ゆきれぽ

2026年10月21日

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『春までのセンセイ』

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中学3年生の時、あなたはクラスでどんな生徒でしたか。また、どんなことが印象に残っているでしょうか。今日は、中学3年生のとあるクラスの一年が描かれた小説をご紹介します。

『春までのセンセイ』
早見和真(はやみ・かずまさ)
双葉社

早見さんというと、去年ドラマ化された『ザ・ロイヤルファミリー』や、実写映画化が決まった『店長がバカぎて』、本屋大賞にノミネートされた『アルプス席の母』など、数々の人気作品を生み出してきた人気作家です。私も早見さんの作品は好きで、ラジオでもよくご紹介しています。特に高校球児の母が視点の物語『アルプス席の母』は熱く紹介しましたので、覚えている方もいるのでは。

さて、最新作の舞台は、東京にある私立の女子中学校です。とあるクラスの中学最後の一年が描かれるのですが、物語は3年生になった初日からはじまります。そのクラスの担任は、加賀美先生という、国語の40代半ばの男性教師でした。熱血という雰囲気でもなく、どこか冴えない感じの先生なのですが、先生の話す内容は心に響くのです。学校の先生の話なんか興味なんか無いと思っているような生徒でも、思わず聞いてしまうようなところがあります。

私もそんなひとりで、初日の最初の挨拶を聞いた瞬間、先生に興味を持ちました。だって、挨拶の最後に「どうか毎日を気持ち良く生きてください」なんて言うのですよ。「気持ち良く生きる」という表現って、ありそうで無かったなと。そして、とてもいい言葉なと思いました。あなたはどうですか。毎日を気持ち良く生きていますか。

先生は他にも、周囲の空気に流されず「自分の頭で考える」ことを繰り返し伝えます。この言葉にもドキリとしました。自分の考えは、本当に自分の頭で考えたことなのかと。気付いた時には、私も生徒のひとりの気分で、先生の発する言葉を楽しみにしていました。でも、夏休みの直前、先生は病気で学校を辞めるという噂が流れ、クラスの雰囲気が一変します。

ところで、この物語に主役はいません。脇役もいません。どういうことかと言うと、物語はクラス全員の視点で描かれているのです。生徒の数は32人です。視点が入れ替わっていく物語はよくありますが、これほど入れ替わる物語も無いため、これまでにない読書体験を味わえました。また、全員中学3年生の女子とは言え、32人もいますから、やはり自分と似た生徒もいるもので、私もこの子は今の自分とよく似ているけど、この子は中3の時の私に近いかも、などと自分と重ねながら読んでいきました。ちなみに、今の私が一番共感したのは、目立つ華やかなタイプの生徒たちではなく、自らを脇役だと言い切る、縁の下の力持ち、翠月(みづき)です。

さて、視点は次々に変わっていきますが、物語は4月から翌年の3月までが順に描かれます。ですから、ちゃんと物語は進んでいきます。ただ、同じ出来事でも人によって見え方も感じ方も異なるわけで、視点が変わると、物事や人の印象も変わるのが興味深く、とても面白かったです。また、誰のことも取り残さないことに感動しました。

生徒たちは果たしてどんな一年を過ごすことになるのでしょう。ぜひあなたも中学3年生になったばかりの気分で教室に足を踏み入れ、彼女たちと共に一年を過ごしてみてください。私は中学は共学でしたが、高校が女子校だったので、女子校ならではの空気感も懐かしかったです。

大人の皆さんはもちろん、現役の中高生の皆さんにもおすすめです。どうかこの本の存在が彼らに届きますように。とどけ~!

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