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41 小説『悪人』

2010年7月12日

今日ご紹介する本は、吉田修一さんの小説『悪人』です。
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吉田修一さんというと『初恋温泉』を読んだことがあります。
温泉宿に泊まる5組のカップルのお話が書かれている短編集です。
人物の心の動きの描き方はもちろん、目に見えるような描写が多く、
本を読みながら、自分も一緒に温泉宿に泊まっているような気持ちになり、
読んだ後の満足度が高かったのを覚えています。

過去の私のブログに感想を載せていますので、もしよかったら読んでください。

http://www.fmtoyama.co.jp/blog/tajima/?p=275

そして、今回私が読んだ『悪人』も「恋愛」が大きな柱となっているのですが、
こちらは、「殺人」が絡んできます。

小説『悪人』を一言で言うなら、
一人の女性を殺害した男性が別の女性と共に逃避行に及ぶ、というお話です。
また、小説には、事件に関わる様々な人々が登場し、一人称が変わっていきます。
そして、それぞれの立場から事件をみつめています。

一部分だけを見れば、孤独な男女の愛の逃避行、それこそ、純愛劇のようでもあるのですが…
それだけでは終わらない「深さ」がこの本にはありました。
それは、本の分厚さにもあらわれています。
本のページは420ページ。3センチ以上ありました。(笑)
でも、私は、一気に読んでしまいました。
徐々に明らかになる真実が、小出しなんです。(笑)
で、その先はどうなのよ?と思っているうちに、1冊、読んでしまった感じです。

そして、本を読みながら、しばしば人間のこわさを実感しました。
そもそも、100%善人の人も100%悪人の人もいないわけで、
パーセンテージは違えど、誰にでもいい部分と悪い部分があります。

この本は、そのどちらかに偏ることなく、1人の人間を描いているところが、いいなと思いました。

だから、誰か1人の登場人物に肩入れすることは、私はありませんでした。
でも、複数の人間の中に、自分を見たようには思いますが。

さて、あなたは、誰に共感し、誰にいら立ちを覚えるのでしょうか?

気になる方は、是非、読んでみてください!
そうそう、『悪人』は、文庫化もされたようです。

そして、この作品は、映画化されます!
公開は、9月11日(土)。

殺人犯の男性を演じるのは、妻夫木聡さん。
その男性を愛してしまう女性を、深津絵里さんが演じています。

もちろん、私もまだ映画は見ていませんが、
日本を代表する10人の映画監督が映画化を熱望したほどの争奪戦になったのだとか。
そして、監督に決まったのは、『フラガール』の李相日(リ・サンイル)さん。

どのような映画になったのか、今すぐにでも見てみたい!

yukikotajima 11:24 am