ゆきれぽ

2025年8月20日

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『われらみな、星の子どもたち』

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お盆休み、終わってしまいましたね。
休み中、離れて暮らす家族や親戚に会って、懐かしい話をした方もいるのでは。

今日ご紹介する小説は、入院中の父から、父のふるさとや昔の親戚の話を聞く息子の物語です。

『われらみな、星の子どもたち』
増山実
祥伝社

この本を読んで、増山さんの『今夜、喫茶マチカネで』『波の上のキネマ』を思い出しました。
(作品タイトルをクリックすると私のブログが読めます)
これらは過去を振り返るタイプの小説ですが、今回もそうです。

主人公は、大阪で暮らすホテルマンの恵介です。
ですが、メインとなる舞台は能登です。
去年の元日、能登半島に震度7の地震が襲いましたが、物語はここから始まります。

恵介は入院中の父に震災が起こったことを伝えます。
と言うのも能登は両親のふるさとなのです。
能登半島で生まれ育った両親は戦後、若くして大阪に出たのでした。

父は震災の後、これまで語らなかった能登での母との思い出や、
故郷を離れて波瀾万丈の人生を送った親戚たちの話を恵介に語り始めます。

そして、恵介は父の話に出てきた土地を辿って、父に報告するようになります。

最初は能登に住むいとこを訪ね、その後は日本各地を訪ねます。
その中には富山県高岡市もあります。

物語には石川や富山の方言もたくさん出てきます。
馴染みの言葉に、よく知る地名や名所、
それに北陸の人気ラーメン店なども出てきますので、
石川や富山の皆さんは、より物語の世界に入り込めると思います。

✳︎

増山さんの物語は、大きな事件が起こるわけでも、ヒーローが出てくるわけでもありません。
あくまでも普通の人たちのお話です。
でも退屈しません。
それどころか、もっと話を聞きたいと思ってしまうのです。
きっとそれは人を丁寧に描いているからだと思います。
この人はどんな人なのだろう?と思わずにはいられないのです。
だから気になって、知りたくなる。
それは恵介も同じで、恵介は忙しい合間をぬって、
父の話を聞き、そしてあちこちに出かけて行きます。

また、増山さんの文章は映像が見えます。
物語はフィクションなのだけど、人の表情までがリアルに見えるのです。
だからより没入感があるのかもしれません。
そう言う意味ではドキュメンタリーのようでもありました。

とてもいい物語でした!
何度も泣いて、読み終わった後は心がじんわり温かかったです。
また、自分の親の話も聞きたくなりました。
恵介が父から過去の話を聞いたように、私も父や母から話を聞きたいと思いました。
というか、この本をお盆前に読めば良かった!
せっかく実家に帰ったのになー。
でも、電話でもいいから今度ゆっくり話を聞いてみようと思います。

あなたはどうですか?
親御さんから、昔の話を聞いたことはありますか?
いつでも聞けると思っていても、なかなか聞けなかったりするものですし、
今度じっくり話を聞いてみてはいかがでしょう。

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