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22〜24『船に乗れ!』

2010年4月26日

先日、今年の本屋大賞が発表され、
大賞には、冲方丁さんの『天地明察』が選ばれました。

以前、ゆきれぽでもご紹介しました。
私の感想はこちら↓
http://www.fmtoyama.co.jp/blog/tajima/?p=1210

本屋大賞にノミネートされた10作品のうち、半分の5冊は読みましたが、
まだ未読のものの中から1冊、選んで読んでみました。

今回読んだのは、藤谷治(ふじたに・おさむ)さんの『船に乗れ!』です。
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本屋大賞では、7位でした。
なんと三部作です。たっぷり3冊ありました。

主人公は、高校の音楽科でチェロを専攻する少年、津島サトル。
大人になった津島が、高校入学から卒業するまでを振り返りる、というスタイルで、
1冊につき、ほぼ一学年です。

公式サイトによれば、
この作品は、青春音楽(オーケストラ)小説三部作で、
1は爽快、2は怒涛、3は感涙とあります。

まず、1では、高校の音楽科に入学した主人公の津島の1年が描かれます。
音楽を愛する仲間たちと過ごした日々はもちろん、
ヴァイオリン専攻の南枝里子との淡い恋も描かれます。

読み終わった後は、とっても爽やかで、ザ・青春小説!といった感じです。

2は、前半は、恋する二人の距離が縮まっていく様と、
音楽にはまり、未来の自分を夢見て、切磋琢磨しあう仲間たちの様子が描かれます。
ところが、後半、あることをきっかけに、今までの爽やかさはどこへやら、
先の読めない展開が続いていきます。

そして、気になる3は、高校3年生になった登場人物たちと、
その後、大人になった今の彼らの様子が描かれています。

基本的には、大人になった(たぶん、30年後くらいなので48歳くらい?)
主人公の津島が、高校時代を振り返りながら、話が進んでいきます。

音楽科ということで、ストーリーのほとんどが音楽(クラシック)のお話です。
一度でもクラシックをやったことのある人なら、よりイメージがわきやすいと思いますが、
私のように、ま〜ったく未経験でも、楽しめると思います。
また、ところどころ、哲学のお話も出てきます。
しかも、哲学の授業がそのまま描かれているので、気分はまるで生徒そのものです。

3冊分じっくり読むと、それこそ、もう一度、高校生活を過ごしたような気分になります。

私もそうなのですが、大人になると、
高校時代など10代の頃のお話にあまり興味がわかない、という方もいらっしゃると思うのです。

私は、なんとも言えない甘酸っぱさ、いや、甘ったるさがダメで、
いつからか、自ら進んで、10代が主人公の小説を読むことをしなくなってしまったのですが、
この本は、大人になった主人公が、大人目線で高校時代を振り返るお話なので、
ただ、若いだけじゃない、どこか当時の自分を懐かしんでいる様が、共感しやすかったです。

また、ストーリーも、甘ったるさなんてものはありませんでした。
コロコロ変わっていく変化に、あやうくついていけなくなりそうでした。
そして、気付いたのです。
平凡なのは、10代よりも大人の方なのかもしれないと。
10代は変化に満ちています。だからこそ面白い。
よくもわるくも繊細でときに大胆な彼らの3年間をじっくり、読んでみてください。

もうすぐ、GWですね!
この本は、たぶん、先が気になってどんどん読みたくなってしまうと思うので、
たっぷりお休みが取れるGWにこそオススメです!
入学したての高校生にも読んでもらいたいし、大人の皆さんにも読んでもらいたいなあ。

それこそ、家族みんなで読めると思うので、
一家に1冊、あ、間違えた、一家に3冊いかがでしょうか。

yukikotajima 10:02 am