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29『ピエタ』

2011年5月25日

graceリスナー(私も含む)の読書アドバイザー、
紀伊國屋書店富山店の朝加さんから
「今年度、現時点で一番「良い」と思った作品。しっとりと落ち着きのある小説です」
とオススメ頂いたのが、こちら。

大島真寿美(おおしま・ますみ)さんの『ピエタ』です。
pieta.jpg
ポプラ社から今年2月に出て以来、
本好きの方たちの間で話題になっているようです。

本の帯には「ほんとうに、ほんとうに、わたしたちは、幸せな捨て子だった」
という衝撃の一文が、また表紙には2人の少女のイラストがかかれています。

しかも「史実」が基になっている、とあります。

『ピエタ』は、「四季」でおなじみの作曲家アントニオ・ヴィヴァルディを軸に物語が紡がれます。

舞台は、18世紀のヴェネツィア。
ヴィヴァルディは、孤児たちを養育する「ピエタ慈善院」で音楽を教えています。

主人公は、そのピエタで45年間暮らすエミーリア。
ある日、彼女のもとに恩師ヴィヴァルディの訃報が届きます。

恩師亡き後、昔ともに音楽を学んだ友人のヴェロニカから、
ある1枚の楽譜を探してほしい、と頼まれます。

その楽譜を探すことによって、
ヴィヴァルディの意外な過去や
エミーリア自身の過去の秘密も明らかになっていきます。

主人公が女性というのもあるのでしょうが、文章がとても美しく、落ち着いています。
本を読む私の姿勢まで整ってしまうほど。
でも、体に力を入れて読むのとは違います。
あくまでもリラックスしながら、有意義な読書タイムが過ごせます。

途中、カーニバルで仮面をかぶった状態で出会ったある男女が登場し、
なんとなくお互い心魅かれあっているようで、
まるでロミオとジュリエットか?なんて思ったのですが、
そういうお話ではありませんでした。

登場人物は皆、ちょっと癖がありつつも魅力的なので、
次にどんな言葉を発し、どんな行動を取るのだろう?
と、それぞれ先が気になりました。

どこまでも正直な人もいれば、決して人に本音を見せない人もいます。
でも、皆、どこかで孤独を抱えています。
だからこそ、人と人とが出会い、溶けあっていく様が、すごくあたたかい。

そして、ラストがこれまたとてもよい。
悲しみの中の喜び。ぬくもり。希望。
読んだ後の優しい充足感を、みなさんにも味わっていただきたい。
ぜひ、あなたも読んでみてください。

また、お気に入りの1冊が増えました。

私は、たいてい黙読で本を読みますが、
時々、声に出して読みたくなる本に出会います。
この本は、そんな本でした。

そうそう、もしヴィヴァルディのCDをお持ちなら、
ぜひ曲を聞きながら読んでみてください。
より、世界に入れると思います。

yukikotajima 12:11 pm