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『空想の海』

2023年6月28日

私のラジオを聞いてくださっている方にお会いすると、ほぼ本の話題になります。

私の本紹介を楽しみにされている方や
本選びの参考にされている方もいれば(ありがとうございます!)、
「実は本は苦手で…ユッキーは本のどんなところが好きなの?」
と聞かれることもあります。

本と言っても色々ありますが、私はやはり「物語」が好きです。
知識を得るための読書ももちろんいいけれど、
まだ見たことの無い世界や、様々な人の思い、美しい表現に出合える物語は、
読んでいてワクワクします。
特に人の心の中を堂々とのぞけるのが好きです。
色々な人の本音に触れられるのがいいなあと。

また、本を開ければ、すぐにでもどこか別の世界に行ける手軽さも魅力です。
私にとって本の表紙は、作品の世界へ繋がる扉のようなものです。

今日ご紹介する本には、扉がいくつもあり、行き先も様々でした。

『空想の海』
著者/深緑野分(ふかみどり・のわき)
株式会社KADOKAWA

『空想の海』は、今年、作家生活10周年を迎えた深緑さんが
これまでに発表してきた短編を中心に、
書下ろしや未発表作品が加えられた作品集で、
全部で11の物語が収録されています。

深緑さん、10周年おめでとうございます〜!

もうね、本の表紙から素敵なんです。
表紙は、人気イラストレーター・絵本作家の庄野ナホコ(しょうの なおこ)さん
繊細でどこか静けさを感じさせる美しいイラストです。
青い海に浮かぶ小舟に乗った一匹のクマが、何冊もの本を海に沈めています。

いったい何をしているのかしら、と思って本のページをめくってみれば、
まさに「海」というタイトルのお話が始まります。

海の描写から始まるのですが、
それは私たちがよく知る海とは異なり、
さざなみひとつ立たない静かな海なのでした。
そして、そこにいるのは「私」だけ。
誰の気配もありません。

深緑さんがすごいのは、一瞬で作品の世界に連れて行ってくれるところです。
読み始めてすぐ、私は静かな海にいました。

他には、ある家に住む4人の子どもの物語もあります。
4人全員が見た目も言葉も異なるため、
誰も口をきかず、それぞれが好きなように過ごしています。
でも、ある日ある事件が起き、彼らの関係に変化が生じます。

このお話は、もし私がこのうちの1人だったらどうするかしら、
と登場人物の一人の気分でした。

こんな感じで11のお話が収録されているのですが、ジャンルも様々です。
SFやミステリのほか、2021年に本屋大賞にノミネートされた
『この本を盗む者は』のスピンオフもあります。

『この本を盗む者は』も以前ラジオでご紹介しましたが、
少女たちが本の世界を冒険するファンタジーで、本への愛にあふれていて、
私も最初から最後まで夢中で読んだお気に入りの一冊です。

◎『この本を盗む者は』の田島の紹介は コチラ

『空想の海』に収録されたスピンオフが短編とは言え、
まるで単行本並みの熱量で、再度『この本を盗む者は』を読みたくなりました。
それこそ、本が苦手…という方にこそこのスピンオフを読んで頂きたいわ。
なぜなら、主人公の女性が本の魅力を余すところなく語っているからです。
私も共感しまくりでした。

ちなみに、『この本を盗む者は』は今月、文庫化されたそうですので、
まだお読みで無い方は、これを機に『空想の海』と合わせて読んでみては。

さらに、コミックにもなっているようですよ!
コミックも読んでみたいわ。

11の物語に出合える『空想の海』は、一気に読むのももちろんいいけれど、
1話ずつじっくり読んで、その都度、空想を膨らませていくのも楽しいかも。

あなたも空想の海を漂いながら、様々な世界への扉を開けてみませんか。

yukikotajima 1:43 pm