ゆきれぽ

2025年3月12日

  • #本

『spring』

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最近、何か見に行った?と聞かれたら、まず私の頭に浮かぶのは「バレエ」です。
実際は見に行っていません。でも私は見たのです。それもいくつもの作品を。

今日ご紹介するのは、バレエ小説です。

『spring』
恩田陸
筑摩書房

恩田さんと言うと、2017年に『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をW受賞されました。
『蜜蜂と遠雷』はピアノ・コンクールが舞台の物語で、映画化もされました。
私も大好きな作品で、当時ラジオでもご紹介しています。

◎田島の本の感想は コチラ

そして、『spring』も来月発表となる本屋大賞にノミネートされています。

◎本屋大賞のサイトは コチラ

今回はノミネート作の中から未読のものを読んでみようと思い、この本を選んだのですが、
『spring』にして良かったです。
面白くて夢中でページをめくり続けました。

私はバレエに詳しくはないのですが、
そんな私でもダンサーたちが踊る様子が見えました。
『蜜蜂と遠雷』同様、今回も圧倒的な熱量と豊かな表現力で、
本を読んでいることを忘れるくらい作品の世界が鮮明に見えました。


『spring』は、バレエダンサーで振付師としても活躍する、
春(はる)という一人の天才少年をめぐる物語です。

物語は4つの章に分かれ、4人の人物が春のことを語ります。

まずは、春と同じく天才ダンサーの少年、
次は春に様々なカルチャーを教えた叔父、
3章はダンサーで、のちに作曲家になる女性、
そして、最後は春自身の視点で語られます。

章が進むにつれて、春がどんな人なのかがわかっていくのですが、
あくまでも周りの人から見た印象なので、
春自身が本当は何を考えているかまではわかりません。

でも、春は天才で、他の人とは何か違うものを見ているらしいことは共通しています。
そして、みんな春のことが大好きです。
気付けば読者である私も春を好きになっています。
だから気になるのです。彼が何を考えているのか。
そして、最後の4章で待ちに待った春の言葉を聞くことができます。

4章を読んで私がどう感じたかは、ネタバレになりそうなのであえて言わないことにしますが、
この4章を読んで、私はもう一度最初から読みたくなりました。

今回も本当に面白かったです!

また、物語の面白さはもちろん、素晴らしい文章にも感動しました。
だって文字だけで目の前にバレエが見えてくるのですよ!
この驚き、感動を皆さんにも味わってほしいわー。

それから、この本には遊び心あふれるオマケもついてます。
ページをめくるとダンサーが踊りだす「パラパラ漫画」が描かれているのです。
面白くて私は何度も遊んでしまいました。

また、この物語は登場人物たちが魅力的なのですか、
なんと彼らの過去や未来を描いたスピンオフが
筑摩書房のウェブマガジン「webちくま」で現在連載中です。
このスピンオフも面白いので、あわせて読んでみてください。

◎スピンオフは コチラ

さらに、作品の中に出てくるバレエ・プログラムの音楽をコンパイルした
サウンドトラックもリリースされているそうです。
知らなかった!これを聴きながら再び読みたいなー。

◎サウンドトラック情報は コチラ

『spring』も『蜜蜂と遠雷』のように映画化されそうな予感。そしたら見てみたい。
でもその前にまずは生のバレエを見に行きたい。

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