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39『ペンギン・ハイウェイ』

2010年6月28日

今日は、小説『夜は短し歩けよ乙女』で注目された、
森見登美彦(もりみ・とみひこ)さんの新作『ペンギン・ハイウェイ』をご紹介します。
penginhighway.jpg

森見さんというと、京都を舞台にした大学生のお話、
という印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、
今回の主人公は、小学4年生の男の子で、舞台は郊外の街です。
今までのつながりは、ありません。
本の帯にはでかでかと「新境地」と書かれています。

主人公の「ぼく」は、たいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強をするので、
将来はきっとえらい人間になると思っている男の子です。

これだけ聞くと、なんて生意気な!と思いそうですが、
子どもらしいかわいい部分もあり、憎めない子です。

特にかわいいのが、彼はいつも頭を使って考えているため、
糖分が必要になるそうで、甘いものが大好きだったり、
すぐに眠くなってしまったりするのです。
夜中の世界を知りたいけれど、日中、頭を使いすぎているため、起きていられない、
という言い訳が、なんともかわいいでしょ?

そんな「ぼく」は、甘いものを食べた後、睡魔に勝てず、
歯を磨かずに寝てしまうため、よく歯医医院に行っています。

その歯科医院の「お姉さん」のことが、「ぼく」はお気に入りです。

ある日、街に突然、ペンギンの群れが現れます。
そして、お姉さんから「この謎を解いてごらん」と言われます。
どうやら、ペンギンとお姉さんは何かつながりがあるらしいと思った「ぼく」は、
「ペンギン・ハイウェイ研究」と名付け、調べ始める・・・というお話です。

実は、この「ぼく」は、研究好きで、このペンギン以外にも様々な研究や冒険をしています。

そのどれもが、狭い世界の小さな研究なのだけれど、
「ぼく」の目を通すと、すごく素敵なことに思えてきます。

もうすぐ夏休みですが、この本は、少年たちの夏休みの香りがプンプン漂っています。

小学4年生が主人公ですので、難しい言葉は用いていません。
そのため、お子さんたちも楽しんでいただけると思います。

大人の方が読むと、ものすごく甘酸っぱい気持ちになると思います。

大人になると、視野も行動範囲も広くなるけれど、
と同時に、忘れてしまったり、気付けなくなってしまったりするものもたくさんあるのですよね。

子どもたちにとっては、世の中にある全てが不思議で満ちているので
想像だけで世界が大きく広がっていきます。

子どもの知る世界は、確かに狭いかもしれませんが、
ある意味では、大人の方が狭いのかもしれないな、と、思いました。

あなたが忘れてしまった、もしくは、どこかに置いてきてしまった、
大切なことが、この本の中にあるかもしれませんよ♪

『ペンギン・ハイウェイ』で、もう一度、子どもの頃の夏休みを味わってみませんか?

yukikotajima 10:01 am