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一度だけ

2018年11月14日

よく「どうやって本を選んでいるの?」と聞かれます。
雑誌や新聞の書評を参考にすることもありますが、
本屋さんをぶらぶら歩きながら見つけることが多いです。

本の作者はもちろん、タイトルや装丁、帯を見ながら
心惹かれたものを手に取っていきます。

今日ご紹介する本も本屋さんで見つけました。

私の好きな作家のお一人、益田ミリさんの新作です。

益田さんと言いますと、
『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』として映画化された
「すーちゃん」シリーズが人気です。

こちらは、すーちゃんの日常が描かれた四コマ漫画です。
素朴なタッチの絵で文字数もそれほど多くないのですが、
すーちゃんの本音が心に刺さるのです。
共感したり笑ったり時には涙がこぼれたり。

益田ミリさんは、この「すーちゃん」シリーズ以外にも
四コマ漫画やエッセイ、小説など様々な作品を発表されています。

今日の本は、そんな益田ミリさんの9年ぶり、2作目の長編小説
『一度だけ(幻冬舎)』です。

益田ミリさんの作品は、静かな日常が丁寧に描かれることが多いのですが、
この本の帯には「一年に一度でいい。熱く、熱い、夜が欲しい」とあり、
え?もしや大人な恋愛話?と思って手に取ってみました。

簡単にどんな話なのかご紹介しましょう。

主人公は、アラフォー姉妹の二人です。

姉の弥生は、夫の浮気が原因で離婚し、今は介護ヘルパーの仕事をしています。
一方の妹のひな子は、派遣社員で彼氏は長いこといません。

そんな二人は、姉の家で二人で暮らしています。

ある日、ひな子は母の妹である叔母の清子(きよこ)に誘われ、ブラジル旅行に出かけます。

清子は、夫が遺した財産で自由きままに暮らしていました。
旅行代金は、ビジネスクラス利用の一人180万円!
なんとこの金額を清子が全て出してくれたのでした。

オシャレをし、美味しいものを食べ、夫亡きあとも人生を謳歌している叔母に対し、
ひな子は、派遣社員としての契約が切れ、彼氏もいない36歳です。

一方、日本に残された姉の弥生は、なぜ旅行に誘ったのが、自分ではなく妹なんだろう、
と不満を感じつつも、ひな子が旅行で不在の間、
「毎日新しいことをするルール」を自分に課していきます。

そして、もう一人、彼女たちの母親も登場します。
この母親は、ブラジル旅行の代金と同じ180万円であることを計画します。

『一度だけ』は、そんな女性たちの物語です。

***

同じ女性と言っても、それぞれ置かれた状況は違います。
欲しいものも違います。

彼氏のいない妹は、とりとめのない気持ちを
わかりあえる恋人が欲しいと思うけれど、
現実的には、好きな人さえいません。

離婚をして仕事だけの日々を送る姉は、
雑誌にあった旅の特集や美人メイク術を
いつか自分の人生に取り入れたいと思うものの、
その「いつか」は私には永遠に来ないのかもしれない…と諦めモードです。

そんな二人に明るい話題が舞い込んでくるのですが、
果たして二人の人生はどう変わっていくのでしょうか。

この続きは、是非本のページをめくってみてください。

***

この二人は、今の人生に満足はしていません。
でも、妹はブラジルに旅に行ったことで、
姉は妹の旅行中、毎日新しいことをすることで、
これまでの日常に変化が出ます。

いい変化もあれば、そうではないものもあります。
でも、何かいつもと違うことをするのは悪くないように思いました。

何か新しいことをするのって緊張感がともなうものですが、
その緊張感が日常を輝かせるのかもな。

あなたは、いい緊張感のある生活を送っていますか?

やはり益田ミリさんの作品、好きだ!
またエッセイや四コマ漫画も読んでみたくなりました。

yukikotajima 12:09 pm