ゆきれぽ

2026年7月8日

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『青天(アオテン)』

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ちょうど一週間後の15日に、芥川賞・直木賞の選考会がおこなわれ、受賞作が決定します。これまで「ゆきれぽ」でご紹介した作品も直木賞の候補に選ばれています。今年の山本周五郎賞に決まった蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』と、凪良ゆうさんの『多類婚姻譚』です。(本のタイトルをクリックすると、私の本紹介ブログが読めます)どちらも大変面白い小説ですので、まだ読んでいない方はぜひ。

ちなみに、直木賞の候補作は他にも3作品が選ばれています。そこで今日は、その中から話題の一冊をご紹介します。

『青天(アオテン)』
若林正恭(わかばやし・まさやす)
文藝春秋

お笑いコンビ「オードリー」の若林さんの初めての小説です。「え?若林さんの小説ってどういうこと?」と思われた方もいるかもしれませんが、若林さんはこれまでも執筆活動をおこなっていて、エッセイや紀行文はベストセラーになるなど、すでに書き手として活躍されているのです。

『青天』は、そんな若林さんの初めての小説です。タイトルの『青天(アオテン)』は、アメリカンフットボール用語で、試合中にタックルを受け、仰向けに倒れることを言うそうです。

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物語は1999年の高校のアメフト部が舞台です。主人公はアメフトに全てを懸ける高校3年生の男子「アリ」です。と紹介すると、強豪アメフト部の物語なのかな?と思われそうですが、アリが所属しているのは、万年2回戦どまりの弱小アメフト部です。

3年生は最後の大会が終わって部活を引退し受験勉強をはじめるものの、アリは勉強も他にやりたいことも無く、何をやっても中途半端な宙ぶらりんの日々を過ごしています。そんななか、アリはふたたびアメフトと向き合うことを決め…。

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ファンの方ならご存知だと思いますが、著者の若林さんは高校時代にアメリカンフットボール部に所属していたそうです。相方の春日さんもチームメイトだったそうですよ。

この物語にもアメフトの描写がたくさん出てきます。でもアメフトに詳しくない私でも楽しめました。なぜなら物語の軸となっているのは、アリの心の声だからです。

また、アリは一見何も考えていないようで周りのことを見ていたり、ふざけているようで素直なところがあったり、実際はそんなにお喋りではないのに心の中では饒舌で時には鋭いツッコミをしたりと、飽きません。

気が付けば、アリが心の中で次はどんな言葉を発するのか、期待している私がいました。そして毎回いい意味で裏切られるのを楽しんでいました。

また、1999年ごろの空気感も印象的でした。PHSとかMDとか。それから、話のわかる先生とのやり取りや、ちょっと年上のオシャレな先輩から音楽を教わる感じも10代ならではで懐かしさを感じました。

私はその頃、東京で大学生をしていたこともあり、当時のいろいろな記憶が蘇りました。楽しかったことも苦しかったことも。アリを通して私も当時を体感していました。

『青天』は高校生の物語だけど、1999年が舞台なので、大人世代こそ楽しめると思います。不器用な青春が味わえますよ。

直木賞の選考会は、来週15日です。果たしてどの作品が受賞するのでしょう。楽しみ。

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