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29『キャタピラー』

2010年8月24日

先日、現在、富山市のフォルツァ総曲輪で上映中の映画
『キャタピラー』を見てきました。

主演の寺島しのぶさんが、
第60回ベルリン国際映画祭で
「最優秀女優賞」を受賞したことでも話題になった映画です。

寺島しのぶさんは、戦争で四肢を失った軍人の妻を演じています。

四肢を失い、顔面はただれ、耳も聞こえず、喋れない。
多くの勲章や自分を讃える新聞記事を誇りに、欲求のままに生きる夫。
そんな夫に尽くす妻。
しかし、妻の心には、別の感情も芽生え始め…。

若松孝二監督は、
「正義の為の戦争などはない。戦争は人殺しである」
という強いメッセージを込めて、映画を作ったそうです。

でも、映画には、戦いのシーンなどは出てきません。

監督は、静かな田園風景の中で暮らす1組の夫婦を通して、
「戦争」というものを描きました。

戦後生まれの人たちは、
戦争は良くないということは、
言われなくても、頭ではわかっていると思うの。

でも、本当にわかっているのか、と聞かれたら、
ちゃんと、答えられますか?

この映画は「戦争はよくない」ということを、
頭で気付かせるのではなく、心で感じさせます。

戦争は、地球上のあらゆるものを傷つけました。
建物も、自然も、人々の体も。
そして、何よりも、人々の「心」を。

そんな、心が傷ついた人々の生きる世界は、狂気に満ちています。

映画の舞台は、静かな田園地帯。
普通の生活がすぐそばにあるからこそ、その狂気が際立ち、
戦争が、遠い世界、遠い過去のものとは思えなくなります。

そして、見ている人の心を黒く染めていきます。

そんな胸の苦しみを感じながら、映画本編が終わり、
このまま、しばらく重い気持ちを引きずりそうだ…と思ったのもつかの間、
エンドロールで流れる、
元はじめさんの「死んだ女の子」の曲。

ずしんときました。
もう、落ちることは無いと言うくらいに。

「戦争」について、もっと考えなきゃ、と
「思う」ことは、誰でもできると思うの。

でも、どうやって、考えるのか?

自ら、過去の資料を読んだり、映像をみたり、
戦時中を知る人たちの話を聞いたり、色々な方法はあると思います。

もちろん、そういったことも大切ですが、
上映中の今は、とりあえず、この映画を見て欲しい。

2時間にも満たない作品ですが、
心に訴えかけるには十分な時間です。

富山では、フォルツァ総曲輪で、9月3日(金)まで上映されています。

私が見に行った時には、割と年齢層が高めで、
どちらかといえば、30代の私が一番若いくらいでしたが、
是非、もっと若い皆さんにも見ていただきたいな。

yukikotajima 7:58 pm