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『銀の夜』

2021年2月3日

いよいよ今度の土曜日は、気まぐれな朗読会です。
チケットを買ってくださった皆さま、ありがとうございます。

気まぐれな朗読会は、
「気ままプラン」パーソナリティ廣川奈美子さんと
「grace」パーソナリティ田島悠紀子でお届けする朗読会です。

気ままの「気ま」とグレースの「ぐれ」で「気まぐれ」です。

今年は、2月6日(土)18:00〜
富山県民小劇場 オルビス(マリエとやま7階)で開催します。

今年も3部構成です。
例年通り、1部、2部は、廣川さんとともに
3部はそれぞれ作品を読みます。

廣川:「ムシヤシナイ」高田都(たかだ・かおる)
田島:「鍋セット」角田光代(かくた・みつよ)

◎3部の作品の詳細は コチラ

朗読会のチケットは、まだまだ販売中です。
当日は、コロナ対策をしてお届けしますので
もしよかったらお越しください。

◎チケットについて詳しくは コチラ

なお、当日の21時頃(終演後)から3部のみFMとやまYouTubeチャンネルで配信します。
配信は21時頃~22時頃の時間限定ですので、お見逃しなく!

◎FMとやまYouTubeチャンネルは コチラ

***

さて、今回の朗読会で私は、角田光代さんの「鍋セット」を読むのですが、
今日ご紹介するのは、去年11月に発売された角田さんの新作です。

『銀の夜(光文社)』

角田さんの5年ぶりの長編小説なのですが、書かれたのは15年前のことだとか。
『対岸の彼女』で直木賞を受賞された頃に書かれたものだそうです。

それがなぜ今になって単行本として出ることになったのか。
しかも、なおさずにそのままの形で出版したそうです。
その理由は「あとがき」に書かれていますので、
ぜひ本編を読んだ後にお楽しみください。


『銀の夜』は、30代半ばの女性3人の物語です。
時代は、まさに小説が書かれた約15年前の2004年〜05年頃です。

まだSNSも無く、携帯よりも家の電話の子機を使い、
メールはパソコンを開いてチェックしていた時代です。

登場人物の女性3人は高校時代に
3人でバンドを組んでメジャーデビューをしています。

とはいえ活動期間は短く、
今では全員がバンドとは関係のない生活を送っています。

「ちづる」は、結婚し、イラストレーターをしているものの、
仕事はぱっとせず、夫は職場の若い女性と浮気をしています。

「麻友美」は、セレブママになり、
娘を芸能人にしたいと思っているのですが、
娘はなかなかやる気になってくれません。

独身の「伊都子」は、著名翻訳家の母のように生きたいと思い、
あれこれやってみるものの、うまく行きません。

つまり、全員が今の自分に満足していないのです。
でも、このままでいいとも思っておらず、
なんとか今の状況を変えようと、もがいている様が描かれています。

それも誰か1人の一人称ではなく
3人それぞれの視点で描かれているので、
お互いの本音が見えるのが良かったです。

例えば、友人の活躍を応援したいのに、
嫉妬もあってつい意地悪な感情が芽生えてしまい、
でも、それを必死に打ち消そうとしているわけですよ。
この感覚、よくわかる!
きっと誰もが同じような気持ちを味わったことがあるのでは?

角田さんの文章には、人の本音がにじみ出ているのです。
いま私は朗読会に向けて何度も角田さんの作品を声に出して読んでいますが、
やはり同じことを感じました。

その本音によって、作品との距離が近くなっています。

『銀の夜』も、私は彼女たちが他人事とは思えず、
まるで私の友人たちの話を聞いているかのようでした。

15歳の頃にバンドデビューし、キラキラした世界に一瞬でもいた3人は、
どうしてもあの頃と今を比べてしまいます。

三十代も半ばになり、40歳までには何かをしなくてはと思うものの、
充実感や達成感といったものを心底実感できるようなことは
なかなかみつかりません。

私も30代半ばくらいの頃は同じようなことを思っていました。
そして、私の場合はいきなりフルマラソンにチャレンジしたわけですが。(笑)
みんな、40歳を前にすると何かをしたくなるものなのですね。

果たして彼女たちは、この先どう生きていくことになるのか。
続きはぜひ本を読んでみてください。

今日は、角田光代さんの『銀の夜』をご紹介しました。
角田さんといえば、先日、読売文学賞を受賞されました。
おめでとうございます〜!

yukikotajima 9:32 am