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『心の傷を癒すということ』

2020年4月15日

昨日4月14日は、熊本地震から4年でした。
また今年は、阪神・淡路大震災の発生から25年の年でもあります。

その阪神・淡路大震災で自らも被災しながら
被災者の心のケアを行った精神科医がいたのを知っていますか?

今年1月には、柄本佑さんが、その精神科医を演じたドラマ
「心の傷を癒すということ」がNHKで放送されました。

このドラマをご覧になった方もいらっしゃるのでは?

今日ご紹介する本は、紀伊国屋書店富山店 人文科学書担当の
野中浩大(のなか・こうだい)さん
のオススメ本です。

新増補版『心の傷を癒すということ 〜大災害と心のケア〜
/安克昌(あん・かつまさ)〈作品社〉』


野中さんのオススメコメントです。

***

同名のテレビドラマの原作となった本書は、
夭折した著者の安克昌氏が阪神淡路大震災に際し、
PTSDに苦しむ人々の心のケアに当たった経験を元として、
心的外傷に満ちた現代社会にあって心の傷を癒すということは、
今を生きる私たち全体のあり方の問題であると説くベストセラーです。

人々の心によりそう大切さを見つめ直すために
ぜひ読んでいただきたく、おすすめします。

***

ドラマ「心の傷を癒すということ」は、この本が原案です。
私はドラマを見てから本を読んだので、より心に響くものがありました。

この本は、精神科医の安克昌(あん・かつまさ)先生が
被災者の心のケアを行う中で見たり感じたりしたことを記録したもので、
第18回サントリー学芸賞を受賞しました。

このほど発売されたのは、1996年に発売された本の新増補版です。
受賞作の他、災害精神医学に関するエッセイや
安先生と繋がりのあった方々の文章などが収録されています。
なんと500ページ近くもあり、かなり読みごたえがあります。

もしかしたら、今このブログをお読みの方の中には、
今は災害よりも新型コロナウイルスのことで頭がいっぱい…
という方も少なくないかもしれません。

でも、私は今こそ、この本を大勢の方に読んで頂きたいと思います。

今は、感染するかもしれないという不安の他にも
マスクや消毒液が手に入らない、
仕事が無くなった、
先が全く見えなくて不安
など、地球上の全員がそれぞれ不安を感じていますよね。

最近は、その不安が怒りに変化し、
ちょっとしたことでイライラしている人が増えたように思います。

昨日もあるお店で「マスクはいつになったら買えるの?(怒)」と
店員にしつこく聞いている方がいました。

また、医療関係者に対して酷いことを言う人もいると聞きます。

でも、忘れちゃいけないのは、
店員さんも医療関係者も皆、コロナにかかるかもしれないのです。
地球上の全員が同じ状況なのです。

以前ラジオで紹介した
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の本の中で、
著者の中学生の息子君が
「人間は人をいじめるのが好きなのではなくて、罰するのが好きなんだ」
と言っていましたが、コロナに関する嫌なニュースを見聞きするたびに
この言葉を思い出します。

安さんによると、阪神大震災の時にも同じようなことがあったそうです。

懸命に仕事をする消防隊員に対して被災者から
「消防はなにやってるんや」と罵声があびせられたそうなのです。

災害の規模が大きすぎて全てに対応できない中で
やれることを必死にやっているのに理解されない…
そのことに無力感を感じたり、傷ついたりしていたのだそうです。

また、医療関係者も同じように傷ついていました。

そんな中、安先生は、医療関係者のための心のケアも取り組み始めました。

みんなそれぞれの仕事に誇りを持って取り組んでいても私たちと同じ人間です。
酷いことを言われれば傷つくのです。

震災時だけではなく、今も同じです。
ただでさえ、コロナで不安な気持ちになっているのに、
最近は、別の意味での嫌悪感が加わっています。

今、心がお疲れ気味…という方もいるかもしれませんが、
安先生によると、こういう時は「人との結びつき」が大事なのだとか。
直接人に会うことはできなくても、今の時代、様々な方法で繋がれますよね。
あなたも心許せる人と、交流してみてはいかがでしょう?

この本では、人が心の傷を負うとどういった症状が出るのかや
どのように治っていくのかが、わかりやすい文章で書かれれています。

安先生の文章は、誰に対しても優しく寄り添っており、
私は読みながら何度も涙しました。
読むことで私自身の心も癒されていくのがわかりました。

ドラマをご覧の方はご存じのことと思いますが、
安先生は、2000年12月にがんのため、39歳の若さで亡くなりました。

でも、本を開けば、いつでも安先生に会えます。
こんな時だからこそ、被災地の心のケアのパイオニアである安先生の言葉に
耳を傾けて優しい気持ちで過ごしてみませんか?

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<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

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「本屋大賞2020」特設コーナー
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今年の本屋大賞受賞作、凪良優さんの「流浪の月」をはじめ、
ノミネート作品や翻訳部門の受賞作品を集めた
「本屋大賞2020」特設コーナーを
中央Aカウンター前の文学コーナー特設台で展開中です。
期間は5月末までです。
読み応えのある作品が勢ぞろいしています。
この機会にぜひお読みください。

※来週の「ユキコレ」では、大賞受賞作をご紹介します!

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そのエッセンスをギュッとつめ込んだ
クロワッサンのムックシリーズを集めたフェアが
中央イベントスペースで4月下旬から行われます。

次の日からご家庭で使える情報いっぱいのフェアです。
どうぞお楽しみください。

※4月18日(土)から予定されていた
「伝統工芸・手摺木版画 浮世絵」フェアは、延期となりました。

<紀伊国屋書店富山店>

住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号:   076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00

HP:   http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/

yukikotajima 11:43 am