実際は見えていないことが多いのかもしれない、
と思いました。

どちらもいい作品でした!

yukikotajima 9:14 am

『デルタの羊』

2020年11月25日

「アニメ」というと、どんな印象がありますか?

今年はなんといっても鬼滅の刃が大人気で、
熱狂的なファンも大勢いますよね。

日本のアニメは、子どもから大人までを夢中にし、
今や日本だけにとどまらず海外でも人気がありますが、
いったいどのように作られているのか、ご存じですか?

今日ご紹介するのは、今の日本のアニメのリアルを描いた小説です。

『デルタの羊/塩田武士(KADOKAWA)』

塩田さんというと、現在公開中の映画『罪の声』でおなじみです。
また、大泉洋さんを主人公にあてがきした『騙し絵の牙』も来年公開予定です。

◎『騙し絵の牙』の田島の感想は コチラ

もと新聞記者の塩田さんは、
どの作品も徹底的に調べてから書いているのだそうです。
だから塩田さんの作品からはリアルな現場の空気が感じられます。

今回も「日本のアニメ」の現状がよくわかりました。

物語は、アニメ製作プロデューサーの男性が、
SF小説のテレビアニメ化に着手するところから始まります。
しかし業界の抱える課題が次々と浮き彫りとなっていきます。
製作委員会、制作会社、ゲーム、配信、中国、テクノロジー、コロナ後…。
なんと早くもコロナ後のことまで描かれています。

アニメ業界には2つの「セイサク」があるそうです。
実際にアニメーションをつくる「制作」と
アニメをビジネスとして成立させる「製作」です。

これら2つの「セイサク」の現場が丁寧に描かれていますので、
私のようにアニメに詳しくない人でも楽しめます。

私はこの本を読んでアニメの見方というか、見え方が変わりました。

これまではストーリーや絵が好きかどうかで見ていたけれど、
キャラクター達の動き、表情など細かいところまで見てみたくなりました。

動きや表情が自然に見えることは、実はすごいことなのですよね。

この本を読みながら私が新人の頃のことを思い出しました。
ニュースの練習をしている時に、先輩の牧内アナから
「上手な人のニュースは、ニュースの内容が自然に頭に入ってくる」
と教わったことを。
上手な人は自然に聞かせられる人のことで、
あえて「うまいなあ」とは思わせない。
でも、下手な人は、すぐにわかるのものだと。

この本の中の、あるベテランアニメーターの言葉も印象に残りました。

ものづくりに携わるものは、本能的に高みを目指すけれども
必ずどこかで線を引かなければならない。
そこから先は「つくり手のエゴ」になる。

まさにプロの言葉だと思いました。

また、このベテランアニメーターは
「表現方法は時代と添い寝する」と言い、
手書きからデジタル作画、そしてCGへと
時代に合わせて描き方を変えているのです。
若手ですら手書きじゃなきゃ嫌だという人がいるのに。

この物語は、アニメの現場を通して
ものづくりとは何か?についても学ぶことができ、
そういう意味でも楽しめました。

でも、私が一番伝えたいのは、
「小説として大変面白かった」ということです。

アニメの世界を描いているとはいえ、この作品は小説です。
そして、文字だけだからこその面白さがありました。

え?そういうことだったの?
と何度驚いたことか。

あなたは読みながら、塩田さんの仕掛けに気付けるかしら?
ふっふっふ。

この本のすごいところは、
最初にページをめくって読み始めたときから
何度も物語の印象が変化していくことです。
ですから、最後まで読んだ人は、きっとまた最初から読みたくなるはず。

大変面白い一冊でした!

正直なことを申しますと、
以前、紀伊國屋書店富山店に行った時に、
小説にお詳しい書店員さんから
今一押しとしてこの本を薦められたのですが、
本の帯の「アニメ」という言葉を見て
「私、アニメのこと詳しくないんですよね…もう少し様子を見ます」
と一度断ってしまったのです。

でも、先日お邪魔した時にも再度薦められまして、
そんなにおっしゃるならと読んでみたわけです。

そしたら大変面白くて、これは確かに薦めたくなる!と納得。
ですから私と同じように「アニメに詳しくない…」という方もぜひ〜。

そして、この本を読んだ方はきっと思うはず。
いつかアニメ化してくれないかなあと。

小説としての面白さはもちろんあったけれど、
アニメ版も見てみたいと思わずにはいられないのですよ、これが。

アニメの現場にいる皆さん、ぜひご検討ください。(笑)

yukikotajima 9:29 am

『エンド・オブ・ライフ』

2020年11月18日

読みたい本を選ぶ時、「本屋大賞」を参考にされる方も多いのでは?

本屋大賞は、全国の書店員の皆さんが選んだ「売りたい本」のことで、
毎年春に発表され、大賞作は話題になります。

今年の本屋大賞は、凪良ゆうさんの『流浪の月』でした。

◎私の感想は コチラ

その本屋大賞にはいくつかジャンルがありまして、先週11月10日には
「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」
の大賞作が発表されました。

こちらは、日本全国の書店員さんとYahoo!ニュースが選ぶもので、
去年の大賞作は、超話題作、ブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
でした。
こちらはgraceにもリスナーの皆さんから何度も本の感想が届きました。

◎私の感想は コチラ

そして、今年のノンフィクション本大賞は、
『エンド・オブ・ライフ/佐々涼子(集英社インターナショナル)』
が選ばれました。

佐々さんはノンフィクション作家として
『エンジェルフライト』
『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 』
などをお書きになり、いずれも話題になりました。

◎『紙つなげ!』の私の感想は コチラ

***

今回の『エンド・オブ・ライフ』は、
在宅での終末医療の現場を綴ったノンフィクションです。

執筆のきっけかは、
佐々さんのお母様が難病を発症し、
在宅医療を受けていたことでした。

佐々さんは、訪問医療を行っている京都の診療所の医療チームに同行し、
7年にわたって取材されます。

この本には在宅での終末医療の現場が綴られているのですが、
長い期間にわたって丁寧に取材されたことが
佐々さんの文章から伝わってきます。

終末医療の現場を取材することは、決して楽ではないと思うのです。
もし私が取材される側だったら、
取材許可を出せるかどうかすぐに答えは出ないですもの。

実際、佐々さんも悩みます。
でも、だからこそ心を開いてもらえたのではないかと思います。

自分の命が長くないことを知った患者さんや、その家族の思いを読みながら
私は涙が止まりませんでした。

この診療所では、患者たちの最後の希望を叶えるボランティアをしています。
最後に家族と「潮干狩りに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」
といった希望を叶えるために、万全の態勢でサポートしているのです。
それもボランティアで。

医療チームの素晴らしいサポートや
患者さんや家族の皆さんの優しさに涙があふれました。

でも。。。
美しいエピソードだけではありません。

この本を書くきっかけとなった難病のお母様の在宅医療や、
患者の家族として見た医療の現場についても書かれています。
佐々さんが取材をした京都の診療所は素晴らしいところでしたが、
全ての医療機関がそうとは限りません。
また、在宅での介護は家族にとっては大変なものですので、
「家族愛」だけでどうにかできるものでないことも
佐々さんは包み隠さず書いています。

また、今回の取材で出会って友人にもなっていた
訪問看護師の森山さん(48歳・男性)のこともたくさん書いています。
彼はある日、手術も治療もできない病気になってしまうのです。

森山さんは、それまで200名の患者を看取ってきた
「看取りのプロフェッショナル」ですが、
そんな彼でも自分の最期をすぐに受け入れることはできませんでした。

佐々さんは、森山さんが自らの最期とどのように向き合っていったのかを
正直に綴っています。

本の帯に、「命の閉じ方」をレッスンする。とあるとおり、
まさに、この本からはたくさんのことを学ばせていただきました。

患者さんやその家族と自分を重ねて、
自分だったらどうするだろう?と悩みながらページをめくっていきました。

人の最期について書かれた本なんて辛くて読めないよ…
という方もいるかもしれません。

確かに辛い描写もあります。
でも、決して後ろ向きな内容ではありません。

きっとこの本を読んだ人は、
自分はこの先どう生きていきたいのかを考えると思います。
それも前向きに。

さすが本屋大賞受賞作だわ!

私は書店員ではないけれど、
一人でも多くの方に読んでいただきたい一冊です。

yukikotajima 9:20 am

『夜明けのすべて』

2020年11月11日

今日ご紹介する本は、
去年、『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞した
瀬尾まいこさんの受賞後最初の作品です。

『夜明けのすべて(水鈴社)』

前作は、本屋大賞のほか、
紀伊國屋書店スタッフオススメの本ランキング「キノベス」でも
1位を受賞するなど、大変話題になりました。
ラジオでももちろんご紹介しています。

◎『そして、バトンは渡された』の田島の感想は コチラ

受賞後初となる新作『夜明けのすべて』は、表紙が大変目立ちます。
鮮やかな青をベースに、中央に黄色い砂時計が描かれた
青と黄色のコントラストが目をひく表紙となっています。

そして、この本の出版社は「水鈴社(すいりんしゃ)」です。

今年7月に設立されたばかりの新しい出版社で、
この『夜明けのすべて』が創立後最初の単行本だそうです。

***

『夜明けのすべて』は、同じ会社で働く男女の物語です。

28歳の美紗は、仕事も丁寧で周りに気を遣えるので、
社員の皆さんとの関係も良好です。
ただし、ずっとPMS(月経前症候群)に苦しんでいて、
月に一度生理前になるとイライラが抑えられなくなってしまいます。

普段なら気にならないことも生理前だけではダメで、
ある日、転職してきたばかりの3つ年下の25歳の山添君に当たってしまいます。
というのも彼は仕事に対してまったくやる気がないのです。

でも、彼もまたパニック障害になって人知れず病気と闘っていたのでした。

物語は、この二人のパートが交互に描かれていきます。

***

美紗と同じようにPMS(月経前症候群)に苦しんでいる、という女性もいるのでは?

PMSは、美紗のようにイライラしたり、精神的に不安定になったり、
腹痛、頭痛、めまいに悩まされたりと人によってその症状も辛さも様々です。

そのため男性だけでなく、同性から「大げさ」と思われてしまうこともあります。

私は美紗ほどではありませんが、ほぼ毎回症状は出ています。
だから生理前に何かしらの決断をしないように決めています。
私の場合、イライラするだけでなく、
腹痛、頭痛のせいもあって投げやりになってしまうのです。
どうでもよくなって、よくない決断をしがちでして。
だから、終わるまで決断はしません。
今、「わかるー!」と頷いている女性もいるのでは?

さて。
美紗は、このPMSのせいで転職したのでした。
今の職場では最初からPMSのことを伝えているため、
職場の人たちは理解してくれています。

山添君もパニック障害が原因で今の職場にやってきたものの、
彼の場合、会社に自分の病気のことは伝えていません。

そんなある日、美紗は山添君が発作を起こす姿を見て彼の病気に気付きます。
そして、彼のことをやる気のない人だと決めつけていたことを反省し、
彼が少しでも楽になれるよう、自分にできることはないかと考えます。

一方、山添君のほうはというと、自分のほうが辛いに決まっている!と思っています。
でも、よく考えれば僕はPMSのことを知らない。
もしかしたら想像以上にしんどいのかもしれない。
と考え直し、自分も彼女の力になりたいと思い始めます。

なんと二人そろって相手を助けることを考えるようになるのです。
二人とも自分が辛いからこそ、相手の負担を減らしてあげたいと思うのですね。
優しい。。。

そして、二人で過ごす時間も増えていきます。
二人ともこれまで自分の悩みを人に打ち明けられずにいましたが、
一緒にいるときは自分の素直な気持ちを話せるようになります。
そして、少しずつ二人は変わっていきます。

でも!

二人の間に恋愛感情はありません。
職場の人たちは何かと二人をくっつけたがるのですが。(笑)

『夜明けのすべて』は優しさに満ちた物語でした。
思わず声に出して笑ってしまうようなところもあるのだけど、
私は笑いながら涙も出てきました。
良かったね、というあたたかな涙です。

出てくる人がみんないい人ばかりで、読んだ後は私の心も穏やかでした。

また、心が元気になるための小さな気付きもいくつもありました。
例えば、山添君は何を食べても美味しくないと思っていたのですが、
ただ美味しいものを食べていなかっただけだったりするのです。

たしかに美味しいものを食べた時はそれだけで元気になりますもんね!

ちなみに、著者の瀬尾さん自身、パニック障害で苦しんだ過去があるそうです。
詳しくは水鈴社のサイトに掲載されている直筆の手紙に書かれていますので、
良かったらお読みください。

◎水鈴社のサイトは コチラ

この小説には瀬尾さんの実体験も描かれているようですよ。

PMSやパニック障害は聞いたことはあっても
詳しい症状はよくわからないという方も多いのでは?
この本を読むことで、人知れず苦しむ人の気持ちを知ることができます。
そういう意味でも多くの方に読んでいただきたい一冊です。
読んだ後は、人に対して接し方や見え方が変わるはずです。
逆に登場人物たちと同じような状況にある方は、きっと心が軽くなるんじゃないかな。

とってもあたたかくて優しい物語でした。

yukikotajima 9:33 am

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』

2020年11月4日

先日、本屋さんに行った時、
次はどんな本を読もうかしらと店内をぶらぶら歩きながら
まだまだ知らない本がなんとたくさんあることか!と思ったら、
どの本を選べばいいのかわからなくなり、こんな時はプロに頼ろうと
紀伊國屋書店富山店の書店員さんに相談。

小説以外の例えばエッセイでオススメは?と聞いたところ、
今一押しのエッセイとして、この本を教えていただきました。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
/岸田奈美(きしだ・なみ)【小学館】』

本の帯を見ると、阿川佐和子さんのお名前が。

阿川さんというと、お母様が認知症になり、
その体験を小説にされていたので、
もしやこのエッセイもそういった内容かしら?
本のタイトルにも「家族」が入っているし。
と思ったのですが、違いました。

本の帯の下のほうに小さくこう書かれていました

車いすユーザーの母
知的障害のある弟
急逝した父

情報過多な日々をつづる笑いと涙の自伝エッセイ

ん?「笑い」のエッセイ?こんなに大変そうな状況なのに?
と頭の中にたくさんの「?」が浮かびつつ、
書店員さんの一押しだしと読んでみることにしました。

著者の岸田奈美(きしだ・なみ)さんは、
100文字で済むことを2000文字で伝える1991年生まれの作家さんで、
ブログサービスのnoteやTwitterで話題となっているそうです

このエッセイは、岸田さんの家族の日々が綴られています。

岸田さんは、中学生の時にお父様が急逝し、
高校生の時にはお母様が病気によって車いす生活になり、
4歳年下の弟は生まれつきダウン症で知的障害があります。

ですが、岸田さんの文章はとにかく明るいのです。

もちろん悩んだり落ち込んだりもしていますよ。
でも、どのエッセイも読んだ後は優しい気持ちになれます。

特にダウン症の弟さんを見つめる優しい眼差しが印象的でした。
エッセイには弟さんのいいところがたくさん紹介されていますので、
きっと読者はみんな、弟さんのことが好きになると思います。

ところで、あなたはご家族のいいところをいくつ挙げられるでしょう?

岸田さんは、弟さんのことをいつも見ているので、
いいところにも気付くのでしょうね。

弟さんのエピソードは色々と紹介されていますが、
コンビニで万引きを疑われた弟が再び一人でコンビニに行った時に、
こっそり尾行したエピソードは、涙なしには読めませんでした。
あ、でもこれはいい涙ですよ。

岸田さんが弟さんに向けた言葉が素敵だったのでご紹介します。

「行ったことのない場所に、どんどん行け。助けられた分だけ、助け返せ」

素敵なお姉ちゃんだ!と思ってページをめくっていったところ、
なんと岸田さん自身が弟さんに助けられることになります。

いったい岸田さんに何があって
弟さんはお姉ちゃんをどのように助けたのかについては、
ぜひ本を読んでいただきたいのですが、このエピソードも良かった!
私自身も助けられた気分で心が軽くなりました。

岸田さんのエッセイは、文章がとても素直なのです。
お友達にそのまま喋っているような飾らない表現ですので、
まるで彼女のお喋りを聞いている気分で読むことができました。

この素直さが彼女の魅力であり、
大勢のファンがいる理由なのでしょうね。

また、彼女の文章からは表情が見えます。基本的には笑顔が。
笑いながら文章を書いているのが伝わってくるエッセイでした。

そんな彼女の笑顔を実際に見ることができます。
この本には岸田家のご家族の写真が挟まれているのです。

また、本のカバーを外すこともお忘れなく。
こちらにも素敵な家族の写真がありますので。

この本を読んだ後の私もきっといい表情をしていたと思います。(笑)
人を信じてみたくなる、優しさにあふれたエッセイでした。

yukikotajima 9:16 am

読み聞かせにオススメの本を2冊ご紹介

2020年10月31日

今日のネッツカフェドライヴィンは、
ちょうど今、読書週間ということで
「読書の秋」をテーマにお送りしました。

今日は、大人も子どもも楽しめる本を2冊ご紹介しました。
いずれも読み聞かせにもおすすめです。


『子どもの頭と心を育てる100のおはなし/齋藤孝 監修(宝島社)』

『声に出して読みたい日本語』でおなじみの齋藤孝さん監修の書籍で、
日本と世界の童話、昔話、落語、神話が100話収録されています。
どのお話も短くて1話あたり5分程度で読めます。

そしてこの本はページが開きやすい特別な製本のため、
読み聞かせがしやすくなっているのです。

また、漢字にはふりなががふってあるので、お子さんが一人読むこともできます。

斉藤さんによると、読み聞かせをすることで、
情緒力、共感力、感情表現力の3つの力が伸びるそうですよ。

この本には、たくさんのお話の他、じょうずな読み聞かせのコツや
子どもの成長に合わせた読み方やお話選びものっていますので、
お子さんの年齢に合わせた読み聞かせができます。
それこそ読み聞かせの教科書ような書籍です。
もう1冊はこちら。


『さてさて、きょうのおはなしは・・・・・・
日本と世界のむかしばなし/瀬田貞二(福音館)』

『指輪物語』や数々の絵本の翻訳、
昔話の再話や物語の創作などで知られる
瀬田貞二(せた・ていじ)さんの昔話を一冊にまとめたものです。
1979年に刊行された小冊子の復刻版です。

瀬田さんによると、昔話は、子どもの成長には大切で、
文学としてもすぐれているとのことです。

ちなみに、私は、この本をジャケ買いしました。
野見山響子(のみやま・きょうこ)さんの
淡く優しい色味の黄緑色に味わい深い版画が素敵なのです。
落ち着いた雰囲気の装丁ですので、大人の方も手に取りやすいと思います。

いずれの本も声に出して読むのにおすすめです。
ぜひこの秋は親子で本の読み聞かせを楽しんでみては?

ただ、中には「おはなし」もいいけれど、できれば長編の小説を読みたい!
という大人の方もいらっしゃると思います。
そんな方は、私のこちらのブログ「ゆきれぽ」には
過去にラジオでご紹介した様々な本の感想をアップしていますので、
本選びの参考になさってください。

yukikotajima 12:00 pm

『この本を盗む者は』

2020年10月28日

小説を読んでいると、本の世界に入り込んでしまうことがあります。
夢中になってページをめくっているうちに、
読書をしていることすら忘れてしまうようなことが。

今日ご紹介する小説は、そういった空想ではなく、
本当に本の世界に入ってしまった少女の物語です。

『この本を盗む者は/深緑野分(ふかみどり・のわき)【角川書店】』


本の帯に大きく「森見登美彦氏 推薦」とあり、
本屋さんでこの本を見たとき、森見さんの新作かと思ってしまいました。

そして、森見さんの名前を最初に見たことも影響していると思うのですが、
この本を読みながら森見さんの小説『熱帯』を思い出しました。

★『熱帯』の私の感想は コチラ

『熱帯』は、とある幻の本を探し続ける男性の物語なのですが、
この本探しが、はちゃめちゃな冒険に繋がっていくのです。
いかにも森見さんらしい愉快な一冊でした。

今日ご紹介する深緑野分さんの新作
『この本を盗む者は』の主人公も本を探しています。

主人公は、高校生の深冬(みふゆ)です。
彼女のひいおじいさんは書物の蒐集家で、
巨大な書庫「御倉館(みくらかん)」には
約24万冊の本が所蔵されていました。

もともと書庫の本は誰でも借りることができたものの、
本の盗難が増えたことで書庫は閉鎖されてしまいます。

ひいおじいさんから引き継がれた深冬の祖母は、
愛する本を守ろうとするあまり
地元の神様に頼んで書物に奇妙な魔術をかけてしまいます。

書庫の本を持ち出した者を呪うブックカース(本の呪い)を。

誰かが本を盗んで、この本の呪いが発動すると、
街が物語の世界へと姿を変えて
泥棒は本の世界に閉じ込められてしまいます。
本を盗んだ泥棒を捕まえない限り、世界は元には戻りません。

その泥棒を捕まえることになるのが深冬です。

しかし、深冬は本が嫌いなのでした。

書庫の本に呪いをかけた祖母は深冬に対してとても厳しくて、
「この家の者なら本を読め!」
と他の遊びをすることを許してくれなかったため
本嫌いになってしまったのです。

これ、なんでもそうですよね。
人から強要されて嫌いになったもの、私にもあるなあ。。。
何かは内緒ですが。(笑)

さて、嫌いな本の世界に入った深冬は、
本泥棒を捕まえないと元の世界に戻ることができません。

そして、本が盗まれるたびに本の世界を冒険していくことになるのですが、
この本の世界というのがユニークなのです。
深冬が住んでいる町がそのまま本の舞台になっていて、
登場人物もお馴染みの人たちです。
でも、微妙にカスタマイズされていて、全員、役が決まっています。

これがとても面白くて、
いつかドラマ化されたらきっと楽しいに違いない!
と思ってしまいました。
アニメ化はあるかもしれないけれど、できれば実写版で見たいなあ。


この小説は、女子高校生が主人公で、
本の呪いとか本の世界に入って冒険ということは、
若い人向けのお話なんでしょ?と思った大人の方もいるかもしれませんが、
そんなことはありません!

大人の皆さんもきっと楽しめると思います。

それに、深緑さんの文章は描写が美しいのです。
情景が目に浮かぶのはもちろん、
洗練されていて声に出したくなるほどです。

例えば。

廊下はしんと静まり返り、
玄関の小窓から差し込む細い陽光に、
宙を漂う埃がきらきら輝いている。
コチコチと響く柱時計の振り子の音がかえって静寂を際立たせる。

どうでしょう?
情景が浮かびませんか。
そして、どこか美しさもありませんか。

こういった描写によって五感で本の世界を堪能できました。


そうそう!

ちょうど今は読書週間なのですよね。

毎年、文化の日を中心にした2週間である
10月27日〜11月9日が読書週間です。

◎読書週間については コチラ

読書週間には標語が発表されるのですが、
今年は「ラストページまで駆け抜けて」です。

まさに今日ご紹介した小説『この本を盗む者は』も
ラストページまで駆け抜けた、読書週間にピッタリの一冊です。

中高生のお子さんのいる方はご家族みんなで読んでみるのもいいかも。

あ、でも、これは決して強要ではありませんよー。(笑)
興味が湧いたら読んでみてください♪


最後に、この本の中で一番好きなセリフを紹介します。

「本はただ読んで、面白ければそれでいいんだ。
つまらなくてもそれはそれでよい経験さ。
自分が何を好み何を退屈だと感じるか知ることができるからね」

yukikotajima 9:33 am

『自転しながら公転する』

2020年10月21日

今日は、山本文緒さんの新作をご紹介します。

『自転しながら公転する/山本文緒(新潮社)』

大学生の頃、山本文緒さんの小説が大好きでした。

大学時代はとても楽しかったけれど
将来や恋愛についての悩みも常にあって、
そんな悩み多き年ごろの私の心に
山本文緒さんの小説はいつも寄り添ってくれました。

ストーリーが面白いのはもちろん、
登場人物たちに共感しやすかったのです。

今でも山本文緒さんの名前を見ると
若い頃のことを思い出してキュンとするもので、
先日、本屋さんで新作を目にした時、
まるで初恋の人の名前を見つけた気分になり、
思わず手を伸ばしてしまいました。

なんと今作は7年ぶりの新作だそうです。
調べたら7年前の作品『なぎさ』もラジオで紹介していました。
ちなみに、こちらは前作から15年ぶりの新作でした。わーお!

◎『なぎさ』の田島の紹介は コチラ

新作『自転しながら公転する』も大変面白かったです。

この本、500ページ近くもある長編なのですが、
読んでいる時は少女漫画をまとめ読みしているような気分でした。

主人公の恋模様が気になって、
この2人はいったいどうなるのよ?
と思ったらページをめくる手が止まらなくなりまして。

でも、この作品は漫画ではなく本じゃなきゃダメなのですけどね。
文字だけの本だからこそ味わえるドキドキ感があるのです。
え?これってどういうこと?そういうこと?
と頭に?をたくさん浮かべながら読んでいたので、
読み終えて全てが明らかになった時は
程よい疲労感を帯びた心地よさに包まれていました。
皆さんにもこの感覚を本のページをめくりながら体感して頂きたいわー。

「で、どんな話なのよ?」

という声がそろそろ聞こえてきそうですね。
思いが強すぎて前置きが長くなりました。

主人公は、32歳の女性の都(みやこ)です。
彼女は、東京のアパレルで働いていたものの、
母親の看病のために仕事を辞めて茨城の実家に戻り、
地元のアウトレットのショップで契約スタッフとして働き始めます。

そして、同じアウトレットの別のお店で働く
貫一(かんいち)と出会い、付き合うことになります。

本を読むことが好きな貫一は、都の名前を初めて聞いた時に
「貫一おみやって言ったら金色夜叉じゃん」と驚きます。
でも都は意味がわかっていなかったのですが。

『金色夜叉』は、尾崎紅葉の長編小説で
貫一とおみやをめぐる金銭と恋愛の問題が描かれています。
「来年の今月今夜のこの月を僕の涙で曇らせてみせる」のセリフは有名ですよね。

『自転しながら公転する』は、『金色夜叉』の2人と同じ名前の男女の物語です。

『自転〜』でも2人は恋人同士になるのですが、
ある日、貫一の働くお店が閉店し、彼は無職になってしまいます。

アラサーの都は、彼との結婚を意識するものの、
経済力の無い彼と結婚してもいいものか悩みます。
その前に、貫一から結婚の話は一切なく、
彼は一体何を考えているのだろう…ということでも悩みます。

そもそも都が実家に帰ってきた理由は、母親の看病のためでした。
都は母親を車で病院に連れて行ったり、家事をしたりしていたので、
新しい職場では、正社員ではなく契約スタッフとして働き始めたのでした。
しかし、この職場が問題だらけだったのです。

本の帯にはこうあります。

「結婚、仕事、親の介護
全部やらなきゃダメですか?」

まさに同じような状況に置かれている方もいるのでは?

都は、どこにでもいる普通のアラサー女性です。
そして、彼女の抱える問題もよくある出来事です。
だから、読者は自分のこととして読めるのだと思います。

私も都に自分を重ねて読みました。

都の置かれた状況とは異なるのだけれど、他人事じゃないのです。
都の悩みが自分のことのように思えて仕方ありませんでした。
たとえば、貫一との未来についても
私だったらどうするかしら。。。と真剣に考えましたもん。

また、この物語には都の母のパートもあります。
母は重い更年期障害に苦しんでいまして、母は母で悩んでいます。
そして、この母の心のうちが描かれることで、物語に広がりがうまれます。

さらに、父や友人たち、職場の仲間、そして貫一と、
それぞれの悩みも明らかになっていきます。

幸せいっぱいで羨ましくて仕方ないと思っていた相手も実は悩んでいたり、
許せないと思った人もこっそり泣いていたり。
みんな人知れず悩んでいます。

都をはじめ、登場人物たちはそれぞれの悩みに対して
どのように向き合い、選択していくのか。
ぜひ本を読みながら一緒に考えてみてください。

山本文緒さんの7年ぶりの新作も大変面白かったです!

次作も楽しみだけど、次はいつになるかな。
の〜んびり待たせていただきます。(笑)

yukikotajima 9:37 am

『行った気になる世界遺産』

2020年10月14日

今年は海外旅行に行く予定だったのに、
泣く泣くキャンセルしたという方もいらっしゃると思います。

本来だったら今ごろ私は…
と行く予定だった旅の行程を見ながら
妄想旅をした方もいるかもしれません。

今日ご紹介するのは、まさに今読むのにぴったりな一冊です。

『行った気になる世界遺産/鈴木亮平(ワニブックス)』


俳優の鈴木亮平さんによる旅行記です。

鈴木さんと言いますと、
2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」でお馴染みの人気俳優です。

実は私もひそかにファンです♪
あの優しい笑顔が好きで癒されます。

俳優として活躍されている鈴木さんですが、
なんと東京外国語大学の英語専攻を卒業されています。
難関大学の、それも人気の英語専攻って、どれだけ頭がいいのか!

また、「世界遺産検定」一級を持っているそうです。

『行った気になる世界遺産』は、
そんな世界遺産に詳しい鈴木亮平さんのはじめての旅行記です。

例えば、
ギアナ高地(カナイマ国立公園)
古代都市チチェン・イッツァ
ネムルット・ダー
ヴェローナ市街
ボロブドゥール寺院遺跡群
イグアス国立公園
ワルシャワ歴史地区
キジ島の木造教会
ナン・マトール遺跡
オルチャ渓谷
サマルカンド文化交差路
アトス山
ドレスデン・エルベ渓谷
ペトラ
バガン
などが紹介されています。
他にもまだまだあります。

鈴木さん、こんなにも世界遺産に行っているなんてすごい!
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、
これらの世界遺産に鈴木さんは行っていないそうです。
なんと、すべて鈴木さんの妄想旅なのです。

でもね、内容はとてもリアルなんです。
妄想と言っても、ただ頭の中に浮かんだ景色を描写しているだけでなく、
五感を使ってフル妄想しています。

例えば、空港に降り立った時の匂いや、
ジャングルをガタガタ進むバスの乗り心地、
まつ毛に霜がつくほどの寒さなど、
まるで実際に体験したかのように書いています。

そのため、読者である私も一瞬で旅をしている気分になりました。

また、その旅気分をさらに高めてくれるのが、
鈴木さんがお描きになった絵です。
本に出てくるすべての世界遺産の絵が描かれています。
なぜ絵なのかというと、実際に旅に行ったいないため写真が無いからです。(笑)
絵には、旅をしている鈴木さん自身も
後ろ姿だったり、手だけだったりと様々な形で登場しています。

そして、この絵がいいアクセントになっているのです。
色使いもタッチも力強さの中に優しさが感じられ、とても味があります。

ちなみに、絵は独学なんですって。すごい!

それから、このエッセイは鈴木さんの「妄想」旅行記ですが、
好き勝手書いたのではなく、かなりリサーチした上で書いたそうですよ。
だからよりリアルな描写になっているのでしょうね。

そのおかげで、もし自分が本当に行くとするなら…
と自分自身の妄想旅もしやすかったです。

例えば、私の場合は、
忘れ去られた砂漠都市、ヨルダンの「ペトラ」で、
岩の間の細い通路を進んだ先にある
岩を掘って作られた美しい建造物を生で見てみたいなあ。
死海での浮遊体験やエステももちろんセットで♪
なんて妄想して楽しみました。(笑)

他にも、世界最古の秘境「ギアナ高地」や
青の都「サマルカンド文化交差路」も実際に見てみたいわ…
と挙げていったらきりがありませんでした。

私は、本に出てきた世界遺産についてスマホで調べながら読んでいったので、
読むのに丸一日かかってしまいました。
でも、この、色々調べている時間も楽しかったです。
どれだけ世界中を旅したことか。
本当に豊かなひとときでした。

まあ、実際は、家から一歩も出ずに本を読み、
スマホで検索していただけなのですけどね。(笑)

でも、心は満たされていました。

あなたも次の週末は、妄想旅に出かけてみませんか?

yukikotajima 9:29 am

『この気持ちもいつか忘れる』

2020年10月7日

こんにちは。

10月からもgraceの毎週水曜13時45分頃からは
本紹介のコーナーをお届けしていきますが、
今後は毎週、私、田島悠紀子おすすめの本を紹介する
「ユキコレ」をお届けしていきます。

これまでのユキコレは小説が中心でしたが、
今後は、幅広く様々な「本」をご紹介していきますので、
引き続きよろしくお願いします。

***

さて、今日の本は今話題の一冊です。

『この気持ちもいつか忘れる/住野よる(新潮社)』


累計300万部を突破し、映画化もされた
『君の膵臓をたべたい』でおなじみの住野よるさんの新作です。
紀伊國屋書店富山店でも人気だそうですよ。

今回は、普通の小説とはちょっと異なります。
ロックバンド・THE BACK HORNとのコラボ作品で、
小説に5曲入りのCDがついています。

今の若手アーティストではなく、
20年以上活動しているロックバンドとコラボした理由は、
著者の住野さんが学生時代からTHE BACK HORNの大ファンだからで、
住野さんからコラボの依頼をしたそうですよ。

実は私もTHE BACK HORNが好きで、
これまで何度もライブに行っているので、
個人的にとても嬉しかったです!

そういえば、THE BACK HORNが好きと言ったら、
「ホーンじゃなくてナンバーじゃないの?」
と言われたこともあったな。(笑)
(もちろん、ナンバーもいいですが)

さて、今回のコラボは、小説が完成してから曲をお願いしたのではなく、
構想段階から打ち合わせを重ねて、創作の過程も共有し、
お互い影響を与え合いながら作っていったのだそうです。

そして、「どうしてもTHE BACK HORNの楽曲を聴きながら作品世界に浸ってほしい」
という住野さんの熱い思いから、CD付きの小説になったそうです。
ちなみに、5曲入りのCD付きで1,700円+税と大変お得です。

コラボの経緯については、住野さんとTHE BACK HORNの座談会(の文章)が
公式サイトにたっぷり載っていますので、小説と合わせてお楽しみください。
住野さんのTHE BACK HORN愛があふれている…というか漏れすぎです。(笑)

◎公式サイトは コチラ

で。

肝心の小説はどんなお話なのかと言いますと、
超こじらせ男子の物語です。(笑)

男子高校生のカヤは、自分も周りもつまらない人間ばかりだと思い、
人と群れることはせず、ほぼ一人で退屈な日々を過ごしています。

夜になると、もう使われていない古いバス停まで歩き、
待合室でほんのひととき過ごします。
自分の部屋にいても心配されるだけだし、
家族団らんなんて面倒だから、という理由で。

そんなある日の深夜、バス停で謎の少女チカに出会います。
少女と言っても、チカは爪と目だけしか見えません。
でも、声は聞こえるし会話もできる。
また、実際には見えないけれど体に触れることもできます。

どうやらチカは、カヤとは異なる世界に住んでいる少女のようなのでした。

それまで退屈な日々を送っていたカヤでしたが、
深夜のバス停で不思議な少女と交流していくうちに、気持ちにも変化が生じます。

誰かがただいてくれるだけで幸せだと感じたり、
自分の素直な気持ちを言葉にできたり。

二人のやり取りが初々しくて何度もキュン♪としました。

ちなみに、男子高校生と不思議な少女の物語ということは、
10代向けの本なのかな、と思われそうですが、そんなことはありません。

なんなら大人のほうがより心に響くかも。

というのも、後半は少女と出会って15年後のカヤの物語なのです。
この30代のカヤが、相変わらずこじらせています。(笑)

本当は言いたいことがたくさんあるのだけれど、
感想を言うとネタバレになってしまうのです。ああ、もどかしい。
でも、自分のことをややこじらせ気味だなと思う方は、
この本を読むことで少し楽になるかも。

さて、カヤとチカはその後どうなったのでしょう?

気になる方は、ぜひ小説をお読みください。
それも、THE BACK HORNの曲を聴きながら♪

私は、本を読み終えた後に、あらためて曲を聴いてみたのですが、
まるで映画のエンドロールのような気分で作品の余韻に浸れました。

ぜひ秋の夜長は、音楽を聴きながらの読書をお楽しみください。

yukikotajima 9:30 am

『口福のレシピ』

2020年9月30日

あなたはスーパーマーケットに行くのは好きですか?

私は料理はそれほど得意ではないものの、行くのは好きです。
旅行先でも地元のスーパーに立ち寄っています。
その土地ならではの食材やお惣菜に出合えるのが楽しいのです。

今日ご紹介する本は、スーパーマーケットが大好きな女性の物語です。
彼女にとってスーパーは「町のテーマパーク」で、
疲れた日でも、スーパーに寄って帰ろうと考えるだけで足が軽くなるほどです。

『口福のレシピ/原田ひ香(小学館)』


著者の原田さんと言いますと、
以前『三千円の使いかた』という小説をラジオでご紹介しました。

◎私の感想は コチラ

ある家族の、お金にまつわる連作短編集なのですが、
物語の面白さはもちろん、お金の勉強もできた一冊でした。

この本を読んでから、家にある食材を使い切ってから新しい食材を買う、
という考えが身に付きました。

今回ご紹介する『口福のレシピ』も真似してみよう!と思えるような
タメになる話題が満載の小説でした。

ちなみに、私が早速実践したいと思ったのは、本のタイトルにもある「レシピ」です。

この本には、たくさんの美味しそうな料理が登場します。
合わせてお酒も色々と出てきまして、
ああ、本の世界に入りたい!と何度思ったことか。(笑)

しかも出てくる料理が、料理が得意でない私でも作れそうなものばかりなのです。
主人公の留希子(るきこ)は、忙しい女性たちを助けたいと、
簡単で美味しい献立レシピをSNSで発信しています。

例えば、鯛の頭の骨酒は、
アラとして売られている鯛の頭に軽く塩を振って、半日以上干して、
からりと焼いて熱燗に浸すだけです。
なんと、ふぐのひれに勝るとも劣らないのだとか。
うー。飲みたい!

彼女は、友人と二人暮らしをしているのですが、
実家は、江戸時代から続く古い家柄で、
老舗料理学校「品川料理学園」を経営しています。

しかし、実家との関係はあまり良くなく、
料理学校の後継者になるのは嫌だー!と家を出てしまったのです。
とは言え、料理をすることは好きで、
料理研究家としてSNSの発信をメインに活動しています。

そしてそして。

この小説は昭和二年の料理学校の物語も同時に進行していきます。
主人公は、女中奉公に来て半年のしずえです。

この二つの物語がどう交わっていくのかは、
ぜひ本のページをめくりながら楽しんでください。

***

今回の作品も面白かったです。

たくさんの美味しそうな料理の描写をメインに、
留希子と実家の関係や、しずえの秘密などが描かれた、
様々な楽しみ方ができる一冊でした。

また、留希子が一緒に暮らす友人とのやり取り楽しかったです。

この友人が、料理がそれほど得意ではないけれど、お酒も食べることも好き、
という私のような人だったので、彼女の発言には大いに共感。

例えば、留希子がSNSで発信するための1週間分の簡単レシピを考えている時に、
最後の日は余った食材で適当に作ってもらえばいいよね!と言ったのに対し、
友人は「あなたは、残り物を玉子焼きに入れればスペイン風オムレツになるけど、
私は、ぺちゃっとしたきったない残飯玉子ができるだけ」と反論します。

わーかーるー!(笑)

そんな二人のやり取りも楽しかったです。

それから、本を読み終えた後、ぜひ本のカバーを外してみてください。
あ、これは・・・と気付くはずです。

ああ、こうやって感想を書いているだけでお腹が空いてきたわ。(笑)
とにかくお腹が空く小説であることに間違いはありません!
食欲の秋にこそおすすめの一冊です。
ぜひお読みください。


<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

ドン・ヒラノブックカバーフェア

10月11日(水)まで、和の模様や動物の可愛らしい刺繍が好評の
ドン・ヒラノブックカバーのフェアを開催中です。

種類も豊富で、プレゼントとしてもオススメです。

◎フェアの詳細は コチラ


<紀伊国屋書店富山店>

住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号: 076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00

◎HPは コチラ

yukikotajima 9:53 am