ゆきれぽ

2025年8月27日

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『ゾンビがいた季節』

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今日ご紹介するのはゾンビ小説です。
と言っても、リアルなゾンビは出てきません。

『ゾンビがいた季節』
須藤古都離(すどう・ことり)
講談社

須藤さんと言うと、メフィスト賞を受賞したデビュー作『ゴリラ裁判の日』が大変話題となりました。
人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解し、会話もできるローズという名のゴリラのお話で、
私も大好きな作品です。
まだお読みでない方はぜひ!

◎『ゴリラ裁判の日』のブログは コチラ

✳︎

さて、新刊はゾンビ小説です。
日本語に加えて英語のタイトルもついていて、本の装丁もまるで海外小説のような雰囲気です。
また、作品の舞台は1960年代のアメリカなので、
アメリカの小説の翻訳なの?と勘違いしそうになりましたが、須藤さんのオリジナルです。

物語の舞台は、1960年代後半のアメリカ西部ネバダ州にある人口50人以下の町・ジェスローです。
この町に住む人気小説家のトムは、しばらく新作が書けずにいます。
そこで、トムに小説を書かせるため、妻はある計画を立てます。
それは、町の人たちにも協力してもらって、ゾンビに扮してトムを襲うという計画です。
きっかけはトムが「世界が終わる日が来たら書くかもな」と言ったことです。
それなら世界を終わらせてしまおうじゃないかと、ゾンビ計画を立てたのでした。
さらに、ただトムを驚かすだけでなく、
せっかくならゾンビ映画として撮影してしまおう!と映画監督に声をかけます。

そして、早速トムを驚かす、つまり映画の撮影をすることになるのですが、
次々に問題が起き…。

✳︎

とても面白かったです!たくさん笑いました。
この物語は、様々な登場人物の視点で描かれる群像劇です。
映画を作る人、映画に出る人、映画のことを全く知らない人など、様々な人の視点で綴られます。
しかも、みんなクセが強めです。自分勝手でワガママで。
(でも、なんだかんだで優しいのですが)

そして、それぞれの勘違いや思い込みによって、話がどんどんややこしくなっていきます。

果たして映画は無事撮影できるのか。
そもそもトムは小説を書けるのか。
物語はいったいどこに着地するのか。
ぜひご自身でお確かめください。

今年の夏ももう終わりですね。
あなたも夏の最後にドタバタなゾンビ小説を読んでみませんか。
笑って、あきれて、そしてホロリとして、夏を締めくくるのも悪くないと思いますよ。

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