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『この本を盗む者は』

2020年10月28日

小説を読んでいると、本の世界に入り込んでしまうことがあります。
夢中になってページをめくっているうちに、
読書をしていることすら忘れてしまうようなことが。

今日ご紹介する小説は、そういった空想ではなく、
本当に本の世界に入ってしまった少女の物語です。

『この本を盗む者は/深緑野分(ふかみどり・のわき)【角川書店】』


本の帯に大きく「森見登美彦氏 推薦」とあり、
本屋さんでこの本を見たとき、森見さんの新作かと思ってしまいました。

そして、森見さんの名前を最初に見たことも影響していると思うのですが、
この本を読みながら森見さんの小説『熱帯』を思い出しました。

★『熱帯』の私の感想は コチラ

『熱帯』は、とある幻の本を探し続ける男性の物語なのですが、
この本探しが、はちゃめちゃな冒険に繋がっていくのです。
いかにも森見さんらしい愉快な一冊でした。

今日ご紹介する深緑野分さんの新作
『この本を盗む者は』の主人公も本を探しています。

主人公は、高校生の深冬(みふゆ)です。
彼女のひいおじいさんは書物の蒐集家で、
巨大な書庫「御倉館(みくらかん)」には
約24万冊の本が所蔵されていました。

もともと書庫の本は誰でも借りることができたものの、
本の盗難が増えたことで書庫は閉鎖されてしまいます。

ひいおじいさんから引き継がれた深冬の祖母は、
愛する本を守ろうとするあまり
地元の神様に頼んで書物に奇妙な魔術をかけてしまいます。

書庫の本を持ち出した者を呪うブックカース(本の呪い)を。

誰かが本を盗んで、この本の呪いが発動すると、
街が物語の世界へと姿を変えて
泥棒は本の世界に閉じ込められてしまいます。
本を盗んだ泥棒を捕まえない限り、世界は元には戻りません。

その泥棒を捕まえることになるのが深冬です。

しかし、深冬は本が嫌いなのでした。

書庫の本に呪いをかけた祖母は深冬に対してとても厳しくて、
「この家の者なら本を読め!」
と他の遊びをすることを許してくれなかったため
本嫌いになってしまったのです。

これ、なんでもそうですよね。
人から強要されて嫌いになったもの、私にもあるなあ。。。
何かは内緒ですが。(笑)

さて、嫌いな本の世界に入った深冬は、
本泥棒を捕まえないと元の世界に戻ることができません。

そして、本が盗まれるたびに本の世界を冒険していくことになるのですが、
この本の世界というのがユニークなのです。
深冬が住んでいる町がそのまま本の舞台になっていて、
登場人物もお馴染みの人たちです。
でも、微妙にカスタマイズされていて、全員、役が決まっています。

これがとても面白くて、
いつかドラマ化されたらきっと楽しいに違いない!
と思ってしまいました。
アニメ化はあるかもしれないけれど、できれば実写版で見たいなあ。


この小説は、女子高校生が主人公で、
本の呪いとか本の世界に入って冒険ということは、
若い人向けのお話なんでしょ?と思った大人の方もいるかもしれませんが、
そんなことはありません!

大人の皆さんもきっと楽しめると思います。

それに、深緑さんの文章は描写が美しいのです。
情景が目に浮かぶのはもちろん、
洗練されていて声に出したくなるほどです。

例えば。

廊下はしんと静まり返り、
玄関の小窓から差し込む細い陽光に、
宙を漂う埃がきらきら輝いている。
コチコチと響く柱時計の振り子の音がかえって静寂を際立たせる。

どうでしょう?
情景が浮かびませんか。
そして、どこか美しさもありませんか。

こういった描写によって五感で本の世界を堪能できました。


そうそう!

ちょうど今は読書週間なのですよね。

毎年、文化の日を中心にした2週間である
10月27日〜11月9日が読書週間です。

◎読書週間については コチラ

読書週間には標語が発表されるのですが、
今年は「ラストページまで駆け抜けて」です。

まさに今日ご紹介した小説『この本を盗む者は』も
ラストページまで駆け抜けた、読書週間にピッタリの一冊です。

中高生のお子さんのいる方はご家族みんなで読んでみるのもいいかも。

あ、でも、これは決して強要ではありませんよー。(笑)
興味が湧いたら読んでみてください♪


最後に、この本の中で一番好きなセリフを紹介します。

「本はただ読んで、面白ければそれでいいんだ。
つまらなくてもそれはそれでよい経験さ。
自分が何を好み何を退屈だと感じるか知ることができるからね」

yukikotajima 9:33 am