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モダン/原田マハ

2015年6月10日

今日ご紹介するのは、
『楽園のカンヴァス』をはじめとした
美術小説でおなじみの原田マハさんの新作です。

原田さんは、美術館のキュレーターもしていた美術のプロです。

これまでに
『楽園のカンヴァス』
『ジヴェルニーの食卓』
『太陽の棘』
といった美術小説を発表しています。

私は『楽園のカンヴァス』を読んで以来、原田さんのファンになりました。
ラジオでもこれまでたくさんの原田さんの作品をご紹介してまいりました。

でも、私は美術は詳しくありません。
どちらかというと苦手で、美術館に行ってもどう楽しんでいいのかわからず、
「順路」と書かれた案内に従って作品をただ目にするだけでした。
知識が無さ過ぎて逆に美術館に行くのが申し訳なかったほどです。

それこそ、知らない言語の本を目にしているのと一緒です。
全く理解ができないという点で。

でも、原田マハさんの作品を読んでからは、少し意識が変わりました。
絵は読書のようだなあと。
絵は見るというより、読む感覚に近いのかもなあと思いました。

その絵が描かれた理由は?
いつどんな時代に描かれたのか?
この絵の素晴らしい点は?

そういった絵に関する情報を知れば知るほど、
絵の輝きが増していくのが感じられました。

不思議なものです。
そこにある絵は、まったく変化していないのに。
見る側の気持ち次第で、見え方が変わってくるのですから。

原田さんの美術小説から、
美術館は退屈な場所ではなく、
心ときめく場所であることを教わりました。

***

今回の原田さんの新作も「美術館」が舞台となっています。

タイトルは『モダン』。

ニューヨークにあるモダン・アートの王国、
MoMA(ニューヨーク近代美術館)にまつわる
5つの物語が収録されています。

もちろんMoMAに展示されている絵画も登場します。

たとえば、
アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」、
ピカソの「アヴィニョンの娘たち」や「ゲルニカ」、
この本の表紙にも使われている「鏡の前の少女」、
マティスの「浴女と亀」、「マグノリアのある静物」
など。

これらの絵のタイトルを見ても、正直わからない…
なんか難しそうだなあと思った方もいらっしゃるかもしれませんが、
そんなことないですよー!

文章がわかりやすいので、美術に疎い私が読んでも楽しめました!

ちなみに、原田さんは、以前MoMAに勤務していたこともあるそうで、
ちょっとしたエピソードもとてもリアルです。
もしかしたら原田さんご自身の体験も混じっているのかもしれません。

私が原田さんの作品を好きな理由は、
美術に対する愛を感じることと、
美術の知識を上から目線で述べていないことです。

これくらい知っていて当然よね?という文章に出合ってしまうと、
その途端、読む気が失せてしまうのですが、
原田さんの文章には、そういった驕りがありません。

って、私こそ何様ですね・・・すみません!

何かを心から愛して、尊敬している人の言葉は、とても心地いいものです。

原田さんからは、美術に関するあふれんばかりの愛が感じられます。
だから読んでいて気持ちいいのだと思います。

また、美術小説は、読みながら絵を学べることも楽しいです。
今回は美術館の裏側をたくさんのぞけました。

この本を読んだ人はきっと誰もがこう思うはず。
ニューヨーク近代美術館に行ってみたいなあ、と。

私も今一番行ってみたい場所になっています。

いつか本当に行くことになったら、その前にもう一度この本を読んでみよう。

原田さんの美術小説を読むたびに、
小中学校の図工や美術の教科書を原田さんが書けば、
きっと美術に興味をもつお子さんが増えるんじゃないかしら、と思ってしまいます。

もし私が子供の頃に原田さんの小説に出合っていたら、
美術の道にすすんでいたかもなー。

yukikotajima 11:10 am