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月と雷

2012年8月22日

今年は、角田光代さんの本をよく読んでいます。

読みたい本が、たまたま角田光代さんの書かれたものになってしまう。
知らないうちに惹かれてしまうようです。

今回、私が読んだのは、
7月10日に出たばかりの小説『月と雷(中央公論新社)』です。
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夏は、出会いの季節であり、再会の季節。
お盆の間に、懐かしい再会があった方もいらっしゃると思います。

私もこの夏は、久しぶりに中学の同窓会に出席したり、
大学時代の恩師や職員の皆さんに会ったりしました。

再会のあと、過去のことを思い出したり、考えたりすることが増え、
ふと、あの人は元気かなあ、会ってみたいなあ、なんて思うことも。

でも、思うだけですが。(笑)

しかし、会いたいと思って会いに行ってしまった人がいるんです。

今日ご紹介する小説『月と雷』は、
会いにいってしまった男性と、
同じく、彼のことを時折、思い出していた女性のお話です。

男女ともに、私と偶然同じ、34歳。
2人とも結婚していません。

彼は、子どものころからとにかくもてます。
彼女が途切れたことはありません。
でも、長く続かない。しかもふられて終わる。

ある女性から、ふられる時に
「あなたはふつうじゃない」
と、言われ、彼は考えてしまう。

ふつうじゃない、とはどういうことなんだろう、と。

そもそもこの男性の母親が生活が出来ない人でした。
夫も仕事も無かったのですが、
人に好かれる能力はあり、誰かがいつも助けてくれていました。

しかし、母も関係を長く持続させることができなかったので、
子どもの頃は、日本各地をあちこち引越ししながら暮らす日々でした。

そんな中、ある一人の同い年の少女と暮らすことになります。
その暮らしは、普通ではないけれど、自由で楽しいものでした。
しかし、そんな生活も長く続きません。

その後、2人は、会うことはないまま、お互い34歳になります。

そして、2人は再会し…。

と書くと、感動的な恋愛小説か?
と思われそうですが、そうじゃ、ない。

お互いのことは、時々思い出すことはあっても、
ずっと好きだったわけではないですし。

でも、2人が出会ったことで、様々なことが動き出していきます。

この小説は、状況も設定も、
「ふつう」ではありません。

でも、私は本を読みながら、どこかしっくりきていました。
特に、主人公の女性の気持ちや行動に。

私ならきっとそちらを選ぶだろうな、
と思う方を彼女も選ぶのが、とても面白かった。

たとえそれが間違った選択だったとしても、
誰かのせいにするのではなく、
自分で選んだ結果を受け入れる彼女が素敵でした。

本を読みながら、ころころ変化していくストーリーに、
いったいどういうラストなんだろう?
と気になって仕方なかったのですが、
私はとても好きなラストでした。

終わり方も、表現も、気持ちよかった。
表情やにおいや音が浮かびました。

ところで、
なんとなく、私の勘だけれど、
この本もいずれ映像化されるような気がします。

私なら、男性は、窪塚 洋介さんに、
女性は、麻生久美子さんに演じて頂きたいな。

『月と雷』

自分を取り巻く環境に対する不満があったり、
イライラしたり、なかなか受け入れられないことがあったりする方は、
この本を読むと、少し考え方が変わるかもしれません。

誰かに期待することをやめたり、
これもありか、と思えたりする、かも、よ。

yukikotajima 12:25 pm