ゆきれぽ

2025年10月15日

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『マザーアウトロウ』

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先週のヨリミチトソラでもお知らせしましたが、ヨリミチトソラの本紹介コーナー「ゆきれぽ」富山テレビの「ライブBBT」に取材されました。今年ラジオでご紹介した本の中から、この秋オススメの本を3冊ご紹介しています。放送は、今日10月15日(水)の18時30分頃と、ラジオのゆきれぽの放送と同じ時間ですが、ぜひテレビもご覧ください。(笑)

さて、その取材時にアナウンサーの深津さんからまず聞かれたのが「普段本を読まない人にオススメの本は?」でした。確かにこの質問はよくされます。

先週ラジオで紹介した短編集『チョコレート・ピース』もそんな方でも読みやすい作品ですよ。

◎『チョコレート・ピース』の私のブログは コチラ

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そして今日も読書習慣の無い方でも読みやすい本をご紹介します。約100分で一冊読める中編小説です。

『マザーアウトロウ』
金原(かねはら)ひとみ
U-NEXTオリジナル書籍
ハンドレッドミニッツノヴェラ

ハンドレッドミニッツノヴェラは、約100分で読める中編小説を刊行しているU-NEXTの小説レーベルで、例えば、富山出身の作家、山内マリコさんの小説『逃亡するガール』も同じレーベルから出ています。

『逃亡するガール』は、山内さんが初めて地元富山を舞台に書いた青春小説です。ちょうどこの本が出た一年前に富山で山内さんのトークショーがおこなわれたのですが、その際、私が司会をしました。その時のレポートが出版社のサイト内で読めますので、小説とあわせてお読みください。

◎トークショーの記事は コチラ

私は『逃亡ガール』を機にこのシリーズのことを知ったのですが、金原さんの新刊が面白そうだったので読んでみることにしました。

金原ひとみさんと言えば、2003年に『蛇にピアス』で「すばる文学賞」を受賞しデビューし、翌年、同作で「芥川賞」を受賞しました。当時20歳での受賞ということで、かなり話題になりましたよね。

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今回の作品のタイトルは『マザーアウトロウ』です。本の帯を見ると「嫁姑ドラマ」とあります。嫁姑と聞くと、姑にいびられる嫁の話なのかしら?と思う方もいるかもしれませんが、違います。本の帯には続きが書かれています。「嫁姑ドラマを神アプデ」と。

主人公は40歳の女性、波那(はな)です。物語は彼女が結婚相手の母親に会うところから始まります。どんな人だろうとドキドキしいた彼女の前に現れた義母は、なんと上下金色のスーツを着たぽっちゃり体型の女性でした。なぜ金色?とびっくりしたものの、2人はすぐに意気投合します。そして義母から「マブになろう」と言われ、義母との付き合いが始まります。

しかし、この義母は仕事の昼休憩にいきなり会社にやって来て美容整形に誘ったり、急に韓国へ行こうと言い出すなど、かなり強引です。

この時点で、こんな義母ムリ!と思う方もいるかもしれませんが、波那は義母に振り回されながらも結構楽しんでいます。そして、2人は誰にも話せなかった本音を打ち明けるようになっていきます。結婚式の有無や、出産、改名、年齢など、さまざまなことを語り合います。

一見、強引で自分勝手な義母ですが、そんな義母の一言にハッとさせられたりもするもので、私も義母と友達になりたい!と思いました。何より自分の知らない世界を教えてくれそうで楽しそうだし。

と同時に、あることに気付かされました。この義母ほどでは無いけど、私も似たような年上の女性たちのおかげで、世界が広がっていったことに。それに人生を楽しんでいる人生の先輩たちを見ると、歳を重ねるのも悪くないなと思います。この本を読んで、そんなことにもあらためて気付かされました。

ちなみに波那の結婚相手は義母とはまるで正反対です。冒険はせず、目立たず、平凡でいたいタイプです。だから、母に振り回される妻のことが心配でたまりません。でも、そんな彼の存在が物語にメリハリを生んでいます。

『マザーアウトロウ』、とても面白かったです!たくさん笑いました。本当にあっという間に読めます。でも内容は決して浅くはありません。これまでの嫁姑ドラマを間違いなくアップデートできる一冊です。女性はもちろん、男性の方もぜひぜひお読みください。

ところで、この本を読んだら、久しぶりに韓国に行きたくなりました。だって美味しそうな韓国料理が次々に出てくるのですもの。私も韓国弾丸ツアーに行きたいー!

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