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『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』

2024年3月13日

いよいよ今度の土曜日、3月16日に北陸新幹線が
福井県の敦賀まで延伸されます。

近いうちに新幹線に乗って福井をはじめ、関西方面に行きたい、
と考えている方もいるかもしれません。

春ですし、旅に行きたくなりますよね!
あなたはどんな旅をしたいですか。

私は、旅先ではその土地の美味しいものやお酒を味わうのはもちろん、
アートを見るのが好きなので、美術館にも行きたいです。

今日ご紹介する本は、アート旅をしている気分になれる一冊です。

『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』
一色さゆり
文春文庫

一色さんは、2015年に第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、
翌年に受賞作『神の値段』でデビューされました。

東京藝術大学を卒業後、ギャラリー・美術館勤務を経て、作家になったそうで、
これまで数々のアート小説をお書きになっています。

今回の作品も、まさにアート小説です。

本の帯には「あなただけのアートの旅にご案内します」とあり、
その一行を目にしただけで、ワクワクしました。

主人公は、仕事を失ったばかりの女性の優彩(ゆあ)です。
ある日、彼女のもとに見知らぬ旅行会社から
「アート旅」のモニター参加の招待状が届きます。
だまされているのかもしれないと思いながらも
待ち合わせ場所の空港に行ってみれば、
ツアーガイドの桐子が待っていて、無事、旅が始まります。

二人が向かったのは、瀬戸内海の直島です。

空港を出て、リムジンバスに乗って、窓の外の景色を見ているうちに、
私は本を読んでいることを忘れて、
二人と一緒に旅をしている気分になっていました。
直島、とてもいいところでした。(笑)
まあ、実際のところ訪れたことは無いんですけどね。

また、直島以外のアート旅も良かったです。

物語は、4つのお話が収録された連作短編集で、
桐子が勤める旅行会社のアート旅に参加した4組の旅行客たちが登場します。

旅行客たちは、それぞれに悩み抱えています。
結婚する相手を間違えたかな…とか、
何をやってもうまくいかないなあとか。

でも、彼らはアート旅を通して、気持ちに変化が生じます。
それもいい変化が。

旅の楽しみ方について、ガイドの桐子がこんなことを言っています。

想像もしなかった興味深いことに出会える。
そういうユリイカな瞬間を味わっていただきたい。

ちなみに、「ユリイカ」とは、
ギリシャ語で「わかった」と言う意味の、
ひらめいた瞬間を指す言葉だそうです。

桐子のアート旅に参加した旅行客たちも、
その「ユリイカ」な瞬間に出会います。

旅は旅でも、今回は「アート旅」です。

私もアート好きなので、
旅行客たちが、様々なアートをきっかけに
「わかった!そういうことか!」と、
大切なことに気付くのが嬉しく、私も幸せな気持ちになりました。

私にとって、お気に入りの一冊になりました。
いつか、この本を手に同じルートでアート旅をしてみたいな。
文庫なので旅のお供にもぴったりです。

なお、アート旅に興味はあるものの
アートはそんなに詳しくないという方でもご安心ください。

実際この本に出てくる旅行客たちも初心者ですし、
桐子さんという頼れるガイドさんもいますので、安心して楽しめます。

ぜひあなたもアート旅をしている気分で、この本を読んでみてください。

本を読んだ後は、いい旅から帰ってきたあとのような
満たされた気持ちになっていると思いますよ。

この本、シリーズ化してくれいないかなあ。
桐子のアート旅にもっと参加したい!

yukikotajima 12:09 pm

「倉俣史朗のデザイン——記憶のなかの小宇宙」

2024年2月28日

ヨリミチトソラで毎週水曜18時32分頃からお送りしている「ゆきれぽ」では、
本の紹介をメインに時々アートもご紹介しています。

今日は久しぶりにアートの話題です。

富山県美術館で開催中の企画展
「倉俣史朗のデザイン——記憶のなかの小宇宙」
をご紹介します。

倉俣史朗(くらまた・しろう)さんは、
1991年に56歳という若さで亡くなったデザイナーです。

造花のバラを透明のアクリル樹脂に閉じ込めた
「ミス・ブランチ」という名の椅子を見たことはありませんか。

この椅子をデザインしたのが、倉俣さんです。

アクリルと言うと、コロナ禍を経た今はすっかり飛沫防止のイメージですが、
倉俣さんは、30年以上も前にアクリルを使った
とても素敵な家具をデザインしているんです。
倉俣さんの作品を見れば、きっとアクリルの印象ががらりと変わるはずです。

この企画展は、倉俣さんがデザインした家具やインテリアのほか、
夢日記やイメージスケッチ、蔵書やレコード、それから倉俣さんの言葉を通して、
「倉俣史朗その人」を伝えることを試みているそうです。

展示は6つのコーナーにわかれていて、
デザイナーとして独立する前の「プロローグ」から始まり、
その後は時代順に作品が紹介されていきます。

家具やインテリアを美術館で紹介するってどういうこと?
と思われる方もいるかもしれませんが、
倉俣さんのデザインした家具は、とにかく見ていて楽しいのです。
自由で遊び心があって独創的です。
スパイス的に「ユーモア」が入っていて、心をくすぐられます。

例えば、椅子の上に椅子が座った「椅子の椅子」、
アクリルを使った中身が丸見えの透明の家具、
子どもがシーツをかぶってお化け遊びをしているような形のランプ
(通称「オバQ」)など、
これは何?と思わず突っ込みたくなるようなデザインのものばかりです。

また、展示の仕方も楽しくて、第3章の椅子の展示では、
私には、まるで椅子が砂浜でくつろいでいるように見えました。

しかもこの砂浜に見えたものが意外なものでした。
ぜひ会場では展示作品だけでなく足元にも注意してみてください。
きっと「おお、これは!」と驚かれることと思います。

ちなみに、この企画展は東京から始まり、
富山、そして京都でも開催されるのですが、
富山の見どころは、まさに展示そのものだそうです。

富山は、クラマタデザイン事務所のスタッフだった
インテリアデザイナーの五十嵐久枝さんが会場構成を監修・デザインした
富山でしか味わえない展覧会になっているそうですよ。

作品の魅力をより引き出しているのはもちろんのこと、
とにかく楽しく鑑賞できる会場となっていました。

楽しいと言えば、企画展を担当された稲塚展子さんの解説も面白かったです。

稲塚さんのお話を聞いていると、家具が生き物のように見えてくるのです。

例えば、造花のバラが入った椅子「ミス・ブランチ」は、
作品の前に透明の御簾(みす)がかかっているのですが、
稲塚さんは「御簾の向こうにいるお姫様にい会いに行くようじゃない?」
とおっしゃるのです。

そう言われると、椅子はもうお姫様にしか見えなくなります。

私には会場内のどの家具も「ある」のではなく、「いる」ように思えました。

ちなみに、倉俣さんはアート作品を作っている印象が強いですが、
アーティストではなくデザイナーです。
ですから、いくつも同じものが作れるように図面もひいて、
作るのは職人にお願いしていたそうです。
(会場には図面も展示されています)

職人が作っていますので、一見アート作品の様に見えるものでも
機能的にも優れているんですって。

倉俣さんは、モノに対する愛情を共有できないと納得のいくものは生まれない!と、
信頼する職人さんたちと直接やり取りをしながら制作していったそうです。

また、今回の展覧会では、倉俣その人を紹介したいということから、
本人がつけていた夢日記や蔵書、レコードなども展示されています。

学芸員の稲塚さんによると、
倉俣さんの心の中をのぞきながら歩いていくという
経験を味わっていただきたいそうです。

最後に稲塚さんがこんなことをおっしゃっていました。

実物の作品や言葉に囲まれた中を歩いていけば、
きっと何かしら自分の中にタネとなって残っていくと思うの。
その見えないタネを持って帰って欲しい。
いつか何かで芽吹くから。

稲塚さん、かっこいい〜!
私も芽吹く日を楽しみに待ちたいと思います。

なお、稲塚さんは図録も書いていらっしゃいます。
愛あふれる文章で読みながらワクワクしました!
展示と合わせてチェックしてみてください。

展覧会、とても楽しかったです。
展示作品は、何十年も前の作品なのに、全く古さを感じさせないどころか、
今の時代にあっているように感じられました。
また、アートとデザインをつなぐ富山県美術館らしい展覧会だと思いました。
ぜひあなたの心に新たなタネを植えに、富山県美術館に足を運んでみては。

企画展「倉俣史朗のデザイン——記憶のなかの小宇宙」は、
富山県美術館で4月7日(日)までの開催です。

3月1日(金)、22日(金)の13時からは、
学芸員の稲塚さんのギャラリートークが、
また、3月16日(土)には会場構成を担当した
五十嵐久枝さんの講演会もありますので、ぜひ参加してみてください。

◎詳しくは コチラ

※ブログ内の写真は特別に許可を得て撮影したものです。
会場内は撮影できませんので、ご了承ください。

yukikotajima 11:16 am

『時々、死んだふり』

2023年11月15日

若い時は、年上の方たちの年齢を意識することはあまり無かったのですが、
自分が年を重ねていくにつれ、
人生の先輩方の年齢や生き方が気になるようになってきました。

特に人生100年時代と言われる今は、
人生の後半をどう生きていくか、気になっている方も多いのでは。

今日ご紹介するのは、87歳の今も現役でご活躍の美術家、
横尾忠則(よこお・ただのり)さんのエッセイです。

『時々、死んだふり』
ポプラ新書

横尾さんは、国際的に高い評価を得ている美術家で、
先日、今年度の文化功労者に選ばれました。おめでとうございます!

この本には、横尾さんの人生や創作についての思いが綴られています。

タイトルの『時々、死んだふり』からも横尾さんらしさが感じられますが、
なんと去年の夏、本当に死にそうだったそうです。ふり、ではなく。

急性心筋梗塞になり、2週間、絵筆を持てない日々が続いたのだとか。
でも、病気をきっかけに、横尾さんと絵の関係が少し変わって、
ご自身が望んでいた絵が描けそうだと思うようになったそうです。

それがどんな絵なのかは、ぜひ本を読んで頂きたいのですが、
病気や老いによって、これまでできていたことができなくなると、
自分はもうだめだと落ち込んでしまいそうじゃないですか。
でも、横尾さんは、それも「新たな画風」とポジティブに考えます。

実際、ハンディキャップによって新たな作品が生まれた画家たちもいて、
例えば、睡蓮の絵で有名なクロード・モネは、
白内障による視力のハンディキャップが無ければ、
革新的な作品は生まれなかったかもしれないと、横尾さんは言います。

そして、横尾さん自身も「新たな画風」を手に入れたことを
大いに喜ぶべきことと捉えています。

横尾さんは、人生も絵も軽やかで、単純でなければならないと言います。
また、社会の流行や好みと言った「外部」を意識してしまうと
本当に創造性のある作品は作れないとも。
横尾さんは、無心で遊ぶ子どものように、無心で絵を描きたいと思っているそうです。

そして、そのようにして生まれた横尾さんの新作を見ることができます。

現在、東京国立博物館では、
「横尾忠則 寒山百得(かんざんひゃくとく)展」を開催中です。

実は私も先日、東京に行っていたので見たかったのですが、
ちょうどその日は定休日でした。残念!
(でも、近くの上野の森美術館で開催中の『モネ 連作の情景』は見てきましたが)

もし12月3日までの間に東京に行くことがあれば、皆さんもぜひ行ってみてください。
ただし月曜は定休日ですので、ご注意を。

この個展では、寒山拾得(かんざんじっとく)の絵が102点展示されています。
これは、中国の唐の時代にいた寒山と拾得という風変わりな二人の僧のことで、
何ものにも縛られない、これ以上の自由はないという方たちだったそうですよ。

ちなみに、そんな寒山拾得の作品を100点以上描いたことから
個展のタイトルを寒山百得にしたのだとか。

つまり、もともと自由な二人の僧を、横尾さんが自由に描いたわけですよ。
自由×自由です。ああ、やはり見たかったなー。

さて、今日は横尾忠則さんの『時々、死んだふり』というエッセイをご紹介しましたが、
早くも新たなエッセイ『死後を生きる生き方』(集英社)を出されています。
こちらは私は未読ですが、気になる方はぜひ2冊あわせてお読みになってみては。
横尾さんによると、この2作品は「2部作という感じかな」なんだとか。

横尾さんのエッセイというと、
アートに詳しくないし、読んでもわからないかも、
と思う方もいるかもしれませんが、
全くそんなことはありません。
それこそ軽やかでわかりやすい内容ですし、
私は読んだ後にポジティブな気持ちになれました。

私も年を重ねることで生じる自分の変化を楽しんでいきたいし、
そのために、まずは今を一生懸命生きていこうと。

yukikotajima 12:00 pm

大竹伸朗展

2023年8月23日

今日の「ゆきれぽ」は、アートの話題。
現在、富山県美術館で開催中の話題の企画展「大竹伸朗展」をご紹介します。

大竹伸朗(おおたけ・しんろう)さんは、
愛媛の宇和島を拠点に制作をおこなう美術界のカリスマです。

宇和島と言えば、今、富山県美術館が
「宇和島駅」になっているのを見たことがある方もいるのでは。

大竹さんと言うと、分厚いスクラップブックや

スナックの看板をモチーフにした代表作《ニューシャネル》
からうまれた大竹文字などが有名です。

今回、展覧会を見て、勝手ながら「ヨリミチトソラ」と重ねてしまいました。

大竹さんは作品を作るにあたって、
最短距離はつまらない。まわり道がいい。
偶然がいい。人が考えることには限界があるから。
とおっしゃっているのです。

まさに「ヨリミチ」じゃないですか?

何より「偶然」を大切にし、計算通りにやっても面白いものはできないと言います。
そんな大竹さんが生み出す作品からは、強烈な個性が感じられました。

今回の企画展は、およそ500点の作品が
7つのテーマに基づいて構成されているのですが、
いつもの美術館とはだいぶ異なる雰囲気で、
自分がどこにいるのかわからなくなるほどでした。

大竹さんの作品は色々ありますが、
中でも厚紙や木などの様々な素材をペタペタと貼っていくスタイルは、
大竹さんを代表する制作方法です。

この貼り重ねられた様は、生で見ると、
素材の質感や層の厚みがよくわかって面白かったですし、
見ているうちに自分もやってみたくなるもので、
家に帰ったら真似してみようかなと思っていたところ、
3階のアトリエ・ラボでできました!

こちらでは、大竹さんと同じ表現手法で作品を作ることができる
ワークショップを開催しています。

白い紙に会期が終わった美術館の企画展のチラシなどを
好きなように切って貼っていくのですが、
何も考えずに思いつくまま貼ることの、なんと自由で楽しいことか。
ストレス発散にもなりました。

ちなみに、私の作品は会場に残してきましたので、良かったら見つけてみてください。

さて、会場には他にも様々な作品が展示されていまして、
例えば、世界的な芸術祭であるドイツのドクメンタに出展された
大型インスタレーション《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》や

遠隔操作による無人バンド《ダブ平&ニューシャネル》といった代表作もあります。

27日(日)には、大竹さんによる《ダブ平&ニューシャネル》の
デモンストレーション(演奏)が行われるそうです。
詳しくは、富山県美術館のサイトでご確認ください。


ところで、今回、美術館に二日連続で行きました。
と言うのも、初日は夕方に行ったため、
朝しか見られない特別な光景を見られなかったのです。

こちらはガラス面を用いた新作です。

ガラスに貼られた作品が床にうつって幻想的でした。
この光景は朝10時くらいまで見られるそうですよ。

二日目は99分にもわたる大竹さんのドキュメンタリーも見ました。
大竹さんが作品をどのように生み出していくかや、
どんな思いで作品を作っているのかがわかり、とても面白かったです。

例えば、大竹さんにとって厚紙(ダンボール)は、
破くことで素材が限りなくとれる面白い素材なんですって。

ダンボールと言えば、昔から富山県美術館にある
大竹さんがダンボールで作った「男」という作品も展示されています。


最後に、「大竹伸朗展」の私のオススメの鑑賞方法をご紹介します。

朝9時30分に来て、まずはガラスの作品を鑑賞。
その後、99分のドキュメンタリーを見て予習。

ランチをはさんでから、ゆっくり作品鑑賞。
あわせて常設展もぜひ。常設の方にも大竹さんの作品があります。

鑑賞後は3階のアトリエ・ラボのワークショップで作品作りをして、最後はショップへ。
なんと富山県美術館限定Tシャツもあります!

ということで、一日コースで楽しんで頂くのがベストかと。

ぜひ次の休日にでも大竹ワールドに浸ってみては。

「大竹伸朗展」は、富山県美術館で9月18日(月・祝)までの開催です。

◎富山県美術館のサイトは コチラ

yukikotajima 11:28 am

いわさきちひろピエゾグラフ展

2023年8月10日

最近何かとあわただしく、心にも余裕がなくなりかけていたのですが、
昨日、ある場所に行ったら、心の乱れも整って、優しく穏やかな気持ちになれました。

私が癒されたのは、淡くやわらかな色合いの子どもの絵で知られる
画家のいわさきちひろさんの絵です。

ちひろの絵は、きっとどこかで目にしているのでは?

私は、黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』の印象が強いです。
また、母がちひろの絵が好きだったので、
子どもの頃から絵本でちひろの絵を見ていました。

今、上市町の西田美術館では、
上市町新町制70周年、西田美術館開館30年を記念した
「いわさきちひろピエゾグラフ展 ちひろの描いた世界と日本のおはなし」
がおこなわれています。

ピエゾグラフとは、精巧な印刷技術によって、
原画に近い状態でデータ化して印刷したもので、
ちひろの繊細な水彩画を原画と見分けがつかないほどに再現しています。

なぜピエゾグラフにしたのかというと、
当時の紙質が悪く劣化を避けられないことから、
最新の印刷技術によって、ちひろの水彩画を復元したのだとか。

正直、間近で見ても復元だなんてわかりません。どう見ても本物の風合いでした。

今回は、ちひろが絵を描いた様々なおはなしの絵本、
例えば、『つるのおんがえし』『おやゆび姫』『にんぎょひめ』の他、
宮沢賢治の文に絵をつけた『花の童話集』や、
ちひろが文も書いた作品など、50点が展示されています。

また、会場には絵本もありますので、椅子に座ってじっくり読むことができますし、
会期中、毎週土日の14時〜は絵本読み聞かせイベントが行われているそうです。
(ただし、お休みの日もありますので、詳しくはホームページでご確認ください)

私も実際ベンチに座って絵本を読んでみましたが、
その時間だけでもだいぶ心な和みました。

今回、西田美術館 の熊本明子さんに解説をしていただいたのですが、
「ちひろの絵を見てほっとするのは、
絵本を読んでいた当時のことを思い出させてくれるからではないか」
とおっしゃっていたのが印象に残りました。

その一方で、この企画展では、
ちひろがどのようにして絵本画家になっていったのか
を紹介しているのもポイントです。

例えば、力強さを感じる30歳の頃の自画像のスケッチは、
小さい時から画家を目指していたものの、戦争によってその夢が閉ざされ、
戦後にもう一度、画家としてやっていきたいと決意した時に描かれたそうなのですが、
力強いタッチで、他の水彩画とはだいぶ印象が異なりました。

ちひろについては、映像でも知ることができます。
会場の2階では、ちひろ美術館 館長の黒柳徹子さんが
ちひろの知られざる一面を語る映像が上映されていますので、ぜひご覧ください。

また、その2階に向かう途中の階段の踊り場の壁には
「ちひろ美術館」の動画が流れていまいして、そこで写真が撮れます。

今回、「いわさきちひろピエゾグラフ展」を見て、
ちひろの絵に癒されたのはもちろん、絵の美しさやうまさにも気付かされました。
例えば、海を描いた絵などは、一見簡単に描いているように見えて
とても繊細に描き分けているのがわかり、
子どもたちの絵もいいけれど、風景もいいなあと思いました。

ぜひみなさんもじっくり鑑賞してみてください。

「いわさきちひろピエゾグラフ展 ちひろの描いた世界と日本のおはなし」は、
上市町の西田美術館で9月3日(日)までの開催です。

会場では、絵本やポストカードのほか、
ご要望の多かった来年のカレンダーも
特別に今週末あたりから先行販売されるそうですよ。

また、8月26日(土)には、ちひろ美術館 学芸員の松方路子さんによる
ギャラリートークもあります。

詳しくは、西田美術館のホームページでご確認ください。

◎西田美術館のサイトは コチラ

yukikotajima 12:03 pm

生誕150年記念・川合玉堂展

2023年7月26日

この夏は、日本の原風景を見に行ってみませんか。

豊かな自然の前に立つだけで、きっと心が穏やかになっていくはずです。
朝の澄んだ空気に、昼のやわらかな日の光、細い月がほんのり見える日没後。
それに、真夏に見る雪や紅白の梅もいいものですよ。

ん?雪に梅って、田島はいったいどこに行ったの?かって思いますよね。(笑)

私が出かけたのは、富山県水墨美術館です。

現在、こちらでは生誕150年記念・川合玉堂展を開催中です。

川合玉堂(かわい・ぎょくどう)は近代日本画壇の巨匠で、今年生誕150年です。
玉堂は、日本の原風景と言えるような風景画の名作を数多く残しています。
だから、作品を見ているだけで自然の中にいるような、
また、どこか懐かしい気持ちになるのです。

玉堂は愛知で生まれ、少年期を岐阜で過ごした後は、
京都、東京で円山四条派や狩野派などの技法を習得します。
その後は、それらを融合し、自らの画風を生み出していきます。

今回の企画展では、20代前半から晩年に至るまで時代順に作品が並んでいますので、
作品がどのように変わっていったのかがよくわかります。

例えば、岐阜で育った玉堂は、鵜飼の絵を何度も描いたそうなのですが、
この企画展でも4点の鵜飼の絵が展示されており、作風の違いを見ることができます。

また、会場には、スケッチも展示されています。
富山でのスケッチや、10代の頃のスケッチもあるですが、
若いころからまるで本物のような質感で、
玉堂がいかによく観察しているのかがわかります。

実際、よく写生もしていたそうで、朝、散歩に出かけては写生をしていたのだとか。
朝の景色を描いた『朝もや』という作品は、朝のひんやりとした澄んだ空気を感じます。

また、玉堂の作品には、人間や動物が小さく描かれているのもポイントです。
人がそこにいることで、生活感が出てきますし、
玉堂が人や動物に対して、いかに優しいまなざしをもっていたかが伝わってきて、
作品を見ている私の心までも穏やかになっていきます。
中でも玉堂の描いた馬の表情がいいんです、優しくて。ずっと見ていられます。

ところで、会場には玉堂を撮影した写真も展示されているのですが、
どの写真も背筋がぴーんと伸びているのが印象に残りました。
そして、玉堂の作品から感じられるスマートさは、
この姿勢の良さとも関係しているのかもしれないな、とふと思いました。
(あくまでも私の印象ですが)

今回の企画展では、前後期合わせて46点の作品が展示され、
後期は13点も入れ替わるそうです。
パンフレットに使われている「紅白梅」は、前期のみの展示ですので、お見逃しなく。

公式図録には、ひ孫さんによる「玉堂こぼれ話」も載っていますので、
ぜひ作品解説と合わせて読んでみてください。

また、今回私は学芸員の丸山さんによる「ギャラリートーク」に参加したのですが、
丸山さんのおかげで玉堂の人となりもわかり、楽しく鑑賞することができました。

ギャラリートークは、8月5日(土)19日(土)にもありますので、
ぜひ参加してみてください♪

◎生誕150年記念・川合玉堂展の詳細は コチラ

そして、作品を見た後は、のんびり庭園を散策してみては。
7月14日から、特別な時にしか見られなかった
茶室に付随するお庭を見ることができるようになったそうですよ。

◎詳しくは コチラ

yukikotajima 11:07 am

「花のお江戸ライフ—浮世絵にみる江戸っ子スタイル」

2023年5月24日

ちょうど今の時期は、旅行をするのにいい季節ですよね。
ガイドブックを手に旅の計画を立て、
旅先では、その土地の名物を食べたり、お土産を買ったり、景色を楽しんだり。
想像しただけでもワクワクしてきますが、
そんな旅の楽しみ方を、江戸時代の人たちも同じようにしていたようですよ。

現在、富山県水墨美術館では、
企画展「花のお江戸ライフ—浮世絵にみる江戸っ子スタイル」を開催中です。

浮世絵を通して、当時の江戸っ子たちが
何に夢中になっていたかを紹介する展覧会なのですが、
まるで私自身が江戸時代にタイムスリップしたかのような気分で楽しめました。
それこそ気分は江戸っ子でした(笑)

展示室はもちろん静かだし無臭なのだけど、
展示作品を見ていると、人の話し声や動物の鳴き声が聞こえてきたり、
美味しそうな料理の匂いがしてきたりしました。

***

「浮世絵」と言うと江戸時代を代表する芸術ですが、
当時は広く庶民に支持されたメディアだったそうです。

例えば、歌川広重の「東海道五拾三次」は、
今の観光ガイドブックや観光情報を紹介するサイトのようなものだったのですって。
江戸っ子たちは、広重の浮世絵を見ながら
「私も旅に行きた〜い!」と思っていたのですね。

そもそも浮世絵は、17世紀後半に始まり、
最初は美人画、役者絵が主なテーマとして描かれ、
18世紀後半に喜多川歌麿や東洲斎写楽らが登場し、黄金期を迎え、
19世紀に入ってから庶民の娯楽の対象が広がったことで、
様々な浮世絵が描かれるようになったそうです。

この展覧会では、そんな当時の江戸っ子たちが夢中になったものを
浮世絵を通して知ることができます。

ちなみに、江戸っ子たちが当時はまったのは、
旅行、メイク、ペット、グルメ、ガーデニングなどです。
今の私たちとまるで同じです。
会場では、これらを描いた浮世絵がテーマごとに展示されています。

絵師もすごい顔ぶれでして、葛飾北斎、歌川広重などの作品が約150点も並んでいます。

様々な作品の中で私が印象に残ったのは、
着飾った姿ではなく、家にいる時の素の女性の姿です。

歯磨きや、足の指の爪を切っているところ、
毛抜きで眉を整えている姿などが描かれていまして、
これはまるで家での私じゃないか!と思わず心の中で突っ込んでしまいました。
よそゆきではなく、普段の様子を切り取っているのがいいのです。

他には、銭湯で喧嘩をしている女性たちや、
居眠りをしている男性の顔に落書きをしている女性、
噂好きの女性が誰かの話に聞き入っている様子なども躍動感があって楽しかったです。

また、動物が描かれた作品もたくさん展示されていました。
当時、人気のペットは、犬と猫と金魚だったそうですよ。

中でも金魚の入った金魚玉(ガラス製の容器)を持つ女性の絵を
浮世絵師はよく描いていたそうです。
実際、絵の中の金魚を見つめる女性たちは嬉しそうな表情をしていまして、
これは描きたくなるのもわかるわと納得。

私、作品に描かれた人の表情を見るのが好きなんですよねえ。
特に複数の人が描かれた作品は、
面白い表情をしている人や、ふざけている人もいて、とても楽しいのです。

ぜひ皆さんも作品をじっくりご覧になってみてくださいね。

なお、会場では、浮世絵の他にも、
肉筆画や、当時の食べ物を再現した食品サンプル、
また、15年前に富山市の民家で発見された版木も特別に展示されていますので、
浮世絵とあわせてお楽しみください。

「花のお江戸ライフ—浮世絵にみる江戸っ子スタイル」は、
富山県水墨美術館で6月25日(日)までの開催です。

あなたも江戸っ子気分で江戸にタイムスリップしてみては。

◎富山県水墨美術館のサイトは コチラ

今回は図録もゲットし、家でも楽しんでいます。

yukikotajima 11:30 am

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

2023年4月26日

今日はアートの話題です。
先日、富山県美術館で版画家の棟方志功の世界観を堪能してまいりました。

現在、富山県美術館では、開館5周年記念
生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

を開催中です。

棟方は福光に住んでいたことがありましたので
富山の皆さんにはお馴染みだと思いますが、
学芸員さんによりますと、今回の展覧会には
「新たな棟方志功像を見せられたら」という思いが込められているそうです。

確かに様々な角度から棟方を知ることができました。

棟方志功は「世界のムナカタ」として国際的な評価を得た版画家で、
青森で生まれ、1945年から6年8カ月の期間を福光で過ごしていました。

この企画展では、青森時代から晩年までの活動が
様々な作品や資料と共に紹介されています。

棟方の芸術家としてのスタートは油彩画でした。
雑誌に載っていたゴッホの『向日葵』の絵を見て感動し、
「ゴッホになる」と言って、まずは油彩画家として歩み始めます。

会場には当時の油彩画も展示されています。

※会場内の作品は一部を除いて写真撮影OKでした。

その後、版画に目覚めるのですが、当初はハイカラでおしゃれなデザインなのです。
例えば、ドレスを着た女性の版画などは、言われないと棟方と気づかないほどです。

その後、民芸運動の主導者である柳宗悦と出会った棟方は
仏教や日本文化への理解を深め、
≪二菩薩釈迦十大弟子(にぼさつしゃかじゅうだいでし)≫などを制作します。
こちらは良く知られている棟方の作品ですよね。

戦争中は戦火を逃れ、富山(福光)に移り住みます。
戦争の影響で版木が手に入らなかったことから、
富山時代は、襖絵や書などの筆を使った作品が多く作られたそうです。

会場には、光徳寺の襖絵が展示されているのですが、なんと裏も見ることができます。
表は華厳松ですが、

裏側は明るい色合いのモダンなデザインです。(裏面は通常非公開です!)
どんな襖絵なのかは会場でご確認ください♪

また、版木が貴重だったため、板を残す、
つまり黒い面を残す掘り方に変わっていったそうです。

ちなみに、棟方は自らの木版画のことを「板画(はんが)」と表記していました。
これは「板から生まれる、板による画(え)」であるという思いからきているのだとか。

その後、棟方は国際的な評価を得て「世界のムナカタ」となり、
さらに様々な作品を作っていくことになります。

棟方の作品は、本の装丁や切手、包装紙などにも使われ、
デザイナーとしても活躍していきます。

英語の作品もあるのですが、アルファベットには苦戦したそうで
「S」の表記が間違っている作品もあります。
でも、デザイン性が高いので間違いさえもオシャレに見えます。

世界の美術史を下敷きにしたオマージュ作品もあり、
中には影響を受けたゴッホの「向日葵」も。
なんとこの作品、壺の中に自画像を描いちゃってます!(笑)
どんな作品なのかは会場でお確かめください♪

棟方はこの自画像をたくさん描いたそうで、
会場にも様々な自画像が展示されていました。
ぜひ色々見比べてみてお楽しみください。

他にも、壁一面を使って展示されている巨大な作品など、
展覧会に出品されることがほとんどない作品も会場で見ることができます。

それから、資料の展示もぜひご覧ください。
棟方と言えば、強度の近視のため、
板に顔を近づけて一心不乱に彫っているイメージですが、
展示されていた資料を見ると、丁寧な準備をしていたことがわかります。
感覚的に作品を作っているようで、しっかり計算もされていたのですね。

この展覧会は、棟方がどんな芸術家だったかがわかるだけでなく、
どんな人間だったのか、人柄も伝わってくる展覧会でした。
人間味にあふれていたから、ワクワク楽しみながら鑑賞できたのかもなあ。

あなたも棟方の人柄に触れにお出かけになってみては。

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ
は、富山県美術館で5月21日(日)までの開催です。

◎富山県美術館の公式サイトは コチラ

それから、何度も言ってますが、富山県美術館は常設展も素晴らしいので、
必ずセットでお楽しみくださいね♪

yukikotajima 11:02 am

北陸初 生誕120年 童謡詩人 金子みすゞ展

2023年3月29日

小さなお子さんのいらっしゃる親御さんは、
もしお子さんが転んでしまったら、どんな言葉をかけますか?

「痛くないよー」と言っていませんか?

実は「痛くないよ」より
「痛いね」と寄り添ってあげるのがいいのだとか。

他にも「頑張れ」と応援するより
「頑張ってるね」と言った方がいいそうです。

そう教えてくださったのは、
「金子みすゞ記念館」館長で、童謡詩人の矢崎節夫(やざき・せつお)さんです。

矢崎さんは、金子みすゞの埋もれていた遺稿を見つけ出し、
作品集の編集・出版に携わっていらっしゃる、
金子みすゞを世に送り出した方です。

その矢崎さんの講演会が、先週の土曜日に上市町の西田美術館で行われ、
私もお話を聞いてきました。

西田美術館では、先週の土曜日3月25日から、
大正から昭和初期にかけて活躍した童謡詩人
「金子みすゞ」の生誕120年を記念した企画展が行われています。

この企画展は、上市町新町制70周年と
西田美術館開館30年を記念して行われているのですが、
なんと北陸で初めての開催だそうです。

会場では、「金子みすゞ」の生涯と作品が、
貴重な資料や絵本原画とともに紹介されていまして、大変見応えがありました。

そして!

今日の18時30分過ぎからのヨリミチトソラ内コーナー「ゆきれぽ」では、
矢崎節夫さんのインタビューをお届けしますので、ぜひお聞きください。

※放送から1週間以内でしたらラジコののタイムフリーで聞けます。

先日の講演会で矢崎さんが
「みすゞの作品を読むと、自分中心だったまなざしがひっくり返される」
とおっしゃっていたのが印象に残りました。

みすゞは、例えば「大漁」と言う作品では、
イワシがたくさんとれて私たち人間は喜んでいるけれど、
海の中ではイワシのとむらいをするだろう、と言います。

また、「もくせい」という詩では、金木星の香りのする庭に、
門のところで風が中に入るかやめるか相談しているという内容です。
風がもし中に入ったら香りが消えてしまうから、中に入るかどうか悩んでいるのです。

また、みすゞは、「私とあなた」とは言いません。
「あなたと私」と言います。

これこそが「みすゞのまなざし」です。
ぜひ皆さんも展覧会で、みすゞのまなざしに触れてみてください。

「北陸初 生誕120年 童謡詩人 金子みすゞ展」は、
5月14日(日)まで、上市町の西田美術館で開催されています。
開館時間は9時30分から16時30分までで、休館日は月曜と火曜です。
詳しくは、西田美術館の公式サイトでご確認ください。

◎西田美術館の公式サイトは コチラ

yukikotajima 12:53 pm

「MINIATURE LIFE展 〜田中達也 見立ての世界〜」

2023年3月22日

半分にカットしたアボカドを想像してください。
丸い種が半分だけ見えていて、実の部分は綺麗な黄緑色です。

この次に考えることは「種を取って、皮をむいて、どう食べようかしら?」
ということだと思うのですが、まったく別のことを考える方もいます。

半分だけ飛び出た種を見て、島のようではないかとヤシの木をのせ、
種の周りの黄緑色の実は海に見立ててボートを浮かべ、
その名も「アボカ島」という作品にしてしまった方がいます。

ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんです。

今、氷見市芸術文化館では、田中達也さんの作品を見ることができる展覧会
「MINIATURE LIFE展 〜田中達也 見立ての世界〜」が開催中です。

田中さんの作品は、NHKの連続テレビ小説
「ひよっこ」のタイトルバックにも使われていました。
思い出しました?あの見立ての世界を生み出した方です。

また、Instagramでのフォロワーは360万人以上です。
田島もその一人で、田中さんの作品を一日の終わりに見るのが
癒しのひとときになっています。

田中さんは、ジオラマ用の人形を使って日用品を別のものに見立て、
独自の世界を作り出しているのですが、それがとても小さな世界なのです。

写真だとサイズ感がわかりにくいもので、生で見て、あまりの小ささにびっくり!
そして、より田中さんの凄さを感じました。
発想の面白さはもちろん、丁寧な作品づくりや制作現場の美しさも印象に残りました。
人形や食品サンプルなどは綺麗に仕分けして収納されていまして、
作品の洗練された美しさの理由がわかったように思いました。

会場に展示されている作品は、約150点です。
どの作品も写真撮影OKです!うれしい〜。

まるで作品世界に入り込んだような写真が撮れる撮影スポットもありました。

私も作品の中に入ってみました。

どの作品も柔軟な発想で作られており、見ているうちに頭も心もほぐされていきました。

一番印象に残ったのは「隠れた名曲を掘り起こす」という作品です。

楽譜を畑に見立て、まるでサツマイモ掘りのように音符を両手で引っこ抜いています。

他にもチョコミントアイスは地球に
ブロッコリーは巨大な森に
トイレットペーパーはスキー場になっていました。

また、氷見オリジナルの作品もありました。

展示作品以外にも遊び心が満載で、会場のドアノブはブランコになっていました。



「視点を変える」
だけで、こんなにも楽しい世界になるのですね。

会場を後にした後は、目にうつる全てのものに対して、
これは何に見えるかしら?なんて思わずにはいられませんでした。

会場の外のショップもにぎわっていましたよー。
私はいつでも作品を楽しめるよう、図録を購入!

「MINIATURE LIFE展 〜田中達也 見立ての世界〜」は、
氷見市芸術文化館で4月9日(日)までの開催です。

ぜひ氷見までドライブがてらお出かけになってみては。

◎詳しくは コチラ

【おまけ】
氷見からの帰り道に雨晴海岸に立ち寄ってみました。
こんなにくっきり綺麗な海越しの立山連峰は初めてかも。


yukikotajima 11:13 am

「デザインスコープ—のぞく ふしぎ きづく ふしぎ」

2023年1月11日

今日の「ゆきれぽ」は、アートの話題です。

先週、日本全国の美術館の名画を解説する原田マハさんの書籍
『CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術』をご紹介したら美術館に行きたくなり、
早速、富山県美術館に行ってまいりました。

現在、富山県美術館では「富山県美術館開館5周年記念
デザインスコープ—のぞく ふしぎ きづく ふしぎ」を開催中です。

今回は、絵画が並ぶようないつもの企画展とはテイストが異なり、
音や映像などと共に空間全体で楽しむことができる企画展となっています。

タイトルの「デザインスコープ」とは、「デザイン」を通した視点のことです。

展示作品は第一線で活躍するデザイナーやアーティストの視点で作られているのですが、
どれも斬新な発想で、作品を見る度に頭の中がほぐされていきました。

例えば、どんな作品があるのかと言いますと、
まずは、まるでマジックのように、マッチ棒が姿を変えていく様が楽しめる映像作品。
コマ撮りによって、マッチ棒が自由自在に姿を変えていくのですが、
とても面白くて、私もしばらく動画に見入ってしまいました。

一方、196種類のカラフルなQRコードが並んだ作品も面白かったです。
なんとこのQRコードは世界各国の政府のウェブサイトにつながっていて、
実際にスマホをかざすことができるんです。
これぞ、新しい世界地図だなあと思いました。

また、この発想は無かったなあと思ったのは、
嫌われがちな金属の錆(さび)もよく見れば模様が美しいではないか!
という気付きから、ジーンズの生地に模様として転写した作品。
錆を見て、美しさに気付くってすごいなあと驚きでした。

他にも会場には、全長25メートルを超える巨大で透明な人物像の
その名も「空気の人」がいたり、
紙がまるで意思を持ったかのように動き回る展示があったりと、
どの作品も本当に面白かったです。

デザインというレンズを通した視点で生み出された世界を体感した後は、
目にうつるものがどれもアート的に見えるもので、
美術館内の窓枠の影さえもはしごのように見え、
思わず、はしごを登っている風の写真を撮ってしまいました。(笑)

そもそも富山県美術館は、「アートとデザインをつなぐ、世界で初めての美術館」です。
そのコンセプトを思う存分味わえた企画展でした。

この展覧会は、会場で実際に体感していただくのが一番です。
ぜひ次のお休みの日にでもお出かけになってみては。頭の中がほぐされますよー。

それから、今回の企画展は写真撮影OKです!
美術館ではインスタ投稿キャンペーンをやっているそうですので、ぜひ投稿してみては。

◎詳細は コチラ

そしてそして、忘れちゃいけないのが常設展です。
こちらでは、富山県美術館が所蔵している作品を見ることができるのですが、
こちらもすごい作品がずらりと並んでいるので企画展とあわせてお楽しみください。
今ならピカソ作品だけでも4点も展示されています。

ちなみに私のイチオシは、
アメリカのポップアートを代表する画家の
ロイ・リキテンスタイン「スイレン−ピンク色の花」です。

有名なモネの「睡蓮」をオマージュしているのですが、
なんと作品の一部が鏡になっているのです。
だから、作品を鑑賞している私も作品にうつっています。

また、とてもオシャレなので自分の部屋に飾りたくなります。(笑)

やはり美術館は楽しい!
今回もとても楽しく美術館散歩ができました。
実際、美術館はたくさん歩きますので履き慣れた靴でお出かけくださいね。

◎富山県美術館のサイトは コチラ

yukikotajima 12:13 pm

『CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術』

2023年1月4日

明けましておめでとうございます。

今年もこのブログは、ラジオと連動しながら
私の好きな本やアートの話題をお届けしていきます。

今日の「ヨリミチトソラ」内のコーナー「ゆきれぽ(18時30分頃〜)」では、
アートについて書かれた本をご紹介します。

『CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術/原田マハ(幻冬舎)』

私がアートに興味を持ったきっかけこそ、原田マハさんのアート小説です。

原田さんの小説を読んでから
一枚の絵に込められたストーリーにすっかり魅了されてしまい、
それまでどう見ればいいかわからなかったアートが愛おしく
身近なものに感じられるようになりました。

そして、作品に会いに行きたくなり、あちこち通ううちに、
今ではすっかり美術館がお気に入りの場所になってしまいました。

原田マハさんは、フリーのキュレーターとしても活躍されているので、
アートへの愛情はもちろん、知識もすごいのです。
だから、原田さんのアート小説は面白い!

なお、今日ご紹介する『CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術』は、
小説ではなく、日本全国の美術館の名画を解説する一冊です。

原田さんによると、日本は世界的に見ても美術館大国なんですって。
この本には日本で見られる名画が載っています。それもオールカラーで。
ですから、本のページをめくりながら、
まるで美術館で絵画鑑賞をしている気分で楽しめます。

具体的には、それぞれの絵画が描かれた背景や見どころのほか、
本のタイトルにもあるように、原田さんが作品を前にした時、
つまり絵画とコンタクトした時に抱いた印象などが載っています。

私が面白いと思ったのは、画家の絵との向き合い方です。
一人一人描き方がまったく異なっていまして、
例えば、見たことのないものは描かないクールベに対し、
セザンヌは見たままを描いてはいません。
また、ルソーは自分の好きなものだけを描いています。

そんな画家たちの違いを知るのも面白く、
知識を得るだけでなく、読み物としても楽しめました。

そして、本を読んだ後は美術館に行きたくなりました。
今年は久しぶりに富山県外の美術館にも行ってみたいなあ。
本に出てきた中ですと、長野県立美術館に行ってみたいわ。

原田さんによると、誰にも見られないアートは、
アートではなくなってしまうそうです。
表現する人だけなく、見る人が存在してはじめてアートになるのだとか。
ですから、皆さんもぜひアートを見に行ってみてくださいね。

でもこれ、ラジオも同じかも。
聞いてくださる方がいてはじめてラジオになります。
聞いてくださる方がいなければ、ただの独り言になってしまいますからね。

ってことで、今年も皆さんぜひラジオを聞いてください♪
どうぞよろしくお願いします。

田島悠紀子

yukikotajima 1:19 pm

西田美術館 特別展「日本三霊山展」

2022年11月16日

立山連峰が美しい日には思わず写真を撮りたくなるものですが、
あなたはこれまでどのような山の写真を撮ってきたでしょうか。

同じ山でも撮る場所、撮る時間、撮る人によって、その姿は様々です。
時にはまるで奇跡のような光景に出くわすこともあります。

先日、そんな一瞬の美しさをとらえた写真や絵画を間近で堪能してきました。

先週の土曜日12日から上市町の西田美術館では、「日本三霊山展」が始まりました。

日本三霊山とは、富山の立山、石川の白山、静岡の富士山のことです。

西田美術館は、「自然・祈り・美術」をコンセプトに、
数多くの霊山をモチーフにした作品を収蔵している美術館です。
今回の展覧会では、写真、日本画、版画、ガラスなどの
多彩なジャンルの新作や収蔵作品が展示されています。

展示は山ごとに分けられており、
「立山」は、写真家のイナガキヤストさんの写真がメインです。

私がお邪魔した時にちょうどご本人がいらっしゃったので、
直接、写真の解説をしていただきました。

イナガキさんの写真と言いますと、ダイナミックな富山の景色でお馴染みですが、
ただ美しいだけではなく、どの写真も奇跡の瞬間をカメラにおさめているのだとか。

例えば、霧に覆われた幻想的な街の写真(↑)は、
霧の厚さがベストだったからこそ撮れたそうです。
確かに街灯の柔らかな灯りはこれ以上無いという美しさです。

写真を撮る際に「タイミング」は重要なんですって。

思いがけずイナガキさんご本人からお話を伺えて楽しく鑑賞できまました。
ありがとうございました!

そのほかの作品は、学芸員の城川沙織さんに解説して頂きました。

立山と作品ですと、入ってすぐのところに、
ガラス作家の名田谷隆平さんの「剱岳」というガラス作品(↑上の写真)があります。

こちらは、この夏、実際に剱岳に登った上で作られたそうで、
見る角度によって見え方が変わります。
確かに実際の立山も見る度に見え方が変わりますよね。

「富士山」は、先日まで水墨美術館で展覧会をしていた
山元春挙の弟子で甥っ子の山元櫻月の富士山の日本画(↑の写真)や、
富士山写真家の橋向真さんの写真が並んでいます。

◎山元春挙展の私のブログは コチラ

櫻月は、横山大観から「富士を描いたら日本一」と言われるほどだったそうです。

橋向さんの写真(↑)は、雲にこだわりがあり、
例えば、朝焼けの様子(左から3枚目)は
まるで鳳凰のような色と形の雲が広がっているなど、
現実の世界とは思えないような作品が多く、インパクトがありました。

「白山」は、木村芳文さんの写真(↑)や谷内正遠さんの版画が中心です。

立山や富士山の展示作品は離れたところから山を撮っている写真が多いのに対し、
木村さんの白山の写真は実際に山に登って山を撮っているのが特徴です。

谷内さんの版画(↑)は、どこかで見たことがあるなあと思ったら、
北陸銀行の現金を入れる封筒でした。

他にも様々な日本三霊山の作品が展示されていますので、
ぜひ会場でご覧になってみてください。

ちなみに、三霊山のいずれも夕方より朝の太陽をおさめた作品が多いので、
ご来光を拝んでいる気分にもなりました。

学芸員の城川さんから「作品を見た後は実物の剱岳も見てください」と言われ、
2階の休憩室から山の様子を眺めたのですが、
この日は山がくっきり見えていまして、最後にご褒美を頂いたような気分でした。

美術館までの道中も立山連峰を見ながらのドライブで、最高の秋の一日となりました。

西田美術館の特別展「日本三霊山展」は、2023年1月29日(日)までの開催です。
休館日は月曜・火曜です。

また、常設展もかなり見応えがありますので、ぜひあわせてご覧ください。

※ちなみに、特別展のみ写真撮影OKです。

◎西田美術館の公式サイトは コチラ

yukikotajima 11:48 am

生誕150年・山元春挙展

2022年10月26日

ヨリミチトソラになってから
このブログとの連動コーナー「ゆきれぽ」を
毎週水曜18時30分頃からお送りしています。

基本的には本をご紹介していますが、
今日は、アートの話題をお届けします。

私はアートを見るのも好きで、よく美術館に行っています。

先日は、富山県水墨美術館に
「生誕150年・山元春挙(やまもと・しゅんきょ)展」
を見に行ってきました。

「山元春挙」をご存じでしょうか。

山元春挙は、日本画の大明神と評される画家でありながら、
実はあまり知られていない知る人ぞ知る画家なんですって。

春挙は、明治から昭和にかけて竹内栖鳳ともに京都画壇で注目された
京都画壇を代表する滋賀県出身の画家です。
明治天皇も春挙のファンだったのだとか。

春挙は、写生が好きで、よく山に登って写生をしていたそうです。
会場では黒部峡谷の写生を間近で見ることができますよ。

また、洋画にも関心を寄せていて油絵を描いてみたり、
カメラで写真を撮って風景の切り取り方を日本画に取り入れたりと、
様々なことを試していたそうです。

趣味も多く、人としても魅力的だったんですって。

春挙は「松、バラ、岩、波」の4つのモチーフを好んでよく描いていたそうです。
「雪」も大好きで、雪が降ると写生に出ずにはいられなかったのだとか。

私は春挙のバラの絵が好きです。
まるで香ってきそうなほどの質感でして。

会場で春挙の作品を見ると、まるで写真のように見えるんです!

とくに「春挙ブルー」と言われる青の透明度がすごい。
美しくて、ずっと見ていられます。

また、遠くから見るとまるで本物のようなリアルさなのですが、
近くで見るのも楽しいんです。

というのも、人や動物たちが小さく描かれていまして
まるで「ウォーリーを探せ!」のように、作品の中を探したくなるのです。
そこに春挙の人柄があらわれているように感じられました。

この企画展は、春挙のことをご存じない方でもきっと楽しめると思います。

「生誕150年・山元春挙展」は、富山県水墨美術館で
11月6日(日)までの開催です。

ぜひご覧ください♪

◎詳しくは コチラ

yukikotajima 2:39 pm

『西洋絵画400年の旅』

2022年9月24日

ネッツカフェドライヴィンの今日のテーマは「秋のお散歩」でした。

ラジオではおすすめのお散歩コースの一つとして
環水公園の富岩運河沿いと富山県美術館をご紹介しました。

アート作品を見ながら館内をお散歩するのも楽しいものですよ。

富山県美術館では、ちょうど一週間前の17日(土)から
「富山県美術館開館5周年記念
西洋絵画400年の旅—珠玉の東京富士美術館コレクション展—」
を開催中です。

私もさっそく見てまいりました。

この企画展は2部構成になっていまして、
まず第1部では、主に16世紀から19世紀までの伝統を踏襲した絵画が、
「歴史画」「肖像画」「風俗画」「風景画」「静物画」
とジャンルごとに展示されています。

この第1部のヨーロッパ絵画は、
北陸では紹介される機会の少ない時代の作品ばかりなので、
かなり貴重なんだとか。

そして、第2部では、その後の近代の人気画家たち
(モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーガン、シャガールなど)
の作品を見ることができます。なんて豪華な顔ぶれ!

ちなみに、今回私は有料の音声ガイドを借りて鑑賞したのですが、
これがとても良かったです。
作品の解説を聞きながらの絵画鑑賞は、作品のどこを見ればいいのかがわかりますし、
解説を聞いている間はずっと作品を見ているので印象にも残りやすいのです。
音声ガイドを借りて大正解でした。
皆さんも鑑賞のお供にいかがでしょう?オススメです。

「富山県美術館開館5周年記念
西洋絵画400年の旅—珠玉の東京富士美術館コレクション展—」は、
富山県美術館で11月20日(日)までの開催です。

まさにタイトルの通り、西洋絵画の400年を旅するように鑑賞できる展覧会です。
この秋はアートを見ながらの美術館散歩を楽しんでみては。

◎富山県美術館のサイトは コチラ

◎ネッツカフェドライヴィンのサイトは コチラ

yukikotajima 12:00 pm

「空(くう)する、時(とき)する 横山丈樹展」

2022年9月17日

今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは「秋のドライブ」です。

先日、秋晴れの中、南砺市までのんびりドライブしてきました。

目的地は福光美術館です。

美術館の周辺は早くも色づき始めている木々もあり、秋らしさが感じられました。

現在、福光美術館では、彫刻の町・井波に生まれた彫刻家、
横山丈樹(よこやま・たけき)さんの初の個展
「空(くう)する、時(とき)する 横山丈樹展」が開催されています。

作品はすべて横山さんがお作りになったものなのですが、
印象としては、遺跡の中から発掘されたもののように見えました。

スポットライトだけのほの暗い会場に並ぶ人物像はどれも
顔や腕など体の一部がありません。

というと、怖い…と思われるかもしれませんが、
実際に生で見ると、美しいのです。

横山さんは、会場全体をひとつの作品としており、
美術館にひび割れた大地を出現させています。

大地は、ひび割れたケヤキやスギなどの木で表現しているのですが、
斧で叩き割って自然な感じを表したそうです。

また、地中に何年も埋もれていた神代杉(じんだいすぎ)や、
長い間使われていた枕木なども使われていることもあり、より遺跡感が感じられます。

人物像もまるで地中から掘り出された感じなのですが、
全て横山さんが作っています。

人物像の素材は石?木?何だろう?と思って聞いたところ、
FRP(強化プラスチック)だと教えて頂きました。
横山さんの作品を表現するのにFRPが合っていたそうです。

横山さんが今の作風になったのは、
ギリシャのパルテノン神殿を訪れた時に
崩れ落ちた柱や彫刻を目にしたことがきっかけだったそうです。

修復されたものより、完璧でない状態の方が光り輝いて見えたそうです。

実際、横山さんの作品からも輝きを感じます。
作品を目にしたとき、きっとその光を感じるはずです。
ぜひ会場で横山さんの世界観をご堪能ください。

土日は在廊されることが多いそうですので、
ぜひ気になったことを直接ご本人に聞いてみてください。

私は今回お話を伺いながら鑑賞したのですが、お話も楽しかったです。

例えば、強風のせいである作品が壊れてしまったそうなのですが、
逆にその様子がいい感じ!と壊れた状態のまま展示されている作品もあるんです。
これは聞かなければわかりませんでした。

また、横山さんは、作家活動の他、井波彫刻の職人としてもご活躍で、
「井波彫刻にも興味を持っていただけると嬉しい」ともおっしゃっていました。

横山さんと学芸員の土居彩子さんと♪

土居さんは、横山さんの作品もいいけど、人柄がいいんです!
と繰り返しおっしゃっていたのが印象的でした。

ぜひこの秋はドライブがてら、
福光美術館と彫刻の町・井波にお出かけになってみては。

「空(くう)する、時(とき)する 横山丈樹展」は、
福光美術館で10月17日(月)までの開催です。

◎福光美術館のHPは コチラ

yukikotajima 10:16 am

ミロ、荒井良二、福富太郎

2022年7月22日

先日、美術館を一日に三ヵ所まわり、アートを浴びるように見てきました。

まずは、富山県美術館で開催中の「ミロ展−日本を夢みて」を鑑賞。

一見、子どもが描いたようにも見えるミロの作品ですが、
解説ともに見ると、印象ががらりと変わるから不思議!
学びながら楽しく鑑賞できました。

例えば、ミロは「素材」にこだわっていたそうで、
こんな使い方もありなの?というような面白い作品もありました。
ぜひ素材にも注目して鑑賞してみてくださいね。

また、ミロの作品から「日本」らしさを見つけるのも楽しかったです。
例えば、浮世絵を背景に貼り付けた絵画(まるでゴッホの『タンギー爺さん』のよう)や
「書」のような作品などがありました。
というのも、ミロは日本が大好きだったそうなのです。
大阪万博で即興で壁画を描いた際には、日本のたわしを使ったほどです。わーお。

今回の「ミロ展」は、ミロと日本の関係に注目した初の展覧会です。
ぜひじっくり隅々までお楽しみください。

***

一方、たわしではなく、ご自身の手を使って絵を描く方もいます。
国内外で活躍する絵本作家、荒井良二さんです。

現在、高志の国文学館では、開館10周年を記念した企画展
「荒井良二のPICTURE BOOK〈絵・本〉」を開催中です。

会場では森山直太朗さんの「花鳥風月」のMVが流れているのですが、
このMVが荒井さんのライブペインティングなのです。
ご自身の手で直接描いていく様にくぎ付けでした。

荒井さんの絵本は、ポップで明るくて、遊び心があって、
隅々までチェックしたくなる楽しさがあります。
また、文章は声に出したくなる楽しさで、
作品を鑑賞しながら「声を出して読みたい!」と思い、
帰りに荒井さんの絵本『たいようオルガン』を買ってしまいました。
この絵本、最高です!

絵本を普段読まない方でも楽しめる展覧会ですので、大人の方もぜひ。

***

最後は、富山県水墨美術館へ。
「コレクター福富太郎の眼:昭和のキャバレー王が愛した絵画」を見てきました。

福富さんは、著名な作家の作品だけでなく、
たとえ無名であったとしてもご自身がいいと思ったら買っていたそうです。
(また、かなりの勉強家でもあったそうですよ)
そんな福富さんの「眼」に焦点をあてた展覧会です。

例えば、最近再評価が高まっている
渡辺省亭の作品にもいち早く目をつけていたのだとか。

会場には美人画を中心に洋画や戦争画まで約80点が展示されています。
中でも妖艶な美人画が多いのですが、
さまざまな思いを抱えた女性たちが並ぶさまは、まるで夜の雰囲気でした。

そんな中、吉田博の風景画『朝霧』を見た時には朝がきた!と思いました。
福富さんも「吉田博の作品は見ていて気分が爽快になる」
とおっしゃっているのですが、まさにその通りでした。
透明感があって、まるで、そこだけ空気が澄んでいるようでした。
思わず福富さんに「私もそう思ったよ」と心の中で話しかけてしまいましたもん。(笑)

というのは私の勝手な見方ですが、
いずれにしても福富さんの人柄が感じられる展覧会だなと思いました。

あなたは福富さんのコレクションからどんなことを感じるでしょうか。
ぜひ会場でお確かめください。

***

ということで、一日に3つの展覧会を見て回りましたが、
疲れるどころか、とても楽しい時間でした。
また、いい運動にもなりました。美術鑑賞って結構歩くのですよね。
運動にもなって一石二鳥です。(笑)

皆さんもこの夏、県内の美術館巡ってみてはいかが。
くれぐれも履きなれた靴でお出かけくださいね。

yukikotajima 11:55 am

テンションを上げるアート!

2022年6月11日

今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは「テンションを上げる方法」でした。

私、田島のテンションを上げる方法は、美術館でアートを鑑賞することです。
美しい作品はもちろん、独特な発想や意外な視点に触れる度に、テンションが上がります。

私が最近見てテンションが上がった展覧会をご紹介します。


まず、富山県水墨美術館で開催中の企画展
「白洲次郎生誕120周年記念特別展
:白洲次郎・白洲正子—武相荘(ぶあいそう)折々のくらし」です。

第2次世界大戦後、日本の復興に尽力した白洲次郎と奥様の正子のふたりが移り住み、
生涯くらした武相荘での家族のくらし方に注目した展覧会です。

お二人の感覚がとてもかっこいいのです。
たとえば、次郎は「昔は良かった」と愚痴を言うおじさんたちに対して
「今の方がずっといい」と言い放ちますし、
お二人とも「現場」からの発想を何よりも大切にしていました。
読み応えのある図録もおすすめです。
ぜひ、お二人のかっこよさに触れてみてください。

◎公式サイトは コチラ


富山県美術館で開催中の「絵本原画の世界2022」もおすすめです。

福音館書店から1956年に創刊された月刊絵本
「こどものとも」の絵本原画が展示された展覧会で、
『ぐりとぐら』や『はじめてのおつかい』など、
おなじみの絵本の原画を見ることができます。

私は展示の1枚目の作品を見た瞬間、心をつかまれました。
その作品とは、1956年の「こどものとも」1号の
堀文子(ほり・ふみこ)さんの「ビップとちょうちょう」です。

子ども向けなのにも関わらず背景が真っ黒なんです。
黒いことでイラストがより際立ち、幻想的な雰囲気を生み出していました。

あまりにも素敵だったので、帰りにショップでポストカードを買ってしまいました。

◎公式サイトは コチラ


富山市ガラス美術館で開催中の展覧会
「カースティ・レイ:静けさの地平」も楽しかったです。

オーストラリアの作家カースティ・レイの作るガラス作品は、
まるで布のようなやわらかな質感だったり、農具がモチーフになっていたりするので、
ガラス作品は難しそう…という方でも楽しめると思います。

色ガラスがうみ出す影も美しく、見ていて惚れ惚れとしました。

ガラスと写真を組み合わせた作品も良かったです。
ガラスに映り込んだ景色をあえていかしているのが素敵でした。
自然の中をゆっくり散歩する感覚でガラス作品を楽しんでみては。

ぜひ皆さんもアートで気分を上げてみませんか。

◎公式サイトは コチラ

yukikotajima 1:24 pm

『妄想美術館』

2022年3月16日

ラジオでもよくお話しているとおり、
私は美術館が好きでよく行っています。

でも20代まではちょっと苦手な場所でした。
アートに疎く、どう楽しめがいいのかわからなかったのです。

それが原田マハさんのアート小説と出合ってから、
美術館で作品を鑑賞することが好きになりました。
原田さんのアートに対する愛と尊敬があふれた小説を読むと、
どの作品も身近なものに感じられるのです。
そして、作品に会いに行きたくなり、
気付けば美術館によく足を運ぶようになりました。

それまで難しいと思っていたアートも
興味を持ってみると逆に面白くてたまらなくなりました。
アートは自分には無い視点と出合えるところがいいのです。
これは小説にも同じことが言えます。
芸術家や小説家の皆さんのユニークな発想に触れることで、
いたって平凡な自分の感性が磨かれ、
自分がちょっとだけ素敵な人間になったような気がします。

それこそ、素敵なアート作品や小説に出合い感性が磨かれたあとは、
おなじみの日常や景色でさえ、なんだか美しく感じられて、
そんな見方ができたことに喜びを感じます。

また、アートを学んだり知ったりするのも楽しいものです。
今日ご紹介する本も勉強になったのはもちろん、とても面白かった!

『妄想美術館/原田マハ、ヤマザキマリ(SB新書)』

小説家の原田マハさんと、漫画家のヤマザキマリさんによるアート談義です。

原田さんは、『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』
などの様々なアート小説でおなじみです。
原田さんはただアートが好きというわけではなく、
美術史を学ぶために30歳で再び大学生になったり、
ニューヨーク近代美術館で働いていたこともあったりと
アートを学び、アートの最先端で働いていた方なのです。

ヤマザキさんは、映画化もされた『テルマエ・ロマエ』でおなじみの漫画家です。
イタリア・フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻し、
現在は東京造形大学客員教授でもあります。
また、様々なアート番組にも出演されています。

そんなアートが大好き&詳しいお二人が
アートについてあれこれ自由に語っているのが、この『妄想美術館』です。

本の帯に「新感覚アートガイド」とあるとおり、
お二人の好きな美術館・作家・作品のほか、
初めての美術館体験や、名画にまつわる裏話、美術鑑賞の秘訣などが載っています。
また、こんな美術館をつくりたい!という
お二人の「妄想美術館」についても熱く語っていて、
とても楽しく読めました。

私はアートが好きと言っても
まだまだ知らないことばかりですので、
この本はかなり勉強になりました。

例えば、西洋と日本の美術館では展示の仕方が異なるそうで、
ヨーロッパでは額にガラスがなく、むき出しで展示されていることが多いのだとか。
その理由は、ガラスに反射してほかのものが映り込んでしまうと、
絵を模写しにくいからなんですって。
また、日本の家は窓が多すぎて絵が飾れない作りになっているそうです。
そのかわり、ふすまや屏風から日本の美術は発展していったのですって。
そう言われると大いに納得!

それから、美術館に行っても、どう鑑賞すればいいかわからない方もいると思いますが、
初心者の方は、理解しなきゃという義務感を払拭して、
なにかいいなあと感じられるものがあったら、
立ち止まってじっくり鑑賞すればいいそうです。
そして、興味を持ったら、深く知っていけばいいと。

この本には、様々なアート作品が登場するのですが、知らなくても大丈夫です。
カラーで作品が紹介されていますので、絵を実際に見ながら本を読むことができ、
まるでお二人の会話に混ざっている気分で楽しめます。

ちなみに、どんな感じの会話かと言いますと、
「モナ・リザ」で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチのことは、
「もし現代にいたら、SNSでエゴサーチしてそう」とか、
「インスタ映え、なんて思いながら、自分の絵をアップしてそう」という感じです。
どうです?楽しくないですか?

そのほか、お二人の小説や漫画についての裏話なども語っていますので、
それぞれの作品のファンの方もきっと楽しめると思います。

そして、この本を読んだ後は、きっと美術館に行きたくなるはずです。
私は世界各地の美術館に行きたくて、うずうずしています。
ほんと楽しいおしゃべりでした!

ところで、ヤマザキさんがアートについてこんなことをおっしゃっています。
「アートは、多様性を受け入れ、自分の世界を拡げる手がかりになる」

一方、原田さんはこうおっしゃいます。
「大人になるまでに美術館で幸せな空気を覚えてもらえたら、
きっと戦争がない世の中になる」

こんな時だからこそ、お二人の言葉がより心に響きました。

yukikotajima 9:28 am

『脳から見るミュージアム』『ポーラ美術館コレクション展』

2021年4月28日

「先日、神奈川の箱根に行ってきました♪」

今の私はすっかりそんな気分です。
まあ、実際私が訪れたのは富山県美術館なのですけどね。

先週の土曜から富山県美術館では、
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』
を開催しています。

ポーラ美術館の収蔵作品から、
モネやルノワールの印象派、
セザンヌ、ゴッホなどのポスト印象派、
マティス、ピカソといった20世紀を代表する画家たち、
そしてユトリロやシャガールなどのエコール・ド・パリに至るまで、
フランスで活動した作家の絵画と、化粧道具が展示されているという
大変豪華な展覧会です。

※一部の作品は撮影可でした。

◎企画展の詳細は コチラ

作品は時代ごとに展示されているので
各時代のトレンドや特徴がわかりやすい上、
作品の鑑賞ポイントも書かれていたため、
じっくり味わいながら鑑賞できました。

個人的には、以前、東京の美術館に企画展を見に行った
「ピエール・ボナール」や「セザンヌ」の作品は
内心興奮しながら鑑賞しておりました。

そして、これらの作品がここ富山で見られることを嬉しく思うだけでなく、
裏で大勢のスタッフの皆さんが尽力されたのよねと思ったら、
心の中で「ありがとうございます」とお礼を言わずにはいられませんでした。

そんな風に思えたのはこの本を読んだからです。

『脳から見るミュージアム アートは人を耕す(講談社現代新書)』


この本は、人気脳科学者の中野信子(なかの・のぶこ)さんと
東京藝術大学大学美術館准教授の熊澤弘(くまざわ・ひろし)さんが
ミュージアムについてお話になったものをまとめたものです。

タイトルを見ると難しそうですが、まったくそんなことはありません。
対談形式なので読みやすいですし、何より読んでいて楽しかったです。

私がこの本を選んだ理由は、本の帯に
「無数のコレクションがコロナ禍に疲れた脳に効く!」とあったからです。

とは言え、日本では「美」を感じることは不要不急のものと思われがちです。

しかし、そうではないことが、
4万〜4万4500年前のホモ・サピエンスの研究結果からわかったそうです。
絶滅したネアンデルタール人と違って、
今も生き延びているホモ・サピエンスは「美」を必要としていたのだとか。
詳しくは本を読んでいただきたいのですが、
つまり「美」は生きるために必要不可欠なものだということです。

この本では、その「美」を感じることができる場所である
ミュージアムの歴史や存在する意義のほか、
論争やワケありといったミュージアムの影の部分、
日本の面白い美術館や作品の見方、
そして、なぜアートが必要なのかなど、
様々な角度からミュージアムやアートの基礎知識が学べます。

へぇぇと思ったのは、作品の鑑賞時間に関する話題です。
なんと作品一点に7秒しかかけられていないんですって。
短いっ!

また、脳と絡めながらの話題も多く、
例えば、人間の脳は使ううちにゴミがたまるそうで、
それを寝ている時に洗い流しており、
その結果、記憶のつながりもよりよくなるそうなんです。

休館中や展示をしていないときのミュージアムも
まさに同じような作業をしているのだとか。
しかも、その見えにくいものこそ、ミュージアムの根本をなす仕事なんですって。

そもそもミュージアムには、作品を展示するだけでなく、
資料を収集し、調べ、保管するという公的な役割があるのです。

また、常設展にはその美術館の基礎的な活動が見えるので、
ぜひ見ていただきたいそうです。

といった感じで、様々な角度からミュージアムについて知ることができます。
ちなみに私が紹介したのはほんの一部です。正直、かなりディープな話もあります。
美術館に寄せられたクレームとか、ワケあり作品とか。。。

でも、私はこの本を読んだことで、美術館が身近な場所に感じられました。
一見、近寄りがたそうな高尚な雰囲気を醸し出しているものの、
実はとても人間味あふれる場所なんだなと思いました。
いや、人間臭さといったほうが合うかも。

この本を読んで私が一番印象に残ったのは、
短絡的に目減りするものより、
未来に生きる記憶としての知識を蓄積していったほうがいい。

というご意見です。

ミユージアムに行くと、知らず知らずのうちに
体の中で化学反応が起こることがあるのだとか。
すぐには変わらないかもしれないけれど、3年後、10年後には変化があるそうです。

ミュージアムに行くことで得られる知識が蓄積していくって、素敵だと思いませんか?
あなたも未来の自分のために、ミュージアムに行ってみてはいかがでしょう。

yukikotajima 10:10 am

ビビビとジュルリ

2021年4月15日

今月から木曜graceに新コーナー「シン・トヤマ」がスタートしました。
富山の「新」しいスポットの他、「芯」となるお馴染みの富山もご紹介していきます。
ラジオをお聞きの皆さんからの「シン・トヤマ」情報もお待ちしています。


さて、今週は、富山の新しいスポット「新富山」をご紹介します。

先週末4月10日(土)に富山県美術館3階にオープンしたばかりの
レストラン「BiBiBi & JURULi(ビビビとジュルリ)」です。

FMとやま新人アナウンサーの「みなこちゃん」こと
水梨子(みずなし)アナと行ってきました♪
(みなこちゃんと呼んでるのは私だけかも。笑)

美術館の中のレストランということで、テーマは「アートとイート」

アートで感性を“ビビビ”と
イートで食欲を“ジュルリ”と
刺激するような場を目指しているそうです。

メニューにも「アートとイート」が体現されており、
美術館に所蔵されている作品にインスパイアされたメニューもあります。

例えば、カンディンスキーの作品にインスパイアされたという
富山の旬の食材をふんだんに使った“コンポジション”プレートは、
色とりどりの料理が様々な器に盛り付けられているのですが、
なんと、これらの器を並べ替えて楽しむことができるんです。

ポロックの作品にインスパイアされた“アクション・ペインティング”カレーは、
2色のカレーとカラフルな野菜を混ぜることで、見た目と味わいの変化が楽しめます。

このカレーが美味しかった!
トマトソースのカレーと白エビと牛乳がベースのカレーは、
単体でも混ぜても美味でした〜。

運ばれてきた料理をただ食べて終わりではなく、
ひと手間加えることでアート体験になるのですね。
それも誰でも簡単にできるのがいいですよね。

また、アートだけでなく富山にもこだわっているそうで、
食材は県内 15 市町村で生産されているものを、
食器は富山の職人さん達が作った伝統工芸品を使用しているそうです。
しかもオリジナルを。
食器は木のプレートに鋳物、陶器、磁器、ガラスなどがあり、
それぞれの質感の違いはもちろん、見た目と素材のギャップも楽しめました。

例えば、“コンポジション”プレートの白い四角い器は一見陶器に見えますが、
なんとアルミ製なんだとか。確かに持ってみたら軽くてびっくり。

“コンポジション”プレートは器を動かして楽しんでいただくメニューですから
軽い上に割れる心配が無いは安心ですよね。

ちなみに、これらの器はいずれ店内で買えるようになるのだとか。
また、えごまドレッシングや白エビカレーの販売も予定しているそうですよ。

メニュー表も楽しかったです。

まるで新聞のようなメニュー表には、
メニューのほか、富山で作られた食器の特徴や、
コンポジションってなに?アクション・ペインティングってなに?
といったアートに関する言葉の解説などもあり、
読み物としても楽しめました。
これなら、お料理を待つ間も飽きることはありませんよね。
なお、メニュー表は持ち帰りOKです。

そして、このレストランの最大の魅力は、
大きなガラス窓から見える素晴らしい景色です。
晴れた日には青空と立山連峰を眺めながらお食事が楽しめます。

店内にはその青空を彩るアート作品もあります。
安野谷昌穂(あのたに・まさほ)さんのペインティングやモビール型の立体作品です。

安野谷さんは自然の中で見つけたものなどを活用しているそうで
遠くから見るとオシャレな雰囲気ですが、
よーく見ると一つ一つは面白いアイテムが使われています。


「ビビビとジュルリ」は、様々な角度から楽しめるレストランでした。

「でも、アートはよくわからん…」という方でも大丈夫です。
誰でも簡単にアートに触れることができますので♪

私はアートが(詳しくはないものの)好きで
富山県美術館にはもう何度も足を運んでいますが、
今後はこのレストランもセットで楽しんでいこうと思います。

なお、現在美術館の1階TADギャラリーでは、
映画化もされた写真集『浅田家』でおなじみの写真家、
浅田政志さんの写真展「私の2020年」を開催中です。
浅田さんが富山の人々を撮影した写真などが展示されています。

浅田さんの写真って、たった一枚の写真から
動きやストーリーが感じられるので好きなんですよねー。
写真の中の富山の皆さん、とてもいい顔されてましたよ。
観覧無料ですし、ぜひレストランの帰りにでも立ち寄ってみてください。

そして、4月24日(土)からは、
「ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—」
が始まります。
モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、マティス、ピカソなどの作品
が勢揃いする超豪華な展覧会です。ああ、早く見たい〜。

なお、「ビビビとジュルリ」では今後、
企画展と連動したメニューも登場するそうですよ。こちらも楽しみ!

ぜひ皆さんも美術館での絵画鑑賞と合わせて、
新しくできたレストラン「ビビビとジュルリ」もお楽しみください。

◎ビビビとジュルリの公式サイトは コチラ

◎富山県美術館の公式サイトは コチラ

yukikotajima 9:20 am

福光美術館を堪能してきました。

2021年4月8日

今月から木曜graceに新コーナー「シン・トヤマ」がスタートしました。

北陸新幹線開業以降、富山の新スポットが続々と登場しています。
その一方で、昔から長く愛されるお馴染みの富山も見直されています。
コロナ禍を経て地元富山を楽しむ人も増えていますよね。

このコーナーでは、新しい富山の他、
「芯」となるお馴染みの富山もあわせてご紹介していきます。

ラジオをお聞きの皆さんからの「シン・トヤマ」情報もお待ちしています。


さて、今週は皆さんにぜひ行っていただきたい
昔からある富山のスポット「芯富山」をご紹介します。

南砺市にある福光美術館です。

山の中の自然に囲まれた美術館で、
先日訪れた時もウグイスをはじめ様々野鳥が鳴いていました。

館内には、福光に疎開していた版画家の棟方志功や
福光で生まれた日本画家の石崎光瑤の作品が常設展示されています。

中でも私が好きなのが石崎光瑤の「雪」という作品です。

木の枝に雪が積もっている絵なのですが、
枝が垂れ下がっている様子から
北陸地方の水分を含んだ重たい雪であることが分かります。

また雪は何度も厚く塗り重ねているため、
いかにも重たそうなのが伝わってきます。

今にも木から雪が落ちてきそうな気配もあって、
白を基調としながらも躍動感が感じられる、
私のお気に入りの作品です。

まだ見たことのない富山の皆さん、
ぜひ間近でその迫力をご堪能ください。

***

そして、福光美術館と言えば、現在、話題の企画展を開催中です。

「アートって何なん? ーやまなみ工房からの返信ー」です。

この企画展が大人気で、来場者数は例年の倍以上なんですって。
年齢層も幅広くリピーターの方もいるそうです。

この企画展は、社会福祉施設「やまなみ工房」
生み出された作品を展示しているものです。

作品を制作しているのは、施設を利用している障がい者の皆さんで、
もともとは美術とは無関係だったそうです。
では、スタッフが教えたのかというと、
スタッフも美術を学んだことはないのだとか。

でも、彼らの作品は今、世界で高い評価を得ています。

そこで、企画展のタイトルにもなっている
「アートって何なん?」となるわけです。

そもそもアートとは何なのか。
その答えと出合えるのが、この企画展です。

展覧会を企画した学芸員の土居彩子(どい・さいこ)さんによると

「アートとは作品そのものというより、自分の好きな世界を貫き通すこと」

だそうです。

どの作品も制作者の思いのままに作られており、
他の人の手が加わることは無いそうです。
まさに純度100%の作品です。

様々な形や色のボタンが縫い付けられた「ボタンの玉」

ずらりと並ぶお地蔵さん

様々な色の糸で表現された「ゲルニカ」

など唯一無二の作品ばかりです。

館内では制作風景を動画で見ることができるのですが、これがとても良かったです。
約8分くらいですので、ぜひご覧ください。

テレビの中の皆さんはキラキラの瞳で、とても楽しそうに制作していました。
また、色を塗るにしても線を描くにしても、迷いが無いのが印象的でした。
すうっと勢いよく筆を走らせていくさまの、何と気持ちのいいことか。

ここまで好きなものと出合えるなんて羨ましいと思ったのですが、
実は、やまなみ工房のスタッフが様々な画材を用意して、
一人一人に合ったものを本人に見つけてもらっているのだとか。
やはりしっくりくる画材と出合った時は嬉しそうなんですって。

でも、全員がすぐに見つかったわけではなく、
中には10年かかってようやく出合えた人もいたそうです。

また、制作には口を挟まず表現は全て任せているそうです。
だからどこまでものびのびと好きな世界を表すことができるのですね。

ぜひ皆さんも会場で作品を見て、
「アートって何なん?」の答えを見つけてみてください。

また、会場までの通路に飾られた制作者の皆さんの顔写真もご覧くださいね。
この写真がこれまたとてもいいので。

ところで、福光美術館でこの企画展を開催した理由の一つは、
版画家の棟方志功とも通ずるところがあるからだそうです。

企画展を見た後に常設展の棟方志功の作品を見ると、
皆さんもきっと納得されると思います。

ですから企画展だけでなく、常設展も必ず鑑賞してくださいね。
私のイチオシ、石崎光瑤の「雪」もお忘れなく〜。

また、2階で開催中の企画展
「beのコトと人とこの美 Art session in Nanto」もあわせてどうぞ。
こちらでは富山を含む9県から集まった「アール・ブリュット」を紹介しています。

アール・ブリュットとは、
美術の教育や既成概念の影響を受けず、
衝動のままに表現された作品のことです。

日本では「障がい者のアート」と言われることが多いものの、
それだけを指すわけでは無いそうです。

やまなみ工房の作品は、同じ施設で生まれているのに対し、
こちらは個々の家で生まれていることもあり、よりディープ感があります。

そのほか、4月18日(日)には、「じょうはな座」で
やまなみ工房ドキュメンタリー映画「地蔵とリビドー」の上映会が、
26日(月)には、いのくち椿館で
やまなみ工房の山下施設長の講演会がありますので、
これらもあわせてお楽しみください。

◎福光美術館のサイトは コチラ

帰りに新富山スポットにも寄ってきました。

去年9月にオープンしたスターバックスコーヒー 射水歌の森運動公園店です。

店内に飾られているアール・ブリュットを見たかったのです。

作品は高岡市のNPO法人 障害者アート支援工房
「COCOPELLI(ココペリ)」の協力のもと制作されたそうです。

鮮やかな色彩の作品を見ながらコーヒーを飲んで過ごすひととき。良い時間でした。


今の時代、人の顔色をうかがってばかりで、
自分の本当の気持ちがよくわからなくなってきた…
という方もいるのでは?

そんな皆さんは、ぜひ彼らの作品に出合ってみてください。
心、潤いますよ。

yukikotajima 10:43 am

芸術の秋を満喫♪

2020年10月3日

今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは「芸術の秋」でした。

◎ネッツカフェドライヴィンのサイトは コチラ

番組では、私が最近訪れた様々なアートスポットをご紹介しました。
こちらのブログにも感想を載せておきますね!

まず、富山市の秋水美術館で開催中の「棟方志功展」を見てきました。

今回は、富山と縁の深い作品や代表作が展示されています。
以前、福光美術館で棟方志功の作品を見たときにも感じたのですが、
とにかく作品から発せられるエネルギーがすごい!
鮮やかな色使いも素敵ですし、
「ウォーリーをさがせ!」のように
細かいところまでじっくり鑑賞したくなる楽しさもありました。

◎秋水美術館のHPは コチラ


高志の国文学館で開催中の
「米国アカデミー賞監督 滝田洋二郎展」にも行ってきました。

滝田洋二郎さんと言いますと、
映画「おくりびと」で米国アカデミー賞を受賞した富山出身の映画監督です。
この企画展では、滝田監督の映画作りの現場が紹介されており、
例えば、『天地明察』では小説がどのように台本になるのかが具体的にわかって楽しかったです。

◎高志の国文学館のHPは コチラ

そして、もう一か所、富山県美術館にも行ってきました。
現在、『TADのベスト版 コレクション+(プラス)—あなたならどう見る?—』を開催中です。

この企画展、大変面白かったです。
富山県美術館を代表する収蔵作品を過去最大規模で紹介する展覧会で、
なんと美術館が所蔵するパブロ・ピカソのすべての作品を同時展示しています。

また、異なる分野で活躍する方々とコラボした展示コーナーもありまして、
これが、大変ワクワクする展示でした。
アーティストの開発好明(かいはつ・よしあき)さん、
アートテラーのとに〜さん、
美術批評家の林道郎(はやし・みちお)さん、
富山出身の作家の山内マリコさんの4名の皆さんが、
美術館が所蔵する作品をそれぞれのテーマで選び、展示しています。

例えば、靴を脱いで寝転がって作品を見たり、
階段をのぼって高いところにある作品を見上げたり、
作品そのものがソーシャルディスタンス、距離をとって展示されている他、
2枚の絵を並べて、どちらが本物の作品か当てる
「鑑賞者格付けチェック」などもありまして、
こんな楽しみ方もあるのか!とずっとワクワクしっぱなしでした。

個人的には、山内マリコさんの展示に心惹かれました。
女性ならではの視点と富山出身だからこその展示で、じっくり楽しめました。
また、まるで作品へのラブレターのような作品解説も良かったです。

全ての作品を見るのに私は一時間半くらいかかりましたが、
もっとゆっくり見てもよかったなと思ったほどですので、
ぜひ時間に余裕のある時にじっくりご堪能下さい。

この企画展は、美術館に行ってみたいけど、
アートはそんなに詳しくないという方にもオススメです。

それから、私は企画展を見た後に、
ミュージアムショップで図録を買ったのですが、
こちらも480円と低価格で充実の内容でしたので、
鑑賞のお供にぜひ。

◎富山県美術館のHPは コチラ

yukikotajima 12:00 pm

木原盛夫写真展「とやま、祭り彩時季」

2020年8月22日

今日のネッツカフェドライヴィンは、
「学び」をテーマにお送りしました。

地元富山にいる機会の多い今年の夏は、
富山について学んでみてはいかが?ということで、
今日は、ミュゼふくおかカメラ館で開催中の
木原盛夫写真展「とやま、祭り彩時季」
をご紹介しました。

地元、高岡出身の木原さんが
富山の春夏秋冬の様々な伝統行事を撮った写真が展示されています。

群馬出身の私から見ると、富山は本当にお祭りが多いなあと思います。

子供の頃から地元のお祭りにかかわっていて、
自分の町のお祭りをとても愛している、それこそ誇りに思っていますよね。
それがとても羨ましい!

ちょっとやんちゃな雰囲気の男性が
きりっと祭りの男の顔に変わるのもいいし、
お祭りを通じて町がひとつになるのもいいなあと思います。

先日、カメラ館で展示されている富山のお祭りの写真を見ながら、
そんなことを思い出しました。

また、知らない伝統行事も結構あって勉強になりました。
あらためて富山の祭りの多さにビックリ。

これからもずっと伝統を大事に守っていってほしいなあと思いました。

今年はこんな状況ですので、富山もお祭りは中止になっていて
寂しさを感じている方も多いと思います。

そんな方は、写真で「富山のお祭り」を味わってみてはいかがでしょう?
他の町のお祭りを知るいい機会でもあると思います。

木原盛夫写真展「とやま、祭り彩時季」は、
高岡市福岡町にあるミュゼふくおかカメラ館で9月27日(日)まで開催中です。

◎詳しくは コチラ

yukikotajima 12:00 pm

『山内マリコの美術館は一人で行く派展』

2020年3月25日

今日ご紹介する本は、FMとやまでは『オッケイトーク』でおなじみの
富山出身の作家、山内マリコさんのアートエッセイです。

『山内マリコの美術館は一人で行く派展
ART COLUMN EXHIBITION 2013−2019』

山内さんご本人からコメントを頂きました!

***

グレース・リスナーのみなさん、こんにちは、山内マリコです。

この本は、アートを鑑賞するときに、感じたり考えたりしたことを、
遠慮なく好き勝手に書いた、大変バカ正直なエッセイとなっています。

普段美術館に行かない人や、アートをとっつきにくいと思っている人も、
きっと美術館に行ってみたくなるはず!

本のカバーは美術館のチラシっぽく、
カバーを取った状態は、美術館の図録っぽいデザインになっています。
画像やイラスト、わたしが作った素人アートなど、図版もたくさん!
本自体を展覧会に見立てた凝った作りなので、これはぜひ本屋さんで、
手にとって見てもらいたい……。けっこう自信作です!

***

こちらが本のカバー。

カバーを取った状態です。

山内さんと言えば、小説家でありながら
様々な雑誌でエッセイも書いていらっしゃいます。

このエッセイは、雑誌『TV Bros.』で連載されていたものまとめたもので、
もともと美術館めぐりが趣味だった山内さんが
自腹で美術館の企画展に行って感じたことを忖度なく書いています。

それも企画展を見た直後の、誰の意見も介さない、感じたてホヤホヤの思いを。

でも、決してテキトーなことを書いているわけではなく、
芸術家の人となりや時代背景もちゃんと説明してくれています。

だから、アートの知識はそれほど無いものの
美術館に行くのが好きな私にとっては、
大変わかりやすいアート入門書として楽しむことができました。

でも、その表現は話し言葉に近く
例えば、先週ご紹介した写真家の「ソール・ライター」のことは、
「コロッとした体型の、わりと親しみやすいタイプのおじいちゃん」と表現しています。(笑)

山内さんは、芸術家たちを尊敬しつつも一人の人間として見ているのですね。
そのため、芸術家もその作品もとても身近なものに思えてきます。

私は、紹介された中では
「長谷川町子美術館」に行ってみたいと思いました。

サザエさん関連の美術館かと思いきや、
実は、長谷川町子さんが個人的に蒐集した美術品を展示する美術館なんですって!
それも巨匠の名画がたくさんあるのだとか。
それを知り、逆に見に行ってみたくなりました。

そのほか富山の企画展も紹介されています。
(ラジオのことも少し紹介されています!)

良かった企画展や好みの作品は徹底的に褒めて
そうで無い時は「わからなかった」「物足りなかった」と言う。
その潔さも最高です。

また、彼女の亡き愛猫チチモをモチーフに制作した
彼女のオリジナルアートも掲載されており、そこにも彼女らしさを感じました。

今回のエッセイは、今までで一番のびのびと文章を書き、
彼女の好みや性格もよく出ているなあと思いました。

そう、このエッセイは、アートの入門書であると同時に
山内マリコという人間を知ることのできるエッセイでもあるのです。

ですからアートに興味がある方はもちろん、
アートはわからないけど山内マリコのファン!という方もぜひお読みください。

楽しみながら、でもアート知識も身につく読み応え満載の一冊です。

***

<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

=========
えほんやさんフェア
=========

馴染深いえほんのキャラクターたちが可愛いグッズになりました。

はらぺこあおむし、ノンタン、11ぴきのねこなど
数多くのキャラクターたちが勢ぞろいしています。

ぜひ愛らしいキャラクターたちの姿をご覧ください。

期間は3月末までです。


===============
ドン・ヒラノブックカバーフェア
===============

紀伊國屋書店富山店ではすっかりお馴染みの
ドン・ヒラノブックカバーのフェアを開催中です。

可愛いものから落ち着いたものまで様々なブックカバーがありますので、
きっとあなたのお気に入りのブックカバーが見つかるはず♪

なお、今回のフェアでは、商品売上金の一部が
東日本大震災によって被災した地域への学習支援金として寄付されます。

期間は4月30日までです。


<紀伊国屋書店富山店>

住所:  富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号: 076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00

HP: http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/

yukikotajima 11:31 am

セレネ美術館

2019年11月23日

今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは「健康管理」でした。

私は、体を冷やさないことを大事にしています。
今日は薄着だったな、という日に風邪をひくことが多いので、
バッグの中には貼るカイロが欠かせません。

また、ランニング、ヨガ、ピラティスをしたり、
心の健康のために定期的に美術館にも行っています。
人の手で描かれたり作られたりした作品を見ると心が満たされるのです。

先日は、黒部峡谷セレネ美術館に行ってきました。

トロッコ電車に乗って紅葉を満喫した後に
美術館の作品を見たことで、より楽しむことができました。

セレネ美術館には、平山郁夫さんをはじめとした7名の日本画家の皆さんが、
実際に黒部峡谷を取材して描いた作品が展示されています。

それぞれ、様々な角度から黒部峡谷を描いていて見ごたえがあります。

私が特に心奪われたのは、
宮廻正明(みやさこ・まさあき)さんの「三拍子」という作品。
釣りをしてる絵なのですが、なんと川の中の魚目線で描かれています。
絵の前に立つと、作品の中に吸い込まれそうな、
それこそ釣られそうな感覚になりました。

こちらの「黒部川」という作品は、記念撮影OKの作品でした。



どうですか?
まるで本物の川のように見えませんか?

近づいてみてみると…
まるで冷たい水しぶきが飛んできそうです。

どの作品も素晴らしくて、心が満たされました。

ぜひトロッコ電車とセットでお楽しみください♪

◎黒部峡谷 セレネ美術館のサイトは コチラ

yukikotajima 12:00 pm