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はなとゆめ

2013年12月11日

「春はあけぼの」

といったら…

清少納言の『枕草子』です。

その『枕草子』がいかにして誕生したのか、
がわかる小説を読みました。

その本とは、冲方丁 さんの最新作 『はなとゆめ(角川書店)』 です。

冲方丁さんというと、
映画化もされ話題となった『天地明察』や
水戸黄門様でおなじみ、水戸光圀公の若かりし頃を描いた『光圀伝』
といった時代小説が注目を浴びてきました。

私もどちらも読んでおり、なおかつ作品のファンでもあります。

 『天地明察』の感想は、コチラ

 『光圀伝』の感想は、コチラ

とくに『光圀伝』は大好きな作品です。

今回、冲方丁さんが主人公に選んだのは、清少納言。

皆さんは清少納言というとどんな印象をお持ちですか?

ちょっと生意気で勝気なイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

紫式部と比較する方もいらっしゃるかな?

あれ、2人はどんな関係だっけ?
仲が悪かったのだっけ?

と思った方もいらっしゃるかもしれないので、
ちょっと整理をしておきましょう。

清少納言は、一条帝の妃である中宮定子に仕えます。

一方の紫式部は、同じく一条帝の妃である彰子に仕えます。

先に妃となっていたのは定子です。

しかも帝からの寵愛を受け、さらに定子も帝を愛していました。

その後、彰子の父である藤原道長が自分の娘を強引に帝の妃にしたのです。

ただ、清少納言と紫式部は、実際には直接会っていなかったのでは?
とも言われているようですが。

紫式部と言えば、やはり『源氏物語』が有名です。

私も高校時代、漫画『あさきゆめみし』を読んで以来、
源氏物語にはまり、紫式部派となったのですが、
今回、清少納言の物語を読んで、清少納言が好きになりました。

今では、心から尊敬しています。

すみません、単純で…(笑)

だって、清少納言は、
人から悪い噂を流されても、
意地悪をされても、
負けないんですよ。

決して噂を否定したり、
文句を言ったりしないのです。

嫌がらせに対しては無視を貫きます。
そして、ユーモアいっぱいに明るく楽しく振る舞う。

笑いで返すのです。

一方の紫式部は、自分の作品に清少納言の悪口を書いています。

となると、気持ちは清少納言よりになるというもので…。(笑)

また、清少納言はいじられキャラで、
次々に変なあだ名をつけられていきます。

つまりは愛されキャラなのです。

読めば読むほど、彼女の人としての生き方に感動しました。

また、お仕えしている中宮定子様がとても魅力的な方なのです。

中宮様は人の才能を覚醒させるのがうまく、
清少納言の漢詩の才能を見抜きます。

最初の頃は宮中の雰囲気に慣れていなかった清少納言ですが、
中宮様に漢詩の才能を見抜かれてからは知識を披露する楽しさに目覚め、
宮中での暮らしに慣れていきます。

そして、美しく聡明な中宮様とともに華やかな日々を過ごしていきます。

ところが…。

のちに一族の権力争いに巻き込まれていくことになります。

そんな中で、清少納言は中宮様のために『枕草子』を書くことになります。

『はなとゆめ』には、
どのようにして『枕草子』がうまれることになったのかが、
清少納言の心の動きとともに綴られています。

遠い昔の時代のお話ですが、
清少納言の生き方、考え方は、現代に通じるところもあり、
共感させられる部分も多くありました。

私も、嫌なことをされたり言われたりしても、
清少納言のように無視をしよう!
そして、笑い飛ばしてやろう!

と心に誓いました。

また、学生時代に授業で習った歌もたくさん出てきて、
懐かしい気持ちにもなりました。

今更ながら本当の意味を知り、
できれば学生時代にこの本と出会いたかったなあと。(笑)

そういう意味では、学生の皆さんにもオススメの一冊です。

私が受験生の時に『あさきゆめみし』を読んで源氏物語を学んだように、
ぜひ『はなとゆめ』を読んで枕草子の世界をのぞいて見てください。

歌の意味もきっと頭に入ってくると思いますよー。

それに遠い昔の人物がすぐそばに感じられます。

冲方丁さんが描く時代小説は、「人」を丁寧に描いているので、
実際には温度のない紙の本を読みながらも、冷たい紙の質感ではなく、
人の温もりを感じさせてくれるようなあたたかみが感じられるのです。

さらに、人や自分の環境に対して、感謝の気持ちが湧いてきます。

今回も満たされた優しい気持ちになれました。

冲方丁さん、ありがとうございました。

年末にいい本に出合えました。

………

『はなとゆめ』の公式サイトには、
まるで映画の予告編のような本の紹介映像があります。

よかったらご覧になってみてください。

http://www.kadokawa.co.jp/hanatoyume/

yukikotajima 11:26 am