ゆきれぽ

2026年4月8日

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『DANGER』

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いよいよ明日、今年の本屋大賞が発表されます。「ゆきれぽ」ではこれまでノミネートされた10作品のうち8作品をご紹介しました。どの作品もそれぞれに面白かったので、どれが大賞を受賞してもおかしくないと思うのですが、私の好みの作品は、村山由佳さんの『PRIZE―プライズ―』です。

◎田島の本紹介ブログは コチラ

ちなみに、『PRIZE』は本屋大賞ではなく、「直木賞」が欲しくてたまらない作家、カイン先生の物語です。(笑)

果たして今年はどの作品が大賞受賞となるのでしょうね。明日の発表が楽しみ!

✳︎

さて、今日ご紹介する本は、その『PRIZE』の著者、村山由佳さんの最新長編小説です。

『DANGER(デインジャー)』
村山由佳
新潮社

『PRIZE』は、作家さんと出版社の編集者たちのお話でしたが、『DANGER』にも出版社が出てきます。

物語はまず、出版社につとめる若手記者の一平(いっぺい)の視点で進んでいきます。彼は編集者の果邪(かや)と共に、有名なバレエ団の来日公演に合わせて、元バレエダンサーで世界的振付家の久我(くが)にインタビューをすることになります。

なお、物語の舞台は令和の今ではなく、1990年代前半です。久我はこの時72歳。若い頃に戦争を経験しています。一平たちは久我の半生を辿りつつ、戦前戦後の日本バレエについて雑誌の誌面で紹介したいと思って話を聞いていきます。

まずは生い立ちやバレエを始めたきっかけから始まったインタビューでしたが、徐々に戦争の話が増えていきます。そして久我はシベリアでの捕虜生活についても語り始めます。

ちなみに、著者の村山さんのお父様がシベリアに抑留されていたそうです。そのことをお父様の話や手記から知ったそうで、小説からも実際に経験したかのような生々しさが感じられました。目に見えるものだけでなく、寒さや匂い、そして感情にも説得力がありました。

物語の舞台の1990年代前半は、戦争を直接知る人が多かったのですよね。でもこの時代でさえ、戦争を知らない若者たちにとって戦争は過去のものという認識でした。

物語の中で久我は一平にこう言います。〈誰だって自分からちょっとでも遠い話は想像の埒外〉だと。ドキリとしました。私も当時、祖父から戦争の話を何度も聞きましたが、その頃の私にとって戦争は遠い昔の出来事という印象でした。でも祖父にとっては決して昔の話では無かったのでしょうね。

あなたはどうですか。相手の気持ちを想像できていますか。

さて、久我の話はその後も続きます。また物語には壮絶な人生送ったとある女性も出てくるのですが、これらがどう紡がれ、繋がり、そしてどんな結末を迎えることになるのかは、ぜひご自身でじっくり味わってみてください。

なお、物語で描かれるのは絶望だけではありません。読んだ後、私はあたたかな光を感じました。多くの方に読んでいただきたい一冊です。

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