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『オルタネート』

2021年3月10日

最近、独身の年下の友人と話をする度に「マッチングアプリ」の話題になります。

あなたは使ったことあります?

私は使ったことはないのですが、
もう今の時代、出逢いのツールとして確立しているようですね。
しかも都会だけでなく、富山のような地方でも。

さて、今日ご紹介する本は、そんなマッチングアプリがベースの物語です。

NEWSの加藤シゲアキさんの『オルタネート(新潮社)』です。

この作品は、先日、「第42回吉川英治文学新人賞」を受賞し話題になっています。

この新人賞は、過去には、宮部みゆきさんや池井戸潤さんなど
人気作家の皆さんが受賞されています。
アイドルが受賞したのは初めてのことだそうです。

加藤シゲアキさんは、1987年生まれの33歳で、
青山学院大学法学部を卒業されています。
アイドルグループNEWS のメンバーとして活動しながら、
2012年に『ピンクとグレー』で作家デビュー。この作品は映画化もされました。

『オルタネート』は、加藤さんの3年ぶりの長編小説です。
タイトルの「オルタネート」は、高校生限定のマッチングアプリの名前で、
東京のとある高校を舞台に、3人の若者たちの物語が描かれています。

まず一人目は、調理部の部長をつとめる「いるる」。
彼女は、高校生の料理コンテストで全国優勝することを目指しています。
アプリはしていません。

二人目は、オルタネートで運命の相手を見つけようとのめりこむ「なづ」。
彼女は、オルタネートのマッチング結果を信じて疑いません。

そして、高校を中退したことでオルタネートの権利を失った「なおし」。
彼は、かつてのバンド仲間を探しに大阪から東京にやってきます。

そんな3人の物語が同時進行で交互に描かれていきます。

マッチングアプリが軸になっているお話というと、
そこで、くっついたり離れたりと
アプリに振り回される物語を想像してしまいそうですが、
そうではありません。

そもそも「いるる」はアプリは絶対にしたくないと思っているし、
「なおし」はやりたくても高校を中退したためできません。
ただ、三人の中で唯一はまっている「なづ」だけは、アプリの力を信じて疑いませんが。

この3人には、それぞれ悩みがあります。
コンプレックスに苦しんでいたり、
自分の思いが大切な友人に届かなかったり、
家族との関係がうまくいかなかったり。

そんな10代ならでは葛藤や苦悩がこの本には詰まっています。
でも決して暗く重たいわけではなく、
全体を通してみると、透明感に満ちていて、まぶしさを感じました。
悩んだり苦しんだりしながら成長していく彼らの輝きがまぶしいのです。

ちなみに、このメインの3人は物語の中ではそれほど繋がりはありません。
でも、終盤気持ちよく絡み合っていきます。

果たして3人はどんなことに悩み、
その問題とどのように向き合っていくのでしょうか。
ぜひ大人の皆さんは、10代だったころの自分と重ねながら読んでみてください。

料理コンテスト本番の緊張感や
マッチング相手に初めて会う時のドキドキした気持ち、
そして、人の心が動く瞬間のなんとも言えない高揚感をぜひ味わってみてください。

私は若者ならではの大胆な行動や、感情のまま突っ走る勢いに懐かしさを感じました。
そして、ちょっと羨ましくもありました。
ああ、私はなんて聞き分けのいい大人になってしまったものかと。
と同時に私も自分の気持ちにわがままでいよう!とも思いました。

10代はもちろん、大人の皆さんにも読んでいただきたい一冊です。

この作品もデビュー作『ピンクとグレー』のように映像化されるように思います。
できれば映画ではなく、ドラマで丁寧に描いていってほしいな。

yukikotajima 11:51 am