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燃えよ、あんず

2018年11月28日

前は頻繁に顔を合わせていたのに、
気付いたら最近、全然連絡を取っていない、という方はいませんか?

私は、大人になってから、そういう人が増えたように思います。

でも、久しぶりに会ったとしても
前に仲良かった人とは、不思議と自然に以前の関係に戻れるような気がします。

まあ、大人になると数年前がそんなに前に感じられない…
というのもありますが。(苦笑)

今日ご紹介する本は、まさに久しぶりに関係が復活した人たちの物語です。

『燃えよ、あんず/藤谷治(ふじたに・おさむ)<小学館>』

主人公は、下北沢で小さな書店・フィクショネスを営むオサムさんです。

そう、著者と同じ名前です。
どうやら、著者の藤谷さんは以前、本当に書店を経営していたそうです。

その書店には店主をはじめ、お客さんもなかなか癖が強い人たちが集まっていました。

『燃えよ、あんず』は、そんな個性派ぞろいのお客さんの一人、
どこか憎めない女子である久美ちゃんをめぐる物語です。

***

この書店は、店主が本当に売りたい本だけを扱っていたのですが、
なかなかお客さんが集まらなかったため、
文学の教室という文学の話をするカルチャースクールのようなものを始めます。

そこに通っていたのが、久美ちゃんでした。

久美ちゃんは、ある日、結婚します。
ところが、その後すぐにご主人が亡くなり、下北沢から離れてしまいます。

それから十数年。
ある日、久美ちゃんがお店に突然あらわれるところから物語が始まります。

物語の後半は、久美ちゃんの新たな恋のお話が中心になるのですが、
この久美ちゃんのことを、みんなが心配し、応援していきます。

特におせっかいなほどに熱いのが、オサムさんの奥さまの桃子さんです。

オサムさんは、正直、面倒だなーとか、なんでそこまでしなきゃいけないんだ…と
心の中ではブーブー文句を言っているのですが、
結局、桃子さんの言いなりになっています。(笑)

登場人物の全員が、ちょっとずつうざくて(笑)、
でも、嫌いになれなくて、
そして、優しくて、泣けてきます。

「幸せ」というと、まず自分の幸せを考えてしまうけれど、
この本に出てくる人たちは、自分の幸せではなく、人の幸せを考えている人が多いのです。

だからちょっとくらいうざくても、嫌いになれないのです。(笑)
なんだかんだ言って、みんないい奴じゃないかって。

『燃えよ、あんず』、いい本でした。

実は400ページ以上もある、かなりボリュームのある作品なのだけど、
面白かったので、長さを全然感じませんでした。

後半、ある癖の強い人物が出てきて、
いきなり作品のテイストが変わり、
このお話、どうなっちゃうの??と思ったりもしたけど、
そのドキドキも楽しかったです。
それに、何より笑えましたし!

心がギスギスしているという方は、
この『燃えよ、あんず』の世界に没頭してみてはいかがでしょう?

きっと読み終えた後は、笑って泣いてほっとして、
穏やかな気持ちになっていると思いますよー。

yukikotajima 12:24 pm