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人間

2019年11月6日

私が小説を読むのが好きな理由の一つに、
「人の心の中がのぞけること」があります。

小説はお喋りです。
自分の心の内をペラペラ喋ってくれます。
絶対に人に言えないような恥ずかしいことや醜いことも
小説は包み隠さず喋り続けます。

今日のキノコレ(grace内コーナー13時45分頃〜オンエアー)
で紀伊國屋書店富山店の奥野さんからご紹介いただく本も
かなりお喋りな本でした。

『人間/又吉直樹(毎日新聞出版)』

◎奥野さんの紹介本は コチラ

芸人でもある又吉さんの新作です。
又吉さんといえば、作家としても活躍しており、
芥川賞を受賞したデビュー作『火花』は注目を浴びました。

今回は、初の長編小説です。

この作品には、芸人であり、作家としても活躍する、
まるで又吉さんのような男性が登場します。

彼が世間に対して思っていることは、
登場人物の彼が思っていることであると同時に
又吉さん自身の思いでもあるのかも、と思わずにはいられませんでした。

きっと『火花』を出した後は、
賞賛ももちろんあったと思うけれど、
嫉妬もかなりあったんだろうな。

「いちいちうるさーい!」という本音を小説という形にして表したのかしら?
と熱い文章を読みながら想像してしまいました。

まあ、これはあくまでも私の想像であって、
又吉さん自身は、そんなことは全く思っていないかもしれませんが。

『人間』というタイトル通り、人間の様々な部分が詰まっていました。

そして、この本を読みながら恥ずかしい気持ちになってきました。
小説は、人の心をのぞけるから面白いと思っていた私ですが、
この本に関しては、逆に私自身の心の中をのぞかれている気分にもなりました。

この本の前では心がどこまでも正直になっていって、
客観的に読んでいたはずの本が、自分のもののような気がしてくるのでした。

ひねくれているようで、どこまでもピュアで、一言で言うならめんどくさい!(笑)
でも、それこそ人間なのかも。

例えば、「見たものと見えたものは違う」というお話。
私、これには大いに共感。
同じものを見ていても人によって、見えているものは違うのですよね。
だからこそ、違いがあって面白いのだけれど、
「なぜ、そんな見方をするの?」と言われることもあります。

この本には「いちいちめんどくさいこと言うなよー」
と言われてしまいそうな細かい違和感がつまっていました。

そして、私はその違和感こそが楽しくて仕方ありませんでした。

そういっためんどくささを楽しめる人なら、きっとこの本を楽しめると思います。

うん。面白かった!

yukikotajima 11:40 am