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『Voyage 想像見聞録』

2021年8月11日

すでに夏休み中という方もいるかもしれませんが、
今年の夏休みはどのように過ごしているでしょうか。

例年、旅行に行っているけれど、
今年もあきらめて家で過ごすという方もいることでしょう。

でも、家にいたとしても旅気分は味わえます。
先日、本屋さんに行きましたら、本の帯に書かれた

さぁ、出かけよう!「物語」という旅へ。

というコピーが目に飛び込んできました。
たしかにその通りだわ!と思い、早速この本をはじめ、
様々な本を手に取りレジへ向かいました。

読書なら県外どころか、海外にも宇宙にも
なんなら現実だって飛び越えることができます。

今日ご紹介する本はこちら。

『Voyage 想像見聞録(講談社)』

著者は、
宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)さん
藤井太洋(ふじい・たいよう)さん
小川哲(おがわ・さとし)さん
深緑野分(ふかみどり・のわき)さん
森晶麿(もり・あきまろ)さん
石川宗生(いしかわ・むねお)さん
の人気作家6人です。

「旅」をテーマにしたアンソロジーで、
本のタイトルに「想像」とある通り、想像の翼を広げた作家さんたちが
私たち読者を様々な場所へと連れて行ってくれます。それもかなり遠くまで。

最初の作品は、宮内悠介さんの「国境の子」です。
お父さんが外国人の「ぼく」は、父のいる国までわずか一時間なのに
その距離が遠く、一度も父に会うことのないまま大人になります。
でもある日…。

このお話は、胸がチクリとしつつもいいお話でした。

次の藤井太洋さんの「月の高さ」も良かったです。
東京の小劇場劇団の大道具を積んで走るトラックに乗る2人の物語です。
トラックは青森のホールに向かってスムーズに走っていたのですが、
あるトラブルが発生し…。

と、これら2つの物語は、どこか名所を訪れて美味しいものを食べて
といったオーソドックスな旅行ではないのですが、
こんな感じの旅の物語もいいね!と思って次のお話を読んでびっくり。

小川哲さんの「ちょっとした奇跡」は、
地球の自転が止まった世界が描かれていました。
地球に二つ目の「月」が飛んできて地球を引っぱるせいで自転が止まってしまい、
人類は「昼と夜の境目」を移動し続ける生活を送っています。

次の深緑野分さんの「水星号は移動する」は、
民間宇宙船が当たり前になった時代の物語です。
ホテルも進化しており、移動式の宿が登場しています。
出かけた先の宿に泊まるのではなく、宿が自分のいる場所に来てくれます。
なんて便利!

そして、私が一番衝撃を受けたのは、石川宗生さんの「シャカシャカ」です。

「シャカシャカ」という言葉は、例えば、ポテトチップスの袋の中に
味のついた粉をいれて混ぜるときなどに使いますよね。
袋を振ることで中のものが混ざりあい美味しく食べられますが、
もし地球上の様々な場所がシャッフルされたらどうでしょう?

ある日、大きな地震が起きたかと思って外に出たところ、
目の前の道路も近所も無くなっていて、
そのかわりにシラカバの森や荒野が家の周りを取り囲んでいたそうです。
こわすぎるー!

「ぼく」が「シャカシャカ」と呼ぶその現象は、
数日起きないこともあれば、数十分ごとに起こることもあり、
家の目の前に地球上の様々な場所が現れます。

家にいるだけで地球上の色々なところに行けるなんて素敵!と思ってしまいそうですが、
次々にシャッフルしてしまうので、働くことも何かを作ることも買い物もできず、
皆、生きるために食べ物を探すことに必死です。超サバイバルです。

果たして「ぼく」は「シャカシャカ」の起こる世界を生き抜くことはできるのか。
続きは本のページをめくってください。

***

どの物語も短編なのですが、いやあ、濃かったです。
旅がテーマの本というから、世界各国を楽しむ気分が味わえるのかしら?
と思っていたのですが、全然違いました。

地球の自転が止まったり、地球上の様々な場所がシャッフルしたりと、
あまりにもぶっ飛んでいて、想像していた旅とはだいぶかけ離れていたけれど、
ずっとドキドキしていたおかげで飽きる暇はありませんでした。

まあ、このドキドキはワクワク感からくるものではなく、
ちょっとやばくない?ねえ?大丈夫?と心配が伴うドキドキではあるのですが。
でも、そのおかげで刺激的な旅を味わえました。

夏休みといっても、することも無いし暇だなあ…という方は、
ぜひ「物語」という旅へ出かけてみては?

今日ご紹介した『Voyage 想像見聞録』でもいいですし、
もちろんそれ以外の本でもいいと思います。
あなたも今年の夏休み、何か一冊でいいので本を読んでみませんか?
本選びは良かったら私のこのブログ「ゆきれぽ」も参考にしてみてね!

yukikotajima 9:40 am