69『天地明察』
2009年12月14日
冲方 丁(うぶかた・とう)さんの
11月30日に出たばかりの時代小説
『天地明察(てんちめいさつ)』を読みました。
初めて日本独自の暦を作った、
渋川春海(しぶかわ・はるみ)の生涯を描いた作品です。
時代は、江戸時代、四代将軍家綱のころ。
碁打ちの仕事をしながら、和算(数学)や天文にも興味を持っていた春海は、
日本独自の暦を作ることを命じられます。
それまでの日本にはいくつかの暦があったものの、
それらの暦には誤差が生じていました。
そこで、春海が初めて日本独自の暦を作ることになるのですが、
これが、なかなか思うようにはいかず、挫折の繰り返しでした。
でも、失敗ばかりの春海でしたが、
彼は、関わる人たちには恵まれていました。
名だたる時の権力者たちから、様々な支援を受けていたのです。
有名なところでは、
将軍家綱の後見人の保科正之、
天下の副将軍、水戸光圀、
そして、和算の大家、関孝和(たかかず、または、こうわ)。
彼らをはじめとしたたくさんの人々が春海を影で支えていました。
ちょっと話がずれますが、
「和算の大家、関孝和(わさんのたいか、せきこうわ)」
は、群馬県民なら誰もが知っているフレーズです。
群馬独自のかるた、上毛かるたの「わ」の札なのです。
群馬県の藤岡市とつながりがあったようです。
さて、話を戻します。
春海は、彼らの支えを頼りに、その生涯を新しい暦作りにささげます。
時代小説と言いながら、合戦は一切出てきません。
亡くなる方もたくさん登場しますが、ほとんどが、病死によるものです。
でも、作品には、勢いがあります。
春海は、ガムシャラに熱い人ではありません。
どちらかというと、ひょうひょうとしています。
でも、あきらめないのです。
挫折を何度しても、乗り越えていきます。
1度や2度失敗したくらいで、もう自分はだめだ、と、
落ち込むだけじゃなく、やけになってしまう人の多い、
今の時代にこそ必要な作品ではないかな、と思いました。
『天地明察』は、11月30日に出たばかりなのですが、
すでに、書店の店員や作家さんたちの間では、かなり話題になっているそうです。
474ページもある大作で、読み応えがありますが、
その分、満足度もかなり高いと思います。
今週は、雪マークが並んでいます。
雪の夜、毎晩、本の世界に没頭してみるのはいかがでしょう?
本を読み終えたときには、
早くも雪解けの春の訪れのようなあたたかな気持ちになることでしょう。