ブログトップページはコチラ

『民王 シベリアの陰謀』

2021年10月20日

毎週水曜のgraceでは13時45分ごろからの「ユキコレ」で本をご紹介しています。
9月29日のユキコレでは、山本文緒さんの短編集『ばにらさま』をご紹介しました。

◎田島の本紹介は コチラ

二度読みしたくなる短編集で、短いお話ながらも「え?どういうこと?」
という驚きに満ちた読書の面白さを堪能できた一冊でした。

そして、次作も楽しみだなと思っていたところ、山本さんの訃報が飛び込んできました。

多感な学生時代、私は山本さんの作品に大変影響を受けました。
どれだけ励まされ、泣かされ、大事なことに気付かされてきたことか。
山本さんのおかげで豊かな時間を過ごすことができました。
本当にありがとうございました。
私が訃報を知ったのがランニングの途中だったのですが、
走りながらサングラスの中で涙が止まりませんでした。

これからは、これまで発表されてきた作品をあらためて読んでみます。
本のページを開けば、いつでも山本さんに会えますしね!
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

***

さて、今日ご紹介する本は、池井戸潤さんの最新作です。

『民王(たみおう)シベリアの陰謀(角川書店)』


こちらは、2015年にドラマ化され話題になった『民王』の続編です。

総理大臣と大学生の息子の心と体が入れ替わってしまうという物語で
ドラマでは父を遠藤憲一さんが、息子を菅田将暉さんが演じました。

漢字は読めないし、すぐに逃げたがる情けない息子ですが、
性格は穏やかで優しいため、国民の心を動かすこともあります。
一方、息子になった総理は、息子のことを何も考えていないバカだと思っていましたが、
そうではないことに気付き始めます。
入れ替わったことで、お互いの気持ちがわかったり大事なことに気付いたりします。

ドラマはテンション高めの演出のなので、笑いながら楽しく見ることができます。
でも、現代的な問題もしっかり描かれているので、
ただ笑って終わりではないところがいいのです。

今回、新作の小説を読む前にドラマを見直してみたのですが、
あらためていい作品だと思いました。

ドラマはネット配信で見ることができますので、まだご覧になっていない方はぜひ!

私はドラマをみたあとは原作も読んで徹底的におさらいをしてから
最新作の『民王 シベリアの陰謀』を読みました。
ちなみに、ドラマ版より原作のほうが息子君がしっかりしているというか、
ややチャラい感じです。(笑)

新作も総理と息子の物語なのですが、
息子は大学を卒業して無事就職、父は第二次内閣を発足させたばかりです。

新作は去年から今年にかけての「今」が反映されていました。
でも、すべて同じではありません。
物語の世界ではコロナではなく「マドンナ・ウイルス」が広まっています。
このウイルスは発症すると凶暴化してしまうのです。

総理は現実世界と同じく対応に追われます。
しかし、陰謀論まで出てきてしまい、国民から嫌われる一方です。
また、野党からの攻撃や、生きる化石のような与党の長老たちからも圧力をかけられ、
気付けば周りは敵だらけです。

総理はこの状況を変えることはできるのか。
そもそもマドンナ・ウイルスとは何なのか。
総理と息子はウイルスの謎に迫ります。

今回も痛快でした!
フィクションとはいえ、これは本音だなと感じる言動も多く、
笑いながらも客観的に今の世の中を見ている気分にもなりました。

印象に残ったセリフをいくつかあげます。

・否定なんか誰にでもできる。否定するなら代替案を出せ。
・日本がダメになる前に、すでに日本人がダメになっている。
・世の中は“気分”で流されていく。

昨日公示された衆議院選挙の期日前投票が今日から始まりました。
新作の『民王 シベリアの陰謀 』は政治への関心が高まっている
今の時期にぴったりの作品だと思います。

もし自分が総理だったら?という気持ちで読んでみるのも楽しいかも!

yukikotajima 11:24 am