★☆★★☆★　9月7日の　『キノコレ』　　★☆★★☆★　　　　　　　　　　

「キノコレ」は、毎月・第1&第3月曜の13：45〜『grace』の中でお送りしています。

毎月第1週は、紀伊國屋書店富山店　係長　朝加昌良さんのオススメ本です！

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★　『神様のカルテ』     夏川草介　小学館　1260円　
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・聞かない名前の作者さんだな、と思われるでしょうが、それもそのはず本作がデビュー作です。
第10回小学館文庫小説大賞受賞作。賞の名称は文庫小説となっていますが、単行本です。

・でもって、デビュー作ではありますがこれは話題作になるであろう！ と言い切ってしまいます。発売後まだ10日ほどではありますが。

・どういった本かといいますと、信州の病院に勤める青年が主人公。
地域に密着し、さらに救急外来すらもこなすその病院はまさに日々戦場。
たくさんの患者を受け持ちながらもそれぞれに向き合い、応える彼の姿に医の道のあるべき姿を見るでしょう。

・著者は78年生まれで、医学部を卒業して実際に長野の病院に勤務しており、
その地域医療に携わる経験がこの作品のリアリティを生み出していると思います。

・とはいえ、読み心地は非常にスマート。
専門用語もほとんど出ないし、主人公の考えもどこかおかしみがあり、
登場人物たちも特徴的でやりとりの会話も楽しい。
しかし不意に涙ぐんでしまうような一文があったりする。油断できない。

・病院での出来事、医者としてのあり方というテーマと周囲の人々との生活
・・・その風貌が「怪獣」とたとえられる同僚の恋愛話や、
おんぼろアパートの住人（絵描きを目指す通称「男爵」、
大学院で研究しているという通称「学士殿」）との友情、
そして最愛の妻である「ハルさん」とのやりとり・・・
こういったことがごく自然に溶け合いながら話が作られる。

私の持論に「優れた医療小説は、優れたヒューマンドラマである必要がある」というのがあるのですが、
こんなに自然で、魅力的に描いてくれる作品は珍しい。