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恋しくて

2013年10月30日

「甘くて苦いもの」

といったら何を思い浮かべますか?

「チョコレート」

が頭に浮かんだ方が多いかな?

でも、チョコレートといっても様々な種類がありますよね。

たとえば、プレゼントで頂くような高級チョコレートをイメージしてみてください。

食べるのがもったいないくらい美しい形をした美味しそうなチョコレートが
立派な箱の中に一粒一粒行儀よく収まっている様子を。

一粒一粒形も違えば味も違います。

ねっとりとした甘さのキャラメルのようなチョコもあれば、
苦みが強めの大人味のチョコや
サクサク軽い食感のチョコ、
あるいは、お酒が入っているチョコもあるかもしれません。

まるでそんな様々なチョコレートをじっくり味わうかのような短編集を読みました。

・・・

その本とは、

『恋しくて〜TEN SELECTED LOVE STORIES〜』

です。

村上春樹さんが選んで訳した世界のラブストーリーが9編と
書下ろしの短編小説が1編の合わせて10編が収められた恋愛短編集です。

本の帯には、こうあります。

「甘くて苦い粒選りの10編」

と。

ストレートで素直なラブストーリーもあれば、
ひねりのきいた大人のラブストーリーもあります。

たとえば、最初のお話に出てくる男女の場合は、
彼は彼女のことが好きでたまらないのだけれど、
その気持ちを伝えられないし、
彼女も彼の気持ちには気付きません。
なぜなら彼女が見ているのが自分の夢だから。
さて二人の関係はどうなるのか?という物語です。

他にも同棲を始めたばかりの若い男女の物語や
貧乏な詩人と富豪の一人娘の物語などがあります。

最後には、村上春樹さんの書下ろしも。
タイトルは「恋するザムザ」。
こちらはカフカの「変身」をベースにしたものです。

また、どの作品も最後に、
村上春樹さんによる解説と
「恋愛甘苦度バロメーター」がついていて、
より深く物語の世界を味わえます。

甘みが強めなのか、それとも苦みが強めなのか。

まるで本物のチョコレートのようです。

そういえば、チョコレートを食べている時に感じる幸せな気持ちは、
恋をしている時と同じであると聞いたことがあります。

恋愛小説も同じかもしれませんね。

幸せな恋愛小説を読めば幸せな気持ちになりますものね。

もちろんその逆もあります。
苦い恋のお話だってラブストーリーです。
ハッピーなだけじゃつまらないものね。(笑)

色々あるのが恋愛なのだと思います。

だから恋愛はめんどくさい!
と思う方もいるかもしれません。

しかし、村上春樹さんはこのようにおっしゃっています。

「恋愛はできるうちにせっせとしておいた方がいい」

と。

恋をすることで意外な自分を知ってびっくりしたり、
恥ずかしくなったり落ち込んだりすることもあると思います。

でも、この本を読むと、
そんな自分を受け入れることができるようになるんじゃないかしら。

本の登場人物たちに対して、
「みんなわけわかんない!」と思いながらも、
実は自分と重なる部分を感じ、
こっそりほっとしている自分に気づくような感じがするかもしれません。

私は、ちょっと安心しました。(笑)

大切なチョコレートを一粒ずつじっくり味わうように、
1編ずつ丁寧に読んでいきたい1冊です。

秋の夜長に一日1編ずつ読み進めてみては?

あなたはどの物語が一番印象に残るかな?

私は、全ての作品がそれぞれ印象深かったけれど、
一番強く印象に残ったのは、

『L.デバードとアリエット〜愛の物語』

です。

ぐいぐい引き込まれていきました。

yukikotajima 9:02 am