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『一汁一菜でよいと至るまで』

2022年7月27日

お子さんたちは夏休みが始まりましたね。
長い休みに喜ぶお子さんたちに対して、
親御さんたちの中には今日はどんな食事を作ろうかと
毎日の献立に頭を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方は、この本をお読みになってみては。

『一汁一菜でよいという提案』

こちらは、テレビ番組「きょうの料理」でおなじみの料理研究家、
土井善晴さんが書かれた本で、2016年に出版されベストセラーになりました。

以前、ラジオ&ブログでもご紹介しました。

◎私の紹介は コチラ

こちらの本は、去年文庫化されましたので、まだお読みでない方はぜひ!

「この本は、お料理を作るのがたいへんと感じている人に読んで欲しいのです」
という一文で始まる『一汁一菜でよいという提案』は、
本のタイトルの通り、毎日の家庭料理は一汁一菜でOKという内容です。

土井さんのおっしゃる一汁一菜とは、
ご飯と具沢山の味噌汁と漬物のことです。

しかも味噌汁には何を入れてもいいそうです。
例えば、残り物の唐揚げを入れてもいいんですって。

とは言え、お味噌汁は出汁をとるのが面倒…
と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、
具沢山にすれば、それぞれの具から旨みが出るので、
出汁は無くてもいいのだとか。

そして、この一汁一菜を土台にして、
自分の心や時間やお金に余裕があるときには、
おかずをプラスすればいいのだとか。

おかずを作る余裕あれば何か作ればいいし、
余裕が無ければ、おかずは具沢山の味噌汁だけでいいのです。

お子さんが夏休み中という親御さんも
これなら無理なく準備ができそうじゃないですか。

それこそ、お子さんにも手伝ってもらいながら、
味噌汁の具を毎回変えて楽しんだり、
そのまま自由研究にしたりするのもいいかも!

土井さんの一汁一菜に興味を持たれた方は、
まずは『一汁一菜でよいという提案』をお読みください。

そして、土井さんはこのほど
『一汁一菜でよいと至るまで(新潮新書)』を出されました。

タイトルの通り、土井さんが「一汁一菜」という提案
をするに至るまでが綴られています。

料理研究家の土井さんは、1975年に料理研究家の両親の家に生まれ、
物心つく以前から、料理を心においていたそうです。

二十歳の時にフランスに行きフランス料理を学び、
その後、日本料理の現場でも修行をし、家庭料理研究の道に進まれます。

この本には、それぞれの修行の現場で学んだことがなどが綴られています。

例えば、フランスにも一汁一菜があり、
それは「やさいスープとチーズとパン」だそうです。

しかもスープは、各自がコショウを入れたり、バターを落としたりして、
自分の好みで加減して食べているのだとか。

今の日本では作る人がつけた味を尊重しがちですが、
フランスでは食べる人の自由を尊重しているそうです。

一方、日本料理にも大切にしていることがたくさんあります。
以前、土井さんがフランス人のご友人を日本の懐石料理屋に連れて行ったところ、
お店が静かであることと、においがないことに驚かれたそうです。

詳しくは、本を読んで頂きたいのですが、
フランスと日本の違いは、どれも面白く勉強になりました。

土井さんは、フランス料理や日本料理の修行を終えた後は、
お父様の料理学校で、全国各地のレストラン開発をしたり、
テレビの料理番組へ出演したりと仕事の幅が広がっていきます。

そして、様々な仕事をする中で、
「一汁一菜でよいという提案」へと向かっていきます。

ぜひベストセラー『一汁一菜でよいという提案』と合わせて、
『一汁一菜でよいと至るまで』もお読みになってみてください。

いや、読むというか、土井さんの軽妙なお喋りにぜひ耳を傾けてみてください。(笑)

そうそう、土井さんも走ることにハマった時期があり、
フルマラソンは3時間40分でゴールし、
100キロウルトラマラソンも完走されているそうです。
スゴイ!

yukikotajima 11:46 am

ミロ、荒井良二、福富太郎

2022年7月22日

先日、美術館を一日に三ヵ所まわり、アートを浴びるように見てきました。

まずは、富山県美術館で開催中の「ミロ展−日本を夢みて」を鑑賞。

一見、子どもが描いたようにも見えるミロの作品ですが、
解説ともに見ると、印象ががらりと変わるから不思議!
学びながら楽しく鑑賞できました。

例えば、ミロは「素材」にこだわっていたそうで、
こんな使い方もありなの?というような面白い作品もありました。
ぜひ素材にも注目して鑑賞してみてくださいね。

また、ミロの作品から「日本」らしさを見つけるのも楽しかったです。
例えば、浮世絵を背景に貼り付けた絵画(まるでゴッホの『タンギー爺さん』のよう)や
「書」のような作品などがありました。
というのも、ミロは日本が大好きだったそうなのです。
大阪万博で即興で壁画を描いた際には、日本のたわしを使ったほどです。わーお。

今回の「ミロ展」は、ミロと日本の関係に注目した初の展覧会です。
ぜひじっくり隅々までお楽しみください。

***

一方、たわしではなく、ご自身の手を使って絵を描く方もいます。
国内外で活躍する絵本作家、荒井良二さんです。

現在、高志の国文学館では、開館10周年を記念した企画展
「荒井良二のPICTURE BOOK〈絵・本〉」を開催中です。

会場では森山直太朗さんの「花鳥風月」のMVが流れているのですが、
このMVが荒井さんのライブペインティングなのです。
ご自身の手で直接描いていく様にくぎ付けでした。

荒井さんの絵本は、ポップで明るくて、遊び心があって、
隅々までチェックしたくなる楽しさがあります。
また、文章は声に出したくなる楽しさで、
作品を鑑賞しながら「声を出して読みたい!」と思い、
帰りに荒井さんの絵本『たいようオルガン』を買ってしまいました。
この絵本、最高です!

絵本を普段読まない方でも楽しめる展覧会ですので、大人の方もぜひ。

***

最後は、富山県水墨美術館へ。
「コレクター福富太郎の眼:昭和のキャバレー王が愛した絵画」を見てきました。

福富さんは、著名な作家の作品だけでなく、
たとえ無名であったとしてもご自身がいいと思ったら買っていたそうです。
(また、かなりの勉強家でもあったそうですよ)
そんな福富さんの「眼」に焦点をあてた展覧会です。

例えば、最近再評価が高まっている
渡辺省亭の作品にもいち早く目をつけていたのだとか。

会場には美人画を中心に洋画や戦争画まで約80点が展示されています。
中でも妖艶な美人画が多いのですが、
さまざまな思いを抱えた女性たちが並ぶさまは、まるで夜の雰囲気でした。

そんな中、吉田博の風景画『朝霧』を見た時には朝がきた!と思いました。
福富さんも「吉田博の作品は見ていて気分が爽快になる」
とおっしゃっているのですが、まさにその通りでした。
透明感があって、まるで、そこだけ空気が澄んでいるようでした。
思わず福富さんに「私もそう思ったよ」と心の中で話しかけてしまいましたもん。(笑)

というのは私の勝手な見方ですが、
いずれにしても福富さんの人柄が感じられる展覧会だなと思いました。

あなたは福富さんのコレクションからどんなことを感じるでしょうか。
ぜひ会場でお確かめください。

***

ということで、一日に3つの展覧会を見て回りましたが、
疲れるどころか、とても楽しい時間でした。
また、いい運動にもなりました。美術鑑賞って結構歩くのですよね。
運動にもなって一石二鳥です。(笑)

皆さんもこの夏、県内の美術館巡ってみてはいかが。
くれぐれも履きなれた靴でお出かけくださいね。

yukikotajima 11:55 am

『映画を早送りで観る人たち』

2022年7月20日

あなたは映画や映像を見る際、早送り再生しながら見ていますか?

私は観ています。それも10年以上前から。

全てが早送りではありませんが、映像によっては1.5倍速で見ています。

なんてことを言うと「けしからん!」と
目くじらを立てる方もいるかもしれませんね。

それで作品を味わったことになるのかとか、
作品の本来の良さが感じられないではないかとか。

よーくわかります。

私もちゃんと見たいと思った作品は倍速にはしませんし、
映画館で映画を見ることも好きです。
映画館で2本連続鑑賞もするほどです。

でも、個人的な好みと関係なく、
流行りの作品や、仕事の上で見る必要のある作品などは、
「資料」として1.5倍速で見ています。いや、消費しています。

こういう場合、「作品を鑑賞する」のではなく
「コンテンツを消費する」と言うそうです。

あなたはどうでしょう?

日々、作品を鑑賞していますか?
それともコンテンツを消費していますか?

今日ご紹介する本は、今年4月に発売され話題になっているこちらです。

『映画を早送りで観る人たち
ファスト映画・ネタバレ——コンテンツ消費の現在形
/稲田豊史(いなだ・とよし)【光文社】】』

著者の稲田さんは、1974年生まれのライター、コラムニスト、編集者で、
映画配給会社に入社後、DVD業界誌の編集長や書籍編集者を経て、
2013年に独立されました。

この本を書くことになったきっかけは、
なぜ倍速視聴する人がいるのかという違和感と疑問からだそうです。

ですが、稲田さん自身も
かつて倍速視聴にどっぷり浸かった時期があったのだとか。

倍速視聴が広がった理由には、3つの背景があるそうです。

まず、作品が多すぎること。

次に、コスパ(コストパフォーマンス)を求める人が増えたこと。

3つめが、セリフですべてを説明する映像作品が増えたこと。

稲田さんは、倍速視聴する人たちに話を聞きながら、その実態に迫っていきます。
その結果、様々なことがわかりました。

詳しくはぜひ本を読んで頂きたいのですが、
大変興味深く面白い一冊でした。

私が印象に残った点をいくつか挙げてみますね。

そもそも40代の私と若者たちでは倍速視聴する理由が違いました。

また、最近、ドラマや映画などを見ている時に感じていた
違和感の理由もわかりました。

例えば、登場人物たちが喋りすぎる問題!
自分の気持ちを実況中継のようにいちいち口に出している
と感じることもあったのですが、
その理由は、わかりやすく説明しないと通じないからなんですって。

例えば、「嫌いと言ってるけど本当は好き」が通じないのだとか。

他にも、見ていて嫌な気分になるものは見たくないそうで、
だから勝つか負けるかわからない「スポーツの試合」は見たくないのだとか。

えーーー!そこが面白いのに!

つまり、「見たいものしか見たくない」ということです。

本や映画やドラマなどの「物語」が好きな私にしてみれば、
もったいない〜!と思ってしまいます。

「共感」できる作品や「癒される」作品も楽しいけれど、
自分とは異なる価値観に触れられることが物語の魅力の一つだと思うから。
ま、これはあくまでも私の意見ですが。

今や、じっくり味わいたい派と、軽く消費したい派の
どちらも楽しめる作品も出てきているそうです。

この本には、そんなドラマの名前も載っていますので、
気になる方は読んでみてください。

というか、大人世代の皆さんにはぜひ読んで頂きたい一冊です。

ほんと面白かった!

yukikotajima 11:50 am

『カレーの時間』

2022年7月13日

今日も暑いですね。

夏に食べたくなるものは色々ありますが、
カレーが食べたい気分の日もありますよね。

でも作るのは面倒…という時に便利なのが「レトルトカレー」です。

最近食べましたか?

私は先日食べたばかりです。
また、普段から時々食べています。
なんといっても最近のレトルトカレーは美味しいですし、種類も豊富ですからね!

今日ご紹介する本にも「レトルトカレー」が出てきます。

『カレーの時間/寺地はるな(実業之日本社)』

美味しそうなカレーの写真の表紙を書店で目にしたとき、
ちょうどお腹が空いていたこともあり、思わず手が伸びてしまいました。

パラっとめくって目次を見れば、
「夏野菜の素揚げカレー」「ドライカレー 目玉焼きのせ」など
カレー屋さんのメニューのように様々なカレーの名前が並んでいました。

「夏野菜の素揚げカレー」は、レトルトカレーに夏野菜の素揚げをのせたものなのですが、
本を読みながらとても美味しそうだったので、さっそく作って食べました。
素揚げをのせるだけで一気に豪華なカレーになるのも嬉しく、大満足でした。

と、ここまでの紹介ですと、様々なカレーを紹介する小説?と思われそうですが、
メインは家族の物語で、カレーはあくまでもサブです。

主人公は、25歳の男性「桐矢(きりや)」です。

彼は、与えられたもの最大限生かして、
ささやかな幸福を感じながら生きていきたいと思っています。
つまり、挑戦などせず慎重に。

次は、戦後の若者のお話です。
この若者は桐矢の祖父の義景です。

彼は、ずっと空腹で食べ物のことばかり考えています。

物語は、現在と終戦後のふたつの時代が交互に描かれていきます。

なお、現在の義景はというと、桐矢をはじめ家族みんなから疎まれています。
桐矢にいたっては、口が悪く、がさつで、横暴で無神経な祖父のすべてが嫌で、
ここ数年は避けていたほどです。

それなのに、ある日祖父から「一緒に住もう」と言われてしまいます。

絶対に嫌だ!と拒否していた桐矢でしたが、結局祖父と二人で暮らすことになります。

とは言え、いちいち「男とは」について語る祖父にうんざりしています。
でも、桐矢も負けていません。

「男の生きかたを教えてやる」という祖父に対し
「『男らしさ』が美徳だった時代はもう終わりました」と言い返すのです。

「桐矢、よく言った!」と本に向かって声を出した私でしたが…
祖父はまったく桐矢の話を聞いておらず、
「一人前の男になったら嫁も来る」と返してきます。

なんでよーーー。(笑)

こんな感じで、桐矢は何度も祖父に苛ついたり呆れたりしています。
同時に、この価値観はそう簡単には変えられないなとも思います。

変えられないと言えば、セクハラで異動になった桐矢の上司がこんなことを言います。

「ちょっと前までほめ言葉だったことが、もう言ったらだめなことになる。
おれはそんなにだめなのか」と。

この上司と同じことを思ったことがある方もいるのでは。

そう、今、時代は変わりつつあるのです。
そのために自分自身の価値観をちゃんとアップデートする必要があります。

桐矢はちゃんと今どきの感覚を持っています。
でも、この上司も祖父もずっと昔の感覚のままです。

だから、祖父との暮らしは噛み合わないことばかりです。
ですが、一緒にカレーを食べている間だけは少し打ち解けることができます。

祖父は定年までカレーのルーやレトルトカレーのメーカーにつとめていて、
今も良く買っているので祖父の家にはたくさんのレトルトカレーがあるのです。

しかも桐矢のために甘口ばかりを買ってきます。
もう大人だから辛口も食べられるのに、子どもの頃に好きだった記憶のままなのです。
良かれと思ってやっているのですけどね…。

この物語は、現在の話と若かりし頃の祖父の話が交互に描かれていきますので、
きっと読む世代によって共感ポイントが異なることでしょう。

逆に、それぞれの世代の違いについて知ることで、
自分と違うタイプの人に対してすこ〜し優しくなれるのではないかなとも思いました。

物語の最後には、祖父の秘密も明らかになります。
詳しくはぜひ本のページをめくってみてください。

とってもいい作品でした!

祖父の3人の娘やその子どもたちのキャラも濃いし、
なんといってもこの作品を大勢の方に知っていただきたいので、ドラマ化希望!

それから、本の帯には、先日『宙ごはん』をご紹介した
「町田そのこ」さんのコメントもあります。

◎私の『宙ごはん』の紹介は コチラ

同じく食べ物が出てくる『宙ごはん』とセットでお読みいただくのもオススメです。
『宙ごはん』も涙しましたが、この『カレーの時間』も泣けました。

そうそう!

この本を読むとレトルトカレーが食べたくなるので、
ぜひご準備の上、お読みください。

yukikotajima 11:56 am

『残された人が編む物語』

2022年7月6日

先日、久しぶりに大学時代の友人に会いました。
金沢での仕事のあと、富山にも立ち寄ってくれまして、
ほんのひとときでしたが、とても楽しい時間でした。

大学を卒業してからだいぶ経ちましたが、
友人は学生時代と同じく今も熱く前向きで、
変わらないなと思ったのですが、
友人からも「ゆきは今も姉御のままだ!」と言われ、
何年経ってもお互いベースの部分は変わっていないことを
笑い合いました。

その一方で「ゆきがフルマラソンに出るようになるとは思わなかった」
とも言われました。

確かに何年経っても変わらない部分もあれば、
年齢や環境と共に変わることもありますよね。

あなた自身は周りの人からどんな印象を持たれていると思いますか。

学生時代の友人、職場、家族、趣味の仲間と
関わる人によっても印象は変わるかもしれません。

今日ご紹介する本は『残された人が編む物語/桂望実(祥伝社)』

桂さんは、映画化もされた『県庁の星』がベストセラーになりました。

今回は、行方が分からなくなってしまった人を捜す人たちの物語です。

5つのお話が収録された連作短編集で、
それぞれ、弟、友人、夫などを捜しています。

そして彼らのサポートをしているのが、
「行方不明者捜索協会」の女性スタッフの西山さんです。

彼女は、行方不明者の関係者に話を聞きに行く際には同行したり、
様々な相談も受けたりしています。

最初のお話は、ずっと会っていなかった弟を捜す姉の物語です。
母が亡くなって遺産相続の手続きをすることになり、
久しぶりに弟に連絡を取ろうとしたところ、どこにいるのか全くわからず、
行方不明者捜索協会を頼ることにしたのでした。

そして、スタッフの西山さんと共に、弟のことを知る人たちに会いに行きます。

様々な関係者に会って話を聞くことで
弟がどんな人生を送っていたのかが明らかになっていきます。

西山さんは消えた人の人生を「物語」と呼びます。
この「物語」が残された人には必要だと。

まさに本のタイトルの『残された人が編む物語』です。

その「物語」には、いい話もあれば、辛い話もあります。
でも、失踪者たちの人生を知ることで、
残された人たちにも変化が訪れます。

大切な人が突然消えてしまうお話なので
暗く辛いお話なのかなと思ってしまいそうですが、
涙を流しながらも読後感は温かく穏やかでした。

また、読んだ後は私自身の人生も振り返りました。
誰かが私のことを話す時、悪口だけだったら悲しいなと思って、
色々反省しました。(苦笑)

そういう意味では、様々な気付きのある物語でもありました。

あなたも夏の夜、毎晩一話ずつ読み進めてみては。

この本を読むことで、ずっと忘れていた
大切な人のことやエピソードが突然思い出され、
あなた自身の人生に、何かしらの変化をもたらすことがあるかも!?

yukikotajima 12:00 pm