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『この気持ちもいつか忘れる』

2020年10月7日

こんにちは。

10月からもgraceの毎週水曜13時45分頃からは
本紹介のコーナーをお届けしていきますが、
今後は毎週、私、田島悠紀子おすすめの本を紹介する
「ユキコレ」をお届けしていきます。

これまでのユキコレは小説が中心でしたが、
今後は、幅広く様々な「本」をご紹介していきますので、
引き続きよろしくお願いします。

***

さて、今日の本は今話題の一冊です。

『この気持ちもいつか忘れる/住野よる(新潮社)』


累計300万部を突破し、映画化もされた
『君の膵臓をたべたい』でおなじみの住野よるさんの新作です。
紀伊國屋書店富山店でも人気だそうですよ。

今回は、普通の小説とはちょっと異なります。
ロックバンド・THE BACK HORNとのコラボ作品で、
小説に5曲入りのCDがついています。

今の若手アーティストではなく、
20年以上活動しているロックバンドとコラボした理由は、
著者の住野さんが学生時代からTHE BACK HORNの大ファンだからで、
住野さんからコラボの依頼をしたそうですよ。

実は私もTHE BACK HORNが好きで、
これまで何度もライブに行っているので、
個人的にとても嬉しかったです!

そういえば、THE BACK HORNが好きと言ったら、
「ホーンじゃなくてナンバーじゃないの?」
と言われたこともあったな。(笑)
(もちろん、ナンバーもいいですが)

さて、今回のコラボは、小説が完成してから曲をお願いしたのではなく、
構想段階から打ち合わせを重ねて、創作の過程も共有し、
お互い影響を与え合いながら作っていったのだそうです。

そして、「どうしてもTHE BACK HORNの楽曲を聴きながら作品世界に浸ってほしい」
という住野さんの熱い思いから、CD付きの小説になったそうです。
ちなみに、5曲入りのCD付きで1,700円+税と大変お得です。

コラボの経緯については、住野さんとTHE BACK HORNの座談会(の文章)が
公式サイトにたっぷり載っていますので、小説と合わせてお楽しみください。
住野さんのTHE BACK HORN愛があふれている…というか漏れすぎです。(笑)

◎公式サイトは コチラ

で。

肝心の小説はどんなお話なのかと言いますと、
超こじらせ男子の物語です。(笑)

男子高校生のカヤは、自分も周りもつまらない人間ばかりだと思い、
人と群れることはせず、ほぼ一人で退屈な日々を過ごしています。

夜になると、もう使われていない古いバス停まで歩き、
待合室でほんのひととき過ごします。
自分の部屋にいても心配されるだけだし、
家族団らんなんて面倒だから、という理由で。

そんなある日の深夜、バス停で謎の少女チカに出会います。
少女と言っても、チカは爪と目だけしか見えません。
でも、声は聞こえるし会話もできる。
また、実際には見えないけれど体に触れることもできます。

どうやらチカは、カヤとは異なる世界に住んでいる少女のようなのでした。

それまで退屈な日々を送っていたカヤでしたが、
深夜のバス停で不思議な少女と交流していくうちに、気持ちにも変化が生じます。

誰かがただいてくれるだけで幸せだと感じたり、
自分の素直な気持ちを言葉にできたり。

二人のやり取りが初々しくて何度もキュン♪としました。

ちなみに、男子高校生と不思議な少女の物語ということは、
10代向けの本なのかな、と思われそうですが、そんなことはありません。

なんなら大人のほうがより心に響くかも。

というのも、後半は少女と出会って15年後のカヤの物語なのです。
この30代のカヤが、相変わらずこじらせています。(笑)

本当は言いたいことがたくさんあるのだけれど、
感想を言うとネタバレになってしまうのです。ああ、もどかしい。
でも、自分のことをややこじらせ気味だなと思う方は、
この本を読むことで少し楽になるかも。

さて、カヤとチカはその後どうなったのでしょう?

気になる方は、ぜひ小説をお読みください。
それも、THE BACK HORNの曲を聴きながら♪

私は、本を読み終えた後に、あらためて曲を聴いてみたのですが、
まるで映画のエンドロールのような気分で作品の余韻に浸れました。

ぜひ秋の夜長は、音楽を聴きながらの読書をお楽しみください。

yukikotajima 9:30 am