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『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』

2023年9月20日

今日は、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でおなじみの
ブレイディみかこさんの小説をご紹介します。

『ぼくイエ』は、イギリスに住むブレイディさんの
当時中学生の息子さんについて書かれた本で、
いじめ、喧嘩、差別のある中学に入学した息子さんが、
それぞれの問題について真剣に向き合い
お母さんと一緒に何が正しいのか悩み、考えていくというノンフィクションです。

私ももちろん読んでいます。
そして、この本をきっかけにブレイディさんのファンになり、
これまでも様々な本を読みました。

ブレイディさんの本は、ただ受け身で文字を追っていくだけではなく、
自分の頭で考えながら読んでいくスタイルなので、毎回たくさんの刺激を受けます。
ひとことで言うなら、読んだ人ををアップデートさせてくれる感じです。
今回の本も読んだらきっとアップデートできるはず!

『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』
ブレイディみかこ
筑摩書房

今回は、ノンフィクションではなく、
2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件がモデルの小説です。

この事件は、ロンドン・オリンピックの2年後、
町の再開発のためにホームレス・シェルターを追い出されたシングルマザーたちが、
空き家のまま放置されていた公営住宅を占拠して、
自分たちでシェルターを作って生活を始めたというものです。

再開発でお洒落で小ぎれいな町に生まれ変わるのはいいことのように思いますが、
住宅の価格や家賃が高騰することで、もともと住んでいた人たちが
住めなくなってしまうという問題も起きてしまいます。

この「都市の高級化」を「ジェントリフィケーション」と言うのですが、
シングルマザーたちは、この問題に向き合っていくことになります。

主人公は、10代で子どもを産んでホームレスになり、
シェルターに住むようになった二十歳の母親ジェイドです。
理不尽な理由で住宅の退去を迫られた彼女は、
このままでは住む場所が無くなってしまう!と
仲間のシングルマザーたちと一緒に立ち上がります。

「あたしたちが求めているのは少しばかりのリスペクトなのです」と。

理不尽なことに対して、あきらめたり人のせいにしたりするのは簡単です。
でも、それでは状況は変わりません。
ジェイドたちシングルマザーは、誰も頼れないのなら、
自分たち自身でやってやる!と行動をおこします。

もちろん、応援してくれる人ばかりではないし、酷い仕打ちにあうことだってあります。

それでも分かってくれる人もいるのです。
例えば、ゴシック・パンク風の初老の女性は、見た目は怖いけど、
彼女たちをがっちり支える、頼れる存在ですし。

また、公営住宅を占拠したなんていうと過激なイメージがありますが、
彼女たちの運動は人々の心を動かし、
占拠地では様々な助け合いがうまれるほどに平和的だったのです。

彼女たちがどのように運動をおこし、人々の心をどうつかんでいったのかは、
ぜひこの本を読んでお確かめください。

ところで、真面目過ぎる私は、ジェイドたちの運動はすごいと思うのだけど、
実際は不法占拠なわけで、大丈夫なのかな…と思いながら読んでいたのですが、
この物語には、同じように感じている日本人女性も出てきます。
シナコというロンドン在住の新聞記者です。

このシナコの視点が入ることで、どこか遠い場所の話ではないと気付かされ、
物語の世界がぐっと近づきます。

そして、このシナコもジェイドたちと関わりを持つことで、
自分自身の考えが変わっていきます。
この変化はまさに私自身の変化のようでもありました。

あなたはこの本を読むことで、どんなことを感じるでしょうか。
ぜひジェイドたちシングルマザーたちの言葉に耳を傾けてみてください。

今回も読んで良かったです。
やはりブレイディさんの本は好きだわ!

そうそう、音楽好きなブレイディさんの作品には様々な音楽が出てくるのですが、
今回もたくさんの曲が出てきまして、せっかくなら聞きながら読みたいなあと思ったら、
なんとSpotifyに小説に登場する曲のプレイリストがありました。
ぜひ本を読みながら音楽も聞いてみてくださいね♪
より作品世界に没入できますよー。

yukikotajima 11:21 am