ゆきれぽ

2026年8月26日

  • #本

『BUTTER』

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8月も残りわずかとなりましたね。この夏、あなたはどんな本を読みましたか。文庫を読んだ方もいるのでは。夏の本屋さんと言えば、「文庫フェア」ですものね。私はこの文庫フェアが好きです。新しい本を探すのも、過去に読んだ本の文庫版を見つけるのも、気になりつつも読んでいなかった本と出合えるのもそれぞれに楽しい時間です。先日も文庫コーナーをウロウロしていたのですが、そう言えば読んでいなかったな、という話題の本を見つけたので、読んでみました。

その本とは、世界での累計部数が200万部を突破したという世界的ベストセラーです。

『BUTTER』
柚木麻子(ゆずき・あさこ)
河出文庫

2017年に刊行された柚木麻子さんの長編小説の文庫です。それも6月に発売された河出文庫版です。こちらには、第7回野間出版文化賞を受賞された時の柚木さんのスピーチとイギリスツアー日記、そして翻訳家・文芸評論家の鴻巣友季子さんの解説が収録されています。またブックデザインも変わりましたので書店で探す際にはご注意くださいね。それからイギリスツアー日記には「富山」の話題もちょこっと出てきますので、富山の皆さんはぜひこの河出文庫版を読みましょう。(笑)

さて、『BUTTER』は40の国や地域で翻訳され、イギリスでは年間ベストブックに選ばれるなど世界中で話題の日本文学です。今から9年前の小説ですので、すでにお読みの方も多いと思います。ですが、私は今回初めて読みました。「あんなに話題になったのに読んでいなかったの?」と思われた方もいることでしょう。もちろん作品のことは知っていました。でも当時は読みたいと思えなかったのです。正直なことを言えば嫌悪感すらありました。と言うのも実際にあった連続殺人事件をモチーフにしていたからです。そして当時はよく調べもせず、ワイドショーの延長のような本だと思ってしまったのです。でも、なんてもったいないことをしたのだろうと、読んだ今ならわかります。そもそもこの物語はフィクションですし。

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物語は、婚活連続殺人事件の容疑者であるカジマナこと梶井真奈子と、彼女を取材する週刊誌記者の町田里佳の対話を軸に紡がれていきます。ちなみに主人公は記者の里佳です。

里佳はカジマナに話を聞きに拘置所を訪れるのですが、カジマナから「事件については話したくないけど、料理の話ならしてもいい」と言われ、彼女と料理の話をしていくことになります。と言うのもカジマナは料理も食べることも大好きなのです。中でもバターが好きで、高級バターの魅力をうっとりしながら里佳に語ります。そして里佳はカジマナに言われるがままにオススメのバターを買ったり、お店に食べに行ったりしていくのですが、そんな食生活を続けていたところ、周囲の人たちから心配されるほど里佳の体重は増えてしまいます。また変わったのは見た目だけではありません。最初はあくまでも仕事として、カジマナに心を開いてもらいたくて彼女の言う通りにしていたのですが、欲望のまま生きるカジマナにどんどん夢中になっていきます。里佳がその後どうなっていくかは、ぜひご自身でお確かめください。

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物語の前半は、こってりとしたバター話が続くので胸焼けしそうだなと思いきや、里佳がバターを使った料理にハマっていくにつれ、私まで食べたくなってしまい、夜遅い時間だったにもかかわらず冷凍ご飯を温めて、冷蔵庫にあったバターと醤油をかけて食べてしまいました。さらに翌日には普段は買わないお高めのバターを買って、再びバター醤油ご飯を食べて「なんて美味しいの!」と声に出しながら、私までカジマナのペースにハマっているではないか!とハッとしました。でも、この物語を読めば、きっと美味しいバターが食べたくなると思います。

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9年前は、この本のことをよく調べもせずに読みたくないと思ってしまいましたが、逆に今この時代に読めて良かったように思います。9年経って時代も変わって自分自身もさらに大人になった今だからこそ客観的な視点で読めたように思うからです。と言いつつ、影響を受けまくってバターを買いに行ってしまったのですが。(笑)

以前読んだ方も、私と同じように当時は興味が持てなかったという方もぜひお読みください。当時私がイメージしていた物語とは全然違いました。9年前の私に伝えたい。「どんな話かなんとなく想像できると思ったあなたの予想は外れます。自分で勝手に決めつけずに物語の女性たちの声に耳を傾けてみて。とても面白い小説だったよ!」と。