ブログトップページはコチラ

化物蠟燭

2019年9月25日

2週連続の3連休が終わりましたね。
後半の連休はちょうど秋のお彼岸ということで
お墓参りに行った方もいらっしゃると思います。

例えば、天国のお祖母ちゃんに心の中で語りかけたり
家族でお祖母ちゃんとの思い出話をした方もいらっしゃるのでは?

もしかしたらお祖母ちゃんは
にこにこ微笑みながら目の前にいたかもしれません。
実際には見えなくても。

***

今日ご紹介する本は、幽霊たちが登場する短編集です。

『化物蠟燭(ばけものろうそく)/木内昇(きうち・のぼり)【朝日新聞出版】』


木内さんというと、2011年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞しています。

「化物蠟燭」とは、影絵の一種で、
幽霊の形に切った紙に蝋燭の灯りを当てて障子などに影を映すというものです。
影が揺らぐことで、まるで障子の向こう側で幽霊が動いているように見えるのだとか。

今回の作品は江戸の町が舞台の短編集で、7つのお話が収録されています。

例えば、表題作の「化物蠟燭」は、影絵師をしている男性のもとに、
ある男性を「影絵」で怖がらせてほしいという依頼が舞い込みます。

言われた通り、影絵師は毎晩夜中に部屋の外から幽霊の影絵を見せ続けます。

しかし、ある日、自分は毎晩いったい何をしているんだ?と思い、
昼間にこっそり彼の様子を見に行きます。

すると「毎晩、あなたの影絵を楽しみにしていた」と言われてしまいます。

怖がらせるために見せていたはずなのにどうして?
そもそもなぜ自分の存在がばれているのか?

その理由を知ったとき、私は胸が熱くなりました。
大変いいお話でした。

化物蠟燭は、形は同じでも、ゆらゆらと見え方を変えていく、
つまり、向きによって見え方が異なります。

これ、あらゆることに言えませんか?

もっと物事を様々な角度から見ることができれば、
あらゆることはスムーズにいくのかもな。

***

他には、
亡くなったはずの人が隣に引っ越してきたり、
過去に夫だったというおじいさんが突然現れたり、
生きている人だと思った人はすでにこの世の人ではなかったりと、
どのお話もちょっと不思議な物語です。

幽霊が見えてしまうある男性が、こんなことを言っています。

「生きている者より死んでいる者のほうが素直に心を語る分、心安い」

「たかが噂ひとつで手のひら返すのが人という生き物だ」

この短編集には幽霊の出てこないお話もあります。
このお話が一番怖かったです。

幽霊は怖い…という方もいるかもしれませんが、
一番怖いのは、生きている人の心なのかもしれませんよ〜。

『化物蝋燭』は、確かに幽霊たちは出てきますが、怖い作品集ではありません。
秋の夜長に毎晩一話ずつゆっくり読み進めてみては?
幽霊たちから気付かされることもあるかも。

また、江戸の訛りと文章のリズムが心地よく、読んでいてとても楽しかったです。
そういう意味でもおすすめの一冊です。

ぜひお読みください。

***

ただいま紀伊國屋書店富山店では、
「ユキコレ・キノコレ フェア」が開催されています。

このフェアは、graceで毎週水曜日の13時45分頃〜お届けしている
本の紹介コーナーでご紹介した本を集めたものです。

これまで紹介してきた本の中から
紀伊國屋書店富山店と私、田島が選んだ本が並んでいます。

私のオススメ本には私のコメントもあります!

また、紹介本も最初の頃より増えています。

フェアは9月30日(火)までですので、ぜひ足をお運びください♪

yukikotajima 11:20 am

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

2019年9月18日

今日のキノコレ(grace内コーナー13:45頃〜オンエアー)で
紀伊國屋書店富山店の奥野さんにご紹介いただく本は、
今話題の本『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』です。

◎奥野さんの紹介文は コチラ

私もこの本を読みました。
著者はブレイディみかこさん。

英国のブライトンに住む保育士でライターでコラムニストです。
この本は、息子の中学時代が綴られたノンフィクションです。

カトリックの小学校で優等生だった息子が選んだ中学校は、「元・底辺中学校」でした。
いじめも喧嘩も差別もあるような学校です。

息子君はハーフです。それゆえの悩みもあります。
友人には、差別を簡単に口にする人や貧しい生活を送っている友人もいます。

彼らとともに中学生活を送る中で、
息子君は著者であるお母さんと一緒に何が正しいのかを悩み、考えていきます。

とてもいい本でした!!!

この本、大人にも子どもにも読んでいただきたい。
この本を教科書にして学校の授業で学んでもいいと思う。
それは無理でも一家に一冊あるべき本だと思います。

なぜいじめをするのか?
なぜ差別は起きるのか?

といった問題に対する息子君の考え方が素晴らしいのです。

息子君は「人はいじめるのが好きなのではない。〇するのが好きだ」
と言うのですが、これ、まさにその通りです。
今の世の中は、人を〇したい方が本当に多いのですよね。
この〇に入る言葉、わかりますか?
気になる方はぜひ本を読んでみてください。

お母さんは、息子とその友達やり取りをを見ながら
「世界はひどい方向に向かっているというのは、
彼ら(息子を含めた若者たち)を見くびりすぎている」
とおっしゃっています。

この本を読んでいると、確かに子どもたちのほうがよっぽど柔軟で
人を平等に見ているのがわかります。

中学生の息子君やその友人たちがこの先、どんな大人になっていくのか。
ぜひ続編も読んでみたい!

yukikotajima 11:23 am

罪の轍

2019年9月11日

今日ご紹介する本は、東京オリンピックを翌年に控えた頃のお話です。
といっても今年ではなく、昭和38年の物語です。

『罪の轍/奥田英朗(新潮社)』

物語はまず、北海道から始まります。
漁師手伝いの青年、宇野は、盗みをはたらき東京へ逃亡します。

そして舞台は東京へ。
彼が東京で暮らし始めてからまもなく、ある強盗殺人事件が起きます。
事件の捜査を担当しているのは、捜査一課の落合。若手の刑事です。
落合は、殺人事件の犯人を追っていく中で、ある青年の噂を耳にします。

そんな中、今度は男児誘拐事件が発生します。
落合をはじめ刑事たちは、男の子を一刻も早く見つけ出さなければ!と思うものの、
手がかりはなく、時ばかりが過ぎていきます。

本のページをめくるだけで心臓がバクバクするほどの緊迫感です。

無事、男の子を見つけることはできるのか?
また、二つの事件の犯人はそれぞれ誰なのか?
そして、物語はこのままどこに向かっていくのか?
など、本のページをめくるたびに疑問が次々にわいていきました。

これらの答えが知りたい方は、ぜひ本をゲットしてください。

ただ、600ページ近くもある長編ですので、お時間のある時にお読みください。
ちょうど今週末と来週末は3連休ですから一気読みするのにいいかも!

また、この物語を読んだ後に、
奥田さんの過去の作品『オリンピックの身代金』
も合わせてお読みになってみてはいかがでしょう?

実は、刑事たちが今回の物語と同じメンバーなのです。
時代的に見ると、『罪の轍』が先です。

私も『オリンピックの身代金』も読みましたが、
10年前のことでだいぶ忘れているため、もう一度改めて読んでみたくなりました。

◎『オリンピックの身代金』の私の感想は コチラ

とは言え、『オリンピック〜』のほうもかなりの長編ですので、
一気に読もうと思ったら、3連休は読書しかできなくなりそうですが。
まあ、それも素敵な過ごし方かな!(笑)

***

『罪の轍』は、東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年の物語なのですが、
私はあまり古さを感じませんでした。
というのも、人の心や行動が今も昔も変わらないように感じたのです。

今、世の中で何か事件が起きたとき、
ネットに様々な情報がさらされてしまいますよね?

ネットが登場する前はそんなことは無かったのに、嫌な時代になったものだわ。
と思う方もいるかもしれません。
でも…昔も同じことをする人はいたのです。

たとえば、子どもが誘拐された家で、どんなことが起きたと思いますか?

なんと、電話が鳴り続けたのです。
嫌がらせの電話が!
電話の匿名性をいいことに、日頃のうっぷんを晴らすべく、
いたずら電話をかける人が大勢いたのでした。

時代は変わっても人の行動は変わらないじゃないか、とハッとさせられました。

***

それから、『罪の轍』には、富山の皆さんにしかわからない話題が出てきます!
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、
ほかの地域の皆さんが「ん?どういうこと?」となる中、
きっと優越感に浸れると思います。(笑)

奥田ファンの一人として、富山の話題を出してくださったことが嬉しかったです。

そう、私は奥田英朗さんの作品が昔から大好きです。
奥田さんの作品には、犯罪を犯す人がよく出てくるのですが、
100%悪人としては描かれません。
だから厄介なんです!(笑)
時代劇に出てくる悪人のように、とことん嫌な奴だったら
「この人むかつくー!」ちお怒りをぶつければいいだけので、そういう意味では楽なのですが、
奥田さんは、そんな単純な描き方はしません。
人のいい面も悪い面も平等に描いていきます。
だから、どんな人からも人間らしさを感じます。
100%完璧な人もいなければ、100%悪人もいません。
そのバランスが絶妙なのです。

奥田さんの本を読んだ後は、
自分の周りにいる、ちょっと苦手な人に対しても
この人にもいい面はきっとある、と
いつもより優しい気持ちで接することができるような気がします。

今回も充実の読書時間でした。
(そして、寝不足になりました!笑)

***

ただいま紀伊國屋書店富山店では、
「ユキコレ・キノコレ フェア」が開催されています。

このフェアは、graceで毎週水曜日の13時45分頃〜お届けしている
本の紹介コーナーでご紹介した本を集めたものです。

これまで紹介してきた本の中から
紀伊國屋書店富山店と私、田島が選んだ本が並んでいます。

私のオススメ本には私のコメントもありますので、
良かったらお読みください。

フェアは9月30日(火)までですので、
ぜひ足をお運びください♪
 

yukikotajima 12:09 pm

さよならの儀式

2019年9月4日

現在、紀伊國屋書店富山店では、
「ユキコレ・キノコレ フェア」が開催されています。

このフェアは、graceで毎週水曜日の13時45分頃〜お届けしている
本の紹介コーナーでご紹介した本を集めたものです。

これまで紹介してきた本の中から
紀伊國屋書店富山店と私、田島が選んだ本が並んでいます。

私のオススメ本には私のコメントもありますので、
良かったらお読みください。

また、まだ本はすべてそろっていないそうで、
今後増えていくようですよ。

フェアは9月30日(火)までですので、
ぜひ足をお運びください♪

***

さて、今日はキノコレの日です。
紀伊國屋書店富山店の奥野さんから
宮部みゆきさんの『さよならの儀式』をご紹介いただきます。

◎奥野さんの紹介文は コチラ

私もこの本を読みましたので、軽く感想を。

こちらの本は400ページ以上あるものの、
わりとさらりと読めてしまいます。

というのも短編集だからです。
どのお話も短いので、すぐに読めます。

それもちょっと変わった世界の物語のため、
お話の先が想像しにくく、
夢中で本のページをめくっているうちに、
あれ、もう読み終えた!という感じで読めてしまうのです。

描かれている内容は…ひと言でいうなら「世にも奇妙な物語」です。

『さよならの儀式』は、宮部さんにとって初のSF作品集なのだとか。

近い未来本当にありそうな出来事も描かれていて、
もしそうなったら私は何を思うのかしら?と思ったり、
つい街じゅうの防犯カメラをチェックしてしまったり
もし中学生の私が今の私を見たら何を思うかな?と想像したりと、
どの作品も読んだ後、自分と重ねながら、あれこれ考えてしまいました。

中でも「わたしとワタシ」という作品は
45歳のわたしの前に、女子中学生のワタシが現れるというお話なのですが、
これがとても面白い。

中学生のワタシの発言は容赦なく、
「こんな干からびたおばさんになりたくない」
とまで言われてしまうのです。

他にもスマホやスタバにも興味津々です。

ふたりのやり取りがとても面白く、アハハと笑う一方で、
もし中学生の田島悠紀子と会話することがあるなら
「そんな人生もいいじゃん!」と思ってもらえるような
大人でいたいなあと思ったのでした。

あなたはどうですか?
中学生の頃の自分が今のあなたを見たらどんなことを言われそうですか?

yukikotajima 11:18 am