ブログトップページはコチラ

『エンド・オブ・ライフ』

2020年11月18日

読みたい本を選ぶ時、「本屋大賞」を参考にされる方も多いのでは?

本屋大賞は、全国の書店員の皆さんが選んだ「売りたい本」のことで、
毎年春に発表され、大賞作は話題になります。

今年の本屋大賞は、凪良ゆうさんの『流浪の月』でした。

◎私の感想は コチラ

その本屋大賞にはいくつかジャンルがありまして、先週11月10日には
「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」
の大賞作が発表されました。

こちらは、日本全国の書店員さんとYahoo!ニュースが選ぶもので、
去年の大賞作は、超話題作、ブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
でした。
こちらはgraceにもリスナーの皆さんから何度も本の感想が届きました。

◎私の感想は コチラ

そして、今年のノンフィクション本大賞は、
『エンド・オブ・ライフ/佐々涼子(集英社インターナショナル)』
が選ばれました。

佐々さんはノンフィクション作家として
『エンジェルフライト』
『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 』
などをお書きになり、いずれも話題になりました。

◎『紙つなげ!』の私の感想は コチラ

***

今回の『エンド・オブ・ライフ』は、
在宅での終末医療の現場を綴ったノンフィクションです。

執筆のきっけかは、
佐々さんのお母様が難病を発症し、
在宅医療を受けていたことでした。

佐々さんは、訪問医療を行っている京都の診療所の医療チームに同行し、
7年にわたって取材されます。

この本には在宅での終末医療の現場が綴られているのですが、
長い期間にわたって丁寧に取材されたことが
佐々さんの文章から伝わってきます。

終末医療の現場を取材することは、決して楽ではないと思うのです。
もし私が取材される側だったら、
取材許可を出せるかどうかすぐに答えは出ないですもの。

実際、佐々さんも悩みます。
でも、だからこそ心を開いてもらえたのではないかと思います。

自分の命が長くないことを知った患者さんや、その家族の思いを読みながら
私は涙が止まりませんでした。

この診療所では、患者たちの最後の希望を叶えるボランティアをしています。
最後に家族と「潮干狩りに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」
といった希望を叶えるために、万全の態勢でサポートしているのです。
それもボランティアで。

医療チームの素晴らしいサポートや
患者さんや家族の皆さんの優しさに涙があふれました。

でも。。。
美しいエピソードだけではありません。

この本を書くきっかけとなった難病のお母様の在宅医療や、
患者の家族として見た医療の現場についても書かれています。
佐々さんが取材をした京都の診療所は素晴らしいところでしたが、
全ての医療機関がそうとは限りません。
また、在宅での介護は家族にとっては大変なものですので、
「家族愛」だけでどうにかできるものでないことも
佐々さんは包み隠さず書いています。

また、今回の取材で出会って友人にもなっていた
訪問看護師の森山さん(48歳・男性)のこともたくさん書いています。
彼はある日、手術も治療もできない病気になってしまうのです。

森山さんは、それまで200名の患者を看取ってきた
「看取りのプロフェッショナル」ですが、
そんな彼でも自分の最期をすぐに受け入れることはできませんでした。

佐々さんは、森山さんが自らの最期とどのように向き合っていったのかを
正直に綴っています。

本の帯に、「命の閉じ方」をレッスンする。とあるとおり、
まさに、この本からはたくさんのことを学ばせていただきました。

患者さんやその家族と自分を重ねて、
自分だったらどうするだろう?と悩みながらページをめくっていきました。

人の最期について書かれた本なんて辛くて読めないよ…
という方もいるかもしれません。

確かに辛い描写もあります。
でも、決して後ろ向きな内容ではありません。

きっとこの本を読んだ人は、
自分はこの先どう生きていきたいのかを考えると思います。
それも前向きに。

さすが本屋大賞受賞作だわ!

私は書店員ではないけれど、
一人でも多くの方に読んでいただきたい一冊です。

yukikotajima 9:20 am