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雨と詩人と落花と

2018年4月11日

昨日、本屋大賞が発表されました。

今年の大賞は、辻村深月さんの『かがみの孤城(ポプラ社)』でした。

2月にラジオでご紹介した作品です。

私の感想は コチラ

新年度になって10日が経ちましたが、
まだ新しいクラスに馴染めずにいる
学生さんもいらっしゃるかもしれません。

この本の主人公の「こころ」ちゃんも
入ったばかりの中学校で嫌なことがあり、
学校に通えなくなってしまいます。

もし今、新しい場所で孤独感や居心地の悪さを感じている方がいれば、
この本の世界をのぞいてみてはいかがでしょう?

本を読み終えた後は、孤独感は消えて前向きな気持ちになっているはずです!

本屋大賞受賞作は映像化されることが多いのですが、
著者の辻村さんは「もし映像化されるならアニメ化されたらいいな」
とおっしゃっていました。

これは間違いなくアニメ化されそうだな。

『かがみの孤城』は、去年5月の発売以来
すでに話題になっていた作品ですが、
本屋大賞を受賞したことで、ますますヒットしそうですね。

本屋大賞の今年の結果は コチラ

ちなみに、受賞作の中では、こちらも以前ラジオでご紹介した
本屋大賞6位の塩田武士さんの『騙し絵の牙』も面白かったですよー。

私の感想は コチラ

俳優の大泉洋さんを「あてがき」したもので、
言葉選びもテンポも心地よくて、個人的に好きなタイプの作品です。
よかったらこちらも読んでみてください♪

***

さて、今日ご紹介する本は、本屋大賞ではなく、
以前、映画化もされた「蜩ノ記(ひぐらしのき)」
で直木賞を受賞された葉室麟さんの新作です。

え?新作ってどういうこと?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は葉室さんは去年の12月にお亡くなりになりました。

今日ご紹介するのは、先月、徳間書店から発売された
葉室麟さんの『雨と詩人と落花と』です。

ちなみに、『玄鳥(げんちょう)去りて』に続く2冊目の遺作で、
逝去後、5冊を刊行予定だそうです。

『雨と詩人と落花と』は、大塩平八郎の乱が起きた頃の江戸末期の物語です。

主人公は、九州の豊後肥田(ぶんごひた)にある
私塾「咸宜園(かんぎえん)」の塾主であり、孤高の漢詩人、
広瀬旭荘(ひろせ・きょくそう)です。

咸宜園を開いたのは、25歳年上の兄の淡窓(たんそう)。
穏やかで人間として大変立派な兄に対し、
弟は感情の起伏が激しく憤りを抑えられない性格で、
一人目の妻に出て行かれてしまったほどです。

その後、二人目の妻になったのが「松子」です。
この松子がとても優しい女性なのです。

すぐに苛立ち、ときどき暴力をふるう夫に対し、
本当は心優しい人であることを理解し、支え続けます。
というのも詩人である彼の詩がとても優しいことを知っているから。

暴力をふるわれそうになると、彼女は逃げます。
自分が傷つくのを恐れるというよりも
冷静になった夫が怪我をした妻を見て苦しむ様子を見るのが嫌だから、
という理由で。

なんて優しいのよ、松子さん!

ところが…
松子はある日、病魔に倒れてしまうのです。
症状が悪化していく中、旭荘は薬代を稼ぐことくらいしかできません。
それ以外に何か自分にできることはないのか、彼は苦しみます。

そんなある日、旭荘が尊敬している年上の女性が家を訪れ、
妻にあることをするよう、彼にアドバイスします。

どんなアドバイスをされたのかについては、
ぜひ本を読んでご確認ください。

一見、怒りっぽい性格に見えてしまう旭荘ですが、
妻が病気になってからの彼は、怒るどころか泣いてばかりの日々です。
妻にあきれられてしまうほどに。

ちなみに、私も本を読みながら旭荘と同じように涙をポロポロこぼしていました。

松子が病気になったことで、旭荘は大切なことに気付かされます。
彼は何に気付いたのでしょうか。
是非、本のページをめくってみてください。

直木賞を受賞した『蜩ノ記』も優しさに満ちた作品でしたが、
『雨と詩人と落花と』も葉室さんらしい優しさと愛が詰まっていました。

そうそう!
この作品の本の題字は、書家の葉室涼子さん。
葉室さんの娘さんです。
初めてで最後の親子共演だそうです。

ぜひ表紙にも注目してお読みください。

yukikotajima 11:56 am

騙し絵の牙

2017年9月27日

小説は漫画や映像のように絵や写真が無いので、
小説を読む時は、登場人物の容姿を読者一人一人が勝手に想像して
物語のイメージを広げていきますよね?

ですから、実際に映像化されたときに、
自分のイメージ通りのこともあれば、
イメージと異なり、うーん、なんか違う…とがっかりすることもあります。

でも、この本に関しては、主人公の顔や声は全員が同じ人を想像するはずです。

その本とは、

『騙し絵の牙/塩田武士(株式会社KADOKAWA)』

です。

本の表紙は、スーツを着て後ろを振り返る大泉洋さんの写真です。

そう。この小説の主人公は、俳優の大泉洋さんを「あてがき」したものなのです。

また、ページをめくっていきますと、
ストーリーにあった大泉さんの写真が何枚も出てきますので、
小説を読みながら、まるでドラマや映画を見ている錯覚に陥ります。

といっても大泉さん以外の人物は読者一人一人のイメージになりますが。

大泉さんが演じているのは、大手出版社で雑誌編集長を務める速水(はやみ)です。
いや、演じていないな、実際には。
でも、私の脳内では演じているのです。(笑)

この速水は、誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男性です。

とにかく明るく面白い。そして、かしこい。
おじさんたちの嫌味な発言にもユーモアを交えて返したり、
空気の悪くなった会議も一瞬で笑いのある空間に変えたりと
彼がいるだけで、ほとんどの物事が穏やかに解決していきます。

例えば、ある大物作家さんに文章を依頼したものの、出来が悪かったとします。

オブラートに包まずに言えば
「これではだめです。書き直してください」となるところを、
速水は、
「初稿も面白かったけど、これ以外の設定も読んでみたい。
 先生のように打てば響く方ですと、私も欲張ってしまうのです」
と言うのです。
もし私がこの作家だったら、嫌な気持ちはしません。
それどころか、そうか、では別の設定でも書いてみようかな、
と逆にやる気が湧いてきます。

こんな上司がいたら、私は間違いなくついていきます。
また、人としてはもちろん、男性としても好きになってしまいそうです。(笑)

でも、仕事ができるからと言っても
何もかもがスムーズに進んでいくわけではありません。

ある日、上司から自身の雑誌の廃刊を匂わされてしまいます。
そして、速水は組織に翻弄されていくことになります。。。

果たして、速水が編集長をつとめる雑誌はどうなってしまうのしょうか?

***

小説『騙し絵の牙』、大変面白かったです!

大泉洋さんの顔だけでなく
著者の塩田さんの文章が映像的なので、
物語が鮮やかに頭に浮かんできて
物語を読みながらも映像作品を見ている気分でした。

ちなみに、塩田さんは、もと新聞記者なのだとか。
この小説にも徹底的に調べつくしているからこそのリアルな空気感がありました。

また、会話の内容やテンポもウイットに富んでいて
読んでいて何度もニヤリとしてしまいました。
ああ、なんて頭のいい人たちの会話なの!
と読みながらストレス発散になったほどです。(笑)

さらに、出版業界の裏側が包み隠さず描かれているのも面白かったです。
実際、廃刊に追い込まれている雑誌も多いそうです。残念ながら。
でも、私は今でも雑誌も小説も買っていますし、
本屋さんという場所も好きです。
ですから、これからもずっと出版業界には頑張っていただきたいと心から思います。

ネットの普及で誰でも簡単に情報を発信したり
無料で情報を得たりすることができる世の中ですが、
だからこそ、私は、よりプロの作品を選ぶようになりました。

読み物に関しては圧倒的にプロのほうが面白いですしね。

同じものを見ていても同じことを感じても
プロが表現するのと素人が表現するのでは全然違いますし。

自分の言いたいことをぴたりとくる言葉を選んで表現する。
その表現力の豊かさは、やはりプロにはかないません。

でも、これ、すべての業界に言えますよね?

趣味とプロの違いや、プロのプライドなど
そういったことも頭に浮かび、
私も「プロ」の仕事をしていきたいと思いました。

ほんっと面白い本だった!

yukikotajima 11:44 am