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生命式

2019年10月30日

こんにちは。
今年も富山マラソンに出場し、
なんとか完走しました!
応援ありがとうございました。

富山マラソンに関しては、
私のもう一つのブログ 続・ゆきれぽ
に書いていますので、よかったらお読みください。

***

さて、今日ご紹介する本は、
『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した
村田沙耶香さんの新作です。

『生命式(河出書房新社)』


先日発売されたばかりです。

この本を読むには色々な注意があります。

まず、食事後に読むのはやめたほうがいいです。
もしかしたら気持ち悪くなってしまうかもしれません。

また、あまりにも常識を超えたお話なので、
その世界に耐えられない人もいるかもしれません。

でも。
常識や想像を超えた世界を覗いてみたいという方にはオススメです。
どうぞ読んでください。

村田さんの新作『生命式』は、12の作品が収録された短編集です。
芥川賞受賞作『コンビニ人間』でも独特の世界観を描いていましたが、
今回はさらに独特です。
本の帯には「脳そのものを揺さぶる」とか
「文学史上、最も危険な短編集!」などと書かれています。

正直私は、本を手に取ったとき「そんな、大げさな!」と思ったのですが、
まったく大げさではありませんでした。

心揺さぶる作品は数多くあれど、
脳そのものをゆさぶる作品はそこまで多くありません。

どんな作品が収録されているのか、少しご紹介しましょう。

まず表題作の「生命式」とは、
亡くなった人間を食べる新たなお葬式のことです。

今から30年後。
人が亡くなると「生命式」を行うのがスタンダードになっています。

もう、この描写を読んだだけで「うっ」となりました。

でも、この時代では当たり前のことになっていて、
人間の食べ方についてその調理法が細かく紹介されています。

そして、このお話のあとも常識をはるかに超えた世界の物語が続いていきます。

例えば、亡くなった人の骨や歯、髪の毛を
装飾品や家具、セーターに再利用する物語もあります。
「冬は人毛100%が最高だよね」なんて会話が普通に繰り広げられています。
でも、どうしてもそれを受け入れられない人もいます。
「気持ち悪い」と。
ところが、亡くなった人間を素材として活用することが当たり前の時代では、
「気持ち悪い」と言うことが変だと思われてしまいます。

ここまでの私の紹介で、それこそ「気持ち悪い」と思う方もいるかもしれません。

でも、『生命式』は、気持ち悪い世界をただ描いているだけではありません。

常識とは?普通とは?世間とは?
について嫌でも考えさせられます。

今後、もしかしたら今までタブーとされていたものが
当たり前になる時代がやってくるかもしれません。
そんな時、あなたはすぐに受け入れることができそうですか。
それとも嫌悪感を感じるでしょうか。

すでに今の時代にもなんかおかしいなと感じることはありませんか?

なんでも受け入れるのではなく、
おかしいことに対しては?「なぜ?」と疑うことが大事なのかも。

『生命式』は確かに、脳が揺さぶられました。

そうそう!もう少し読みやすい作品もあります。

例えば、自分には「性格がない」と思っている女性の物語。
この女性は、周りの人が自分のことをどう思っているかで、
自分のキャラが決まり、あだ名も変わります。

地元ではしっかり者の印象のため「委員長」
大学時代は愛されキャラの「姫」、
他にも天然キャラ、ミステリアス、男勝りなど
コミュニティーによってキャラも喋り方も服装も変わります。

でも、彼女が結婚をすることになり、
どのキャラで結婚式をすればいいのか悩みます。
果たして、彼女が選んだキャラは?

彼女ほどでなくても、きっと誰もが場所によってキャラや印象は異なると思います。

という感じで、『生命式』は、ただ読むだけではなく、
自分だったらどう思う?どうする?
と常に自分に問いかけながら読んでいった本でした。

気になる方は、ぜひお読みください。
でも、最初にお伝えした注意事項は守ってね。(笑)

yukikotajima 11:44 am

やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。

2019年10月23日

今日のキノコレ(grace内13:45頃オンエアー)で
紀伊國屋書店富山店の奥野さんにご紹介いただく本は

『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。
/梅田悟司(サンマーク出版)』です。

◎奥野さんの本の紹介は コチラ

私もこの本を読みましたので軽く感想を。

コピーライターのとして仕事をしている梅田さんが
育児休暇を取ったときに家事の大変さに気づき、
無限にある名もなき家事に名前をつけてまとめたのが、この一冊です。

名もなき家事は、一日の流れに沿って、朝から夜にかけて紹介されています。
また、ただ、この家事は大変だよね!というだけでなく、
家事経験者からの「ワンポイントアドバイス」がついているのもポイントです。

私が共感した家事をいくつかピックアップします。

・洗剤を詰め替えたときに、容器や床に勢いよくこぼれた
ベタネタの液体をしかたなくふき取る家事(命名:詰め替え爆発)

・ソースがないと思って買ったら
冷蔵庫にまるで減っていないソースを発見する家事(命名:魔の二重買い)

・どのレジに並ぶと早いか吟味する家事(命名:レジ・セレクト)

私は共感できる家事に付箋を貼っていったら付箋だらけになってしまいました。
普段家事をしている方はきっと共感できると思います!

でも、この本は普段家事をしない方にこそ読んでいただきたいかな。
「家事なんて誰でもできる。仕事のほうが大変だ!」
なんて思っている方、いませんか?そんなあなたに読んでいただきたいです。

著者の梅田さんはコピーライターとして活躍し
もちろんお仕事も忙しかったはずです。

その梅田さんが育休中にツイッターに
「仕事の方が楽」とつぶやいています。
しかも一度のツイートで3回も連続で。

私は子育てはしていませんが、
でも、甥っ子&姪っ子の面倒を見たことは何度もあります。
最初は「かわいい〜」と思っていても、一日一緒にいると疲れ果てます。
これなら一日中仕事をしている方が楽だと心から思いましたもん。
あ、でも甥っ子&姪っ子のことは大好きですよ♪

仕事をしながら家事も育児もしている方たちを心から尊敬します。
本当にすごいです!

yukikotajima 11:15 am

山中千尋・フィメール・トリオ

2019年10月17日

昨夜は、魚津市の新川文化ホールで行われた

山中千尋・フィメール・トリオ「プリマ・デル・トラモント」
スペシャル・ライブ・ツアー2019 富山公演

を見に行ってきました。

富山ではすっかりおなじみの山中さんですが、
今回は、女性3人によるフィメール・トリオでのライブでした。

ライブの最後に、山中さんが
「私たちにとっての“女性らしい”は“パッション”」
とおっしゃっていたのが印象的でした。

確かにパワフルで情熱的なライブでした。
でも、熱いだけじゃなく、しなやかさや柔らかさもあって、
選曲も新旧織り交ぜたバラエティに富んだ内容でした。

山中さんの演奏スタイルも曲によって目まぐるしく変わっていき、
あらためて全身で表現される方だなあと実感。

そのため、同じステージでのライブなのに
曲によって背景が変化しているようにも思えました。

まるで山中さんがリビングで楽しそうに演奏されているのを
こっそりのぞいている気分になったり、
都会のホテルのバーラウンジにいる気分になったり。

山中さんは、演奏される前に必ず曲の解説をされるのですが、
それがとても分かりやすく、曲を聞く準備が一瞬で整うのです。
だから、より世界に入りやすいのかもな。

今回も充実のひと時でした!

また、毎回ライブで披露されている八木節も最高でした。
八木節といったら群馬の民謡です。
山中さんと同じく私も群馬出身ですので、より心に響くのです。
山中さんの八木節を聞くと、毎回群馬が恋しくなります。笑
特に今回の演奏は、いつも以上に神々しく感じられました。

また次回のライブも楽しみしています〜。

***

さて、山中さんと言うと、11月8日(金)19時からオーバード・ホールで行われる

FMとやま×オーバード・ホール×ほとり座 特別上映会
「ブルーノート・レコード ジャズを超えて 」

にスペシャルゲストとして登場されます。

昨日のライブでもブルーノートの曲を演奏されており、
ブルーノートについてもお話になっていましたが、
映画「ブルーノート・レコード ジャズを超えて 」は、
マイルス・デイヴィスからノラ・ジョーンズまで
80 年にわたりジャズをリードしつづける革新的レーベル
「ブルーノート・レコード」の真実に迫る傑作ドキュメンタリー映画です。

映画の上映終了後には、音楽評論家の行方均さんとトークショーをされます。
司会は、grace月・火曜担当の垣田さんです。

どんなお話をされるのか、楽しみですね♪

現在チケット発売中ですので、お早めにお求めください。

◎詳細は コチラ

yukikotajima 12:14 pm

帝国ホテル建築物語

2019年10月16日

今日は綺麗な青空がひろがっていますが、
先日の台風19号は各地に甚大な被害をもたらしました。

被害にあわれた皆様に心からお見舞い申し上げます。

富山でも台風の影響を受けたという方いらっしゃいますよね。
何かが壊れたり、仕事や予定が変更になったり。
また、北陸新幹線も利用できなくなってしまいました。

困難が続く日本ですが、決して投げやりにならず
前を向いていかなければいけません。

だからと言って、なんでも一人でやるのではなく、
できる人に任せたり、人に頼ったりすることが
いかに大事かということをこの本を読んで気づかされました。

『帝国ホテル建築物語/植松三十里(うえまつ・みどり)【PHP研究所】』

先日、紀伊国屋書店富山店に行ったときに
書店員の皆さんにおすすめされた一冊です。

東京にある帝国ホテルに、あなたは泊まったことはありますか?
私はありませんが、これまでチャールズ・チャップリン、ヘレン・ケラー、
ベーブ・ルースら米大リーグ選抜野球チームなどが泊まったことがあるそうです。
まさに歴史上の有名人ばかりですね。

この作品は、帝国ホテル本館建設に関わった男たちの物語で
史実がベースになっています。

なお、この本館と言うのは、現在の建物ではなく、
1923年(大正12年)に完成した帝国ホテル2代目本館、
通称「ライト館」のことです。

今、このライト館は愛知県の明治村にあります。

物語は、古くなったライト館を取り壊して
明治村に移築することになるかもしれず、
これは大変だ!というところからスタートします。

なぜ大変なのか?
それは作りが立派過ぎるからです。
無事移築できるのか?
そもそもライト館は明治ではなく大正の建物です。
さて、無事ライト館は移築できるのか?

物語は、大正時代にさかのぼります。
ニューヨークで古美術商をしていた林愛作(はやし・あいさく)は、
帝国ホテルの支配人として招かれます。
新館を建てるにあたり、古美術商としての感性をいかしてもらいたい、
と言われた愛作は、悩んだものの結局は支配人を引き受け、
世界的建築家のフランク・ロイド・ライトに新館の設計を依頼します。

親日家のライトならきっと日本人が気づかない日本的な魅力を
形にしてもらえそうな気がする!と期待して。

実は、愛作とライトは友人同士なのでした。

だからと言って、このプロジェクトがスムーズにいったかと言えば、
まったくそんなことはなく、困難の連続でした。

ライトは、完璧主義だったのです。
絶対に手を抜かない。
また、感覚を大切にする人なのです。
でも、それをうまく伝えることができない。
だから、日本人の職人たちと衝突してばかりです。

ライトを支えるフランス人のスタッフがこんなことを言っています。
「フランスではもっといいアイディアが浮かんだら、ためらいなくやり直す」と。
ライトはアメリカ人ですが、感覚はフランス的だったようです。

せっかくここまで作ったのに…とか
昨日と言っていることが違うじゃないか!
などと思ってしまう日本人に対し、
ライトは、妥協はしない!という思いだけで突き進んでいきます。

また、地震や火災も次々に襲い掛かります。

そして、ライト館の建築に関わる人たちも変化していきます。

本を読みながら「もう無理なのでは?」と
私自身、何度もあきらめそうになりました。

男たちがいかにしてライト館を作り、そして守ったのか。

この本を読んだ後は、きっと前を向く力をもらえると思います。

また、愛作の仕事から学ぶことも多々ありました。
支配人になった愛作は、思い切った改革を色々しました。
ホテル内にランドリーや郵便局を作ったのです。
その方が便利だからという理由で。
不便なことに対して不満を言うのではなく、
どうしたらスムーズに仕事ができるのかを常に考えているのですね。

それから、この愛作の出身地が今の群馬県太田市でした。
私、田島と同じなのです。知らなかったー。
こんな素晴らしい方と同郷だったなんて。
私も愛作さんのように柔軟な発想で仕事をしていきたい!

最近、何かに対してあきらめそうになっている方がいたら、
ぜひ『帝国ホテル建築物語』を読んでみてください。
きっと、本を読み終えたとき、よし!やるかっ!と思えるはずです。

と同時に私は、帝国ホテル中央玄関のある明治村にも行きたくなりました。
いつか行ってみようっと。

yukikotajima 12:10 pm

祝!ネッツ富山本店リニューアル10周年

2019年10月12日

今日はリニューアル10周年のネッツ富山本店から
特別番組『 ネッツ富山プレゼンツ・ネッツカフェ・オータム』をお送りしました。

悪天候にも関わらず大勢の皆様にお越しいただきました。
本当にありがとうございました。

ネッツ富山本店はちょうど10年前の10月にリニューアル!
10週年おめでとうございます〜。

ヨーロッパの駅や街をイメージした店内は10年経った今もキレイなまま。

街灯風の照明も素敵です♪

実は、ちょうど10年前にも本店から公開生放送をしています。

◎詳しくは コチラ

10年前の私。

わ、わかいー。顔もパンパンだ!笑

こちらは今日の私。

アハハ〜〜〜。

副店長の伊藤さんからは
10年前から今に至るまでの本店の10年間について伺ったのですが、
突然伊藤さんからこれを渡されました。

ネッツ富山の約10年前の社内報です。
ネッツカフェのことが記事になっています。
は、はずかしー!!!

でも10年経った今もこうやって
公開生放送を続けられていることが嬉しいです。
ネッツ富山の皆さん、本当にありがとうございます。
また、リスナーの皆さんも変わらず会いに来てくださり感謝しています。
これからも引き続きよろしくお願いします。

***

ネッツ富山本店では、明日もイベントが行われます。

スタッフの皆さんの手作り「巨大迷路」

お子さんも体験できる「VRシミュレーター タイムトライアル」

「スライムづくり」「ワッフルデコ体験」などイベント盛りだくさんです。

また、明日はキッチンカーもやってくるそうですよ。

お天気が回復したら是非お出かけになってみてくださいね。

◎ネッツ富山の㏋は コチラ

***

来週からしばらくは、いつも通り毎週土曜11時〜は
『ネッツカフェ・ドライヴィン』をお送りします。

来週19日のテーマは「芸術の秋」です。

アートにまつわるメッセージをお待ちしています。

◎詳細は コチラ

***

このブログを書いている今(15時現在)、
雨、風ともにだいぶ強くなっています。
大雨、暴風、波浪警報も出ています。
この後さらに天気が悪化しそうです。
最新の気象情報をチェックの上、十分お気を付けくださいね。

yukikotajima 3:01 pm

映画『真実』

2019年10月10日

明日、是枝裕和監督の最新作、映画『真実』が公開されます。

是枝監督というと、去年、『万引き家族』が第71回カンヌ国際映画祭で
最高賞にあたるパルムドールを受賞しましたが、
最新作の『真実』は、日本人監督として初めて
ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門オープニング作品
に選出されたことでも話題になりました。

『真実』の主人公ファビエンヌを演じるのは、
『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』のカトリーヌ・ドヌーヴ。
『真実』では、国民的大女優の役を演じています。

彼女の娘をジュリエット・ビノシュ、
娘の夫をイーサン・ホークが演じています。

***

少しだけ物語をご紹介しましょう。

カトリーヌ・ドヌーヴ演じる国民的大女優のファビエンヌが、
自伝本「真実」を出版することになります。

出版のお祝いのために、
海外で脚本家として活躍している娘のリュミールと夫、孫が
ファビエンヌの家にやってきます。

ところが、自伝本を読んだ娘のリュミールは、
お祝いをするどころか、嘘だらけの内容に怒りをあらわにします。

また、長年にわたってファビエンヌを支えてきた秘書が、
自伝に自分のことが一言も書かれていないことにショックを受け、
突然、辞めてしまいます。

代わりに秘書をすることになったのが娘のリュミールです。

母の撮影に同行する中で、過去の様々な記憶が思い出されていくのですが、
思い出すのは嫌な記憶ばかり。
娘はついに母に想いをぶつけます。
そして…。

***

カトリーヌ・ドヌーブというと、
私は『ロシュフォールの恋人たち』が好きで、これまで何度も見ているため、
スタイル抜群でポップなカラーが似合う
キュートな20代の女性という印象がどうしても強いのです。
ですから、今回の『真実』の、ワガママで偉そうな大女優の姿を見て、
正直最初は、あまりのギャップに「私のドヌーブ様が…」とショックを受けたのですが、
でも、見ているうちにお茶目な部分が可愛く思えてきて、
ヒョウ柄を着こなす大人のドヌーブも素敵だなあと思えました。

また、何かを抱えていそうな親子の表情は、どこか暗さが漂いながらも
映像が軽やかで美しいので、
スクリーンから受ける印象は決して重くはありませんでした。

最後もとても良かったです。

映画『真実』は、明日10月11日(金)の公開です。
秋の映画鑑賞にぴったりの作品です。
ぜひご覧ください。

◎公式サイトは コチラ

yukikotajima 12:06 pm

落日

2019年10月9日

今日のキノコレ(grace13時45分ごろ〜)は、
紀伊國屋書店富山店の奥野さんから
今話題の本、湊かなえさんの『落日』をご紹介いただきます。

◎奥野さんの推薦文は コチラ

本の帯には、「湊さんの新たなる代表作で、今年最高の衝撃&感動作」とあります。

湊かなえさんというと「イヤミスの女王」としておなじみです。

イヤミスとは、読んだ後に後味の悪さを感じる、
嫌な気分になるミステリーのことです。
それなら読まなきゃいいのに!と思いますが、
それでも読みたくなってしまう魅力があるのですよね。

私もこれまで湊さんのイヤミスは色々読みました。

でも、今回の作品は読んでいる最中は「イヤミス」っぽさを感じつつも、
読後感の後味は決して悪くありませんでした。
ですので、イヤミスが苦手な方にもオススメです。

***

『落日』は、ある事件をベースに映画を撮りたい、という新進気鋭の映画監督から
新作の相談を受けた新人脚本家が、事件の真相に迫っていくという物語です。

監督が撮りたいのは、『笹塚町一家殺害事件』。
この事件は、引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、
放火して両親も殺してしまったというもので、
15年前に起き、判決も確定しています。

実は、事件の起きた笹塚町は、脚本家の生まれ故郷でした。
そして、監督も事件と全く無関係ではありませんでした。

ちなみに、脚本家も監督も女性です。

脚本家は、いとこから
「主人公が全部同じ人間に見えてしまうワンパターンな作品しか書けない。
自分の見たい世界だけ書いてんじゃねえよ」
と言われてしまうほどで、脚本家として成功しているわけではありません。
だから人気監督から声がかかったことをうれしく思い、今回は成功させたいと思います。

でも、同じ事件を追っていても、監督との感覚の違いを実感してしまいます。

例えば、同じものを見ていても、脚本家は「見たい」だけで、監督は「知りたい」と思っている。
監督は表面的に見るだけではなく、ちゃんと意味を知りたいと思うのですね。

そして、少しずつ事件の真相がわかっていきます。
合わせて二人の過去も明らかになり…。

***

湊さんの作品を読んで、最後に感動で目頭が熱くなったのは初めてかもしれません。
もちろん嫌な人も出てくるのだけど、
後味の悪さだけが残るような作品ではありませんでした。
いい作品でした。

『落日』もいつか映像化されそうだなー。

***

そういえば、ストーリーとは関係ないのですが、
監督が子どもの頃、父から言われた言葉に共感しました。

「映画館を出たと同時に感想を言い出すのはダメ。
自分は面白くなかったと思っても、
隣で感動している人がいるかもしれないから」

そうなんですよ!これ、私もいつも思っています。

感動したときは「よかった!」と言ってもいいと思うけれど、
否定的なことを言うのは後でにして!と。

この作品、ストーリーの面白さに加えて、
登場人物たちの会話から「なるほどな」という気付きもあり、
そういう意味でも楽しめました。

yukikotajima 11:52 am

両方になる

2019年10月2日

昨日、富山県美術館で開催中の企画展
「日本の美 美術×デザイン−琳派、浮世絵版画から現代へ−」
を見てきました。

合わせて同時開催中の
「びじゅチューン!× TAD なりきり美術館」
も体感してきました。

例えば、北斎のビッグウェーブを体感できるコーナーでは、
叫ぶ声の大きさで波の大きさが変わります。

こちらはお子さん向けですが、
平日の夕方で私の貸し切りということもあり
スタッフの方から「どうぞ」とすすめられ、私も体験してみました。

最初は遠慮気味に声を出したら「小波」でしたが、
スタッフの方から「大波が出るまでどうぞ」と言われたので、再度チャレンジ!

無事「大波」が出ました。笑

ちなみに「富士山」と叫ぶのですが、
ポイントは大きな声を出すのはもちろん、
「ふーじ、さーーーーーん!!」と伸ばすことだそうです。
ぜひ恥ずかしがらずにやってみてくださいね。笑

これらの企画展を見て体験をして、浮世絵は見飽きないなあと思いました。
人の表情や動きから温もりが伝わってくるのです。
突然の雨に逃げ出す人たちの動きなんて、心の声が聞こえてくるほどです。

また、波のうねりの描き方もまるで生き物のようですし、
雨の描き方もただの線に見えて、実は奥が深かったりと
見ていて本当に楽しかったです。

そして、ふと、私の後ろに実は北斎や広重がいて、
私が作品を見ているのをあれこれ言いながら見ていたら・・・
と想像してみました。

その作品は素通りしちゃうの?とか、
おお、その作品は気に入っているのね、などと
言われていたら面白くないですか?
いや、怖いかな?笑

***

今日ご紹介する本は、
まさに鑑賞中の絵を描いた画家から
こっそり後ろから見つめられる少女と、その画家の物語です。

『両方になる/アリ・スミス 著、木原善彦 訳(新潮クレスト・ブックス)』

本の帯には、「作家の西加奈子さん絶賛!」とあります。

その一行で、普通の物語では無いなと思いましたが、
きっと面白いに違いないと思って読んでみました。

しかし、正直なことを言うと、読み始めてすぐの私の感想は、
「これは面白いのか?意味が全然分からないのだけど…」でした。

落ち着きのない時の自分の頭の中のように
目まぐるしく場面が変わっていくので、ついていくのに必死でした。

しかも何について話しているのか、全くわからない。
それが面白さでもあるのだけど、
わからないから、うーん。これは読みにくい、と思ってしまったのです。

でも最後まで読んで、再度一ページ目から読んだら、
なんと言葉がキラキラと輝いていることか!
印象がまったく異なりました。

突拍子も無い発言だと思った言葉も
確かにここじゃなきゃだめだ、としっくりきましたし、
話の先を知っているからこその可笑しさもあって、ニヤニヤが止まりませんでした。
こんなに面白い作品だったなんて!
まるで別の物語を読んでいる気分でした。

ああ、こんなことってあるのかと、新たな読書の楽しみを味わいました。

久しぶりに再読したくなる…ではなく、再読した作品でした。

***

『両方になる』は、どんな作品なのか軽くご紹介しましょう。

ともに「第一部」と題された二つのパートから成っています。
2回目の「第一部」を見たときは「?」となりましたが、間違いではありません。

目のマークの「第一部」では、
十五世紀頃に実在したイタリア人画家のフランチェスコ・デル・コッサが蘇って
現代のイギリスに現れる物語です。
写真を見て、実物にそっくりの絵だと思ったり、
皆が馬に乗っていないことに驚いたりします。
でも、フランチェスコの存在は誰にも見えません。

一方、監視カメラマークの「第一部」は、
フランチェスコに見られている少女の物語です。
彼女は、フランチェスコの絵を何度も見に行っています。

***

そして、この本には特別な仕掛けがあります。
なんと本によって、作品の順番が異なるのだとか!

私が読んだものは、フランチェスコの物語が先でしたが、
少女の物語が先のバージョンもあるそうです。
それも本を開いてみないとどちらが先なのかわからないんですって。ワーオ!

つまり、先にどちらの物語を読むかで人によって印象は全然異なるわけです。
とにかく仕掛けがたくさんある物語でした。

なお、『両方になる』は、一文一文が短く、まるで詩のようでもあって、
声に出して読みたくなりました。
声に出して読むと、まるで私自身から言葉が溢れ出ているような錯覚に陥るほど
テンポがとてもいいのです。

『両方になる』は、普通の小説ではないので、好みは分かれるかもしれませんが、
私はいろいろな意味で楽しませてもらえた一冊でした。

あなたも秋の夜長にどっぷり本に遊ばれてみるのはいかが?(笑)

yukikotajima 11:15 am